光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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白銀揺らめく髪下ろす、白く清らかな少女は、月夜の明かりに照らされて――茣蓙の上に座るは、守護の証明。


168話「神白教官②」

「私が、月閃の教官に?」

 

 カグラ会議の準備中――書類を纏めてた最中にそう頼まれた神白は、不思議そうに目を丸くする。

 

「はい、これは()()()()()()()()()()としてお願い申し上げます神白さん」

 

「何故、私に打診したのか、教えてくれませんか雪不帰」

 

 意外な事に、神白に願いを申したのは雪不帰だった。

 沈着冷静――雪の如く美白の肌、白とは対照の漆黒の忍装束を見に纏い、何処までも深い黒の瞳、その中には微かな希望と願望の純粋な白が混ざっていた。

 

「私がカグラ会議の準備、その他妖魔絡みの任務が山積み盛り沢山、多忙な身である私に願いをする意味が解りません。私が暇ではない事を貴女がよく知っているでしょう」

 

「ええ…そうですね。承知の上での宣言です」

 

「では尚更、何故私を当選したのです?私以外にも他に教官として相応しい人間は多くいる…月閃といえば貴女の母校だ。寧ろ貴女が率先して動けば良い、違いますか?」

 

「………」

 

 流石だ、神白はやはり手強い。

 戦闘以前に、口論で彼女に敵うものは滅多に存在しない。都合が悪いという安易的な理由は解るのだが…だからと言って引き下がる訳にはいかない。

 

「雪泉をご存知でしょうか…?」

 

 彼女の口から、少女の名前が挙げられる。

 

「勿論、黒影の孫にして期待の新人…学炎祭で半蔵の忍学生と闘ったと…今年の月閃は随分と活気が宜しいようで」

 

「はい、だからこそ…どうか妹の雪泉を鍛え上げて欲しい。そして、その仲間たちも」

 

 雪不帰の口から、誰もが聞けば耳を疑うであろう言葉が吐き出された。

 雪不帰の妹が雪泉…いや、正確には義理の方だろう。雪不帰と雪泉は血は繋がっていない。しかし黒影の弟子として拾われ、共に修行に励んだあの頃は、まるで姉妹のように仲が良かった。

 最初は忍に対する嫌悪が有り、打ち解けも出来なければ、中々心を許すことも出来なかったのだが…

 

「妹……ああ、成る程。読めました」

 

 雪不帰の表情と、口数の少ない台詞から察した神白は、静かに首を縦に頷く。納得してくれたようで何より…

 

「だったら貴女が会いに行けば良い。その様子だと、どうせ再会すら交わしてないのでしょう?」

 

「其れは出来ません」

 

 神白の問いかけに、雪不帰は首を横に振る。

 もし、再会するのに「気不味い」なんて言葉が出れば話は終わりにするのだが…

 

「カグラ四天王のリュウを探しに参ります」

 

「リュウさん…ですか?」

 

 これは流石に予想外だったのか、神白は驚嘆の声を口に漏らし、目を丸くする。意外だ…まさかこの時に限って、いや…丁度良いのかもしれない。

 近々カグラ会議が開かれる中、可能であればリュウには出席して欲しい。もう此処の所、7年以上も行方を眩ませている。

 

「解りました。リュウさんの件に関して、貴女が出るのなら好都合…まさか自ら率先して貴女が動くとは、これまた予想外に…

 

 然しながら――私を選ぶ理由は何ですか?」

 

 月閃に知り合いがいて、その子達の為に鍛えて欲しいのは理解した。

 雪不帰が月閃の教え子にならない理由も納得した。

 そもそも月閃は古き時代から今も生き続ける古参の忍学校――エリートでありお嬢様学校として知れ渡ってるあの学校は、確かに自分と釣り合うだろう。

 

 しかし…だからと言って態々自分を選ぶ理由は、まだ明かされていない。どうして自分を教官として指導して欲しいのかを、明確にしなければ出来ることもできやしない。

 

「貴女だからこそ、ですよ。()()()()()()()()()()貴女は、実力は尤も高く、私の知る中で一番に相応しいと思ったまでです」

 

