ヒロアカの映画観に行きました…やべぇ、鳥肌たったし皆んなカッコ良かった!!そして0巻も入手ゲット!良かった〜…流石は大人気のヒロアカ、売り切れてなくて良かったや…
これでまたはるか先(40巻分)のストーリーが構築出来る。
あっ、後ゲームも購入しました。投稿終わったらやります!!
「ねえ、飛鳥ちゃん…雲雀のこと、怒らないの……?」
時は遡り。
神野区激戦後から一夜明け、霧夜先生から「雄英高校から連絡が来るまで半蔵学院で待機だ」と指示を受けた飛鳥達三名は、忍学科の教室で休息を取っている。
湯気の立つ湯呑みをちゃぶ台の上に置き「何で?」と問い返した。
雲雀の表情は見るからに罪悪感の篭った薄暗い顔を立っており、声が微かに震えていた。
そんな彼女に何処か不満を感じる飛鳥は、首を傾げる。
「その…半蔵様のことや、連合に捕まったこと……」
「あー、神野区のことは気にしなくても良いよ?其れに、霧夜先生の説教も終わったんだし、過ぎたこと悩んだって仕方がな――」
「そうじゃなくて――!……その、雲雀が弱くて捕まったせいで…飛鳥ちゃんのお爺ちゃん…ううん、半蔵様が倒れちゃったんだよ?其れに、今は無事だったとしても…死んじゃってたかもしれないんだよ…?だから、その…なんで、怒らないんだろうって…」
雲雀の言葉の意味を理解するのにそこまで時間は経たなかった。
彼女の言動から察して、恐らく自分の弱さと今回の事件に余程の責任を感じてるのだろう。
何せ彼女は他人に思いやりのある、心優しい少女だ。
その分雲雀は気弱で優柔不断な一面も多く、雄英高校に転入する前までは秘伝忍法書を商店街に落としてしまったというドジっ子だ(スケールが違うが)。
訓練も毎日失敗ばかり積み重ねる彼女が自然的に責任を追い込んでしまうのも、仕方ないと言うか癖なのかもしれない。
「ううん、怒らないよ?だって雲雀ちゃんが悪い訳じゃないもん。捕まっちゃったのはしょうがないし、私たちだってあの場で雲雀ちゃんを救えなかったもん…悪いかどうかの話をするなら私たちにだって非があるんだし、気にしてたって仕方ないよ」
「で、でも……」
雲雀はオドオドと弱々しく口を開き、言葉を紡ごうと必死に探している。まだ拭えきれない部分でもあるのだろうか、何か言いたげそうは表情だ。
「其れにね、じっちゃんはあの結果に後悔してないと思うの。そりゃあ…大切な人が、大好きなじっちゃんが居なくなったりするのは嫌だけど…でもね、じっちゃんだったら助けずに見放してた方がよっぽど悔いが有ったと思うの」
あの場所で半蔵が口にしてた言葉は聞こえてなくとも、大体の予想は付く。これも同じ血筋だから成せる事なのか、特に気にしてはいない。
いや、気にしてないと言えば嘘になるだろうが、あの時は庇う以外オールマイトを助ける手段も無かったし、そもそも年齢的に忍としての活動は向いてないので、生きてるだけでも奇跡だと思う。
「雲雀ちゃんがもし、じっちゃんの立場なら…どう行動を取る?私だったら、目の前の困ってる人間の盾になりたい」
刀と盾。
今思えば飛鳥の強さの秘訣も、忍道の始まりもここからだった。
原点と呼ぶものなのか、誰かの盾になることで人を守り、誰かの刀になることで如何なる強敵に立ち向かい、明日への道を切り開く。
半蔵学院の選抜メンバーに於いて先輩である斑鳩や葛城とは違い、なぜ飛鳥がリーダーに選ばれたのか…半蔵の孫という肩書きなしでも今ならハッキリと解る。
「私の為に心配してくれて有難うね雲雀ちゃん♪そーだ!今度、皆んなでじっちゃんのお見舞いに行こうよ!」
彼女の天真爛漫な笑顔は、いつも人の心を癒し、和ませ、勇気をくれる。まるで、オールマイトに負けないその光り輝く笑顔。
その笑顔に雲雀は、何故かふと違う人物の笑顔が積み重なる。
『どんな時でも笑顔は大切だよ!お師匠が言ってたもん、笑ってる人間が一番強いって。皆んなが笑顔じゃないと、暗いままで楽しくないもんね♪』
――え?
