光と影に咲き誇る英雄譚   作:トラソティス

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ヒロアカのBGMが好きすぎて最高にハイ!って感じですwww


9話「飛鳥と緑谷の涙」

「はぁっ…ああっ…いっっづぅ!!!」

 

涙を流しながらも、壊れた腕を押さえてる緑谷出久であった。

 

「み、緑谷くん…?どうしてここに!?」

 

「あ、飛鳥さ…ってうおおぉぉーーーー!!??」

 

緑谷は飛鳥に振り向くと、下着姿のままの飛鳥を見て赤面する。

 

「あっ…って、今はそんなことよりも…なんで此処が分かったの?」

 

「あっ、いや…それは……」

 

 

 

ちょい前

 

「待ってろ雲雀!今すぐ救けるからな!!」

 

柳生が雲雀を救けるために、自らの力で空間を歪ませ、その歪んだ空間を壊し、雲雀がいると思われる忍結界に入って行った時だ。そう、気付かれずに物影で見ていた緑谷は柳生を見ていたのだ…

 

「えええ〜〜〜?!!」

 

突如空間に入り姿を消した柳生を見た緑谷は早速混乱していた。

 

「な、何あれ!?柳生さんなんか変なのに入ってっちゃったよ…?もしかして柳生さんの個性…いやいやいや、忍びに個性なんかないしな……」

 

緑谷は顔を横にブンブン振ると、周囲を見渡した。

 

「柳生さんは見るからに無事だったな…まあ下着姿にも驚いたんだけどね……って、そんなことよりも、まず僕がどうするかが問題なんだよね…」

 

緑谷は、これから一体何をどうすれば良いのかを…

 

(待てよ…柳生さんが雲雀さんを救けにってことは…やっぱり敵(ヴィラン)かなんかが攻めて来てるんだよな…え?じゃあ…もう既に)

 

 

 

 

 

皆んなが危ない。

 

 

 

 

 

現在置かれてる状況に、緑谷はだんだん青ざめていく。

 

(ま、まずいまずいぞ…!!てか皆んなどこにいるの!?!?それが分からないと手の打ちようがない…!)

 

緑谷は焦りだし、アワアワと慌てていると…緑谷は不意におかしな点に気付いた。

 

「ん?アレッて…」

 

緑谷は一つだけ気になるところがあった。それは、廊下の窓側近くに空間が歪んでいるということを。

 

「なんで彼処だけ?」

 

首を傾げながら近づいていき、手で触れようとすると…

 

バチィン!

 

「いたっ!」

 

まるで静電気が走ったかのように思わせるビリビリとした感触が、指に残った。と言っても然程ダメージもない。

 

「これって…まさか!」

 

緑谷は瞬時に理解した。この空間に誰かがいると…誰がいるかまでは分からなかったが、先ほどの柳生のやり方を見て、緑谷はこの空間を壊せば誰かがいると分かったのだ。

 

(一体誰がいるか分からないけど…とりあえず思いっきり殴ってみよう!)

 

 

ゴン!!バチィン!

 

「いたい!!」

 

さっきよりも少し痛撃が増した。まあそれも当然なのだが…

 

(これ、普通に破るのは無理だな…じゃあ…)

 

緑谷は腕を見つめた。片方の腕はさっき使ってた腕。もう片方は包帯を巻いている。戦闘訓練にて爆豪と戦った時に使い、腕が壊れてしまったのだ。

 

(もう片方は使えるけど…こっちは使えないな……でも)

 

もし腕を犠牲にしたら、両腕は使えない。ただでさえ怪我をしているんだから…じゃあ、腕は犠牲には出来ない…となると、となると…

 

(どう…すれば…!)

