光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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今回は死柄木が動く番です。


18話「動け」

「お前ら、絶対に動くなよ?」

 

その男、骸骨マスクの敵は、アホ状態となってる上鳴の襟首をつかんで、手からビリビリとした電気を纏って人質に取っている。

 

「か、上鳴!」

 

「や、やられましたわ…まさか、伏兵が居たなんて…!」

 

両腕を挙げてる耳郎と八百万は為す術もなく、ただただ人質に取られてる上鳴を心配そうに見つめる一方、電気個性と思われる敵(ヴィラン)を睨むことしか出来なかった。

その男は嬉しながら少しずつ近づいてきてる。

 

「まあ、俺と同じ電気個性は殺したくはねえが…死柄木さんの為だ、しょうがないよな?」

 

「耳郎さん…この敵は恐らく…轟さんの言ってた…電波を妨害してる個性をもつ男…!」

 

八百万はいち早く気付いたようだ。その敵は現在も、勝ち誇った顔で二人を見つめている。「それにしても」と小声で呟き、USJ内の噴水広場に目をやる。

 

「まさか、ヒーローの巣窟である雄英高校に侵入し、生徒を思う存分に殺すことが出来るなんてな!しかも死柄木さんの計画も全部完璧だ……これなら殺れるぜ…!」

 

ハハハと高笑いする、確かに上鳴達は八百万の耐電シートで耳郎と一緒に身を守り、上鳴の無差別放電で敵を全滅させたかと思ったが…どうやら伏兵が居たようだ。耳郎はその男の隙が見えたとたん、耳のイヤホンをスピーカーに繋げようとする。

 

(今だ!)

 

だが

 

「おおっと!何してる?」

 

敵はビリビリと上鳴の首に近づけている…まだ警戒は解けてなかったようだ。

 

「分かってるよな?個性を使うのは禁止だ、使ったら即コイツを殺す…まあこう言った展開は子供でも分かるよな?」

 

「クッ……上鳴もそうだけどさ…アンタ、なんでそんないい個性あるのに、敵(ヴィラン)になったの!?」

 

「耳郎さん!?」

 

八百万は一瞬、耳郎の言ってることが分からなかったが、直ぐに分かった。話をしてる状態なら、敵も必ず何処か隙が出てくるだろうと…そうすればなんとかこの状況を打開することが出来ると。

しかし、その敵はまたまた高笑いする。

 

「は?何言ってやがる、別に理由はどうだって良いだろ?それに…話をして俺に隙を作らせるつもりか…」

 

「……!」

 

バレた。この敵もまた、そこらにいる敵とは格が違う。

 

 

 

「ははは!!子供の考えることなんざお見通しなんだよ!それにさ、敵(ヴィラン)ってのは、法律破ってでも、自分のやりたい事をしたから敵(ヴィラン)になったんだろ?それ以外になんか理由いるか?」

 

 

敵は殺気立つ目で二人を睨みつける。

 

「ヒーローのガキが!人質を軽視するなよ!お前らが余計なことさえしなけりゃあこのガキは見逃してやるぜ?他人の命か、自分の命か…どっちが大切か…」

 

その敵は、ヒーローに言い返すと

 

「さあ…動くなよ?」

 

敵と耳郎、八百万に少しずつ、少しずつ近づいてきてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央広場

 

 

 

「やった…やったよ!!オールマイト、あの化け物を倒しちゃった…!」

 

 

飛鳥は活気で元気溢れる声でそう言うと、切島も頷く。

 

 

「ああ…スゲェや…!!これが、No. 1なんだな……テレビとかで観てたから、オールマイトの強さは分かってたけど、此処まで来ると…レベルが違う…!!」

 

 

切島はオールマイトの強さに感激してると、爆豪は黙り込んでいる。オールマイトをジッと見つめて…

 

 

「オール…マイト…」

 

微かな声でそう言った。爆豪は昔、オールマイトさえも超えると宣言した。でも、今は違う。

知らされた。トップの実力を…そして、自分が本気で一位(トップ)になるなら、オールマイトという最大の壁を超えなければならないと……

 

 

 

「アレが……平和の象徴………」

 

轟は冷や汗を流しながら、その身でオールマイトの実力を、肌で感じた。

 

 

 

「す、凄い……でも、もう…」

 

(活動限界が……!!)