違う女性が積み重なったことに、茫然としてしまう。
雲雀の瞳に宿った華模様の華眼が映し出されたものなのか、はたまた幻覚による錯覚に近い現象か…そう言えば、神野区で人質に捕まってた時から殆ど睡眠を取っていないので、疲労が蓄積されて見えてしまうだけかもしれないが…
「どうしたの…?雲雀ちゃん?」
「へ?あ、ううん――何でもないよ!気にしないでっ」
ぎこちない返事をする雲雀に飛鳥は益々頭の上にクエスチョンマークを浮かばせる。
…あの女性は誰だったのだろうか?覚醒した紅蓮の焔と少し似た気もするが、あくまで髪の色と言うだけで、他に言えることがあるとすれば可愛らしくも美しい女性というのが第一印象だ。
況してや、見覚えのない人間と面影が重なるなど、普通ならあり得ない。彼女が誰かに似てるとしたら、半蔵や焔位だろうに、全く知らない人物が自分の視界に映り出たのは、何か理由があるのだろうか?
「難しいことは私も上手く言えないけどさ……雲雀ちゃんは私たちの大切な仲間だもん。
責任を感じてくれるのは嬉しいけど、私たちは責めたり批判したりはしないよ。蛇女の時もそうだったじゃない」
蛇女子学園。
其れはまだ雅緋が血界突破の代償として廃人になっていた頃、まだ焔達が抜忍になる前のことだ。
超秘伝忍法書の強奪戦により、善と悪の荒れ狂う戦いの火蓋が切り落とされてたあの時の戦い。敵である春花に操られ、半蔵学院を裏切ってしまった(本人の意思とは関係なく、傀儡として操られてた為)記憶は、今でも鮮明に覚えてるし、自分の所為で半蔵学院に迷惑をかけてしまったなぁ…と多々思い詰める事がある。
「あ、アレは…確かにそうだけど……でも、それに続いて雲雀、今度はオールマイトに半蔵様、クラスの皆んなにまで迷惑を掛けちゃったから…だから……」
そんな自分が嫌なんだ――その言葉が上手く口に出なかった。
役に立たず、次は最初よりも酷い失敗を繰り広げてしまいそうで、そんな自分の弱さが他者を傷付けてしまうことに、恐怖を抱いてしまう。
修行すれば良いだけの話、と言うのは聞き飽きたほど、雲雀は何度も訓練を受けるも成長の伸び代はほぼ皆無に等しいとさえ自覚している。
「う〜ん…じゃあさ!思い悩むことがあって、言葉で解決できないなら修行して汗を流そうよ!考えてたって、時間が減ってお腹空くだけだよ?」
彼女の言葉に、雲雀は少し面を食らう。
明るい笑顔に、透き通るような彼女の声色は、いつも雲雀の心を慰めてくれるようで、励ましてくれる。
「えっ、で…でも……」
彼女なりの考慮だろう。
お誘いや善良ある配慮には有り難みはあるが、生憎今はそんな気分でもないし、お菓子なんて以ての外…パフェ3杯しか食べれない腹具合だ。
雲雀は遠慮すると言った形の様子だが、飛鳥は引き下がることなく食らいつくように手を握る。
「雲雀ちゃん。いつまでも悩んでたって仕方がないよ。自分の力の弱さに打ちのめされてるのなら、それ以上に食らいついて壁を越えれば良い。皆んなそうして来たじゃない、だから雲雀ちゃんももっと強くなろう?」
「雲雀は…何をしても…失敗ばっかするし、ドジっ子だし……足を引っ張るんだよ?」
「仲間を足手まといなんて思わないよ、心配しなくても大丈夫。私なんか、スリの人に500円玉盗られちゃった位だもん」
アレは確か商店街で歩いてた時に、ザコ山盗賊団の白浪という女性にスリで財布を奪われた時である。当初は忍としての才能や実力も底辺に近く、焔には「お前は忍には向いてない」と罵倒な台詞まで吐かれてしまった頃が懐かしく感じる。