「成る程、他のカグラより私が実力的に上だと見解したからですか。信頼、単純、軽はずみな動機、なんて聞き飽きたシチュエーションや言葉を使うよりかはまずまず……」

 

 神白は瞼を閉じて考える仕草を取る。

 彼女を説得するのはかなり難しい…並の軽い気持ちや理由で彼女に物事を頼める程、簡単ではない。

 今回のは理由としては少し単純ではあるが、自分の中で一番に適任だと判断したのが彼女だったからこそ頼んだ訳で。

 

「――良いでしょう。私も断る理由はない。担任の教師が辞退して指導の人手が足りないんですよね?選抜メンバーを指導するのは並の教師では務まらない」

 

 思ったより早く、了承を得たようだ。

 彼女は真面目ではあるが、少し…いや、大分と言って良いほどの変わり者なので、もし頼み事を一蹴されてしまったらどうすれば良いのか…とばかり不安が募っていたが、その心配もないようだ。

 

「それに死塾月閃女学館は誰もが認めるエリート女学園…妖魔の出現率が上昇してる今、下手すれば妖魔衆が姿を現わす可能性も…」

 

「現時点で明かされてるのは、まだ陸ノ座――蒼牙鬼のみですが…」

 

「充分ですよ。一体解っただけで大きな進歩、益々上々…このまま私たちが勝ち続けることを大事に考えましょう。

 今私たちに出来ることは、数が多くとも限られてるが…しかし然りとて、充分に価値がある」

 

 妖魔衆の情報は全くの未知と謎が深まっており、情報が伝達と共有が敵わないのが悩ましい種だ。妖魔衆を倒しても、陸の犬神が倒された後に新参者の蒼牙鬼という妖魔が姿を現した。

 このまま放っておけば下の順位もまた増えて行くだろう。何としても、止めなければならない。

 

 

「話は脱線しましたが、私も月閃に関しては少し興味がある。全くないという訳でもなく、かと言って熱量の高い執着心は持ち合わせていない…

 仕事の都合も多量あってより厳しさと多忙になりますが、引き受けましょう」

 

 

 書類の束を抱え直し、彼女は雪不帰の願いを引き受けた。

 彼女の承諾に、雪不帰はもう一度――

 

「有難う御座います…」

 

 深く頭を下げ、礼をする。

 こうして、神白は教官としてフリーで月閃の選抜メンバーを指導する身となった。

 

 

 

 

 

 

 

 死塾月閃女学館――屋上

 外は夕焼け色に染まり、日の沈みと共に今日という一日が去って行く感覚を、静かにゆっくりと堪能する。

 

「此処で見渡す景色は綺麗ですね。夜は星空が見えそうだ」

 

 展望台用の横長い椅子に腰を下ろしながら、冷えた空気を吸う。月閃の屋上はよく月が綺麗に見えて、雪泉はよく一人で屋上にいることが多い。

 

「其れで、話というのは…」

 

「雪泉、貴女は雪不帰という女性を知っていますよね?」

 

「なッ――えぇッ!?」

 

 突如繰り出された彼女の質問に、驚愕の色を出してしまう。

 どうして今になって『あの人』の名前を、彼女が…黒影のもう一人の弟子である雪不帰の名前を、知っているのだろうか?知人と言う線もあるのだが…あの人の名前が急に出てきたことで、動揺を起こしてしまった。

 

「ど、どうして…あの人の名前を…」

 

「やはり…貴女のこの動揺っぷりを察するからに、マトモに再会を交わしていないようですね」

 

 神白は溜息混じりに言葉を零す。だが、表情は冷徹のまま無表情、何も変わらず淡々とした口調だ。

 

 雪不帰と別れたのは自分が今の選抜メンバーと出会う前の頃、雪不帰が黒影に拾われてから一年が経ち、大分仲が深まった中、彼女を保護する者が見つかったらしく、黒影が引き渡したそうだ。