 

緑谷は、オールマイトが最恐とも呼べる脳無を倒した事に半分感心するが…もう半分は、オールマイトの活動時間の事で心配だ。オールマイトは脳無との戦いで一気に体力やパワーを消費した…だからこそ心配でならないのだ。もしオールマイトの『本当の姿』をここで皆んなに見られたら……と。

 

 

 

 

 

 

ガリガリガリ…

 

「……!!」

 

ガリガリガリガリ…

 

ある一人の危険人物。死柄木弔は、そんな喜ばしい顔で歓喜の声を上げる生徒達、そして、笑顔でこちらを見つめてるオールマイトに、悔し混じりの顔で、忌々しい目で睨みつける。先ほどの余裕はもう死柄木には無い…むしろ怒っているのだ…本気で。

 

 

 

「脳無がやられた…?衰えた?嘘だろ…?完全に気圧されたよ…よくも俺の脳無を…チートがぁぁ!!」

 

ガリガリと首をかく不愉快な音を立てる。

 

「あの脳無は…!オールマイトを殺せるハズだった……!!個性も完璧、正に無敵だったのに!!なんで、なんで俺の思い通りに事が運ばないんだよ!!!」

 

苛立つ死柄木は、興奮しながら早口で喋っている。

 

「オールマイトが、よもや此処まで…!平和の象徴の名は伊達ではないと……しかし、まさか()()が造って下さった脳無がやられてしまうとは……」

 

黒霧も強力な戦力である脳無を失ったことに悔やんでるようだ。

 

 

ありえない…脳無は最強無敵。個性も素晴らしく、パワーもスピードもオールマイト並みの力を持っていた。勿論それで忍学生を全員殺すつもりだった。死柄木の思ってた事はどれも完璧だった、負ける要素など何処にもなかった。なのに完璧な『上位級』脳無を、オールマイトが倒してしまったのだ。

 

 

 

「何だよ…全然弱ってないじゃないか……!!()()()…俺に嘘教えたのか!?」

 

 

 

「………」

 

 

 

脳無が倒されたことで荒ぶる死柄木、悔やむ黒霧に対し、会話こそは聞こえてないが、オールマイトはジッと見つめている。

 

「おい、どうした?飛鳥くん達を…忍学生と私を殺すのではなかったのか?クリアとかなんとか言ってたが……」

 

 

オールマイトのセリフに、死柄木と黒霧は黙り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出来るものならしてみろよ…!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾワッ!!!

 

 

 

 

 

「う、うわあぁっ……!!」

 

 

「うっ……!!」

 

 

死柄木は思わず体を震わせて弱々しい声を上げ、黒霧はオールマイトの威勢にたじろぐ。

 

皆んなは少しずつ希望の顔色に変わる。

 

「すげえよオールマイト…!あんなチート野郎を倒すなんざ…!」

 

「だが俺たちが下手に動けば逆に人質になる可能性がある…あのワープゲート…黒霧とやらが何をしやらかすか分からないからな」

 

歓喜の声をあげる切島に、轟は避難するように皆んなに声をかける。

確かにワープゲートは一変、戦闘不向きゆえに地味なように思われるが、だが使い道を、可能性を探ればかなり強力な個性でもある。

 

 

「………」

 

突然、飛鳥は決意ある目で、前に…オールマイトの方に歩いていく。

 

「あ、飛鳥!?何してんだ?!」

 

切島がそう叫ぶと、飛鳥は振り向かずに話し出す。

 

 

「ゴメン、切島くん……私、まだ傷はないから…それに、『戦える』から……!!」

 

「戦えるって…バッ…!!おい飛鳥!!」

 

切島は止めるよう叫ぶが、それでも振り向かない。

 

「おい、飛鳥…マジでどうなるか分からねんだぞ?」

 

轟はため息をついてそう言うと…

 

「うん、知ってるよ…だからだよ」

 

「?」

 

轟は飛鳥の答えに首を傾げる。

 

「柳生ちゃんがあの脳無って人の攻撃をくらってあんな重傷なんだ…オールマイト先生も、あれ程の攻撃をくらってるから、相当ダメージがあるんだと思うんだ…だから……」

 

すると飛鳥は轟に振り向き、ニコッとした満面な笑みを向ける。

 

 

 

 

 

「私が、動かなきゃ!!」

 