しかし其れを自慢げに話しても良い物なのかと思えてくるが…本人は気にしてない様子だ。
「それにね、じっちゃんが死んじゃっても私の忍の道は諦めないよ。そもそも忍になった以上、命を懸けて戦うのは当たり前だもん。そう考えると辛いことや悲しいことばかりが多い気がするけど…それが全てじゃ無いことは、雲雀ちゃんも知ってるでしょ?」
どんなに辛い時でも仲間が側に居てくれる。
其れは、半蔵学院に入学して始まったことで、そこから先は色んな仲間に出会えた。
雄英高校、敵対関係だった焔紅蓮隊、死塾月閃女学館。
人生とは不思議なものだ…恵まれてもない〝華眼〟という天賦の才を手に入れ、自分はなりたくなかった忍を目指せば、こんなにも頼りになって優しい仲間に巡り会えた。
「だから、嫌なことがあったり悩むことがあって、解決できないなら…修行しよ!」
体を動かすと言うのは体力や筋肉を付けるだけでなく、ストレス解消やリラックス効果が有り、健康に良いと聞く。
人間は不安や悩みを溜め込むのが癖になっている。些細なことや聞ける範囲では人に訪ね、解消する術があるが、そうでないケースもある。
そう言った意味では飛鳥の〝修行しよう〟という発言も、単純に見えて実は雲雀の気遣いにもなっているのだ。…当の本人が単に体を動かしたいだけという意味は含まれてないとも言い切れないが、雲雀のためを思ってるのも確かである。
「飛鳥ちゃんは…強いな」
彼女の明るみの言葉と笑顔に、思わず小さく呟いてしまう。
自分の祖父がアレほどの怪我を負い、後少しで手遅れだったかもしれないのに、自分の失敗を責めずに思い悩み詰める自分の心配をしてくれる。
常人の人間ならあり得ないのに、忍というレッテルが貼られてるだけでこうも違うのか。もし、忍という立場で無ければ彼女の心は崩壊寸前に達してても可笑しくはない。
それなのに彼女は…――
こうして優しい笑顔を見せてくれる。
こんなにも暖かい言葉を掛けてくれる。
仲間の存在と大切さを大事にしてくれる。
彼女が2年生にして半蔵学院の選抜メンバーのリーダーを担う理由も、霧夜先生から賞賛されるのも、改めて納得が行く。
こんな聖人君子など、この世界で探しても滅多に居ないだろう。況してや、華眼の影響を受けてない彼女となると尚更だ。
「有難う…飛鳥ちゃん……」
その華の様な美しい瞳から、微かな涙が滲み出る。
この涙は悲しみか?苦しみか?
違う、嬉しさだ――
時は戻り、深夜に轟くグラウンド・βは夏の夜の静けさとは裏腹に、白熱の空間と化していた。
三人の身勝手な喧嘩が始まって、既に30分近くは経過してるだろう。
爆破の乱打。
鬼にも勝る豪打な拳。
風が唸り上げる足。
それがまるで火花が飛び散るかのような荒々しさと、風に揺られて散る華のような凛々しさが、異常な空気を漂わせて居た。
ある者は不服な面を浮かばせて。
ある者は友を想い拳をふるい。
ある者は戦場に胸を躍らせて。
各々のバラバラな感情が、絵の具で混ざり合うように集う。爆豪の爆破を飛鳥に向けるも、その腕を蹴りで逸らし、拳で相手の顔面を殴りかかる。
其れを防ぐよう、仰け反り鼻先スレスレで回避に成功。汗が飛び散るも関係ない。そのまま自分も蹴りで追撃を仕掛ける。
しかし飛鳥は忍の中で近接戦を得意とする者。その点に関しては緑谷や爆豪、切島や尾白と言った肉弾戦を得意とする武闘派には引けを取らない。
そのままバク転し躱しながら距離を取る。
(チッ――デカ乳女が…蛙女に
日常の戦闘訓練で、ヒーロー科と忍学科が合同で訓練に励むことなど初期に比べて今となっては当たり前。
