光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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なんか物凄くヒロアカが長い気がする…全然見てない気がする…まあ土曜日にジャンプ発売してたから無理ないかな。




105話「会敵」

 

 

 

「返せ?返せって言ったか今?可笑しいねェ?

爆豪くんや雲雀ちゃんは誰のものでもねェ…自分自身のモノだぞ!このエゴイスト!偽善者供め!!」

 

「返せ!返せよオイ!!」

 

奇妙な仮面越しから聞こえてくる薄ら笑いに、緑谷は怒りのコスモを燃やしていた。

普段の緑谷とは思えない程に、彼は激怒していた。

 

「そもそもなァ、返せ返せってせがむもの程見苦しいモンはねェぜヒーロー学生。

返せって言われて返す位なら最初っから奪いやしねーさ!」

 

悠々と、気楽に語り出し指を差し向ける奇術師たること、Mr.コンプレスは表情こそ読めはしないが、笑ってるように見えた。

 

「どけ緑谷!障子!」

 

地面に這いつくばる氷は支配していくかのように、地面から木へと凍り付けにしていく。

それをコンプレスは軽々しく、華麗な身のこなしで氷結を躱す。

木の枝に足の力を入れ飛ぶと、宙に舞う。まるで、本物のマジシャンのように――

 

「爆豪くんと雲雀ちゃんをどうする気なの!?」

 

「別に?どうって事はしねえさ、ただ…ちょっとした進路の話をするだけさ。

これからの、自分たちの夢について…ね?」

 

緑谷程ではないが、飛鳥はそれでも自分の大切な仲間を奪われて憤ってるのだろう、張り詰めた声を発する。

そんな彼女に対し、コンプレスは声色を変えることなく悠長に話し出す。

 

「我々は凝り固まってしまった『価値観』に対し『それだけじゃないよ』と新たな道を示すだけさ…

 

今の子らは価値観によって道を選ばされている。飛鳥くん、君もそうだろ?君だけじゃないハズだ、忍のキミ達もそうだろ?

 

定め、なんて下らないルールに縛られ、己の道は消えていき忍の道を強いられた君らだって、少しは思うことはある筈だ、違うかい?ヒーローも忍も変わらないからこそ、我々は問うのだよ」

 

ステッキを上手く使い回し、体を駆使して違う木の上に着地する。

少しでもズレていれば、一ミリ単位でも着地する場所を間違えれば落っこちてしまう危険性だってある。それを物怖じせず華麗なパフォーマンスを発揮する彼は、もしかしたら昔はこう言った体術を使った芸当人の仕事を担ってたのかもしれない。

 

「違う…私たちは――」

 

「違わないさ。君たちは無意識に定めに縛られ、他の違う道を歩もうとも、見向きもしなかっただけだ。

それを悪とは言わない、だからこそ…そんな少年少女達を導くのさ、ヒーローや忍だけが世の中生きてる訳じゃない、我々のような除け者扱いされた人間もいるという事を…ね」

 

「随分と舐め腐ってんな…お前」

 

皮肉だが、それでも事実だ。

そうやって己の意見も、意思も、心も、届かない時がある。

忍の家系に育てられた人間だって、多くの人が無理やり忍の道を強いられた人間だって少なからずいる。

しかし、気付かないのだ…

それが普通ではなく異常だという事を――

忍になりたい人間は少なからずいる、間違ってはない。

だが、それが全てと言うとそうでもない。

忍の道を強制的に選ばされ、それを悪く思わない人間が存在することも――

幾多もの制限された社会に、不満を持たない人間こそ、可笑しいではないか?異常じゃないか?

 

それはヒーローだって何も変わらない。

そう言った点も共通してると、少し不思議なものを覚える。

まるで何か見えない不思議な法則が存在するような、そんな非現実的な事まで想像してしまう。

尤も、この世界の多くが非現実的な超人がいる訳で、そんな世界に非現実な出来事なんて僅かだろうが。

 

「待て…常闇と柳生もいない!」

 

「ああ。心配しなくとも、あの二人はアドリブで貰うことにした」

 

『!?』

 

柳生と常闇も?!