 別れの言葉も告げないまま去ってしまったので、印象には残っている。今も雪泉の心の片隅に、溶けない氷のように残っていたのだ。

 

 悲しくも有ったが、また何処かできっと出逢えると――然しまさか、今も生きていたとは…喜びの感情が湧き上がると同時に、驚きが強かった。

 

「ふ、雪不帰さんは…元気でしたか…?」

 

「初め出逢った頃と比べれば全然明るい方ですよ。今も元気です」

 

 そういうのは再会してから話すべき事なのだろうが、生憎彼女にそんな躊躇う感情など湧いてこなかった。

 

「しかし、どうして雪不帰さんの話を…?もしや私の話を聞いてたり…」

 

「深い内容は聞いてませんが、彼女は貴女のことを妹と呼んでましたよ。家族としての縁をまだ信じて、貴女達を是非鍛え上げて欲しいと…」

 

「そうだったのですか…」

 

 神白の言伝に、雪泉の目頭は熱を増す。

 潤う目に、涙を溜めながら、彼女が生きていた安堵感にホッと一息、胸を撫で下ろす。

 そして何より…自分たちの為にと、神白教官に自分達を指導するよう申し込む姿を想像し、嬉しさで心が膨らむ気分だ。

 座り込む雪泉の隣に、神白はそっと優しく腰を下ろし、言葉を添える。

 

「彼女は今、訳が有って貴女とは会えません。ですが、必ず会える日は来ます。貴女が生きてる限り、彼女が生きてる限り…大丈夫」

 

 二人が生きていれば、何度だって再会を果たす事が可能だ。

 人間生きてさえいれば…

 

「良かったです…私、黒影お爺様が亡くなられた後、葬式にもこなかったから、てっきりもう……噂も全く聞きませんし、どうしてるのか、消えてしまったのかとばかり…」

 

「彼女はそう簡単に死にませんよ。私の()()が繋いでくれた絆は、そう簡単に斬れやしない。そして救われた本人も、生きることを…貴女達の再会を望んでいると思いますよ」

 

 

 優しく背中を撫でて、彼女に優しい言葉を投げかける。

 思っていますよ、なんて他人事の言い方かもしれない。

 知人であるとはいえ、家庭内に首を突っ込むなと言われるかもしれない。

 でも、神白の言葉は嘘偽りのない、本心を吐露したまでに過ぎない。

 

「有難う…御座います、神白教官…」

 

「いいえ、どう致しまして。私はカグラ――そして今は貴女達の教官だ。一人の生徒に対して真剣に向き合い、語らうのは当然の義務ですから」

 

 彼女の心が落ち着くまで、神白はゆっくりと、雪泉の頭を撫で下ろす。とても清らかで、触り心地の良い髪の触感に、ふと昔の頃を思い出す。

 

 

『神白ちゃん本当に有難う…!!ずっと、私の親友だからね!神白ちゃんは、私の初めての友達だから――』

 

 

 あの頃――まだ学生だった時代、友に頭を撫でられた自分と、今の光景が重なり合う。

 忘れられない思い出、狂おしくなる感情、昔の自分からは想像の付かない、抱き心地。

 今も身長は大して変わらず、あの人の方が高かったけど、こんな気持ちだったのかな。なんて物思いに浸りながら、感情に乏しい己は、ゆっくり口角を釣り上げて、思わず微笑んだ。

 

 

 

 

 漸く心を落ち着かせた雪泉は、その後に彼女とのたわい無い会話を嗜んでいた。

 

「それで…最近は大変と言いますかその、学業とインターンの両方を成立させるのが厳しくて、よく電車の中で眠気が襲って来てしまうんですよね」

 

「学業と校外活動の両方を成立させる、か…流石は死塾月閃女学館を率いる選抜メンバーの筆頭だ。その名に恥じぬ行いと、積極性のある精神は、今後とも経験値として活かせるでしょう」

 

 神白は相も変わらず表情に変化は訪れないが、それでも悪い気分でもないらしく、雪泉の会話に耳を通している。

 忍学校の学業は、座学だけでなくヒーロー科のように一段と厳しい修行が忍学科には有る。その上でインターンに励む忍学生は、実はそんなにもいない。

 