飛鳥や柳生、雲雀のステータスを監視モニターで確認してたが決して悪くはなかった。これが爆豪自身による感想である。
しかし、悪くはなかったという個人による意見であって、強いとも言ってない。いや…少し語弊だろう。
弱くはない、それだけだ。
忍だからこんなものかという軽い認識も有ったし、吸収できる分はこの通り蓄えた。
それでも少女は、更にその上をいく。
自分の予想を遥かに超えて、羽ばたくように。
「やっ!ハッ――!」
虚空を切り裂く脚技と、気迫ある拳。
緑谷出久の五%より少し上…と言った方が良いのか、着々と爆豪と緑谷の動作に順応している。
「らあッ――!!」
ここで緑谷が二人の間合いをブチ壊すかの如く、めり込み脚と拳を上手く巧みに使いこなし、飛鳥は防御し爆豪は前方に爆破を使い距離を引き離し
「死ねェ!!!」
瞬時に後方に爆破を放ち威力を殺し、前方へ飛んでからの大規模爆破を放出する。
爆豪の個性は始まりの頃から明かされたが、汗をかけばかくほどに威力は増し、強さも跳ね上がる。コスチュームの個性補助アイテムに重視されていたが、サポートアイテム無しでも、対人に於いて体力を消耗するので、汗をかくのは必然。
つまり、戦闘が長引けば長くなるほどに威力も強く増し手強くなるのだ。
即ち、爆豪勝己を相手に長期戦は愚策。
戦えば戦う程に汗をかき、それ程に個性による脅威が膨らんでいく。確かに戦闘向きで派手な個性だ。
「らああぁっ!!!」
ゴッ――
「「!?!」」
視界がブレる。
飛鳥の腹部が、爆豪の頬が、以前より痛みを増す。
先ほどの攻防の中で、この痛撃によるパワーは明らかにこれまで食らった中では一番に強いレベルだ。
(あの時は…5%のままでいた……
でも、今は違う!!体の扱いも慣れて来た、パワーも体も以前より大分個性が馴染み追いついて来た…!)
職場体験で爆豪のセンスを元に編み出したフルカウルに、怪我をしない程度の5%。しかし林間合宿に続き少ない期間だが個性を伸ばす圧縮訓練で培った強さによる経験が、少し先へと彼の背中を押してくれる。
「8%――フルカウル!!」
五%から八%。
伸び代は少なくとも、威力は依然と比べて強烈なのは確かだ。
爆豪は不敵な笑みを浮かべ、飛鳥も同じく戦闘狂じみた瞳を差し向ける。
この打撃を食らって個々人は想う部分が有るだろう。
小さな伸び代でも、たったの八%で屈されそうな勢い。
たった短期間でここまでの成長を発揮する少年の急成長。
緑谷の成長に更なる脅威だと認識する者もいれば、こんなにも強くなれた事に、まるで自分のように喜ぶ者もいる。
「八%……?120%で来いや舐めプ野郎!!」
爆豪は軽いアクロバティックな動きで緑谷に反撃をし、空中のままで上手く避けられない緑谷はその爆破をモロに浴びてしまう。そこを飛鳥が追撃で背中に蹴りを入れ、緑谷の背骨が嫌な悲鳴をあげる。
…骨折はしてないので、多分大丈夫…だと思う。
「次ィ!デカ乳ィ!!」
「その名前呼ばれるのもう慣れた!!」
爆破によって勢いを増す少年の猛攻が、彼女を襲う。
掌から文字通り爆破を放ち、其れを我武者羅に…乱暴に振るう。確かこれは体育祭の切島戦で見せた爆破ラッシュだ。
「テメェも落ちろや――チェインブラストォォォォ!!!!」
リズムを刻むかのような燃え盛る爆破の乱撃は、視界を奪い相手に一瞬の隙を与えない。
一撃一撃が、まるで悩み抜いた不安と怒りを全部彼女に叩き込むかのように、爆破の連鎖が延々と続いていく。
「死ねヤァぁぁぁ!!」
BOOON!!