皆の心の声がシンクロして叫び出す。

コンプレスはビー球を懐にしまい、エンターテイナーのように悠々と語り出す。

 

「お前らが倒した男、ムーンフィッシュ。

歯刃の男な?死刑判決下されて、控訴棄却されるような生粋の殺人鬼…それをああも容易く蹂躙する凶暴さ故に常人じゃない強個性!素晴らしい、彼を連合入れずして何になる!?」

 

仲間が倒れ行く姿を遠くで見つめながら、この男は彼を切り捨て常闇という新たな強個性を持つ人間を選んだのだ。

そして柳生を選んだ理由は、薄々と予想出来ると思う――

 

「んでもう一人の彼女、あの子は天才だ。

己の力を食い止められない辺り、まだまだ未熟だが…それでも彼女はまだ子どもだ。

子どもだからこそ、この先もっと成長する余地がある…隠鬼の目(アレ)を見て確信したよ。

 

彼女は優先殺害リストに載っててね、けど…死柄木と上手く掛け合うさ、彼女ほどの人材を無くすのは惜しいからね。

万が一忍術が暴走したら、『闇』ちゃんの呪術で止めれば問題ない…

 

と、言うわけで…彼女も敵連合に入れるには良いと判断した!!」

 

「良い訳ないでしょ!皆を返してよ!!!」

 

飛鳥の怒りに染まった憤る声が、森全体を包み込む。

Mr.コンプレスはそんな彼女の声など意に介さず嘲り笑うように低く笑い出す。

 

「言った事をもう忘れるとは…こりゃ君の頭の中はお花畑だな――

 

殺されないだけでも有り難く思えよ!」

 

ヴィランが人を誘拐するとならば選択肢は二つ。

先ずは金目当てで人質を取り、最悪人質を殺す。

ヴィランが金目当てで人を捕まえ、売春、ネット動画、又は体を切り売りすると言った闇商売の売買。

 

しかし、どれもその選択肢には当てはまることは無かった。

連中の目的は、爆豪と雲雀を誘拐し、敵連合に加入させること。

なぜよりによってあの二人が…弔言った疑問も少なからず浮かぶはずだ。

だがこの際、今は関係性が無いので特に何も問題ない。

例え内通者と言う可能性も低くあろうとも、今は関係ない、それは後から考えれば良いだけの話であって――

 

「俺は人を欺く事と逃げることが取り柄でよ!

こんなヒーローと忍の選抜メンバー供とまともにやってたまるかってんだ!それに俺は戦闘要員じゃあねェ!」

 

飛鳥の飛ぶ斬撃、轟の氷結、それらを優雅に軽くかわし、又もや宙に舞う。

繊細な動きやアクロバティックな動きは見てるこちらもつい見惚れてしまいそうになる。

 

「敵連合開闢行動隊――全総員に告ぐ!目標回収達成だ!!」

 

Mr.コンプレスの言葉が、15人全員の耳に伝達する。

無線で連絡を受けた開闢行動隊のメンバーは、即座に耳を澄まして伝達を受ける。

 

「長かったようで短かった!だがこれにて幕上げだ!

通信終了後、五分以内に回収拠点へ向かうこと!無事を祈る、以上だ!」

 

無事な人間が多数だが、現在戦闘不能となっているのが…

 

――マスキュラー、黒佐波、ムーンフィッシュ、マスタードの四名、その内11名は無事だ。

コンプレスは違う方角へと視線と意識を向ける。

その先は、森が燃えてる場所だ。ただ一つ変化があったとすれば、毒ガスが晴れたと言うこと…それはつまり

 

「oh!シット!まさかマスタードがやられるなんて、誤算だなァ――

 

あの毒ガスをどう搔い潜ったんだ?まあ、流石は雄英生…そう言った点に関しては油断出来ないな」

 

マスタードの毒ガスは原因不明、解析もほぼ難しく、最悪死ぬケースも高いと言われてる。

可能性があるとすれば忍学生だろうか、忍学生は得体が知れない人間だ。

毒ガスを回避する術は少なからず学んでるんだろう。

だから、対忍用専用銃弾を所持させていたのだが、それでもやられた…と考えると相当な手練れだろう。

 

「まあ良いさ、何方にしろ目標は回収出来たんだ、このままトンズラさせて貰う…じゃあ諸君達、アデュー!」

 

「ッ!逃がすかよ!」

 

パキィンとした冷ややかな音が鳴り、巨大な氷山の一角が轟の右側から発するも、コンプレスは姿を消した。

いや、正確には空中の上を歩いてるのだろうか、飛んでいる。

まるで見えない何かの上に歩いてるようだ。

 

「くそッ…!」

 

「そんな…ダメ!絶対に!」

 

「マジで…笑えないんだけど…ヤバいんだけど…!」

 

「逃がすなああァァ!!」

 

好機から一転、絶望え。

少年少女の顔色は絶望と言う名の闇に覆われていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい荼毘と蒼志ちゃん無線聞いたか!?テンション上げ上げMAXだぜェ!Mr.コンプレスのヤツ、早くもミッション達成だってよ!

