光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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皆さんクッソお久しぶりと三ヶ月ぶりのあけましておめでとうございます。
リアルが忙しくて精神的にもアレで投稿ところではなかった作者、復活です。落ち着いた頃でもモチベーションが上がらなかったのですけど、焔紅蓮隊編を楽しみにしてくださってる方が多く見えたのと、そして私自身もやる気が出たので何とか終わらせようと意欲が増しました!
さて、復活としてどうかまた愛読してくださると嬉しいです!


190話「変身」

 

 

 

 治崎と対峙する前のこと遡り――入中を拘束した事によって生き迷宮が終わり、絶え間ない地震は嘘のように静まり返った。

 だがこの静寂な空間が返って気味悪く、後味が悪くなる感覚が走る。

 

「生き迷宮は終わったは良いが…これじゃ前後が分からねえ。クソッ、滅茶苦茶にしやがって…」

 

 薄暗く鎮まった空間の中で一人の警官が悪態を吐くように愚痴を呟く。思ったより時間を稼がられてしまい、焦る気持ちが昂ぶる。

 

「エリちゃんの方角は元より把握しているが…入中が構造を操作した為か、障害物も多く、通路が遮断されている」

 

 サー・ナイトアイは構成員に触れ未来予知を発動した為、方角や正規ルートは頭の中で把握している。

 しかし入中が構造を変動させた事によりそれもまた困難と成り果てた。正に爪痕を残すとはこの事だ。

 

「おい入中!この迷宮を元に戻せ!」

 

「…ぬ…ゔゔぅぅ〜〜…っ!!ゔおぉ…ゔぅ〜〜っ!!!」

 

 一人の警察官が拘束した入中に戻すよう要求するが、本人は血走った目で身体を痙攣している。涎を垂らしては正気がないように見える。

 憶測だが薬の効果切れによる反動…副作用が働いたのだろう。そもそも入中の個性『擬態』は冷蔵庫程度の狭い容量でしか満足に自由に操作することしか出来なかったハズ。

 それを粗悪品…ではないものの、厳しいブースト薬で浸り続ければ副作用が働き何かしらの症状が起きても可笑しくはない。

 所詮は薬で無理矢理個性を強化しただけで、薬が切れれば彼は手も足も出ない。そして迷宮をどうにかどかす事も出来ないし、そんな意思などないだろう。

 

「もう入中にそんな余力はない…ファットガムの見立てた通りか……

 それだけじゃあない…!此処にはまだ、トガとトゥワイス…鎌倉に龍姫もいる!敵連合がいる以上…確認できた今、無視することは出来ない!」

 

 何処かに潜んでいる。

 次にいつ何処から攻撃が来るか分からない以上、迂闊に行動を起こすのは危険だろう。無視できないのは事実だが、かと言って敵連合と対峙している時間も余裕もない。

 今は治崎を追うのとエリの保護…そしてミリオの救助…少なくとも今回の目的はエリの保護が最優先となっている。

 

「悪を見逃すなど以ての外…なのに。然し今は…!」

 

 選択肢が思考を揺さぶり左右する。

 エリを優先すれば最悪逃げられる可能性だってある。折角尻尾を掴めたのに、それをみすみす逃してしまうのは宜しくない。

 

「…トガ?鎌倉…!」

 

 雪泉の苦痛な声色に反応を示した入中は、敵連合のメンバーの名前を聞いた途端に自我らしきものを取り戻す。

 そういえば…と、死穢八斎獪と敵連合は繋がっていた──であれば入中が把握している可能性も低くはない。

 

「トガ!トゥワイス!龍姫に鎌倉あんのガキどもおぉぉ〜〜…!!!見つけてドタマカチ割ってやらあああぁぁぁ!!許さねえ!許さねえ許さねえぇぇ!あのクソカス共めがぁぁぁ!!裏切りやがってえぇぇ!!!」

 

 鎮静の後の真逆な激怒、昂ぶる興奮した様子に思わずピクリと反応してしまう。

 

