艦隊これくしょん 幻の特務艦   作:アレグレット

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第三十一話 第一機動艦隊 後編

ミッドウェー本島攻略作戦はゆるぎないものとなった。だが、ここにきて葵が一つ作戦の修正を求めてきた。その理由は、偵察機によるミッドウェー本島並びに度重なる潜水艦隊による偵察の結果、ミッドウェー本島近海に有力な機動艦隊の存在が確認されたことによる。陣容からこれは先日ヤマトを空襲した敵の機動艦隊であることが確認された。ヤマト側はこれを第一機動艦隊と呼称。軍令部はまずこの機動艦隊を撃滅してヤマト本土の安全を確立させ、しかる後にミッドウェー本島攻略をする方針を取った。これにはだいぶ艦娘や軍令部参謀あたりから異論があったが、艦娘を交えた投票の結果、僅差でこの方針がとられることとなる。

「・・・いよいよミッドウェー本島攻略作戦が発動されるわ。」

梨羽 葵は主だった艦娘を会議室に招集していた。普段であれば長門が会議を主催し、概要を説明するのだが、今回の作戦は軍令部肝いりということで、葵が仕切ることとなったのだ。だが、それは前世の帝国海軍の総旗艦が時空を超えて次世代艦娘たちと相対し指揮を執るという光景でもあった。

「この戦いでは、前回私たちを苦しめた敵の第一機動艦隊が間違いなく出てくるはず。偵察機からの報告ではその陣容は本島に展開する艦隊に劣らないわ。しかもその機動性は私たちと同じくらいなの。したがって、これをまず撃破しなくては、ミッドウェー本島に肉薄できない。赤城、申し訳ないわね。ここにきての作戦転換で。」

呼ばれた赤城は目に力を込めて葵を見返した。

「いいえ。敵の第一機動艦隊を撃破しなくてはヤマトを防衛できないというのであれば、私たちは前進してこれを撃滅するべきです。」

「ありがとう。」

葵はふっと柔らかな表情になったが、すぐに顔を引き締めた。

「大淀。作戦概要の説明を。」

大淀は椅子をゴトッと鳴らして立ち上がり、ディスプレイを展開させて海域を映し出した。

「現在敵は、ここ、太平洋上にて空母6隻を主力とする主力部隊を展開中です。」

敵艦隊の所在及び戦力がマッピングされていく。

「意外に戦力が少ないな。」

武蔵が顎に手を当てながらつぶやく。

「はい。これは呉鎮守府がマリアナ諸島に陽動艦隊を出撃させたため、そちらに戦力を割いたことが原因と思われます。しかし、敵の主力から北西に空母2隻を中心とした支援艦隊が展開中。本隊と連携を取るかのように一定の距離を保ちつつ遊弋しています。」

「おそらく、私たちの進出を待ち構えているわ。本隊若しくは支援艦隊に殺到したところをどちらかが襲うという其角の挟撃体制を構築しているはずよ。」

葵が補足した。

「よって、まずはこの艦隊を叩き、しかる後に本隊を攻略するわ。」

「そんな悠長なことをしていて、大丈夫なの?全軍をもって出撃し、同時にこの2部隊を叩けば、蹴りはそれでつくわ。」

と、尾張。彼女の態度は紀伊が救援にきて以来変わっていた。冷ややかな性格は相変わらずだったが、もう面と向かって他の艦娘をさげすむことは少なくなっていた。この尾張の態度を最初は嫌っていた他の艦娘たちも徐々に彼女のことを受け入れつつある。そして尾張も、もう紀伊型空母戦艦の性能を誇ることはなくなっていた。絶対はないと身をもって知ったことが大きいのだろうと紀伊は思っている。

「今回の作戦は敵の航空戦力と艦隊戦力を漸減させ、かつこちらの戦力を消耗させないことが目的なのよ。当然こちらの被害は零ではないだろうけれど、できる限り味方の損害を少なくしながら敵の有力な艦をつぶしておきたいの。そして、最終的には私たちの進路を阻むこの第一機動艦隊という障害は取り除いておきたいわ。何か他に案があれば承るけれど。」