最後のフィニッシュは最大火力で決着を付ける。
派手な爆発が人影を覆い、煙が辺り一面に漂い視界が悪くなる。滴り落ちる汗を拭いながら呼吸を整える爆豪は、目を細める。
「がッ――!?」
しかし、爆豪はその煙が晴れる間も無く背中から強烈な痛感を覚えた。まるで思いっきし叩かれたかのような痛撃に、思わず表情が歪む。咄嗟に背後を見やり、迎撃の体制を整える。
「まさかデクかッ――はあ?」
あの状況から察して倒れ伏せてたデクだと推測した爆豪。しかし彼の予想は粉々に破壊された。
何故なら、晴々した光景から颯爽と現れ自分に追い打ちを仕掛けた、飛鳥が其処にいたのだから――
しかしよく見ると彼女の上半身は下着のままだ。
――んじゃあ…俺が爆破で叩き込んだのは…
煙が晴れ、視線の先を捉えたのは…彼女の制服だ。
ボロボロで爆破の火力にほぼ焦がれ黒くなったその服…この戦法は何処かで……
「チッ!麗日の…!!」
「私だって単に体育祭を眺めてただけじゃない!!爆豪くんが焔ちゃんの技を吸収したように、緑谷くんが爆豪くんやオールマイトから吸収したように、私も皆んなと交えて強くなる!!」
まさか彼女が麗日の真似をするとは…
これを、身代わりの術とでも呼ぶのだろうか、忍としてはある意味理に適ってる戦法だ。
「だったら何だああぁぁぁ!!」
爆速ターボで瞬間的に距離を詰め、右の大振りで爆撃を叩き込む。其れを防ぐように身を屈め剝きだした腕を取り防ぐ。
腕を引っ剥がそうとする爆豪に、其れを阻止する飛鳥。二人の至近距離はほぼゼロ状態。ギチギチと筋肉の強張った音が、両者の耳を打つ。
「僕も忘れんなよ!!」
そこから横蹴りをするよう死角から飛鳥の横腹に蹴りを入れ、吹き飛ばす。「あァッ!」と嫌な悲鳴をあげながら、アスファルトの地面に身を削らせ皮膚がめくれる。其れに続き爆豪に攻撃を仕掛けようとするも
「テメェの動きなんざ慣れたわクソカスがぁ!!!」
右に爆破を放ち視界から横へと少年が消える。
ターゲットを一瞬だけ見失った緑谷は爆豪を捉えようと顔を向けた時には既に遅し。
両手で爆破を放ち、相手の腰に強烈な爆破撃をお見舞い。腰に悲鳴を上げた緑谷は悶絶し掠れる声を振り絞る。
「まだまだあぁぁ!!」
負けずと雄叫びを上げる少女は、傷を負いながも覇気を纏わせている。只ならぬ気配、流石は死線を潜り抜けた猛者とも呼ぶべきか。
飛鳥は拳を構え、予測を立てた緑谷は一段と早く回避を試みるも、拳はあくまでフェイント。腹部に突き刺すかの如く、強い蹴りを入れ、少年は思わず口から消化液を吐いてしまう。
「ゲホッ…!オエ…はぁ……ハァ……」
痺れるかのような痛みに、腹部に残る痛みはまだ晴れない。ついでに言ってしまえば全身がギズギズして痛いし、正直横たわりたい。
タダでさえ爆豪相手にするだけで大苦戦を強いられるし、飛鳥なんて以ての外だ。
(そう言えば…忍との戦闘って、今思えば全然経験したことない…よな……飛鳥さんの動きは観察してたけど、実戦となると違うというか…)
観察と体験では経験が違う。
相手の動きを視認しても、その動きを完全に再現出来ることが難しいように、頭の中で動作は理解していても体が追いつけないのなら、ある程度の対策と防戦に移ってしまうのも仕方がない。
更に彼女は刀二丁による武器を用いた戦闘がメインだったハズ。それが急に肉弾戦を強いる彼女のデータは中々に見ない。十日間とはいえ微かな情報は頭に入れてるも、それでも完全かと問われると首を縦には頷けれないのだ。
「こんなものかよ!!」
それでも二人に負けまいと、せめて心だけでも気合を張る。
その言葉に不敵な笑みを浮かべる彼女とは他所に、爆豪勝己は…
「はあああぁぁ!?殺されてェかクソナードがあぁぁ!!」
ブチギレ。
憤慨極まれり。
枷が外れたような、虎にも勝る咆哮が夜空に響き、全身の筋肉がより強く力む。
別に煽りたくて意図的に発言した訳では無いのだが、緑谷の時に暴言のような荒々しい口調には理由がある。