 

遅えッつんだよなァ!?なんだか俺眠くなってきちゃったよ蒼志ちゃん寝よ?もう朝だぜ?」

 

「どうぞご勝手に。

荼毘、目的は達成しましたし、後は気を抜くことなくこの体勢を維持するまでですね」

 

「ちょっ、蒼志ちゃん本当に熱い!!クールだぜ!」

 

「ああ、そうだな…良くやってくれたよMr.は。

後は五分以内に無事な奴が戻ってくるのを待つのみだ…」

 

炎が激しく揺れる中、炎の光を浴びる人影が三人、悠長に語りながら帰りを待っている。

目標は達成した。これが無事に上手くいけば現代社会に置けるヒーローへ像への信頼は一気にガタ落ちし、雄英は致命的な打撃を受け、マスコミやメディアは大きく食らいつく。

 

信頼を揺らぐ大きな案件が重なれば、その揺らぎが社会全体に蔓延する…それこそ、ヒーロー殺しの目的と信念…現在()を壊すことに繋がる。

 

何度も襲撃を許す杜撰な管理体勢、挙句に生徒を犯罪集団に拉致される弱さ。

その事実が現代社会に悪影響を与え、ヒビを入れる。

オマケに裏社会…忍社会に大きなヒビを入れるには絶好のチャンスだ。

忍学生が敵の襲撃を受け、仲間が拉致されれば、上層部も黙ってはいられない。

表の社会に忍の存在を告知しなかったとしても、忍に対する不満やヒビは大きく入る。

二つの社会に大きな影響を与えることが出来るのだ、これこそ一石二鳥。

 

「ただ、毒ガスが晴れてやがる…マスタードやられたか…

アイツも良くやったが、今から様子を観に行ったってどうしようもねえし、ヒーローか忍に見つかる危険性も高い…

下手に回ると厄介だし、ここは大人しくするか…やっぱこう、上手く予定通りには行かねえな、出来れば全員無事であることを祈りたかったんだが…」

 

本来は炎とガスで囲まれ視界が見え辛いように策略を練ってたのだが、夜桜達によって妨害させられたのだ。

しかし荼毘達は気付くはずがなく、自分の分身を送った数十分後には毒ガスが晴れていた。

 

「まあ、これでも最善と考えた方が良いでしょう?我々は上手くやりましたし、他の方々が戦力を減らし且つ、有意義に状況は進めてるかと…ましてや此方には強固性を持つ方々や、カムイ集団に認定されてる私たちがいます、我々の痛手と向こうの戦力を減らした分、プラスマイナス思考で考えると当然の帰結では?」

 

「最悪だぜオイ!上手くいってねえし戦力は健全さ!

俺たちが強え、相手は弱え!ハイお終い!!」

 

「……トゥワイス、少し煩いです…」

 

「静かだよ!煩えよな!本ッッッ当にノリが良いね蒼志ちゃんは!機嫌いいじゃねえか、慰めてやろうか?」

 

トゥワイスに冷たい目線をガン飛ばしするものの、本人は至って平常運転。

テンションを上げ声を張りながら悠々と足や手、体を動かす。

 

「大体貴方は……――?」

 

「ん?どした?」

 

ふと、蒼志は視線を違う方向へと向ける。

訝しげな目で、草木の葉を凝視する。

そこに誰かいるのか?という鋭い視線をジッと眺めてるだけで、軽く戦慄してしまう。

 

「いえ…彼処から気配を感じるので……誰か来てるのでしょうか?」

 

炎に囲まれ燃える森の中、ここに居るのは三人だ。だがもう一名、違う何者かの視線を感じる気がしてならないのだ。

その気配が誰かまでは知らないのだが…

蒼志は【鬼火】を抜刀し警戒態勢に入る。

 

「おいオイ蒼志ちゃん、んな物騒なもん手に持ってどーしたよ!?楽しそうだな!」

 