 

 

 

 

 

「…!」

 

 

轟は暫く飛鳥の笑顔を見て、硬直した。その笑顔に、強さを感じたのだ。

 

飛鳥はオールマイトの方へ振り向くと、走り出していく。

 

 

「い、いいのか?」

 

切島が尋ねると、轟は、ため息をついた。

 

「……今のアイツに何言っても無駄だ……それに、アイツは忍びだ。そう簡単に殺られるとは思ってねえ……」

 

 

轟は、飛鳥を信じるような目でそう言った。

 

 

 

「オールマイト先生!」

 

飛鳥はオールマイトの方へ駆けつけ名前を呼ぶと、オールマイトは飛鳥に振り向く。

 

「飛鳥くんっ……!駄目だ、逃げなさ」

 

「大丈夫です!!」

 

 

オールマイトは飛鳥を制するが、飛鳥は刀を取り出し戦闘態勢に入る。

 

「柳生ちゃんや、雲雀ちゃんも…辛くて…苦しくて…怖い思いしてでも戦ったんだもん……なのに私だけ………皆んなに顔向けできないから……!」

 

 

 

(飛鳥くん……君は………)

 

 

 

オールマイトにそう言うと、飛鳥は死柄木たちに視線を移す。

 

 

 

「あのガキ…何しに来やがった?まさか…」

 

「ねえ…」

 

「っ…!?」

 

死柄木は飛鳥を見て呟くと、不意に飛鳥から声をかけられた。死柄木は少し驚いたように体を震わせる。そんな死柄木を御構い無しに、飛鳥は話しかける。

 

 

「貴方達は、柳生ちゃんと雲雀ちゃんを傷つけて、殺そうとした。傷ついてる人に笑顔で笑って殺そうとして………仲間に頼ってばっかで、自分は何もせずに安全なところから見下ろして!!!あなたのやろうとしてることも、やったことも…絶対に許せない……!!だから……」

 

 

 

 

 

ジャキッ!!

 

 

 

 

刀を向ける

 

 

 

 

死柄木(貴方)は私が倒す!!!」

 

 

 

 

 

ゾッ!!

 

 

 

 

「う……うう、うおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーー!!!」

 

 

 

 

飛鳥の決意ある眼差しに、敵意に、正義に、死柄木は声を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飛鳥のヤツ、マジになってる!」

 

切島はそう言うと、轟はふと緑谷を見る。緑谷は冷や汗を流しながら、ブツブツと呟きながら、オールマイト、飛鳥を見つめている。

 

「緑谷…?」

 

轟は首を傾げながらも、緑谷を呼ぶが反応しない。何か考え事をしてるようだ。

 

 

 

「客観的に考えて、危険度で考えればモヤの方だ……飛鳥さんも…さっき死柄木って敵に攻撃しようとした時、あのモヤの敵は飛鳥さんを飛ばそうとした……」

 

 

緑谷は最悪の予想を思い浮かんだ。

 

もし飛鳥が黒霧のワープゲートに翻弄されたら?死柄木の性格から考えて、飛鳥に触れただけで重傷を負わせれる……その気になれば殺せると言うわけだ。かと言ってオールマイトが駆けつけても、黒霧は上手く個性を使ってカウンターするだろう……そうなれば、二人の命が危ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、死柄木は

 

「〜〜〜〜!!!」

 

ガリガリガリガリと指で首を掻きまくっている。相当ヤケを起こしてるようだ。

 

「黒霧……脳無を!!脳無を連れてこい!もう一度戦わせるぞ!無理矢理にでもだ!!!」

 

死柄木は落ち着いてないせいか、飛鳥の言葉に苛立ち、興奮しながらも脳無を出せと言っている。脳無はショック吸収と超再生の個性を持ってるのに、オールマイトに倒されたのだ。そんな脳無が戦えることはまずほぼ不可能だ。

 

 

「そ、それは……死柄木弔、申し訳ないのですが…脳無は何処かへと吹き飛ばされてしまったため、場所が分かりません!」

 

 

黒霧は目を細めて謝るように言うと、死柄木はまたまた苛立つ。

 

 

「クッソがぁぁ!!何でこんな時に…とんだ誤算だぜ!!こんなハズじゃ無かったのに……!脳無さえいれば、ヤツなら!!何も感じずに立ち向かえるのに!!あの飛鳥(ガキ)を、殺すことなんて……容易いのに!!あの脳無さえいれば!!」