尾張は何も言わず黙った。それは不服の意味ではないことはこの妹の横顔を見ている紀伊はわかっていた。

「なら、実働部隊の編成やそのほかの具体的な作戦方針について、大淀。」

長門、陸奥、そして大和や大鳳たちはこの直前に話し合いを行い、もう作戦を極端に隠し立てしないことに意志を決定させた。いるかどうかもわからない裏切者を捜索するよりも目前の戦いに全力を挙げて当たるべきだという思いがあったし、何より仲間を疑っていては存分に力を発揮できないことに気が付いたからだ。

「今回の作戦は、高速機動艦隊を投入します。全速力で敵に接近し、一撃をもって敵を撃滅し、敵が増援に来る前に急速反転離脱を図るのです。」

大淀の指がポータブルキーを叩き、艦娘たちの編成表がディスプレイ上に表示されていく。

「オーダー表は以下のとおりです。讃岐、霧島、比叡、北上、大井、赤城、加賀、愛宕、矢矧、能代、野分、磯風、舞風、清霜そして、旗艦として紀伊。」

「なっ!?」

紀伊が声を上げるのと、周囲がざわざわという声を上げるのとが同時だった。

「どうして私が?!同行するのは実戦経験が豊富な先輩方ばかりです。それを差し置いて私が旗艦だなんて!!」

これまで旗艦を務めたことはある。だが、それは日常的な哨戒艦隊としての任務であり、今回の様な大規模作戦の旗艦を務めることは紀伊には経験がなかった。

「これは規定事項よ。」

葵がきっぱりと言った。

「ですが!」

「先日の横須賀鎮守府での戦闘指揮は見事だったわ。あなたが湾内で奮戦してくれたからこそ被害はあれで済んだのかもしれない。それにこれまでもあなたの戦術眼があったからこそ、艦隊が救われたことが何度もあったということは聞いているし。」

「ですが!!」

立ち上がろうとした紀伊の肩に手が置かれた。赤城だった。

「赤城さん?」

「紀伊さん。ご自分を信じられないのですか?」

紀伊の動きが止まった。

「私を、みんなを、これまで叱咤激励してくださったあなたの姿はとても立派でした。でも、ご自分のこととなるととたんに自信がなくなるように私には見えます。」

「それは、事実ですし――。」

「いいえ、違います。」

赤城は立ち上がった。さすがに第一航空戦隊の双璧である。凛とした挙動に紀伊は気圧されて彼女を見上げるしかできなかった。

「・・・・こういう言い方をしたくはないのですが、あえて言わせてもらえば、あなたは、卑屈です!!」

紀伊の眼が衝撃で見開かれた。この言葉は以前にも聞いたことがある。呉鎮守府で南西諸島方面に出撃する前のことだった。あの時も――。

「あなたのおっしゃっていることは卑屈にしか聞こえません。かつての尾張さんの例を出すようで申し訳ありませんが、あれほど傲慢になれとは言いません。ですが、卑屈すぎるのも駄目なのです。自分をしっかりもっておごらず、弛まず、前を向いて進むことが武人としての、そしてヤマトを護るために戦う艦娘としての姿なのだと私は思います。」

「赤城さんの言う通りだわ。」

乾いた声で加賀が言った。

「私はここに来る前にあなたに謝罪しました。それはあなたの鍛錬とたゆまぬ向上心を感じ取ったからこそ。でも、今の発言をするようなあなたでは私は先の謝罪を取り消さざるを得ないし、あなたについていこうとは思わない。」

「・・・・・・・。」

「旗艦を務めるのが嫌なのであれば、あなたは即刻呉鎮守府に帰りなさい。」

紀伊は黙り込んだ。周りで姉妹たちが不安顔で見守っているのがわかったが、彼女たちも何も言わない。赤城たちの言葉に対して反駁する材料がなかったし、見つからなかったのだろう。

 逃げ場がない。そう思った瞬間に紀伊は悟った。自分は前世に記憶がなく、造られた存在であるがゆえに、他の艦娘と違い、自身がない。だから他の艦娘たちに対して卑屈に感じてしまう自分はやむを得ないのだと。だが、それは単なる「卑屈」というだけに過ぎなかったのではないか。

 

『私を命がけで助けてくれたあなたは最高にかっこよかったのに。その時と比べたら今のあなたは大破して沈没しかけているボロ船同然よ!』

不意に瑞鶴の言葉がよみがえってきた。そう、鳳翔との試合に対して今と同じ、逃げようとしていた自分に浴びせられた言葉だ。

『あんたはそんなに卑屈な人だったの!?』

 