「気配を感じませんか?何処からか…私たちを探ってるような…そうでないような…

兎に角、貴方達は気配には敏感ではないのです?」

 

「他の奴ら程じゃねえが、お前ほど優れてはねーよ。それと、気配って…俺たち以外、誰かここに居るのか?」

 

三人が喧騒に満ち溢れてる中、茂みに隠れてる一人の少年は、体を小刻みに震わせていた。

息を押し殺しながら、三人に怯えていた。

高校生とはいえ、ヒーローを目指す人間とは言え、一人の子どもが三人を相手にするのは無謀だ。

勇気と無謀は違う――

 

「……」

 

コツコツ、コツコツと足音が聞こえる。

蒼志が近付いて来てる。

刀に魂が宿ったかのように、蒼炎が鈍く揺らぐ。

張り詰めた空気に、一同は静かになる。

あのトゥワイスでさえもポーズこそは巫山戯てるが、ゴクリと固唾を飲み込み見守って居る。

 

ダメだ…来る!

 

少年が絶体絶命だと感じたその時――

 

 

「ヤッホー!」

 

「!?」

 

茂みの奥から、気楽に木と木を渡って行く少女が、蒼志に飛び付き抱きしめるように現れた。

思わず体勢を崩して後ろに倒れそうになるも、何とか足の力を入れて踏ん張ることに成功した。

 

「何だ……貴女でしたか鎌倉――」

 

「何だってのは、随分とした挨拶だねェ?」

 

まるで旧知の友に会え感動を受けた顔を満々と浮かべ立たせる鎌倉に、蒼志はつまらなさそうに、炎を扱う己の力とは真逆…血を通わない冷徹な視線を飛ばす。

それは鬱陶しいからか、鎌倉のキャラが嫌いだからか、苦手意識を抱く。

と言っても常人が抱くほどの嫌悪感は無く、何方かと言えば敵かと思えば鎌倉でしたというサプライズドッキリに驚かされて不機嫌になってるだけだ。

 

「気配の正体って鎌倉だったのか…驚かせやがって…」

 

「本当だよ!危険だぜ!!」

 

「仕方ないでしょう、気配が誰のものなのか…相手が気配を隠してれば分からない時だってありますよ」

 

「えへへぇ〜♪いやァ柳生ちゃんがまだあんなチカラあるなんて知らなくってさ…!

 

何とか逃げてきたよ、殺されたらたまったもんじゃないし、まだボクのやりたい事終わってないからね」

 

鎌倉は頬にこびり付いた血を、ケチャップでも舐めるように親指で拭い、ペロリと舌で舐める。

 

「おや?まだこんだけしか集まってないんですかァ?」

 

反対方面から茂みを掻い潜る音が聞こえる。

この声は…と聞き慣れた声に溜息をつく荼毘は、声の主に振り向く。

 

「イカれ野郎か…血は集まったか?」

 

トガヒミコ。

彼女は先ほどMr.コンプレスの通信が来る前に、お茶子と蛙吹と戦っていたのだ。

と言っても、戦闘…という乙女に相応しくないものより、恋バナをしていた…と言ったほうが正しいのかもしれない。

トガはルンルン気分で「いいえ、一人しか採れてません」と答えを返す。

 

「一人ィ!?死柄木が血は最低でも三人分は摂っとけ言ってたろ!?褒められるぜトガちゃん!」

 

「仕方ないですー、他のみんながゴロゴロ来ましたし、殺されるかと思っちゃいました」

 

殺す事は好きだが、殺されるのは嫌いだ。

自分勝手極まりない、とんだ凶悪な敵だ。彼女が敵だなんて到底思えないほどに――可愛らしい容姿を持ち、それでもって、危険だ。

 

「…ふっふっふぅ〜♪」

 

ふと、鎌倉が自慢気に口元をニヤリと釣り上げる。

まるで「君らはダメダメだな〜」と物語ってる顔が気に食わないが…

 

「そんな事もあろうかとねトガちゃん、柳生ちゃんの血採ってきたよ!」

 

鎌倉は鎌を手に持つと、赤黒い鎌から絞り出るように血が出てきた。

微かだが、鎌の色は少し薄くなった気がした。

 

「わあ!鎌倉ちゃんありがとうですー!