「それでその……少し、愚痴…というより、悩んでることが有ったりするんです…」

 

 インターンの詳細、八斎會含めた内容は禁句となっており、口外してはならない決まりになっている。

 それ位の規則はきちんと理解してるし、其れを彼女に打ち解けることは出来ない。

 …しかし、この拭い切れない暗雲をどうにかして晴らすのは、やはり内容を伏せた上で相談するのがベストだろう。

 

「もし……自分がもっと早くことの事態に気付いていたら、止められた元凶を、止めることが出来れば……自分が早く相手の事を知っていれば…そんな後悔をしてしまう。そんな場合は、神白教官はどうします?」

 

 内容を伏せた上で悩みを相談すると言うのは結構難しいもので、言葉を選んだり考えながら話したりで上手く伝えられない。

 まだ雪泉はオーバーホールの正体に気付けなかった自分に負い目を感じ、責任を持っているようだ。

 対策出来なかったあの過去に負い目を感じてもしょうがないだろう。だけど雪泉はそう簡単に自分は何も悪くないと、考えられないのだ。どうにかしなければ――そんな想いばかりが、彼女の心を締め付ける。

 

「別に――」

 

 あっさりと、言葉を切り捨てられた。

 

「私は元々一人で抱え込み、無茶をするのが好きでしたから。だけど、隣で一緒にもっと無茶をしたのが楽しかった。

 貴女には互いを分かち合う者と、励めば良い」

 

 だが其れは決して「どうでも良い」、なんて放ったらかしにするような投げやりの言動ではない。

 

「どうすれば良いか…どうしようもない。過去を変える術も、後悔が生まれた時点で成す術がない。

 過去をどうすれば良かったと延々と語っても時間が進むだけの空虚だけしか残らない。

 

 だから――一旦、過去の可能性は全て破り捨てましょう」

 

 彼女の言葉には、心が吸い込まれるように納得する。

 其れは同情や励ましの言葉ではなく、真に迫るような、此方をジッと見つめ向き合う彼女の一つ一つの台詞に、心が響いてくる。

 

「この先に後悔や挫折、時に死に追い詰められることは大人になってからも理不尽にやって来ます。

 一般社会の些細なミス、プロのスポーツ選手の敗北、この通り世の中はネガティヴや挫折など、過去にどうすれば良かったかと想い悩み、苦しむ人間は山ほどいる」

 

 これは人間が通過する極自然な当たり前のことであって、通過点を過ぎた後、振り返っても其処には足跡の記憶があるだけで、どうすれば良いのかなんて考えが愚行だ。

 

「この際に言っておきましょう。

 人の努力は万能ではない――何故なら、努力をしても事足りない場面に突入することが多いから」

 

 それこそ、神白の言葉はとても厳しかった。

 普通の人間は、多少努力は自分の身にはなる…また、経験は活きると言うが、彼女の言葉にはどれも意外性が有り、心によく響く。

 

「どれだけ鍛錬を重ねても、敵わない敵は存在する。努力は報われないことが、現実では多く存在する。

 努力は結果として報われなくとも、己自身の慰めになると言うのは、綺麗事。幾ら綺麗事を並んでも絵空事でしかない――それでも、人は努力をするしかないんです。人間は、努力するしか取り柄が有りませんから」

 

 例え無駄だとしても、結局人は努力をしなければいけない生き物だ。

 そのように、またこの先同じ後悔や挫折、悩んだり苦しんだり辛かったりしても、前に進むしかないのだ。

 人間としてやれるべきことはこれっぽっちだけど、やらなければいけない。

 

「じゃあ…どうすれば良いんですか…?どうして私達にこのように…」

 

「何を今更――簡単です。仲間と共に生きていけば良い。ただそれだけです」

 

 仲間と共に…

 

「雪泉、貴女は努力をして世界を滅ぼす大魔王を一人で討ち勝てますか?一人で何から何まで生きていけますか?世界の犯罪者にされて尚、一人で逃げきれますか?