 もし、と紀伊は思った。仮に呉鎮守府に帰ったところで、利根たちは何というだろう。何もできない自分に朝から訓練に付き合ってくれ、励ましてくれた利根たちは、きっと自分を軽蔑するに違いない。利根たちだけではない。これまでずっとそばにいてくれた第6駆逐隊の暁たちも、瑞鶴も、翔鶴も、皆も――。

 

『私は卑屈だなんて言われたくはない。こんなところで私は終わりたくはない!!』

瑞鶴の言葉に対してそう叫んだことを紀伊は思い出していた。

(そうよね、あのとき私は大声でそう言った。今だってその気持ちは失われていない。正直怖いけれど、でも逃げ出すことの方がもっとつらい事なのだわ。)

「わかりました。」

紀伊は立ち上がって赤城を、加賀を見た。

「旗艦を引き受けさせていただきます。」

力んでいなかった。自然と声が出ていた。

「そして、必ず全員を無事に戻せるように全力を尽くします。」

再びざわめきが起こったが、今度は先の物と色合いが違っていた。赤城も加賀も何も言わなかったが、目を見れば彼女たちの気持ちはよく分かった。

「よく言った。それでこそ武人だ。」

武蔵が立ち上がっていた。

「姉様!!さっすがです!!」

讃岐も感激して抱き付いてくる。

「皆まだ話は終わってないわよ。」

葵が手を叩いて一同の視線を戻した。

「この間に各人は後退で艤装を点検。また全員が改装を受けてもらいます。あ、今回の派遣艦隊も帰投次第改装を受けてもらうからそのつもりで。」

「改装!?」

突然降ってわいた話に艦娘たちは色めきだった。改装はある程度練度が上がってこないと受けられないいわば艦娘をパワーアップさせる施術のようなものである。新型兵装を搭載したり、能力があがったりと様々なプラスが与えられるので、艦娘たちは改装にあこがれていたのだ。

 それが今回全員が受けるという。

「ですが、そのための資材は大丈夫なのですか?全員が受けることになると流石に資材が・・・・・。」

大和が不安顔になった。超弩級戦艦の彼女には改装に必要な資材の桁も多い。

「その点は心配ないわ。先の補充によって資材の備蓄も回復したし、それに南西諸島攻略以来、久々に大陸から先日輸送船団が到着して補給を受けたの。舞鶴鎮守府の奮闘のおかげだって。」

葵は皆を見まわした。

「さぁ、ここからは一気に行くわよ。全員今のうちに、休める時に休んでおくこと。いいわね?では解散!」

 

 

 

 

 

讃岐、霧島、比叡、北上、大井、赤城、加賀、愛宕、矢矧、能代、野分、磯風、舞風、清霜そして、旗艦として紀伊。彼女たちが横須賀鎮守府を出撃したのは、0900。夏を迎えた横須賀鎮守府近海海域では既に朝日が昇り切り、ギラギラとまばゆいばかりの太陽が雲一つない青空から光を放ち続けている。

 紀伊は全艦隊を2分した。第一艦隊は彼女が直卒する讃岐、赤城、加賀、大井、北上。

そして第二艦隊は霧島を旗艦とする比叡、愛宕、矢矧、能代、野分、磯風、舞風、清霜だった。

 これは戦闘海域に入り、作戦行動を起こすときになってから分断されるものであり、今は全艦隊が一つになって航行している。

「今回の作戦では、こっちは空母4人、相手は2隻。だから航空戦では撃ち負けないわよね、姉様。」

同航している讃岐が話しかけた。

「わからないわよ。支援艦隊だけ見れば、空母は2隻だけだけれど、本隊が合流すれば全部で8隻。しかもマリアナ諸島海域に進出している敵の別働艦隊が合流すればさらに増えるわ。」

「う~~~~・・・・。」

讃岐は急に吐き気を催したように顔色を変えた。

「だ、大丈夫!?」

妹の背中をさすってやりながら紀伊は落ち着かせるように

「今回は短期決戦よ。目標は空母の全滅。それさえ果たせば後はこちらは全速航行で撤退するから、長い戦いはしないわ。」

「わ、私、その、あの・・・。」

横須賀での戦いと言い、今回のことといい、讃岐はなにか艦載機にトラウマでもあるのか。気にはなっているが、中々話す時間が取れず、聞き出せずにいた。

(今回の戦いが終わったら・・・一度時間を取って聞いてみることにしよう。)