内心穏やかで、腫れ物に触るような気弱な性格とは裏腹に、極限状態になるとつい爆豪の口調を出してしまう癖があるのだ。好きでやってるのではなく、反射に近い自然現象。其れもまた、憧れから来る懸念の影響を受けてるものと考えても良い。
一方爆豪は追い詰められたりや、ピンチな時こそ冷静でいる場面が多い。USJ襲撃の際も彼の活躍は見事だったし、黒霧や漆月に一矢報いたのも事実。
「これ食らっていっぺん死んでろ――」
爆ぜる両手は、円を描くかのように自身を軸とし中心に廻り、コマのように勢いのついた回転が速度を上げる。
いや…これはコマというより、回転花火と断言しても良いだろう。
勢いが増すごとに爆破の威力も上がり、的確に突こうと明確に動く。これだけ回ってよくもまあ酔わない物だな…と改心する半分…
「今度は…雪泉ちゃんの技…!」
彼の戦闘センスに驚きを隠せない。
これは雪泉の秘伝忍法――《樹氷扇》を意識してるのだろうか、回転と能力を活かした必殺技を緑谷に放つ。
「こっちだって吸収してるわボケェ!!クタバりやがれ!!!」
【爆式――廻爆転】
爆指斬に続き、雪泉の動きや個性を活かして威力を再現させる彼の才能には驚きばかりだ。
廻れば廻るほどに爆破の威力で加速し、スピードを上乗せすることでハウザー・インパクトとは違う高威力な攻撃を発揮するこの技は、酔う危険性もあるがその分、必殺技としては完成している。
「カロライナ――スマッシュ!!」
ここを敢えて回避の選択では無く、迎撃をすると判断した緑谷は咄嗟に腕をクロス型にし、開くように放つ。
空気の圧が放たれ、僅かながらに飛鳥の二刀繚斬をイミテーションしてるみたいだ。又、これはUSJでオールマイトが脳無に放った技でもある。
二つの衝撃がぶつかり、余波が生じり立ち上がる飛鳥は膝を折る。
爆破飛び散る火花に火傷を負う緑谷に、鈍く重圧感ある打撃を喰らい顔をより強く歪ませる爆豪。
三人とも既に満身創痍で、下手すれば取り返しのつかない怪我まで犯すだろうほどのレベルまで到達していた。
だからこそ、各々の想いによって――立ち上がる
――オールマイトに応える為に
「俺がぁ…敗けるかああああぁぁぁぁーーー!!!!」
腹の底から噴き出た爆豪の咆哮。
それが合図となるかのように、上から下へと叩き落とすよう大爆発を起こす。
その破壊力は対人訓練や蛇女、体育祭に引けを取らない…いや、それ以上の大規模な超爆破。それこそ、死人が出ても可笑しくないほどの高威力に、緑谷は為すすべなく猛撃を食らい、飛鳥は巻き添えを食らう。
天から地へ叩き落とす其れは、まるで神が下す鉄槌のようだ。尤も、こんな荒々しい天罰は余り想像つかない物だが…
「………はぁ…はぁ……」
視界が霞む。
痛みは鮮烈。
意識は曖昧。
ヨロヨロで、ボロボロで、クラクラで、そんな擬音が何重にも奏でるような感覚に、脳の働きが覚束無い。
地面はクレーターのように凹んでおり、緑谷は倒れ伏せていた。…いや、正確に言えば〝爆豪に平伏された〟と言うべきだろう。腕は抑えられ、足で腕を踏み、体重を緑谷に押し付ける。
「お前の……負けだ……」
息遣いの荒い爆豪は、緑谷が戦闘不能だと確認すると、立ち上がる。
呼吸するだけで肺や肋骨に微かな痛感を覚え、派手にやったなと思い知らされる。
「デカ乳女は…」
爆豪にとって、敬意を表すことが出来る強者とは、緑谷を除いてそう多くは無い。
どれだけ魅力的な個性だろうと、捩じ伏せれば問題ないし、オールマイトなんか単純なパワーで渡り合えてる位だ。嘗てはアメリカでマフィアやテロリスト集団を相手にたった一人で立ち向かったあのニュースの生放送は今でも覚えている。
その中で爆豪がオールマイトに憧れたのは、どんな状況でも笑顔で勝つ姿――という彼らしい答えだった。
しかし、そこにはもう一つの光り輝く憧れが存在していて、倒れない姿にも同時に魅了されていたのだ。
神野区で倒れないという姿勢の偉大さを身を以て噛み締めただろう。
