√Letter ルートレター オリジナルエンドルート投稿作品(落選) 作:高津カズ
○松江駅
マックス、駅前にやってくる。
マックス「えっと、この地図だとこの辺なんだけど……」
マックスは辺りを見回しながら歩く。
看板に『小雲堂』と書かれた小さな古本屋がある。
マックス「あ、あれだな。さっそく入ってみよう」
○小雲堂・店内
マックスが中に入ると、小雲が奥から出てくる。
小雲「いらっしゃい」
マックス「じじい! なんでこんなところにいるんだ?」
小雲「何を言っておる。ここはわしの店じゃぞ」
マックス「あんたの? というかじいさん、地元の人間だったのかよ。
じゃあなんで松江荘に入り浸ってるんだ」
小雲「あそこの風呂とメシは最高じゃからのう」
マックス「あ、そう。まあいいや、店の中を見せてもらうぞ」
小雲「駄目じゃ」
マックス「なんでだよ」
小雲「入場料を払ってもらわんとのう」
マックス「金取るのかよ」
小雲「お金じゃなくてもええぞ。わしを満足させられるものじゃったらな」
マックス「満足って言ってもな……」
マックス、少し考える。
マックス「あ! そういえば……」
マックス、大林アサヒのレコードを出す。
マックス「大林アサヒの『古い名前で店にいます』だ。
これ欲しがってたよな」
小雲「おお! それそれ! 欲しかったんじゃよ!」
マックス「それで満足してくれるか?」
小雲「満足満足大満足じゃ! ほれ、好きなだけ見て良いぞ」
マックス「じゃあ遠慮なく」
マックス、店内を見回す。
15年前の『ティーンズ・クィーン』11月号がある。
マックス「あった! これだ!」
値札には『壱億円』と書いてある。
マックス「壱……1億!?」
小雲「お目が高いな小僧。
その雑誌は松江の可愛い子ちゃんが載っておる『ぷれみあ』本じゃ」
マックス「ちょっと勘弁してよ。たしかにレアかも知れないけどおかしいだろ」
小雲「そんなこと言われてものう」
マックス「頼むよ。これが必要なんだ」
小雲「ふうむ、そうじゃのう」
小雲、少し考える。
小雲「じゃあ、わしの質問に答えてくれたら考えてやろう」
マックス「考えるだけかよ……。まあいいや。で、質問って?」
小雲「おぬし独身じゃな? 彼女はおるのか?」
マックス「いないけど。っていうか、なんだよその質問」
小雲、マックスの話を聞かず続ける。
小雲「松江には何をしにきたんじゃ」
マックス「人の話聞けよ。……ったく。人探しだよ。まだ会えてないけどな」
小雲「どんな真実も受け入れる覚悟はあるのか?」
マックス「はぁ?」
マックス(どういう意味だ?
このじいさん、たまにギクッとすることを言うな。
まさか、何か知っているのか?)
マックス「どういう意味だよ。まさかじいさん……」
小雲「答えんか」
マックス「……」
マックスは考える。
マックス(俺はその真実を知りに来たんだ。今更、後には退けない)
マックス「……あるよ」
小雲「そうか」
小雲、そういうと『ティーンズ・クィーン』11月号を手に取る。
小雲「ほれ、お前さんに譲ってやる」
小雲は雑誌を差し出す。
マックス「いいのか? じいさん、ありがとう」
マックス、雑誌を受け取る。
小雲「頑張れよ、若者」
マックス「……なあ、じいさん」
小雲「あー疲れた。久々の客じゃったからの。
わしはもう休ませてもらうとするわ」
小雲はマックスの話を遮り、奥へと引っ込んでいく。
マックス「……」
○松江荘・部屋
マックスが帰ってくる。
マックス「さて、さっそく見てみよう。この本に彼女が載っているはずだ」
マックス、『ティーンズ・クィーン』11月号を開く。
『街で見かけた可愛い娘』のコーナーに、
京町商店街で写っている女子高生。
松江大庭高校の制服を着ている。
マックス「商店街で撮影されているのはこの娘だけだ。
ということはこの娘が俺の……」
マックスは写真を見つめる。
マックス「よし、これで材料は揃ったな。
後は、クラスメイトたちの話を聞けば、
15年前の真相が明らかになるはずだ」