「…他のメンバーは?連合はこの後何をする?何処にいる?」

 

「知るかあぁ!!アイツらは裏切りやがったんダァ!!探せ!必ず見つけ出して内臓引っ掻き回してやらああぁぁぁ!!!ぶっ殺すブッ殺すブッコロス!!!」

 

 サーの質問に過激な怒りを曝けながら、怒声を叫ぶ。

 この余裕のない荒ぶる表情…冷静さの文字も当て嵌まらないかけ離れた様子…演技とは思えないこの反応は間違いなく本当の事なのだろう。

 裏切り、殺す…彼の言葉から察して仲間という形で協力関係を築いていたが、何かしらの意図が裏切りへと招き、入中はハメられたのだろう。つまり、連合の良いように利用されたにすぎない。

 

「嘘は吐いてないようだ…他のメンバーもいない…四人だけという事か。ただ薬の効果か…将又元からか、かなり気性が荒いな」

 

 襲ってくる気配がない以上、味方になったとも考え難いし、恐らく逃げの一手を講じたと考えても良いが、油断は禁物。

 

「先生!私達はこのまま進むべきでしょうか?」

 

 緑谷の言葉に、相澤は暫し沈黙をする。

 助けに行きたいのは山々だ…然し、イレイザー・ヘッドは言った。連合にまで目的が及ぶのであればそれまでだと。

 そして最悪な芽が出てしまった…連合が絡んでしまった以上、下手に動くのは生徒の危険を晒すのと同じ。幾らインターン活動とはいえ度が過ぎている。

 USJを始め、蛇女、ショッピングモール、林間合宿、神野区と…特に緑谷出久は余りにも事件に絡んでいる。それも運命の悪戯なのか、それもまた誰かの手によって回ってるのかは知らないが。

 

 

「何馬鹿なこと言ってやがんだ──!!」

 

 

 此処で静寂を突き破る怒声が響き渡る。

 

「進め!連合の方は無視しろ!そっちは警察に任せりゃ良い…俺たちの最優先事項は何だよ!?刻一刻と時が迫ってるんだぞ!?」

 

 ロックロック──トガヒミコに背後を鋭利な刃物で刺されながらも、何とか意識は回復したようだ。

 

「確かにそれが最善か…」

 

「それにな、入中の拘束で誰かしら残らなくちゃいけねぇ…俺はトガとかいう小娘にやられちまったせいでとんだり跳ねたりはキツイ…!どの道負傷者が行ったところで足手纏いになるだけだしなァ…」

 

 鎌倉とトガヒミコの奇襲が最悪、命を落とすことにならなくて不幸中の幸いと呼ぶべきか。傷が深いわけではない、然しどっち道戦闘として最前に立つのは到底出来そうにない。

 

「分かったらさっさと足を動かせ!!此処で立ち止まるっつーことは…治崎を益々逃しちまうッつーことだ!ミリオも相当信頼されてるが無敵じゃねえだろ…?

 

 ここまで来たらあと一息だ!皆んなが稼いだ時間を無駄にするんじゃあねえぜ!サー!イレイザー・ヘッド!デク!そして…雪泉!お前らが行くんだよ!!」

 

「ロックロックさん貴方、私を…」

 

「…別に、貶したくて悪態を吐いてた訳じゃあねぇんだぜ。俺ぁただ不安ばっか胸に募らせてたからさ、人ってのは未知なる物には人一倍敏感で、不安ばかり考えちまう生き物だ…」

 

 ──俺には四つ下の妻がいる。

 去年の暮れには念願の息子が生まれた。

 雄英とはいえガキはガキ、神野区の事件以降で忍の存在が公になり、お前たち忍の存在が俺たちにどのような影響が、そして俺たちヒーローと上手くやっていけれるのか…

 この活動でお前たちが上手く動けれるのかの反面…子供だからこそ何かあったらと考えると不安になっちまう。

 

 心配だったんだよ──何から何までよ。

 

 だが…蓋を開けてみりゃどうだい?

