√Letter ルートレター オリジナルエンドルート投稿作品(落選) 作:高津カズ
○連光寺(数日後・亜弥の命日)
マックスがやってくる。
手には花と一通の手紙。
マックス「……」
マックス、無言で進んでいき、一つの墓石の前で立ち止まる。
『文野家之墓』と刻んである墓石。
マックス「こんにちは、『文野亜弥』さん。今日が……命日なんだってね」
マックスは花と手紙を供え、墓石の前で目を閉じ手を合わせる。
『サーッ……』(小雨の音)
マックスは雨に構わず拝み続け、しばらくして目を開ける。
マックス「さて、本降りになる前に帰るとするか」
マックスが立ち上がろうとした時目の前が薄暗くなる。
マックス「ん?」
マックスが上を見ると、頭上に傘が差し出されている。
振り返ると、
顔の半分を手紙で隠すようにかざした女性が立っている。
マックス(!?)
栞「……」
マックス(栞さん!?)
マックスは立ち上がり横へ飛びのくと、驚愕の表情で栞を見つめる。
栞は手紙を墓に供えると、手を合わせる。
マックス(栞さん!? でも栞さんは……!)
マックス「ま、まさか、ゆ、幽霊……!?」
栞「え?」
栞は拝むのを止め、呆気に取られたようにマックスを見る。
そして、マックスに傘を差し出し微笑みながら言う。
栞「『姫が森の姫』かも」
マックス「ひ、姫?」
栞「……冗談です」
栞ははにかみながら言う。
マックス「……じゃ、じゃあ本当に栞さんなのか?」
栞「はい。吉岡栞です」
マックス「生きて……いたのか」
マックス(……俺にとってはたしかに『姫が森の姫』のようなものだ。
嬉しいのだが、それ以上に驚いている)
栞「……」
マックス(しかし……いざとなるとなかなか言葉が出てこないもんだな。
彼女に聞きたいことなんて山のようにあるのに、情けない)
その後、二人はしばらく無言になる。
栞「15年前……」
沈黙を破るように栞が口を開く。
栞「亜弥さんと偽って文通したこと、謝ります」
マックス「あ、いやそれは別に……事情は、聞いたから」
栞「悪いと分かっていてもそれでも……あなたとの文通は楽しかった。
辛いとき苦しいとき、あなたの手紙が支えになりました。
やっと、お礼がいえます」
マックス「お礼なんて……それはお互い様だよ」
栞「それに、私にかけがえのない宝物を与えてくれた」
栞が一枚の写真を差し出す。
マックスはその写真を受け取る。
栞が7人のクラスメイトと撮った写真。
『15年前』の制服姿で写っている。
マックス「え……?」
マックスが目をこすると、写真の8人が今の姿に戻る。
8人の顔は変わらず笑顔のまま。
栞「どうしたの?」
マックス「……違うよ」
栞「え?」
マックス「これは、最初からきみの元にあったものだ」
マックス(そう。ただ少し、遠くへ行っていただけなんだ)
マックスが写真を返す。
栞「……うん。そうかも知れない」
マックス「そうだよ」
マックスは空を見上げる。
マックス「雨、もう少しで止みそうだな」
栞「そうね。もう役目は終えたから」
マックス「え?」
栞「縁雫」
栞が微笑む。
マックスもつられて笑う。
栞の姿が、15年前の制服姿になる。
栞「はじめまして。
会いたかったよ、マックスくん」