だから、麗日お茶子という非力でも格上の強者に食いつこうと、倒れてしまっても折れない瞳に心打たれたのは自覚している。
――飛鳥は、拳を構えて目の前に立っていた。
現時点で誰もが観れば爆豪の勝利に揺らぎがないと確信するだろう。気を抜いてた訳でもないが、アレ程のダメージを受け蓄積してるのなら、立ち上がることだって困難なハズ。
はず…なのに
「悪いけど…この勝負、まだ私は負けてない――」
風が拳に一点集中するように唸りを上げて溜め込んでいく。
その悍ましそうな気配に、防御を構えるも無駄。
飛鳥は全身傷だらけの状況の中、爆豪にも負けない雄叫びをあげ、拳を振るう。
「〝新〟・秘伝忍法――【風刃衝乱舞】!!」
拳が分裂したかのような幻覚。
無数の拳が銃弾のように、嵐の猛攻が爆豪を襲う。
物質を斬り裂くかのような風が、拳に纏い衝撃を与える。
緑谷と爆豪が新たな必殺技を編み出してる真中、彼女は忍術を個性の応用として取得しただけでなく、新たな秘伝忍法という必殺技の芸まで考え抜いてたのだ。
そして、これは――黒佐波の秘伝忍法《黒波衝乱舞》を模倣した動きでもある。
「ッ――!!」
鋭い衝撃が体全身に渡り、意識諸共、吹き飛ばされる錯覚を味わう。
防御があっさり破られ、爆破で迎撃するも風で爆破の威力が殺され、数カ所の打撲で青白い色が浮かんでいるのが見受けられる。
「この……勝負…私の……勝…ち……」
プツン。
糸が切れた音が脳に響き、気がつくと自分は爆豪と同じく地面のアスファルトにくっつき倒れていた。
朦朧とする意識の中、運動による熱で体全身汗まみれになりながら、夜空の星を見上げて深呼吸をする。
「勝った人間が……なんで…倒れてる……んだ…」
ゼェゼェと息を荒く吸う爆豪の言葉に飛鳥は「…ごめん」と小声で呟く。まるで、初めての戦闘訓練で開始された緑谷の姿が重なる。
「テメェも…オールマイトに力を授かってんのに…何俺らに負けてんだ…」
少年の指摘に思わず「…ごめん」と飛鳥と同じく言葉を揃える。疲労と痛みが蓄積された体は、そう簡単に起き上がれない。まるで重力が何倍にもなったような感覚。
散々ここまで荒れた喧嘩を起こすバカなど、雄英高校としてはこの三バカで初めてでは無いのだろうか?
「そういう爆豪くんこそ……倒れてる…じゃない」
「うるせえ……はぁ…はぁ……コロス…」
「大抵、返事が返って来るといつも其れだよね……」
彼女の正論にこれ以上口を開かない爆豪は、目を細め夜空を見上げる。まさか、彼女にまで負けるとは想定外だ…緑谷と言い、轟焦凍と言い…自分を追い越そうとする輩がドンドン増えていく。
それこそまるでゲームでいう全国プレイヤーとのランキングを競い合うかのように。
「そこまでにしよう、三人共」
闇夜の影から、聞き慣れた声が三人の耳に届き視線が集中する。
明るい街灯に照らされた人物はオールマイトのトゥルーフォーム。痩せ細ったその姿は相も変わらず不健康そうで、身体が少し心配だ。
「話は聞かせて貰った…すまないね、気付いてやれなくて…」
「アンタが謝んなよ…」
ぶっきら棒な口調で言い放つ爆豪は、少し間を置き――
「何で、デクを選んだんだ……ヘドロの時から…だろ?オールマイトが来てから変わったんだアイツは…」
気掛かりだった問題点を尋ねた。
アレから半年近くが経つこの頃、溜め込んでた疑問と答えがようやく知ることができる。
「……知っての通り少年は無個性だ…だからと言って特別扱いするわけにもいかないよ…私の知人にも緑谷少年のような子がいるし、それを機に彼を後継したんじゃ無い…
非力な彼が誰よりもヒーローに憧れ、そして…あの場の誰よりも、少年が一番のヒーローだったから…」
今でも鮮明に蘇る記憶。
暴れ狂う敵。
苦しむ人質。
外野はヒーロー任せで、当のヒーロー達は打開策も無く手を焼いていた矢先に、少年は無個性でありながら他者を救おうとした。
少年は非力な無個性という存在に悩み、苦しみ其れでもヒーローになる夢を捨て切れていなかった。
