√Letter ルートレター オリジナルエンドルート投稿作品(落選) 作:高津カズ
○文野邸・リビング(15年前の12月25日・夜)
文野邸のリビング。
大きなクリスマスツリーが、綺麗な飾りつけをされ置いてある。
そのツリーを囲むように、
クラスメイトたちが楽しそうにパーティーをしている。
デブ「こんな美味しいケーキ食べたことないよ」
栞「さっきから何食べてもそればっかりね」
栞が笑っている。
メガネ「みんな、もう少し遠慮というものを覚えてくださいよ!」
サル「うるせえなあ。じゃあ、お前は食うなよ?」
チビ「そうそう。お前の分まで俺たちが食ってやるよ」
ビッチ「ああもう、困ったわ。美味しすぎて食べ過ぎちゃうじゃない」
栞「ビッチったら。今日は年に一度のクリスマスパーティーなんだから」
由香里「そうそう。それに美味しいんだから仕方ないわ」
栞と由香里、顔を見合って笑う。
文野教授と洋子は、
クラスメイトたちの楽しそうな姿を笑顔で見ている。
次の瞬間、いきなり部屋の電気が消え、真っ暗になる。
ガリ「キャッ!?」
サル「なんだなんだ!?」
チビ「停電か?」
メガネ「いえ、他の家は電気が点いてますしブレーカーじゃないですか?」
ビッチ「じゃあ、誰か見てこなきゃ」
文野教授「私が見てきましょう。皆さんは動かないでここにいてください」
文野は、部屋を出て行く。
由香里「びっくりしたわね」
ガリ「もう、いいかげんにしてよ……。私、駄目なのよ……」
ガリは震えながら、栞にしがみついている。
栞「大丈夫だよ、ガリ。私がついてるよ」
ガリ「栞……」
栞「ふふっ。ガリにはいつも守られてばかりだから、
たまには私が守らなきゃね」
ガリ「……ありがとう、栞」
リビングの電気が点く。
サル「お、点いたぞ」
メガネ「やはりブレーカーでしたかね」
デブ「暗いと食べづらいから良かった」
チビ「お前、すごいな……」
文野教授「いやあ、驚かせてすいません」
文野が申し訳なさそうにリビングに戻ってくる。
文野教授「やはりブレーカーが落ちていました」
メガネ「ツリーの電飾のせいですかね?」
文野教授「どうでしょう。なにぶん、古い家なので……」
サル「でも、こういうのもいいんじゃないか?」
サルが場の空気を変えるように言う。
チビ「そうだな。ドッキリみたいで悪くはなかったな」
ビッチ「本当にドッキリしてる人が一人いるけどね」
ガリ「うるさいわね!」
栞「駄目だよビッチ、そんなこと言っちゃ」
由香里「ふふっ」
○日御碕灯台(現在)
由香里「……パーティーは大成功だったわ。みんなの仲も元通りになった」
マックス「……」
由香里「そこで終わっていれば、みんな幸せだった」
マックス「……お前たちが帰った後、火事が起こった」
由香里「……ええ」
由香里がゆっくり頷く。
○文野邸からの帰り道・夜(15年前)
栞と由香里が歩いている。
由香里「今日は楽しかったね」
栞「うん」
栞は微笑みながら頷く。
栞「由香里のおかげだよ」
由香里「もう、何回言うのよ」
栞「何回言っても足りないよ」
由香里「……ばか」
由香里は少し、涙ぐむ。
栞「帰ったらさっそく、手紙書かなきゃ」
由香里「手紙って、例の文通相手?」
栞「うん。亜弥さんを止めても文通は続けるつもりなの」
由香里「へえ~」
由香里が少しにやついて言う。
栞「な、なに」
由香里「別に~」
栞「! ち、ちがっ、そ、そういうことじゃないよ!」
由香里「私、何も言ってないけど?」
栞「……もう!」
栞は顔を赤くしている。
由香里「あ、でも名前はどうするの? 亜弥さんのまま?」
栞「うん。まだ本当のことを言う勇気がないんだ。
嘘ついてたわけだし、嫌われたらって……」
由香里「大丈夫だよ。そんな心の狭い人じゃないと思うよ。
事情を説明すれば、分かってくれるって」
栞「……そうだね」
二人は分かれ道に来る。
栞「すぐには無理かもしれないけど、勇気出してみることにする」
由香里「うん、頑張ってね! じゃあ栞、おやすみ」
栞「うん。おやすみ、由香里」
○日御碕灯台(現在)
由香里「家に帰ってしばらくして、消防車のサイレンが聞こえてきたの。
外を見たら文野邸から煙が上がっていた。
それを見た私は、すぐに文野邸へ向かったわ」
○文野邸・夜(15年前)
文野邸が炎に包まれている。
そこへ由香里がやってくる。
由香里「そんな……嘘でしょ、なんで……」
由香里はその光景を見ながら呆然としている。
洋館の入り口から文野教授と栞が外へ逃げてくる。
由香里「文野教授!……栞!?」
栞「ゆ、由香里……」
由香里「どうして栞が……?」
その直後、他の6人が集まってくる。
ガリ「なんなのこれ! 何があったの!?」
由香里「みんな……」
集まったクラスメイトに栞が口を開く。
栞「洋子さんが……」
ビッチ「え? 洋子さん?」
メガネ「よ、洋子さんがいませんよ! どこにいらっしゃるんですか!?」
メガネの言葉に、文野が首を振る。
デブ「そんな……」
サル「マジかよ……」
チビ「ウソだろ……」
○日御碕灯台(現在)
話を聞いていたマックスが口を開く。
マックス「文野教授と栞さんが一緒に逃げてきたのか?」
由香里「そうよ」
マックス(なんで栞さんが……。
それになぜ洋子さんは逃げ遅れたんだ?)
由香里「話を続けていいかしら?」
マックス「あ、ああ。続けてくれ」
由香里が再度話し出す。
由香里「その火事で、洋子さんは亡くなった。
私たちは洋子さんの葬儀にも参列したわ。
その葬儀が終わった後だった」