 

 

「落ち着いて下さい!死柄木弔!」

 

黒霧は冷静に死柄木を落ち着かせるようにする。

 

 

「よく見れば先ほど脳無との戦いでオールマイトにはダメージが残っている。何よりアレほどのパワーとスピードを持ってるのにも関わらず、こちらに攻めて来ないのがその仮説を裏付けている…」

 

 

「!」

 

 

死柄木は黒霧を見つめて、真剣に話を聞いている。

 

 

「確かにあの飛鳥とかいう少女は忍学生…今相手となるのはアレとオールマイトですが、ご安心を…あの少女は私がなんとかしておきます。それに他の子供達も棒立ちの様子……子供達の相手は残ってる部下達で充分でしょう。数分もしない内に増援が来ると思いますが、私と死柄木で上手く連携をすれば、まだ殺せる算段は充分にあるかと……」

 

「………」

 

死柄木は指の動きを止めて、首を掻くのを止め、暫くすると、うんうんと頷く。

 

「そうだ……そうだな……うん、そうだ…そうだよ……そうだよな?」

 

途端。態度が変わり、ギラリとした鋭い目付きで、飛鳥とオールマイトを睨みつける。

 

「折角さ、此処までやって来たんだもん……目の前にラスボスと中ボスが居るんだ。やるっきゃないぜ…俺たち、敵連合!! それに脳無があそこまでやってくれたんだ……その成果を俺たちで成功にいかそう…!!」

 

 

死柄木はニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべ、走り出した。

 

「って…」

 

(来るんかい!!)

 

オールマイトは心の中で叫ぶと、死柄木は血走った目で襲い掛かる。

 

 

 

「何より脳無の仇だあぁーーーーー!!!」

 

 

死柄木が殺気立つ声で叫ぶにつれて、黒霧も後を続ける。相澤に倒された敵達は、気絶から回復して生徒達を殺そうとする。

 

 

「来る…!」

 

飛鳥は素早く死柄木に斬りに掛かる。

 

 

黒霧は離れた所で飛鳥目掛けて、黒い霧を襲わせるが…

 

「それはもう効かないよ!!」

 

飛鳥は斬撃を飛ばして、襲い掛かってくる黒い霧を払う。しかし黒霧はそこが狙いだったのだ…

 

 

 

 

 

 

 

「今です死柄木弔!!」

 

 

「なあっ!?しまっ…」

 

黒霧の狙いは、飛鳥の足止めであった。ほんの少しの隙が命取り。飛鳥が黒霧の黒い霧を払ってる間こそが隙と呼べる。

 

 

 

「遅えんだよ!!お前は後で殺す…ぶっ殺す!!!まずは、お前からだあぁ!平和の象徴オールマイト!!」

 

 

 

(マジで時間ないんだ…!!くそ!早く、皆んな、来てくれ!!!!)

 

 

 

活動時間がそろそろオーバーしそうになり、最早一歩も動くことすら出来ない。一歩動いてしまうだけで、変身が解除されてしまうからだ。そんなオールマイトは焦り、心の中で思いっきり叫んだ。救けが来るのを……

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕が動かなきゃ…!ダメだろ!」

 

 

 

「は?」

 

「えっ!?」

 

その男は足がフラフラしながらも、苦痛の顔で黒霧に殴りかかろうとする少年が一人。それは

 

 

「緑谷少年!!」

 

「緑谷くん!?」

 

(アイツいつの間に…?)

 

死柄木は緑谷のスピードに動揺する。確かに緑谷はそこには居なかった…どうやら超スピードで黒霧たちの方に突っ込んだ様子だ。

 

(足が…バッキバキに折れた…さっきは調整できたのに…でも、あった…!体の実体部分!)

 

足が折れた緑谷は、爆豪が見つけた黒霧の弱点を見つけて、そこに目掛けて…拳を握りしめて、殴りかかる。

 

「オールマイトから!!離れろ!」

 

だが、その拳は当たることはなかった。

 

 

 

 

ズズズ…!