 

緑谷はこの先戦うことも考えている…腕を犠牲にすれば戦えない…だからこそ悩んでいるのだ。

 

「いや…そんなことよりも…!!」

 

誰かが傷ついている…柳生は無事だとしても、あの冷静な柳生が焦るとなると相当なる敵なのだろう……いても経ってもいられなかった…

 

 

「自分の怪我なんかよりも…」

 

 

 

だからこそ

 

 

 

「救けなきゃいけないだろ…!!」

 

 

 

 

 

「待っててね…DETROIT(デトロイト)……」

 

 

 

 

 

 

 

一気にワンフォーオールの力を集中して…そして…

 

 

 

 

今!!

 

 

 

 

 

 

 

SMASH(スマッシュ)!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴオオオォォォォーーーーーーンンン!!!!!

 

 

 

 

 

 

瞬間、歪みが掛かってる空間が一気に開いた。

 

「やった…!!開い…っづゔ!!」

 

「み、緑谷くん!?」

 

 

 

 

現在。

 

「と…いう事なんです…!!はあ…はぁ…」

 

「そ、そんな…危ないよ緑谷くん……」

 

どうして自分がここへやって来たかを、全て話し終えた緑谷に、飛鳥は自分がボロボロで傷ついてるにも関わらず、緑谷を心配する。だが、緑谷もそんな激痛にあってるにも関わらず、飛鳥を心配している。そして緑谷は涙目になりながらも…飛鳥に微笑んだ。

 

「大丈夫だから!それに…飛鳥さんだって危ないじゃないか…」

 

「えっ…?」

 

初めて誰かに心配されたような顔をする。飛鳥は嬉しかった、緑谷が自分がボロボロになりながらも救けに来てくれた事を……

 

それを見ていた焔は、状況が整理できなかった。

 

 

 

 

「な、んだアイツは…!?」

 

 

焔は訳が分からない様子で、飛鳥と緑谷を見つめている。本人はその緑谷が誰なのかは分からないが…

 

(アイツも忍びか…?いや、そんな気を感じない…何よりも忍結界は一般人では破ることは不可能だ…!それをどうやって…?)

 

冷や汗を流しながら考えている。

 

(いや、そもそもコイツが一体何者かは知らない…が。飛鳥はコイツの知り合いなのか?となると…忍びの存在を知っている…!?)

 

焔は少し混乱はしているが、飛鳥の仲間なのだろうと判断した。

 

(いや、まあ…何方でも構わん…!)

 

自分は悪忍…規律を破ることや違法を犯すことが悪忍…ならば、どの道自分の存在が知られた以上、殺すしかないと…

 

「おい!お前!!」

 

焔は刀を握りしめては、緑谷に向ける。焔の声に反応した緑谷は振り返ってみると。

 

「ふぇっ!?あっ、は…いいいぃぃぃぃーーーー!!?」

 

緑谷はまたもや赤面する。何故って?焔も下着姿だからだ。焔は一瞬疑問を抱く様子を見せると、自分が下着姿であること…緑谷に見せられたことに恥ずかしくなる。

 

「…っ! うわぁ!見るなあ!」

 

「ご、ゴメンなさいぃ!!」

 

緑谷は手で顔を覆い隠すと、焔は殺意溢れた目で緑谷を睨む。

 

「まったく…それにしてもまさか飛鳥の他にも仲間がいたとはな…まあいい、どの道お前も始末してやるさ」

 

「えっ…となるとこの人ってヴィ…」

 

「緑谷くん!逃げて!!その人は悪忍なの!」

 

「えっ!悪忍…?」

 

緑谷は悪忍と聞いて半分はギョッとするが、もう半分は悪忍についてよくわからなかった。(ヴィラン)とは何が違うのか?と…

 

「ふん…ソイツ本当に大丈夫なのか?そもそも傷ついてるじゃないか」

 

焔はいつしか自然と、元の様子に戻ってきた。緑谷も勿論図星だった。もう腕は残ってないのだから。

 

「だらしないな…救けに来たと思ったら所詮はボロボロでやられてるただの『デク』人形じゃないか」

 

焔は緑谷に吐き捨てるように言った。すると緑谷はデクという言葉に反応し、不意に下をみる。

 

「デク…ね」

 