そんな少年を知ってしまって、ヒーローになれないとは言えない。
そんな少年に、夢を見るのも程々になんて失言を謝罪したかった。
そんな少年に、当時平和の象徴と謳われた自分すら心を動かされた。
緑谷出久の存在が、自分と積み重なったことも含めて、少年に一縷の望みと夢を叶えさせたかった。
この少年なら…平和という世界を照らし続け、世界を支えてくれるのではないかと。
「…俺の…憧れは間違いだったのか…」
「違う、爆豪少年の憧れに間違いなんて無いし、両方大事さ…」
爆豪の頭の上にポンポンと、手を置きあやすオールマイトに、爆豪はその手を振り払う。
「長いことヒーローやってて思うんだよ…爆豪少年のように勝利に拘るのも、緑谷少年のように困ってる人間を救けたいと思うのも…どっちが欠けてもヒーローとして自分の正義を貫くことは出来ないと…」
緑谷出久が爆豪勝己の力に憧れたように、爆豪勝己が緑谷出久の心を畏れたように、気持ちを曝け出した今だからこそ、解る。
「互いに認め合い真っ当に高め合うことが出来れば…
救けて勝つ、勝って救ける最高のヒーローになれるんだ。それこそ、飛鳥くんと半蔵さんが言ってた、刀と盾の真髄なんじゃ無いだろうか…と」
刀と盾の片方だけでは意味を成せないように、どちらかの片方だけでは誰かを救うことも勝つことも、ヒーローとしての正義を貫くことは出来ないのでは無いだろうか。
そして…彼女の強さの秘訣も、勝因も、彼女の〝刀と盾〟の存在定義が一つの理由に当て嵌まるだろうことを、現状明から様に証明を示していた。
「今までは飛鳥くん達が私たちの元から学ぶ立場だったのに…私が引退した今、今度は我々が学ばされることも有るんだな…」
「俺は其れが聞きてえ訳じゃねえよ…」
爆豪は上半身を起き上がらせ、顔を俯かせる。
深い溜息を吐いた後、「デクとアンタの関係知ってんのは?」と問いてきた。
「半蔵くん、リカバリーガール、校長…生徒では飛鳥くんと君だけだ」
「そうか…わーったよ。
バレたくねェんだろオールマイト…あんたが隠そうとしてたから、誰にも言わねえし、クソデクみてえに軽々しく口にも出さねえ…
ここだけの秘密だ…」
こうして三人から四人へ、ワン・フォー・オールの秘密を知る人間はまた一人増えたのだった。
雅緋
本名・不明
所属・秘立蛇女子学園
好きなもの・親子どんぶり、お風呂
スリーサイズ B90/W56/H87
誕生日・8月15日
身長・169㎝
血液型・B型
出身地・不明
戦闘スタイル 先陣突破、近距離戦闘
ステータス ランクS
パワーA
スピードA
テクニックS
知力A
協調性A
秘伝動物 蛇&鴉
常闇「黒炎と黒刀を巧みに使い、相手をprofundityへ焼き染める地獄の業火は正しく黒炎王の称号に相応しき戦乙女だ。
元は血界突破が原因で命の危機は取り留めたものの、廃人と化し3年の年月を経てついに意識が戻ることに成功してらしい。背中には生えるは白鳥を連想させる天使の翼と、闇鴉を沸騰とさせる悪魔の翼..真なる姿を表した少女は正しく堕天使Lucifer...
その時こそ、雅緋と対峙する者はprofundityとdespairそのものを相手にしてると言っても過言では無いだろう...」
雅緋「...表現が上手いな...!良いぞ、ソレ。正直いってカッコイイし、ここに同類がいたのに私は歓喜的で嬉しいぞ!」
常闇「とは言っても、俺もアンタも本編では会ったことがないがな」
雅緋「そうだな…出番が増えて欲しい…とは言わないが、学炎祭の後半と善悪頂上決戦編しか出番がないからな…」
常闇「そう言えば、いつになるか判らんが蛇女躍進編が出るそうじゃないか、何でも重要なストーリーだとか…」
雅緋「なに…?本当か!?」
常闇「ああ、既に企画やストーリー構成が出来たらしい」
雅緋「楽しみだな!…いや、まあ、忍がこうして愉しむというのも、些か可笑しな話でもあるか…」
常闇「あんまり気張ると、疲れが増す…喜ぶ時くらい素直に喜べばいいさ」