√Letter ルートレター オリジナルエンドルート投稿作品(落選)   作:高津カズ

15 / 19
10章『木洩れ日の便箋』・7

マックス(とはいえ、栞さんの居場所だが……)

マックス「けど、どうする?

     みんな栞さんの居場所に心当たりはないんだよな?」

  美咲「まあ、そうね……」

マックス(うーん、どうすればいいのか……)

マックス「そうか!」

  美咲「な、なによ急に。ビックリするじゃない」

マックス「文野教授だよ!

     文野教授なら栞さんの居場所を知っているかもしれない!」

  渡辺「その手があったか!」

  理子「で、でも文野教授の居場所はどうやって調べるの?」

マックス(人の居場所と言えばこいつだな)

マックス「メガネ、頼んだ」

  田中「ちょっと待ってくださいよ! 駄目ですよ! 個人情報です!」

マックス「勘違いするな。お前に罪を犯せとは言っていない。

     でも、お前は市役所職員なんだ。

     なにかのはずみで知ってしまうってこともあるよな」

  田中「き、詭弁ですよ!」

マックス「頼む!」

  田中「駄目です!」

マックス(くそ……こいつ以外頼れるヤツがいないっていうのに。

     あ、まてよ。あいつの言う事なら聞くかな)

マックス「……ガリ、すまん。頼んだ」

  美咲「もう……仕方ないわね。犯罪の片棒なんて担ぎたくないんだけど」

マックス「お前だって知りたいだろ? 頼むよ」

  美咲「……はあ」

     美咲は、ため息をつく。

  美咲「田中くん、お願い。今、頼れるのはあなたしかいないの」

  田中「わかりました! すぐ市民課の知り合いに聞いてみます!」

マックス「おい」

     田中は、そのまま走り去っていく。

マックス「なんて単純なヤツなんだ」

マックス(まあ、いいか。これで文野教授の手がかりが掴めそうだ)

     マックスは灯台を見上げる。

マックス(……)

  渡辺「じゃあ、俺たちもとりあえず駅まで戻ろうぜ」

  野津「ああ、そうだな」

     渡辺の言葉に、各自歩き出す。

  渡辺「おい、どうした?」

     歩き出さないマックスに、渡辺が問う。

マックス「灯台、ちょっと登ってもいいか?」

  渡辺「はあ……お前この状況でそんなことよく言えるな」

マックス「栞さんが見ていた景色、俺も見たいんだ」

  渡辺「……」

     渡辺は少し考え、頭を掻く。

  渡辺「本当にお前は卑怯者だよ」

マックス「何がだよ」

  渡辺「うるせえ、とっとと行ってこい。

     文野教授の居場所がわかったら連絡する」

マックス「わかったよ、ありがとう」

  渡辺「……もしお前とクラスメイトだったら確実に犬猿の仲だな」   

マックス「はっ、サルだけにか」

  渡辺「そういうとこがだよ、馬鹿野郎!

     ったく、なんで栞はこんなヤツ……」

     渡辺はブツブツと文句を言いながら、去っていく。

マックス「……さて、登るか」

 

 

○日御碕灯台・展望台

 

     マックスが展望台にやってくる。

マックス「……これが栞さんが見ていた景色か」

マックス(すごいな。どんな遠くまででも見渡せる気がする)

     マックスは、陸の方に目を向ける。

マックス「えーっと、東京はどっち……」

     マックスはそう言いかけて、何かに気づいたように言葉を止める。

マックス「ああ……そういうことだったのかな」

     マックスは少し照れたように、笑う。

     その時、メールの着信音が鳴る。

マックス「サルからメールだ」

 

 

『文野教授の居場所がわかった。大田市の介護施設にいるらしい。

 俺たちは先に向かう。住所を送るからお前は一人で勝手に来い』

 

 

マックス「文野教授の居場所わかったのか」

マックス(良かった。これで希望が見えてきた)

マックス「……希望か」

 

 

10通目の手紙の返信内容を思い出す。

 

 

『手紙ありがとう。俺は相変わらず元気です。いつでも全力のマックスだしな。

元気が無いとは思っていたけど、俺の想像より深刻だったみたいだな。

そこまで気づいてやれなかった。こういうところが駄目なのかな。

でも、元気がでたようだね。良かったよ。

人ってなかなか素直になれないよな。

たしかに俺は言いたいことは言うタイプだから、

信じてもらえないかもしれないけど、

それでも本当に言いたい事は言えなかったりするんだ。

相手の事を思っているつもりでも、

遠まわしにしか気持ちを表現できなかったり。

でも、俺たちはまだ子供なんだし、それでいいんじゃないかな。

もう卒業する俺たちにとって、

この三年間は二度と戻らないかけがえのない時間だった。

でも、戻る必要は無いんだよな。卒業は新たなスタートだから。

また同じかそれ以上の時間を新しく作ればいい。

そしてその先の未来はきっと明るい、希望に満ちている。

そう、信じているよ。

 

こちらこそ一年間ありがとう。

 

                               マックス』

 

 

 

マックス(そう、俺たちの未来は……希望に満ちている。

     今でもそう、信じているよ)


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。