 

 それと同じです。人間一人の力はほんの小さな破片に過ぎない…だからどれだけ多くの努力を重ねても報われない。

 しかし、誰かと一緒に何かを励めば、可能性は増えていく」

 

 RPGのラスボスも、仲間がいれば大魔王を倒せる。

 皆んなの協力があれば、生きていける。

 世界の犯罪者にされようと、志を共にする者がいれば逃げ切れる。

 

 

 エリを救いたいと想う、同じ志を持つ人間がいれば、救けることが出来る。

 

 

「私が貴女達に厳しい訓練を受けさせるのは、貴女達に生きて欲しいから。でなければ、雪不帰の頼み事を今すぐに破り捨ててますし、こうして会話なんて成立すらしてませんでしたよ。

 

 これから先の事を考えた、私なりの()()です」

 

 これから先も厳しい訓練が待ち構えてる。

 神白の訓練は、飛躍的に実力を伸ばすモノ――どれも身につけて役立つ合理的な修行だ。

 勿論、彼女だって幾つかの訓練を成し遂げ、今があるのだから。

 

「貴女が何を体験したのかは存じませんし、強引に詮索する道理はない。しかし――貴女が望むものがあるのなら、思いっきり無茶をしなさい」

 

 欲するものがあるのなら、望むべきものがあるのなら、摑み取れ。ただ口だけで吐く綺麗事ばかりを並べ、何も実績を残さず、ただただ嘆くのは怠慢に過ぎない。

 失敗しても良い、やるべき事をやり通せ――失敗だろうと無駄だろうと、使命を全うしろ。

 

「有難う御座います教官…!」

 

 小さな短い感謝の一言には、沢山の有難うと、吹っ切れた言葉。

 どうやら、彼女の心に悩みは吹き飛んだ様子だ。

 全てを言葉に表さずとも、感じ取れた神白は「そろそろか…」と心の中で呟き腰を上げる。

 

「もう、すっかり空が暗くなりました。今日も綺麗な月で、ここで見渡す夜空はとても幻想的だ――ここは、良い場所ですね」

 

 気が付けば外はすっかり暗く、夕日は既に沈んでいた。

 街から隔離された忍学校は、自然に愛され余分なものがない。

 

「では外もすっかり冷え込んできましたし、話は終わりで良いですか?まだ話したい事が有ればどうぞ」

 

「いえ、流石に教官の時間をこれ以上割いてまで話すことは特に、ないですね。その…凄く、励みになりましたから…」

 

「そうですか――」

 

 雪泉の意思を確認し終えた神白は、短く言葉を発すると背を向け、屋上扉に手を掛ける。

 淡々と冷徹な印象が強く、無愛想に見える彼女を当初、厳しい教官だと思い過ごしていたが、今を確認して、彼女の優しさに触れた雪泉は、感謝の言葉しか出ない。

 例え、教官として上の者が下の者の悩みを聞く立場に回ることだと、理解していても。

 

 

 教官が扉から姿を消すと、雪泉は手を胸に添え、瞼を瞑り

 

「エリさん…必ず、貴女を救けますから――」

 

 決意を胸に抱いた――

 

 

 




その後

神白「………」

美野里「あ、あのね…!神白ちゃ――「誰が喋って良いと抜かしましたか?」…ごめんなしゃい…」

神白「貴女が何故、今こうして正座をされてるのか、私が不機嫌なのか、考えなさい」

美野里「そ、それは…!美野里、てっきり四季ちゃんのお菓子だと思って…まさか教官のだったなんて、美野里知らなかったんだもん!」

神白「そもそもの時点で間違っている。私は貴女の(何の許可もなく、誰に対しても、無断で、盗み食いを働き、それすら良いと考えてる)根本的な理屈に憤りを覚えてるんです。
チョコケーキだからとか、私のだからとか、高級だとか、そういうのはどうでも良いんです」

チョコケーキを勝手に盗み食いした美野里を正座させ、無言と眼圧、場の空気に流れる重力の真中、説教をしていました。

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