 

 

突如緑谷の目の前にワープゲートが出てきた。

 

「!?」

 

 

突然の出来事に、緑谷は絶望の顔色へと変えた。

 

 

「二度目は、ありませんよ!」

 

 

黒霧は緑谷を睨みつける。

 

 

そしてそのワープゲートからは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははは!壊してやるよお前の全て!!」

 

 

 

 

 

 

死柄木の死の手が、緑谷の顔に目掛けている。

 

(やばいヤバイ!この手は…相澤先生の肘を…!!)

 

 

 

もう駄目だ、今度こそ…救からない。

 

 

「緑谷くん!!」

 

飛鳥は叫び出し、死柄木の方へと走って斬りつけようとする。

 

 

 

 

ズオン!!

 

 

「!?」

 

 

しかしそこからもワープゲートが出てきては、死柄木の死の手がやって来る。

 

 

 

 

「お前もだ!!予定変更……今すぐお前も殺してやるぜ飛鳥!!」

 

 

飛鳥も腕を引っ込めようとするが、もう既に手遅れだ。飛鳥のスピードよりも、死柄木の方が上であり、そして顔面目掛けて……触れようと……死を錯覚させた。目の前の死を認識した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドキュン!

 

 

 

 

 

銃声が鳴った途端。

 

「痛…!?」

 

死柄木の死の手は、二人に触れることはなかった、むしろ死柄木の手は血に塗れていた。

 

「き、来たか!」

 

「飯田くん……!!」

 

オールマイトと飛鳥は入り口の方に目をやると、そこには

 

「ゴメンよ皆んな」

 

校長の声がUSJ内に響き渡る。

 

 

ズドンズドンズドンズドン!

 

 

帽子を被った男は、銃を持って適当に山岳ゾーンに撃つ。

 

 

「んなっ!?」

 

上鳴を人質にしてた敵は、銃を撃たれて血を流し、気絶して倒れた。

 

「こ、コレは…さっきの銃声は…まさか…!」

 

八百万と耳郎は入り口に向くと。

 

「遅くなったね」

 

その声は、生徒達を安心させる声だった。

そして

 

「皆んなぁ!!1ーA委員長!ただいま戻りました!」

 

メガネをかけた、あの委員長は生徒達に大声で叫ぶ。先生達は大胆襲撃を仕掛けた敵達に、怒りの目線を向ける。

 

「わああ!!救けが来たよ!柳生ちゃん!!ホラ見て、こんなに!」

 

「ああ……本当だな………オレたちは忍びなのに……色んなヤツに救けられるとはな………」

 

雲雀は増援が来てくれたことに喜んでいる。柳生は悔しい声で呟くが、その声には安心したような声も混ざっていた。

 

 

「辛かったよな皆んな、本当にゴメンよ」

 

先ほど、銃で緑谷と、数百メートル先にある山岳ゾーンの八百万と耳郎を救った男の名はスナイプ。

他にもプレゼント・マイクに、メガネと極薄タイツを着てるミッドナイト。他にも不気味で無愛想な、表情が読み取れないエクトプラズムに、機械のコスチュームを着ているパワーローダーなど。そして『ある人物』も…

数々のプロヒーロー達は、敵の手下共を一気に一掃仕掛ける。

 

「生徒達の安全と保護を!」

 

校長の根津が声をかけると、皆んなは「はい!」と、まるで生徒が号令を受けた時と同じ声を出して救出に赴く。

 

 

 

 

 

 

「あーあ、来ちゃったよ…ゲームオーバーだ…」

 

死柄木は怪我をした手を抑えながらも、忌々しい目線でプロヒーロー達を睨みつけると、黒霧に振り向く。

 

「黒霧、帰って出直すか」

 

 

するとその途端。

 

 

「そうはさせんぞ!!」

 

「!?」

 

 

シュルルルルーーーーーーーーー!!!

 

瞬間、何十本、何百本のワイヤーが死柄木の体に巻きつける。

 

「はあ!?なんだこれ…」

 

死柄木はワケが分からない様子でワイヤーを見つめてると…飛鳥はそのワイヤーを巻いた『ある人物』を見て、驚きの顔と満面な笑みを向ける。その人とは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じっちゃん?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怒りで顔を黒く染め、死柄木を見つめる半蔵であった。あの距離で、半蔵は一瞬で飛鳥たちのところに駆けつけたのだ。流石は伝説の忍びを名乗るだけはある。

 

飛鳥の言葉を聞いた死柄木は、この老人と飛鳥に血が繋がってるのを知り驚愕する。勿論、その老人が半蔵であり、伝説の忍びだということは知らない。

 

 

「は?コイツあのガキの…?今度はジジイか……!!」

 

 

死柄木は抵抗するものの、どんどん体に食い込んでいく。

 

 

「無駄じゃ、諦めなさい…それに、ワシの大切な孫や生徒たちに手を出したんじゃ……それなりに覚悟して貰うぞ?お主や」

 

 

 

それを聞いた途端。今度は……

 

 

ズドンズドンズドン!