 どいつもこいつもお前ら…俺たち大人より立派にヒーローしやがってよ…!!

 

 

「必ず戻ってこいよ…今度は小さな子供を連れてな!!」

 

「…ッ!はい…!!必ずエリちゃんを救けます!!」

 

 そして──サー・ナイトアイ。

 後はお前だ、ちゃんと…責任を持てよ。

 

 

 

 

 

 

「よっこらしょ…しっかし寝たきりとはいえ、組長思ったより重いな…」

 

 一方──漆月が教授したルートを文字通りに渡り、何とか無事に寝たきりの組長を背負う龍姫は、その重さに愚痴を呟く。

 人間は大人一人背負うだけでも2、3人は必要だと聞く。例え食事を摂らず痩せ細っていたとしても変わらない。

 

「でも、組長がオーバーホールくんにどう吠え面をかかせてやるのでしょうか…

 トガはエリちゃんを横取りするのが最適だと思ったのですがねぇ」

 

 トガヒミコは元から死穢八斎獪が気に食わない。

 いや、彼女だけではないだろう。トゥワイスや龍姫、鎌倉も同じ気持ちだ。だからこそ穴の貉として意気投合も出来た、入中を追い詰めることも出来た。

 だからこそ四人でどうやって嫌がらせをしてやろうかと考えていたが…思わぬ所で漆月の指示が出て、四人は現状困惑。

 正直、この寝たきりの老人に利用価値があるとは思えないのだ思えないのだ──だからこそ、彼女が何をしでやらかすのか判らない。

 

「そろそろ出口だぞ!」

 

 薄暗い岩場を穴掘りのように個性を発動して通路を確保していくのはMr.コンプレス。

 彼は死穢八斎獪で治崎が指定したメンバーでもなければ、片腕は治崎に分解されて犠牲となった為、義手ではない片方の手で必死になって出口へと繋いでいく。

 そんな彼が何故此処にいるのかと問われれば、無論…トゥワイスの二倍の個性が成り立っている。

 

 トゥワイスの個性は二倍に増やす個性。

 デメリットは多々あるものの、同じ人間を倍にして増やすというのは中々に強力でシンプルな響きだ。そしてその二倍を発動するにはイメージが必要で、その場に本物がいなくてもその場で増やすことが可能なのだ。

 因みに本体のコンプレスは闇と同じく死柄木の護衛として側に付いている。

 

 そうこうしている内に、ぽかりと太陽の日差しが射し込む。

 まるで刑務所から脱獄した際に地中から脱出するような王道たる演出のように見えるかもしれないが、少なくとも四人からすれば正にそんな気分だろう。アメリカンや海外の脱獄する映画の主役にでもなってる気分だ。

 何しろ治崎達の監視が解かれ、久しく外の空気を吸うというのは格別だ。何十日間も外の空気を吸えず、太陽の光も浴びれずで本当に刑務所に留置された気分でもあったし、気分転換には快適と言った所だろう。

 

「よっしゃああぁぁ!やっと外に出れたぜぇ!もっとジメジメしていたかったさぁ!」

 

 トゥワイスも見ての通り気分爽快といった様子だ。

 …然し、喜ぶのはまだ早い。それにまだ終わっていない──寧ろ此処から始まったのだ。

 

「此処に新入りが来てるって言ってなかったっけ?」

 

「え?新入り?何の話だ!?」

 

「言ってましたねぇ!漆月ちゃんが信頼して向かわせてるって事は、オーバーホールくんみたいなヤな奴じゃないって事ですよねぇ!」

 

「そのヤな奴を連れて来ちまって悪かったな」

 

 トガヒミコの歓喜とした声とは裏腹に龍姫は機嫌悪そうに愚痴を吐く。何しろ治崎を連れてきたのは自分とトゥワイスだ、責められても可笑しくない立場なのだから。

 ちなみにMr.コンプレスは腕を吹き飛ばされ義手に替えてもらったばかりの頃を基にして作ったので新入りの話は聞かれてない。

 