紀伊がそう決意した時、加賀と赤城がそばに寄ってきた。

「紀伊さん。偵察機から報告です。11時の方向、距離7万に敵艦隊あり。陣容、空母2、戦艦4、重巡2、軽巡6、駆逐艦8、目標の支援艦隊だと思われます。」

加賀が報告する。

「了解です。敵は艦載機を発艦していますか?」

「いえ、直援機が数機上空を旋回しているのみだとのことです。」

「わかりました。では予定通りここから艦載機隊を発艦させ、先制攻撃を行いましょう。赤城さん。」

「了解です。・・・加賀さん。」

「承知です。行きましょう、赤城さん。」

第一航空戦隊の双璧の二人は、ペアスケートをしているかのように優美な曲線を描きながら反転し、次々と艦載機を放ち始めた。

「さすが赤城さんと加賀さんですね~。わたしもあんな風に空母として活躍したいなぁ!」

讃岐が感嘆の声を上げた。

「そうね。私も見習わなくちゃ。さぁ、私たちもやるわよ。」

「はい!」

二人が艦載機を射出し始めた。ただし、紀伊の場合は半ばで打ち切ることとなっている。それは彼女が艦隊指揮官として他の艦娘たちに指令を下さなくてはならないからだった。

『全艦隊、戦闘隊形へ!第二艦隊は右翼に展開して敵艦隊を本隊へ合流する道を閉ざしてください!加賀さんと赤城さんは射程外へ退避、周辺警戒に備えてください。私と讃岐は左翼方向から敵を砲撃します!』

『了解です!』

全艦娘が了解する。

「あ、ちょっと!北上さんはどうなるわけ!?」

大井が気色ばんでこちらにやってきた。紀伊はその迫力に一瞬ひるんだ。もしここでこの二人を温存するなどと口に出せば、たちまち魚雷が飛んできそうな気がする。

「あなた方・・・あ、いえ、北上さんとあなたには一番大事な役目をやってもらいます。」

出撃前に長門と陸奥から助言を受けていたこともあり、紀伊は大井の『北上さん』を持ち上げるような話し方を心掛けていた。

「それ、どんな作戦ですか?!」

俄然大井の眼の色が変わってきた。

「敵の空母に接近してとどめを刺す役目です。弾雨をおかしての接近戦にはなりますが、回避において優れており、かつ戦艦の主砲並みの火力を持つあなたたちにしかできないことです。お願い、できますか?」

「もちろんです!!あぁ・・・北上さんの雄姿を皆が目撃することになるわ!!ねぇ、北上さん!!」

大井がうっとりとした目で空を見上げ、ついで北上を見る。きっとみんなに賞賛される『北上さん』の雄姿を妄想していたのだろう。

「え~~あたしゃ別にいいよ~~。」

北上が腰に手を当てて嫌そうな顔をした。

「ウザイ駆逐艦に一矢報いてやれるチャンスですよ。」

「うわっ、黒ぉ・・・・この人・・・・。」

讃岐が心底総毛だったように顔を凍らせた。

「そう言わないの。大井さんも北上さんもなくてはならない人です。私たちは二人を護衛しつつ、前進して敵戦艦を攻撃するわよ。」

「はい。そっか。今度は戦艦として戦闘をサポートしないとですね。」

讃岐はうなずくと、主砲の点検を始めた。開戦直前に作動しないということがないようにと言うのだろう。紀伊も念のため艤装を点検することにした。

(今回の戦いはほんの序盤だけれど・・・・それだけに躓くことがないようにしたいわ。)

慎重な面持ちで彼女は胸にそうつぶやいていた。

 

 

そして1時間後――。

紀伊たち艦娘はついに敵の支援艦隊をその射程内に捕えることに成功した。

「全艦載機、突撃!!」

晴天に向かって紀伊の手が振りぬかれた。

「能代さん、野分さん、舞風さんは対空戦闘用意!!比叡さん、霧島さんは右翼に展開しつつ主砲で敵戦艦をけん制。愛宕さん、矢矧さん、清霜さん、磯風さんは敵右翼に迂回し、航空攻撃終了と同時に近接戦闘を開始!!そして・・・・。」