緑谷はそうポツリと呟くと、焔の言葉に一つ、ある人物を思い出した。それは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『出久って、デクとも呼べるんだぜー!』

 

『デクがどんな個性でも俺には一生敵わねーっつーの!』

 

『おいコラ!デクてめぇ!!』

 

『デクぅぅ!!死ねカス!』

 

いつもバカにしてくる爆豪。

 

そして…

 

 

 

『デクって、頑張れって感じで…なんか好きだ私!響きが!』

 

散々デクというあだ名で爆豪にバカにされ続けて来た緑谷。だがそんなある日、麗日に言われた言葉がとても嬉しくて、どうしようもなかったのだ。

 

 

 

「貴方の言う通り…僕はデクだ…今の僕の姿を見てデク人形って呼ばれても仕方ないのかもしれない…」

 

「緑谷くん!?」

 

「……?」

 

自分のことをデク呼ばわりされて、認める緑谷に動揺を見せる飛鳥。そして意外な反応を見せられた焔。

 

「でも、いつまでも弱いデクじゃないんだ……僕は、『頑張れって感じのデク』なんだああ!!」

 

涙目になっても、震えてる緑谷は焔に一喝する。その言葉は、前にも…爆豪の時にも言った言葉だ。

 

 

「だから…戦う!!」

 

 

「お前も…その飛鳥と同じムカつくなぁ!!」

 

焔は六爪に炎を纏わせる。

 

「だ、だめだよ緑谷くん…焔ちゃんには、多分勝てないよ…!」

 

飛鳥の叫びに振り向く緑谷。

 

「焔ちゃん?焔って、あの人だよね…」

 

緑谷は再び焔を見つめる。焔は緑谷を見ていると、怪我をしてる腕と、包帯が巻かれてる腕を見つめた。

 

「なんだお前?私に勝てるとでもいうのか?いや、それとも本気で戦えるとでも思ってるのか?そんな体で、腕で?」

 

焔の言い方はキツイが、しかしそれは事実と言わざるを得ない。緑谷の腕は両方とも使えないのだから…

 

「ハッ!ただの威勢のいい奴で、大したことないんじゃないか? まあいい…悪忍である私を見られたんだ、生かして帰す訳には行かないからな…」

 

焔は緑谷を煽るように何度も罵声を浴びさせる。それでも緑谷は挫けず、壊れてる拳を握りしめて…

 

 

「確かに、僕は今両腕壊れてて使えないし、正直言えば戦えない…ここに何しに来たんだって話だよ……でも!」

 

 

 

バッ!と拳を構える。

 

 

「誰かが傷ついて、倒れてて…殺されるかもって考えたら、いても経ってもいられなかった!!」

 

 

震えながら歩み寄る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから…腕を壊してでも、救けに来たんだろ!!!」

 

 

 

 

 

「っ!」

 

 

「なっ…!!」

 

 

飛鳥は、緑谷のその勇敢とも呼べる姿に、感動した。傷ついてまでも、そこまでしてでも救けようとする姿に。飛鳥はあの時の緑谷の姿を思い出した。

 

自分が嫌いな人に、爆豪に立ち向かったその姿を。

 

「緑谷…くん」

 

掠れながらでも、僅かな声でも声を振り絞り、名前を呼んだ。

 

「お前みたいなのに…何が出来るっていうんだ!お前みたいな弱いヤツが…綺麗事を言うな!!」

 

焔も怒声で言い返す。焔は勢いよく前方へと飛び、緑谷目掛けて刀を向く。

 

「くっ…!まずい!」

 

早い…それ以前に力が出ない。先ほどのワンフォーオールで、緑谷はもう既に体力が限界に達していたのだ。

 

「さあ、死ね!」

 

「緑谷くん避けて…!!」

 

飛鳥が叫んだ時はもう既に遅かった、避けれるタイミングすらない…そして刀が緑谷を…斬り裂くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

パキイィン!!!