「お待たせしました──貴方達五名がマスターの仰ってた敵連合の面子でしたか」

 

 ふと、冷静で息を殺すような声が五人の耳を打つ。

 特にトガと鎌倉は声をかけられただけなのに、何故か自然と武器を構えてしまった。そう、それほど全くを以ってして気配さえ感じ取れなかった。

 

「お初目に掛かります。私は黒柴粒子と申します──貴女様方達の情報はマスターから重々聞きました…こんな形でお初の挨拶とは奇妙な形に……私は漆月の補佐、右腕として指令を受けています」

 

 生真面目で何処か紳士さを漂わせるものの、女性として魅力と大人びた感じだ。

 黒く艶がかった伸びた髪に、真紅の瞳、凛々とした美形の顔立ち…にも関わらず、軍人の衣服に重圧感を増すようなブラックコート。然し表情には一切の熱がこもっていない…まるで、氷の機械人形みたいだ。

 

「はっは!また可愛いレディーじゃあないか。男共の連合から心機一転で嬉しいねぇ」

 

「おほぉっ!またもやスゲェ!カッケェ姉ちゃんじゃねえか!!…おっぱい」

 

「おい、本音漏れてんぞ」

 

 トゥワイスの反語だと頭の中で理解していても、つい突っ込みせざるを得ない。然し、珍しく鎌倉が固唾を飲み込み深刻そうに冷や汗を流しながら物静かに見つめてるだけ。トガは一旦折り畳みナイフをしまう。

 

(……気付かなかった、この人にも…そして、憑黄泉ちゃんにも)

 

 黒柴粒子の背後に、左右に揃い並び立つ憑黄泉。恐らく蒼志のパターンと同じ彼女専用の憑黄泉なのだろうか。

 一匹は指揮官軍たる彼女に習ってるのか、迷彩服とマシンガンの銃を抱え、ヘルメットも被っている。

 もう一匹は…何だろう、今までに見たことのないケースだ。右腕は重火器キャノン砲、左腕はメタルクローになっており、尻尾はチェーンソーとなっている。頭部はメタルコーティングでもされてるのか、鎧のように金属製でカバーされている。

 正に軍に特化した殺戮兵士のようだ。

 

 

「…ねえ、その腕章ってもしかして…『Dースクアッド』?」

 

 神妙そうに尋ねる鎌倉に、彼女は無表情のまま目を瞑りコクリと首を縦にして頷く。

 

「D…スクアーロ?」

 

「Dースクアッド──元はアメリカ陸軍米により…スペインやイスラエルとかの支援で訓練されたって噂もあるけど…実際にあの組織は表では自警団としての民兵として集まったと言われてる…けど、僕ら悪忍は授業でこう言った裏の話を聞かされることがあるから解るんだ。

 

 裏では戦争や破壊活動、強制拉致や拷問を平気で躊躇わず行う国際テロ…超危険組織として指定されていた…ハズ。

 今は超常現象もあって日本は勿論、海外ではグレーゾーンに位置する…んっと、つまり簡単に言えば敵より一線を画すヤベー奴ってこと!!」

 

「滅茶苦茶じゃねーかよ!流石だぜ漆月!」

 

 ヤクザもヤクザだし、全国指名手配犯の自分達が言うのも畏れ多いが、国際テロを手駒にするのは正直言って中々見かけないし、そういうのは縁やゆかりでもなければ仲間に引き入れるなど滅多に起きたりはしない。

 

「あれ、でも…その組織って前に潰れたとか言ってなかったっけ…」

 

「博識ですね鎌倉様、ええ…仰る通り、『裏切り者』さえいなければ──」

 

 最後のトーンが低くて何を言ってるのか分からなかったが、四人は特に気にする素振りを見せなかった。

 

「それよりも時間が惜しいです…早く組長を我々に…」

 

「…?何する気なんだ?」

 

「ちょっとした見せ物をお作りするために…それに、マスターからの新たな指示が」

 