紀伊は重雷装巡洋艦の二人を見た。

「私と讃岐が護衛します。有効射程まで近づいたら、空母のみに攻撃を集中!!確実に仕留めてください。」

「別に護衛してもらわなくても平気――。」

大井がそう言った時ものすごい水柱が至近で立ち上がった。ここにきて敵はエリート以上のレベルで固められている。紀伊が出会ったフラグシップ級戦艦の姿も確認できていた。当然その練度は高い。

「・・・・やっぱり、護衛、お願いします。」

「大井っち、無理しない方がいいよ。あたしたちの装甲って基本紙だからさぁ。」

北上と大井を護衛しつつ、突撃してきた敵の軽巡を讃岐が一撃で轟沈させ、続く駆逐艦隊を紀伊がけん制射撃を行い、雷撃地点に近寄らせなかった。その紀伊の左背後をかすめるようにして北上、大井の二人が猛速度で敵艦隊に突撃する。

「北上さん、大井さん、お願いします!!!」

紀伊の言葉がすぐわきを通過した二人の耳に流れ込む。

「了解!!北上さん!!敵のヲ級が増速したわ。逃げるつもりです!!」

「散布角は10度、目の前のヲ級2隻に向けて一斉雷撃、いくよ、大井っち!!!」

「はい!!」

二人は魚雷発射管を構えた。

「テ~~~~~~ッ!!!」

放たれた魚雷は綺麗に放射状に広がっていき、増速を始めたヲ級2隻に3本ずつ命中し、大爆発を起こした。さらに追走するように航行していた敵戦艦ル級フラッグシップと重巡エリートに命中、フラッグシップを大破させ、重巡を轟沈させた。

「今です!!比叡さん、霧島さん!!!」

紀伊が叫んだ。

「了解です。比叡姉様!」

「主砲、構え!!」

二人が主砲砲塔を手負いの戦艦群に向ける。

「主砲、斉射、始め!!!」

轟音と共に放たれた35,6センチ砲が敵戦艦を貫いた。

「愛宕さん、矢矧さん、能代さん、皆さん!!お願いします!!」

霧島の求めに応じ、それまで軽巡以下と水雷戦闘を行っていた矢矧たちが一斉にうなずく。

「愛宕先輩、指揮をお願いします。能代、ここは任せたわ。磯風、清霜、私についてきて。航空隊の支援の下、残りの大型艦をつぶしに行くわ。」

敵はその数をだいぶ減らされ、さらに空母を全滅されられたとはいえ、まだ戦艦は大破した一隻を除き健在だったし、重巡以下とスクラムを組んでこの戦場を離脱しようとしている。矢矧たちと目の前で交戦する軽巡以下の艦隊はさらにこの艦隊を護るべく猛進して間に割り込む動きを見せていた。愛宕、能代たちはそれらの動きに合わせつつ、的確に軽巡艦隊を沈めていく。矢矧たちはこの敵艦隊を大きく迂回して、敵の中枢に突撃していく。

「加賀さん、敵の残存艦隊に攻撃機を集中。できる限り撃破しましょう。」

「いいの?空母は撃破したし、初動目的は達せられたと思うけれど。」

「敵の戦意はフラッグシップを大破させられたことで低下しています。今ならそれほど損害がなく敵を撃破できると思います。それに・・・・・。」

「それに?」

「第一航空戦隊として私は恥ずかしくない戦いをしたい。」

にじみ出る赤城の想いを受け取った加賀は無言でうなずいた。二人は艦載機を順次発艦させ、敵艦隊に向けて吶喊せしめた。その下では第一斉射を終わった大井、北上の二人が転進して敵艦隊の真横につくべく運動を開始している。紀伊、讃岐は二人を護衛し敵艦隊に砲撃を浴びせ続けていた。さらに反対側からは比叡、霧島の砲撃がまだんなく続き、そして矢矧たちが近接戦闘を仕掛け、軽巡艦隊を撃破した愛宕たちもこれに加わった。

 

 

艦種が異なっているが、すべての艦娘たちがまさしく一糸乱れぬ連携で敵艦隊を相手に奮闘していた。

 

 

 


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