 

それにしても、これ溶けませんよね?」

 

「ダイジョーブ!その場合は忍術使ってるから、素は何ともないよ」

 

もしこれで舌が溶けたりでもしたらどうしようもないのだが…

しかし意外な事だ。

イカれ野郎と思ってた鎌倉が、トガの行動や結果を配慮し血を採って来るなど、誰が想像するだろうか?

 

「本当は雲雀ちゃんのも摂りたかったけど…あの子はボク達のメンバーに入る訳なんだし、まあ仕方ないよね?」

 

「ちょっ、鎌倉ちゃんマジ無能!本当にありがてェじゃねえか!結婚しよ!!」

 

突然のプロポーズに何も嬉しくない鎌倉は敢えてスルーするのが懸命な判断だと解釈し、懐からガラス式の試験管を取り出し血を入れる。

赤色の血が、試験管の中に入っていき、トガは「はあぁ〜♪」と頬を真っ赤に染める。彼女は血が付いたものが好きなのだ。

 

「私!忍ちゃんの血は初めてですので、何処か新鮮さが…!」

 

「血に新鮮さ求めてどーすんだテメーは」

 

荼毘は面倒くさそうに頭をボリボリと指で掻く。

やはりイカれた人間のことを考えようとしても、何も分からない。理解できない。

だからこそ、なのだが。

 

「そう言えば荼毘――

 

 

 

『脳無』はどうします?」

 

その言葉に、荼毘は反応し掻いてた指を止める。「ああ、そう言えば忘れてたな…」と荼毘は、秘密兵器・脳無を思い出す。

 

「Mr.コンプレスの通信があったとは言え、アレは荼毘専用脳無…

 

恐らく彼の声では届いてないでしょう。かと言ってこのまま放置するのも、此方の戦力を減らす意味になりますし…

 

回収した方が良さそうでは?」

 

「…そうだな、折角あんな便利なヤツくれたのに置いてくなんてあんまりだしな…」

 

荼毘は耳に手を当てる。

そして荼毘が「戻って来い」とだけ短く伝えると、通信を切った。

本当にこれで大丈夫なのだろうか、自分が何処にいて、どの場所に荼毘がいるのか分かってるのだろうか。

思考能力は無く、知能はかなり低いと言われてるあの改人・脳無は一体どうなってるのだろうか…

一体どうしたらそんな体の構図になるのだろうか…自然と頭の中に疑問が曇りのようにモワモワと増えていくが、どれだけ考えても答えが見つかる訳がなく、またああいった人間すら踏み外れてしまったあの改人・脳無は最早人ではないだろう…バケモノ…それこそモンスターと呼ぶに相応しい名だ。

 

「後は…ここで待機してれば問題なしか…」

 

荼毘が一安心し息を吐いたその時…何処からか上から声が聞こえ出した。

 

「――…ぃ」

 

「ん?」

 

「――…びぃ」

 

上から少しずつ、少しずつと声が聞こえてくる。この喧騒に満ちてる森の中(トゥワイスが一方的に皆んなに話しかけてるだけ)、この場の誰でもない声の主が、上から聞こえてくるのだ。

 

「――荼毘ィ!!」

 

「!」

 

今度はハッキリと聞こえた。

バッ!と上を振り向くと、ズドォン!と地響きが鳴る。

何かが夜空から降ってきたのだ。

そして見た瞬間、直感で理解した。

誰が?ではなく、何を?――

 

 

 

荼毘と何度も名前を叫んでいたのは、Mr.コンプレスで間違いはない。

しかし、眼に映る光景は不可解なものだった。

Mr.コンプレスは下敷きになるよう地面にうつ伏せで倒れており、背中には四人の人影が映し出されてる。

 

緑色のボサボサ頭をした、緑谷出久。

複製腕を生やしてるマスクを付けた大男、障子目蔵。

赤と白のハーフに分けた髪色に、左目には火傷を負った、轟焦凍。

赤いスカーフを首に巻き、メロンのような豊満とした胸を揺らし、コンプレスの左腕を拘束する少女、飛鳥。

 

以上の四人が、自分達の目の前に突然、何の変哲も無く現れたのだ。

先程まで駄弁ってた四人も、目の前の出来事に沈黙になる。

 

「ハイ!おい!知ってるぜコイツら四人のガキ共!誰だテメェら!?」

 

 





疲れた…
更新速度遅くなってるなぁ…少し休んで一気にバーって投稿したりしようかな?

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