「漆月から?人使い荒いなぁ…あーでもアイツから頼みごとなんて滅多にないし何も言えないけど…」

 

「この後に私と共に至急、京都に来て欲しいと。半蔵学院に焔紅蓮隊…そして忍商会が着々と動いてる今、少しでも貴方達が赴けば肩の荷が下りるかと…」

 

 京都?半蔵学院はそこにいるのか…そして焔紅蓮隊に忍商会まで…そして敵連合の中核と化した漆月。なるほど、これは想像以上にできあがってるみたいだ。

 

「んじゃあ俺たちは俺たちでまだやりてぇことあるし…」

 

「?」

 

 トゥワイスの意味深い発言に眉をひそめる黒柴に、他の3人も頷く。

 

「組長で何をするかは知らねーが、後は頼んだぜ」

 

「トガたちはもうちょっと、オーバーホール君に嫌がらせをしたいので!」

 

「落合は此処で!」

 

「え?これ俺も行く流れ?ここは女軍人ちゃんと一緒の流れでよくない!?俺は逃げる事と欺くことが取り柄なのに!?」

 

 次に龍姫にトガ、鎌倉と次々に動き出す。

 そんな彼等彼女らを見届けながら…

 

「…組長、お前は贄だ。絶望の種だ──安心しろ、お前には一切の感情さえも与えん」

 

 胸ぐらを掴み、顔を近づけながら言葉を吐き捨て、憑黄泉に向き直る。

 

「Dー76、クラッシュ、行くぞ。時間だ」

 

 聞きなれない名前は恐らく憑黄泉の名前だろう。彼女の言葉に答えるように頷き、そのまま周囲を厳重に見渡しながら護衛の役目として同行する。

 

 

 

 

 

 

 場所は打って変わり、治崎によって分解と修復によって新たに作られた閉ざしていた壁岩は見事に粉砕し、氷の破片が岩の破片と混ざって散っていく。

 それと同時に、別方向で新たな破壊音が。

 壁を突き破り、レーザーブレードで突き通していく麗王と、拳で殴り飛ばす切島、そして吹き飛ばされる竜鱗の姿。

 

「なっ…ん、だと…?!!」

 

 あと少しで追い詰めれたのに、更に追い討ちをかけるように増援がやってきた。

 更に大いに信頼を寄せていた竜鱗が、無残な姿で吹き飛ばされていく。

 一度に起きた情報量がバカみたいに多くなり、情報処理が追いつかず、混乱を招いてしまう。

 

 

「「治崎イィィィーーーーッッッ!!!!」」

 

 

 デクと雪泉の、溜まりに溜まった怒りの感情はこの瞬間、声に乗せて爆破する。

 緑谷の近接戦を得意とする拳、雪泉の凍てつく扇子、拳と扇子が治崎に正義の鉄槌を成す。

 

 

「ぐがっっ?!!?!」

 

 

 雷鳴に打たれた様な激しい激痛が走り、死の錯覚を味わうかのような現象に、激しく表情を酷く歪ませる。

 まるでこれまでにない痛みの感情を浴びせられたように、そして大きく吹き飛ぶ治崎。

 

「ナイトアイ!確保を!!」

 

 デクと雪泉に続き、イレイザー・ヘッドにナイトアイも追ってくる。

 

「ルミリオン…お前!」

 

「み、んな…!」

 

 側近の三人、部屋に一人、そしてボロボロの治崎。

 そして後に続く麗王に烈怒頼雄斗…そして瀕死状態のルミリオン。更には無傷なエリ。まさかこんな状況を殆ど一人で作り上げるとは…

 

「えりちゃん…無事です…!後は、治崎だけ…!!」

 

「よく…ここまで持ち堪えた…!!」

 

 ヒーロー活動…インターン生徒なんてレベルではない。命を懸けてよくぞここまで持ち堪え、一人で大きな苦難と対峙した…そしてミリオは打ち勝ったのだ。己の苦行な壁を、治崎という最悪な輩を。

