√Letter ルートレター オリジナルエンドルート投稿作品(落選) 作:高津カズ
○東京・事務所(現在)
マックスが荷解きをしている。
マックス(東京に戻った俺は念願の事務所を持った。
これからの事を考えると楽しみでもあり、不安でもある)
栞「これ、こっちでいいかしら」
マックス「あ、うん。そこでいいよ」
マックス(結局、俺は文野教授に騙されていたってわけだ。
教授だけじゃない、クラスメイトたちもだ。
先に介護施設に着いたクラスメイトたちは、
すでに教授からある程度話を聞いていたらしい。
そして、口裏あわせをして一緒に俺を騙していた)
マックス「どうりで俺に話を聞くのを優先させてくれたわけだよな」
マックス(そして教授は、
栞さんが毎年亜弥さんの命日に墓参りをしている事を知っていた。
だから俺が墓参りに行けば会えることは当然わかっていたわけだ。
それで最後まで真実を言わず、驚かせようと黙っていたらしい。
でもそれは教授の発案ではなく、
クラスメイトたちの思いつきだったそうだ。
俺に対する軽い仕返しだったらしいが、正直重すぎだ。
ちょっと勘弁して欲しい。
由香里さんは『15年も待たせた罰』と言っていたが……)
マックス「まあ、今になってはそれもいい思い出か……」
マックスはダンボールから写真立てを取り出す。
栞のクラスメイトたちと撮った、
『10人』で写った写真が入っている。
栞「どうしたの?」
マックス「ん? いや、なんでもないよ」
マックス(今、俺の隣には栞さんがいる。
それだけでいい。
それだけでこの先どんなことがあっても乗り越えていける)
栞「なに? 顔がにやついてるわよ」
マックス「ちょっとね、色々とさ」
栞「なによそれ、変なの。
あなたとの付き合い、もう一度考えようかしら」
マックス「ちょ、ちょっと勘弁してよ」
栞「嘘よ」
栞が笑う。マックスもつられて笑う。
マックス「そういえばさ」
マックスが写真立てを棚の上に起きながら言う。
栞「なに?」
マックス「今更なんだけど、
あの墓参りの時の亜弥さんへの手紙、なんて書いたの?」
栞「亜弥さんへの手紙?」
マックス「うん。その……亜弥さんのことで色々あったわけだからさ。
ちょっと気になって。
やっぱり、言い辛い内容かな」
マックスの言葉に、栞は伏せ目がちに答える。
栞「そうね……。たしかにあの頃は、辛くて苦しい思いばかりしてたな。
だから今でも辛い過去には変わりないけど。でも……」
栞は少し考え、そしてやさしい笑顔で言う。
栞「多分、あなたと同じ」
マックス「……そうか」
マックスも笑顔で答える。
○蓮光寺
墓に供えられた二通の便箋が雨で透けている。
そこに滲む二つの『ありがとう』の文字。
END