「……終わった」
終了を宣言して、体を離す。今日は比較的楽だった。いつもこうだといいのに。
「ありがとう。いつも悪いな」
「気にしないでいい。これが仕事」
とは言っても、その体を取っているのは彼だけだ。身内にも業を施しているがそれは役目であり、生活の糧を得る為に施しているのは彼だけだ。
「次は、いつになる?」
「多分早まる。今月の半ばからタイトル戦と大会が一気に来るからな」
思わず顔が歪んで、それを見た彼が謝ってくる。咎める気持ちがなくはないが、それより心配なのだ。彼は平然と無理をする。次に来た時どれ程歪になっているか……手間を思うと、そろそろ腹を決めて欲しくなる。
「……そんなに胸を当てられるのが好きなの?」
「別に俺から望んだ訳じゃないの分かってて言ってるよなお前?」
早口だから慌てているのがバレバレだけどそこはツッコまない。彼が大きな胸を好むのは知っている、けどそれを無闇につつくのではなく、意識させるのが大事。母の受け売りだけど、しっかり効いている様で何より。
「魂の調整なのだから心の臓を近付けるのは当然のこと。本当ならまぐわうのが一番」
「年頃の娘が躊躇なくまぐわうとか口にすんな!」
「年頃の娘なのだからむしろ当たり前」
「巫女服着てんだからもう少し清廉さを押し出して!」
「巫女に幻想を抱く者はみんなそう言う」
「男はいつまでもロマンを求める生き物なんだよ!」
知ってる。
「まあそれは良い。そんな事より、あまり無茶はしない様に」
「……無茶すんなって言われてもな。そもそも、意識してやってる事じゃないし」
「意識して出来るなら、今頃貴方は世界でも有名な打ち手になっている。そうなる前に死んでいるだろうけど」
「怖いこと言うなよ」
「自覚に乏しいのが悪い」
凄いけれど、弱い力。その形に収まっているからこそ、彼は人として生きている。慣れるか、磨り減るか。どちらにせよ厄介な事に変わりはないけれど、出来るなら麻雀からは足を洗って欲しい。今の私が言ったところで無駄だけど。
「自覚ったってな……その、お前や神代さんが言ってる能力だか異能だか、説明は受けたけど自覚の持ちようがねえだろ、アレは」
「それは京太郎が悪い」
身に付けた時に方向性を定めず、闇雲に打つからそうなった。自業自得以外の何物でもない。
「へえへえ、俺はどうせ鈍感ですよ」
「胸への興味を抑えればマシになると思う」
「それは無理」
即答だった。良いことだけど、悪いことだ。
「んじゃ、そろそろ帰るわ。あんまり長居もしてられないし」
「今日はリーグ戦だっけ」
「そうそう。中堅で出る予定だから、時間あったら見てくれな」
「そうする」
調整の結果を推し図る為にも必要だし、時間になったらお母さんが呼びに来るし。
「ばいばい」
「おう、またな」
そろそろ覚悟を決めるべきか。ふと、思った。
よくわかるはるる視点のあらすじ
三年くらい結婚相手として見定めている。両親からはゴーサインが出ている。