 

「こ…のっ!!」

 

 吹き飛ばされながらも反撃をしようと地面をバンバンと叩きつけるように触れるも個性が発動しない。恐らくは個性が発動しないのだろうか、まるで個性破壊弾を食らったような吐き気を催す感覚に、蕁麻疹と共に激しいマグマのような苛立ちが腹の底から煮えたぎる。

 

「便所に吐き溜めされたクソ痰カスどもがああぁぁぁっ!!!しつこすぎるぞ病人どもぉぉ!!!」

 

 抑えきれない怒りを孕ませながら声を発する。

 

「いい加減にぃ…」

 

「このまま畳み掛けろ!!ルミリオンが作ったチャンスを無駄にするな!!」

 

 イレイザーの葛藤が鼓舞するように、一斉になって畳みかけようとする。デク、雪泉、サー、麗王、切島、イレイザー、六人が一斉になって勢いよく走り出す。

 元凶たる野心、治崎に牙をむく。

 

 

「起きやがれクロノおぉぉぉーーーーーっっっっ!!!!」

 

 

 刹那──イレイザー・ヘッドが何かを察知したのか、雪泉を突き飛ばす。

 

「雪泉!離れろ!」

 

「えっ?」

 

 そして、倒れ伏してたクロノの頭部から、見慣れぬ刃物が伸びてくる。擦り傷とはいえ、皮膚を切り裂き、血を流していく。

 

「ふぅ…長針が刺したモノは動きが遅くなる。二人まとめて串刺しにするつもりでしたが、さすがはヒーロー…プロは一味違うッスね」

 

 刺されたイレイザーはスローモーションのように動きが鈍く遅くなり、クロノは何事もなかったかのように平然と立ち上がる。

 

「バカな!クロノは俺が…」

 

「ああ、だから修復した!ルミリオン…お前はヤケにクロノを警戒していたからな、だから、俺が治せることを忘れてたんだろう?」

 

 目覚めに時間は消費したものの、漸く復帰した。

 然したしかにクロノはやられていた…あのままもし復活さえさせなければ本格的にヤバイだろうと長年のヤクザとしての勘が働いたのだ。

 

 修復できる時間があるとすれば、クロノを倒して治崎の方へ吹き飛ばしたあの瞬間が好機に転化するチャンスだったのだ。

 

「そしてこれ以上お前らの好きにはさせん!!お前らのやる事全て、結果も過程も何もかもが無駄となる!!俺の手でなぁ!!」

 

 イレイザーヘッドの個性の効果は長く続かない。

 瞬きして仕舞えば、抹消の個性は強制終了されるのだ。

 そしてイレイザーが瞬きをした瞬間、地面からは針地獄のように無数の針が生えていく。

 一斉に畳みかけようとした者たちの侵攻は、一気に止まる。

 

「こんな奴らに俺の計画を台無しにされてたまるかってんだ…!

 なぁ、音本…竜鱗、嫌だよな?こんな奴らに邪魔されて、俺がこんなところでつまらない終わり方をするなんて…嫌だよなァ!?」

 

 個性によって意図的に気絶した音本と竜鱗を巧みに此方へ引き寄せる。

 

「音本に竜鱗…よくやってくれた!お前らは俺の誇りだ、真なる仲間だ!!お前らの苦しみ…個性によって雁字搦めに苦しめられた同胞だから、俺はお前らに誇りを持てるんだ!