 

 

 

「っ!?」

 

「えっ…?」

 

 

 

突如、地面から氷が伝わり、焔と緑谷の間に氷の壁が出てきた。そのため焔の刀が、緑谷に当たることはなかったのだ。して、その氷とは…

 

「これって一体…」

 

緑谷は首を傾げる。

 

「悪いが…」

 

振り向くと、そこには…

 

「テメェの目的が何かは知らねえが…とにかく、コイツ等は殺らせねえぞ」

 

氷を纏った男、轟焦凍がいた。

 

 

 

 

「と、轟くんまで!?」

 

「あ、アレ?と、轟くんなんでここに!?」

 

緑谷自身知らなかった様子で、飛鳥と同様に驚いている。

 

「何で此処にって…それはお前もだろ。俺はたまたま緑谷を見かけたから後追ってみたんだ」

 

轟は緑谷達に振り向き答える。

 

「立ち入り禁止の立て札があるのに、真面目なお前が入って行った…何かあると思って駆けつけてみたらこの様な状況だ」

 

どうやら轟も、心配だったようで駆けつけに来てくれたそうだ。この忍結界は緑谷が壊したために歪みが開き、暫く忍結界に穴が空いてたそうだ。

 

「す、凄いや轟くん…てか、気付けなかったんだけど僕……」

 

緑谷は安心した様子で轟にそういう…が。いつまでも焔(敵)は待ってはくれなかった…

 

 

 

ジュワアァァァァ〜〜…

 

 

 

「な、何!?」

 

氷が溶け、蒸発する音が聞こえる。振り返ってみると、そこには焔が炎を纏わせた刀で、氷に火あぶりをさせてる姿であった。

 

 

「お前ら…!どこまで来やがるんだ…」

 

焔は殺気立つ目で、三人を睨む。その殺気に緑谷は少し体を震わせ、飛鳥は負けまいと気を放つ。轟は至って普通に冷静だ。

 

「まあいい…所詮一人増えても問題ない…!」

 

焔は低く姿勢を構えて刀を向ける。緑谷と戦う時と同じだ。

 

「チッ…炎使いか…嫌なもんを見てる気分だ…『アイツ』を思い出しちまう…」

 

轟は少し顔を黒く染め、苛立つ様子を見せる。そんな様子をお構いないしに、焔は轟を見つめる。

 

「お前は、傷がないようだな…フン。そうでなくては面白くない…お前もその緑谷とか言うヤツみたいに、情けないようなことにはならないでくれよ?」

 

焔がフン…と鼻で小馬鹿にするように笑うと、轟は首を傾げる。

 

「情けない…?何処がだ?」

 

「なに?」

 

轟の質問に、焔も首を傾げる。

 

「緑谷は自分がそうなるって分かってたのにも関わらず、怪我してまでソイツ(飛鳥)を救けようとしたんだろ?命を賭けてまでも…救けようとすることの何処が情けないって話なんだよ」

 

「っ…」

 

轟の正論に、焔は少したじろぐ。もう話すらも聞き飽きたのか、刀を構えて切り掛かる。

 

 

 

 

「だから…怪我して何も出来ないことが…情けないんだよ!!!」

 

 

 

 

パキイィーーーン!!!

 

 

ギャリイィン!!

 

 

轟の氷の壁、焔の刀がぶつかり合う。氷にヒビが入るが、轟が更に氷を出して埋め尽くしていく。

 

「でやああぁぁぁーーーーーーーー!!!」

 

焔は身体中に炎を身に纏うと、埋め尽くそうとする氷とぶつかり合う。

 

 

「クソ…このままじゃ埒があかねえ……強えな、忍びってヤツは」

 

 

(これでも充分警戒してるし、忍びの強さは百も承知だったが、他にもこんな強い忍びが居たなんてな……)

 

轟は氷を作りながらも、心でそう呟いた。

 

「ハッ!氷使いとは驚いたが…此処までだな!」

 

バガーーーーーン!!!