 

「いっつっ……!?あっ…くっ!」

 

スナイプの銃弾が、死柄木の両腕両足を狙い撃ち、その場に倒れこむ。

 

「っ!死柄木弔!」

 

黒霧はスナイプの銃弾から、死柄木を守るように、黒い霧を大きくして包み込む。

 

「この場で捕獲可能なヤツは…」

 

 

ズドンズドンズドンズドン!

 

 

「僕だ…!」

 

「!」

 

スナイプが銃を撃ち続けていると、不意に聞こえた声はとても弱々しい声だったが、声の主を見ると、意外な人物であった。

 

 

「いってぇ〜…!」

 

 

「死柄木、大丈夫ですか!?」

 

 

ワイヤーで巻きつけられ拘束された挙句に、ケガを負った死柄木の安否を確認するべく黒霧は心配そうに聞くと、突如死柄木と黒霧は『何か』に吸い込まれる。

 

 

「な!?んだコレ!」

 

「この個性は…まさか!」

 

黒霧はその吸い込む主を見ると、その人物は。

 

「僕が彼らを捕まえる!」

 

「バカな…13号!!!」

 

瀬呂と障子に支えられてる13号は、五本の指のブラックホールで吸い込んでいる。だがそれよりも、黒霧のワープゲートが早く閉じろうとする。そして死柄木はワープゲートからオールマイトを覗き込むように睨みつける。

 

「今回は、生意気なガキ共のせいで失敗して負けたけど……」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度は殺すぞ、平和の象徴オールマイト!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズズズ……

 

 

殺気立ち、血走った目でオールマイトに残すようにそう言うと…闇のように見える黒霧のワープゲートと共に消えた。

 

 

 

…その後プロヒーロー達の手によって、生徒達は無事に保護され、残ってる敵は全員捕まえることが出来た、ある『2名』を除いて。

 

 

 

「じっちゃん……」

 

 

飛鳥は申し訳なさそうな顔で、半蔵の名を呼ぶ。自分は立派な善忍になるのに、伝説の忍びに救けられて、死柄木たちを捕まえることが出来なかったことに、飛鳥は悔やんでる。

 

「飛鳥よ……」

 

「ゴメンね…救けられちゃって……私は…」

 

「よくやったぞ……」

 

「えっ?」

 

半蔵の答えに、飛鳥は顔を見つめて目を丸くする。その瞳には、暖かさと優しさが含まれてて、見てるだけで安心する。

 

「飛鳥が命懸けで友を救おうと頑張る姿に、ワシは感激じゃ……それに、飛鳥が無事で良かった……飛鳥よ、よくやったぞ…!!」

 

「じ……じっちゃん……!!」

 

飛鳥は半蔵の言葉が嬉しくて、涙が出るのを堪えた。

 

 

 

一方、緑谷は…

 

「ハァ……はぁ………また、何も出来なかった…!」

 

緑谷は悔し混じりの声でそう呟くと、近くにいたオールマイトは、マッスルフォームから、半分くらいトゥルーフォームになっており、体から水蒸気を出しながらも、笑顔で緑谷に話し掛ける。

 

「そんなことは…ないさ」

 

「!」

 

「君が動いていなければ…恐らく私と飛鳥くんは殺られていた……あの数秒がなければ…私はまた、ニセ筋になるところだったよ……」

 

それを聞いた緑谷は、目に涙を浮かべる。

 

「まあ何がともあれ…また君に、救けられちゃったな…」

 

 

「オールマイト…無事で…何よりです!」

 

 

 

緑谷は、声を震わせながらそう言った……

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、この襲撃が後に起こる大事件の始まりにすぎなかった。




思ったこと、脳無って閃乱で言えば妖魔じゃない?wwww

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