 

 だからこそ、お前らも…お前らは、俺の為に死ねるだろう??」

 

 治崎は音本の顔を掴み、二人同時に分解して修復する。そして瞬く間に修復され一つになった治崎と音本は、更に竜鱗も分解をしては修復し…三人が一つとなる。

 三昧一体とは正にこれのことだ。

 

「ルミリオン…お前はたしかに強かったよ…俺よりな。だが…俺の個性を更に上手く活用すればなんて事はない」

 

「嘘だろ…治崎…」

 

「あ、なた…仲間のみならず自分をも…」

 

 悍ましい…歪な形が作られていく。

 まるで治崎が治崎ではなくなるように。

 仲間の残骸が露わになるように、倒れた仲間を取り込み吸収し、形が異形と為す。

 

「全ては無に帰すのだ、諦めろ。これが現実…夢から覚めた酷くて残酷なお前らの現実を受け入れろ病人供──さァ、覚悟しろ。エリを返してもらおうか」

 

 死闘は此処からまだ続く──悪夢は終わらない。

 




滅茶苦茶お久しぶりなのと…ここで解説。

Dー76が迷彩服とマシンガン
クラッシュが重火装武器を身につけたサイボーグドラゴンです。いずれ出てくるでしょう。



閃光「………」

月光「……せ、閃光…」

閃光「久し振り…な気は確かにあるのだが…正直遅くないか?」

月光「まあまあ!最近は投稿主が落ち着いてきたのと、話を読み返したり、他の作業で手につけれなかったので仕方ないでしょう!」

閃光「大事な忙しさ…だったからな、投稿ペースは少しずつ戻していくそうだ。そろそろ終盤だし話もできそうだと言ってはいたが…」

月光「他にも最近紅蓮隊編を主に考えて投稿欲が上がったそうです。…作者のポテンシャルをも上げる回想とは一体…」

閃光「まあ良い、久しぶりの活動として月光閃光のキャラクター紹介をやって行くぞ!」

月光「さらに更に!プロフィール紹介もアップグレードしましたわ!」



ダークマター

敵連合最大の壁にして番犬、無敵の女

【プロフィール】
敵名 ダークマター
本名 黒柴粒子
所属・敵連合親衛隊
好きなもの・ジャンクフード、レーション全般、コーラ、犬
嫌いなもの・軟弱者、ファッション、流行、「裏切り者」
趣味・武器整理、解放軍に関する書物、捨て犬の餌やり
身長・175㎝
血液型・O型
誕生日・11月25日
出身地・広島県
戦闘スタイル・近接戦、暗殺、先陣突破
性格 沈着冷静、冷酷無慈悲


総合危険度S

個性『???』
パワーS+
スピードS+
テクニックS+
知力B
協調性A+
軍力S+

共謀者 漆月


閃光「Dースクアッドの最高幹部…Dースクアッドは組織として潰れたが、生き残りがまだいるとの事らしい」

月光「然もまだこれ、上層部や他の方々には知れ渡ってないのですよね…よりによってとんでもない大物を手懐けましたね…これは。確かこのプロフィールですと両姫さんよりも上…ですよこれ」

閃光「Dースクアッドは未だに殆どの忍や警察も捕まえられてない…故に、組織としてそれぞれ複雑に絡み合ってるものもいる。例えば敵組織とかな」

月光「ですが五年前に潰れたんですよね…」

閃光「だが…あの女を病院送りにする手練れなんているのか?オールマイトでさえも捕まえれなかった女だぞ?」

月光「陽花さんもDースクアッドの壊滅任務を依頼されたことがあって、ぼちぼちと地道に探してたとはいえ情報の尻尾さえも掴めなかったんですよね。巧妙に手慣れた情報操作からオール・フォー・ワンに似た感触がある報告事例はありましたが…」

閃光「証拠もなかったしな…因みに余談だが忍反乱革命者として伝説に名を残した志々滅を殺したのが黒柴という報告も上がってるな」

月光「日本に帰国したのもその為…だそうですもんね、何でも問題行動が多く処罰するマークを付けられたそうですね」

閃光「その頃から黒柴…ダークマターは忍学生の中でもかなり危険視とされ、忍学校でも悪忍の中で知らない者はいないそうだな」

月光「これから、彼ら彼女らの動きが気になりますね…」

閃光「もし通形ミリオが無敵の男と言うのなら、あの女は無敵の女とも言える。…だが、あの無敵で無敗を残した女をどう病棟に入れたのかは不明だそうだがな…」


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