 

瞬間。氷が割れて、そこから焔が飛び出てきたのだ。

 

「チッ…」

 

轟が舌打ちしたその時だった。

 

『皆んな、此処まで…撤退よ』

 

何処からか、不意に声が聞こえた。女性の声が。

 

「なっ……春花、どういうことだ!?」

 

その声の主は春花だった……焔がそう叫ぶと、春花は話を続ける。

 

『未来がやられたわ…そのため連動忍結界に歪みが生じたの。それだけじゃなく、焔ちゃんの忍結界も、大きな衝撃で大きく歪んじゃったのよ…だから此処までよ』

 

春花がそう言うと、焔は信じられんと言わんばかりの顔になる。すると、飛鳥、緑谷、轟を睨みつける。

 

「チッ…クソ! 今回は此処までだお前たち!!次会った時はそうはいかないからな?」

 

「…おう」

 

(いや、おうじゃないよ…!?)

 

轟が返事をすると緑谷は突っ込むように、心の中で呟いた。

 

続いて焔は、飛鳥に振り向く。

 

「そして飛鳥…これだけは言わせてもらうぞ!お前のようなヤツが忍びを名乗ることは、私は認めない…絶対に許さない!」

 

憎しみに近い目で飛鳥を睨むと、歪んだ空間に入っていき、その場から消えた。するとそれと同時に忍結界が消えて、元の場所に戻っていた。

 

「あれ?ここは…元の場所……?」

 

緑谷は辺りを見渡すと、旧校舎の廊下に窓などといったものがあり、来た時と同じ場所だ。

 

「らしいな…忍びって色んなことが出来るんだな……」

 

轟も周囲を見渡し、納得したような頷く。

 

「み、皆んな…ありがとう…!」

 

飛鳥は嬉しくて、涙をこらえて二人に頭をさげる。

 

「い、いいよ!当然のことだし…それに、間に合ってよかったよ」

 

「ああ、お礼は別に良い…それよりさっきのあの焔とかいうヤツ、相当強えぞ…悪忍ってのはこんなヤツらばっかなのか…」

 

緑谷はううん!と飛鳥にニコっと優しい笑顔で大丈夫だと言い、轟は焔のことを気にしている。

 

「分からない、それよりも皆んなは……あっ!柳生ちゃん!?」

 

飛鳥が指差すと…そこには、雲雀が泣きながら倒れてる柳生を抱きかかえている姿だった。

 

「柳生ちゃん…柳生ちゃん!!」

 

「なっ、や…柳生さん…!?」

 

「くそ…遅かったか…!」

 

飛鳥たちは駆け走る。飛鳥は何度も名前を呼び続け、緑谷は柳生の傷の深さを見て驚愕し、轟に至っては悔やんでいる様子だ。

 

 

忍結界にて、霧夜、凛サイド

 

「どうやら終わったようね、どう?霧夜先生、私の生徒たちは」

 

凛は我が自慢の愛弟子たちと言わんばかりか、微笑んでいる。

 

「ああ、確かに強いな…だが、これがお前のやりたかったことなのか?」

 

霧夜が問うと、凛は沈黙し、また話し始めた。

 

「……ええ、そうよ。だけど、まだやるべきことが出来た訳じゃないわ…」

 

「なに?」

 

霧夜は眉をひそめると、凛はその場を立ち去ろうとする。

 

「答えはいずれ分かるわ…それに、貴方の生徒と、『雄英高校』の生徒たちのところにも駆けつけた方が良いのでは?」

 

「なっ!?」

 

どうやら凛は、半蔵と雄英が繋がっていることに気づいてた様子だ。

 

「なぜそれを…?」

 

霧夜が問うと凛は…

 

「それくらい分かるわ、だって私は…霧夜先生の生徒ですもの…それじゃあ」

 

凛は忍結界から出ると、霧夜も元の場所に戻る。

 

「……凛…」

 

霧夜はそう呟いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、蛇女と名乗る悪忍たちは、撤退して半蔵から姿を消したのであった。そして柳生は、忍び専用の病院に連れてかれ、明日には退院出来るそうだ。一方、飛鳥と共にいた緑谷と轟は、霧夜に呼び出され、事情調査されたのであった。

 

「なるほど…大体君たちの話は分かった。それに飛鳥にも聞いたしな…」

 

「は、はい…本当にすいませんでした!!」

 

「……すいません…っした…」

 

緑谷と轟は正座で謝ると、霧夜は「気にするな」という顔で二人の頭を上げさせる。

 

「雄英の生徒で、君たちが飛鳥たちと同じクラスなら、忍びのことも知ってるとなるからな」

 

霧夜は苦笑しながら言う。

 

「や、柳生さんは明日退院出来るとして…僕またやっちゃったよ……」

 

緑谷は腕を見つめて、悩むように呟く。

 

「まあ、今回のような事件は仕方がない…上層部からも極力、協力して欲しいと言われてるしな」

 

「あの、ちょっと良いですか?」

 

霧夜がそう言うと、轟が手を上げ質問する。

 

「どうした?」

 

「悪忍は何で半蔵学院に攻め込んだんですか?」

 

ピタッと霧夜は止まる。数秒、間が空くと答え出す。

 

「現在俺もよく分からん…調査中だ」

 

霧夜は難しそうな顔をする。

 

「分かりました…」

 

轟はそう呟くのであった。

 

 

緑谷と轟が帰っていくと、霧夜はそのまま動かずにこう言った。

 

 

 

「斑鳩、葛城、出てこい」

 

 

シュバッ!と音を立てて二人は姿を現す。

 

 

「け〜っ…結局バレちった」

 

「霧夜先生…」

 

「いや何、お前たちが隠れるのも無理はない…忍びのことは秘密だからな。だがアイツらは別だ。今回の件については雄英高校の生徒たちとも協力しなければならないしな」

 

霧夜がそう言うと、斑鳩は納得がいかない様子だ。

 

「しかし…良いんですか?もし万が一この事が世間に晒されたりでもしたら…それに、今回のような悪忍の事件もあるんですよ?もしも殺されていたら…」

 

完全に世間にバレてしまう。それどころか、命そのものも、この世間にバレてしまうのだから。忍びの存在は死んでも世論には公表されないが…ヒーローの誰かが忍びによって殺されたとなると、命そのものを消すことはどうしても出来ないのだ。これがこの社会の表と裏の姿である。

 

「確かに斑鳩の言う通りだ…でもな、だからこそなんだよ」

 

「?どういう意味です?」

 

斑鳩は、霧夜の言ってることがサッパリ分からなかった。

 

「ヒーローと言うのは、ピンチを乗り越えていくものだ…それに、雄英高校は一番厳しいヒーロー育成学校だ。俺は見ただけで分かる。あの子達は簡単に死ぬようなたまではないとな」

 

霧夜は、まるで自分の生徒のように思えるように言うと、斑鳩も納得した様子だ。

 

「は、はあ…」

 

「ったく、斑鳩ももう少しは信じろよ〜…あそ〜れ揉みもみ〜♪」

 

「キャアアァ〜〜!!///か、葛城さん!やめて下さい!!////」

 

葛城はセクハラモードになり、斑鳩の胸を揉みだす。そんな二人を見て苦労するような顔で、ため息をする霧夜であった。

 

 

 

 

あれから遅くなり、半蔵学院の旧校舎から出る緑谷と轟。

 

「それにしても災難だったね…」

 

「ああ…」

 

緑谷と轟はあまり話すことなく答えるのであった。すると…

 

「緑谷くん!轟くん!!」

 

振り返ると、二人の名前を呼んだのは飛鳥であった。もちろん服は元に戻っており、ちゃんとしている。

 

「あっ、飛鳥さん!そういえば、ケガは大丈夫?」

 

「うん!大丈夫…それよりもゴメンね二人とも…危険な目に合わせて……」

 

飛鳥はシュン…と気を沈めると、二人に謝る。

 

「いやいや、全然大丈夫だよ!!気にしないで!」

 

「ヒーローは常にいつピンチが起きるか分からねえぞ…?だからこういう非常時な場合は仕方ねえ、謝るな。救けるのがヒーローなんだから」

 

緑谷と轟はそう言うと、飛鳥は「ありがとう…」といった。すると飛鳥は今度はもじもじとした恥ずかしい様子になる。

 

「…緑谷くん…あのね」

 

「ん?」

 

緑谷は首をかしげると、飛鳥は話を続ける。

 

「あたし、やられそうになった時、緑谷くんが怪我してまでも駆けつけに来てくれて…心配してくれて…そして救けてくれて嬉しかった…だから」

 

すると飛鳥は満面な笑みで、涙を流してこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「救けてくれてありがとう!」

 

 

 

 

 

「飛鳥…さん…」

 

緑谷はその飛鳥の気持ちを聞いて、色々な感情が溢れ出した。突然、不意に、何故か、あることを…オールマイトに、あの日、あることを言われたことを思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君は、ヒーローになれる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが緑谷出久の原点(オリジン)であり、ヒーローを目指す時で、初めて…憧れの人から言われた言葉であった。そして、人生が変わった。

 

瞬間、緑谷の目からも、涙が溢れ出てきた。

 

それを見た飛鳥は「クスッ」と笑みを浮かべて話し出す。

 

「あれ…?どうして緑谷くんが泣いてるの…?」

 

「あ、あれ…おか…しいな…涙が止まらなくて……」

 

お互いは涙を流しながら話している。緑谷は飛鳥の背中をさすり、飛鳥は緑谷の涙を指で拭いている。

 

「……」

 

轟は、そんな二人を静かに見つめているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、蛇女子学園では…

 

「今回の戦いで、ヤツらの秘伝忍法が通用しないと思い知らせることが出来たか?」

 

「ハッ!」

 

「よし、それで良い」

 

焔たちが返事をすると、鈴音はコクリと頷く。

 

「しかしこちらも全員を倒すことは出来ませんでした…そして、負傷者も一人…」

 

「っ…!」

 

焔は横目で未来を見ると、未来は目を細めるて、罪悪感を感じたのか、申し訳なさそうな顔になる。

 

「わきまえろ焔!倒すことが今回の忍務ではないのだ」

 

「ハッ!」

 

鈴音がそう言うと、焔は返事をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自室に戻った焔は、部屋で一人になり、紅い刀をじっと見つめている。

 

「……」

 

『一人が良いなんて、焔ちゃんはそれで、本当に幸せなの!?』

 

『だから…腕を壊してまで、救けに来たんだろ!!!』

 

『情けない?何処がだ?』

 

焔は、ふと三人の言葉を思い返していたのだ。自分は本当にこれで良いのかと、考えてしまう。

 

 

 

「あの子…あの子…絶対に許さない!!」

 

銃の手入れをしながら、怒りでいっぱいの未来は一人で怒鳴っている。柳生のことが相当許せなかったのだろう…

 

 

「あの大金持ちのお嬢様!見てて下さい…今度こそ『もやし』の味を、思い知らせてやりますわ…!」

 

スポットライトをもやしにあてて、ジョウロでもやしに水をやっている詠。もやしを栽培しながらも、「ふふふ」と笑うのであった。

 

 

「……」

 

日影は屋上で寝転びながら、自分の額に手を置いている。葛城に頭突かれた傷はもう治っていた。

 

「やっぱり…考えてもよう分からんは…」

 

日影はポツリとそう呟いたのである。

 

 

 

「あの子、私の人形にしちゃおうかしら…フフフ」

 

春花は、雲雀にあげたもう一つの巻物を胸から取り出して…

 

 

 

 

そして…

 

「へえ〜…ここが蛇女子学園ね」

 

水色の長髪の謎の女性は、クスっと笑みを浮かべて、蛇女子学園を見つめるのであった。




この最後は一体… (オイ
まあこんなドキドキハラハラ展開も、上手く出来るようにやっていきたいですww

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