√Letter ルートレター オリジナルエンドルート投稿作品(落選)   作:高津カズ

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10章『木洩れ日の便箋』・4

○文野邸・リビング(15年前の12月25日・夜)

 

     文野邸のリビング。

     大きなクリスマスツリーが、綺麗な飾りつけをされ置いてある。

     そのツリーを囲むように、

     クラスメイトたちが楽しそうにパーティーをしている。

 

  デブ「こんな美味しいケーキ食べたことないよ」

   栞「さっきから何食べてもそればっかりね」

     栞が笑っている。

 メガネ「みんな、もう少し遠慮というものを覚えてくださいよ!」

  サル「うるせえなあ。じゃあ、お前は食うなよ?」

  チビ「そうそう。お前の分まで俺たちが食ってやるよ」

 ビッチ「ああもう、困ったわ。美味しすぎて食べ過ぎちゃうじゃない」

   栞「ビッチったら。今日は年に一度のクリスマスパーティーなんだから」

 由香里「そうそう。それに美味しいんだから仕方ないわ」

     栞と由香里、顔を見合って笑う。

     文野教授と洋子は、

     クラスメイトたちの楽しそうな姿を笑顔で見ている。

     次の瞬間、いきなり部屋の電気が消え、真っ暗になる。

  ガリ「キャッ!?」

  サル「なんだなんだ!?」

  チビ「停電か?」

 メガネ「いえ、他の家は電気が点いてますしブレーカーじゃないですか?」

 ビッチ「じゃあ、誰か見てこなきゃ」

文野教授「私が見てきましょう。皆さんは動かないでここにいてください」

     文野は、部屋を出て行く。

 由香里「びっくりしたわね」

  ガリ「もう、いいかげんにしてよ……。私、駄目なのよ……」

     ガリは震えながら、栞にしがみついている。

   栞「大丈夫だよ、ガリ。私がついてるよ」

  ガリ「栞……」

   栞「ふふっ。ガリにはいつも守られてばかりだから、

     たまには私が守らなきゃね」

  ガリ「……ありがとう、栞」

リビングの電気が点く。

  サル「お、点いたぞ」

 メガネ「やはりブレーカーでしたかね」

  デブ「暗いと食べづらいから良かった」

  チビ「お前、すごいな……」

文野教授「いやあ、驚かせてすいません」

     文野が申し訳なさそうにリビングに戻ってくる。

文野教授「やはりブレーカーが落ちていました」

 メガネ「ツリーの電飾のせいですかね?」

文野教授「どうでしょう。なにぶん、古い家なので……」

  サル「でも、こういうのもいいんじゃないか?」

     サルが場の空気を変えるように言う。

  チビ「そうだな。ドッキリみたいで悪くはなかったな」

 ビッチ「本当にドッキリしてる人が一人いるけどね」

  ガリ「うるさいわね!」

   栞「駄目だよビッチ、そんなこと言っちゃ」

 由香里「ふふっ」

 

 

○日御碕灯台(現在)

 

 由香里「……パーティーは大成功だったわ。みんなの仲も元通りになった」

マックス「……」

 由香里「そこで終わっていれば、みんな幸せだった」

マックス「……お前たちが帰った後、火事が起こった」

 由香里「……ええ」

     由香里がゆっくり頷く。

 

 

○文野邸からの帰り道・夜(15年前)

 

     栞と由香里が歩いている。

 由香里「今日は楽しかったね」

   栞「うん」

     栞は微笑みながら頷く。

   栞「由香里のおかげだよ」

 由香里「もう、何回言うのよ」

   栞「何回言っても足りないよ」

 由香里「……ばか」

     由香里は少し、涙ぐむ。

   栞「帰ったらさっそく、手紙書かなきゃ」

 由香里「手紙って、例の文通相手?」

   栞「うん。亜弥さんを止めても文通は続けるつもりなの」

 由香里「へえ~」

     由香里が少しにやついて言う。

   栞「な、なに」

 由香里「別に~」

   栞「! ち、ちがっ、そ、そういうことじゃないよ!」

 由香里「私、何も言ってないけど?」

   栞「……もう!」

     栞は顔を赤くしている。

 由香里「あ、でも名前はどうするの? 亜弥さんのまま?」

   栞「うん。まだ本当のことを言う勇気がないんだ。

     嘘ついてたわけだし、嫌われたらって……」

 由香里「大丈夫だよ。そんな心の狭い人じゃないと思うよ。

     事情を説明すれば、分かってくれるって」

   栞「……そうだね」

     二人は分かれ道に来る。

   栞「すぐには無理かもしれないけど、勇気出してみることにする」

 由香里「うん、頑張ってね! じゃあ栞、おやすみ」

   栞「うん。おやすみ、由香里」

 

○日御碕灯台(現在)

 由香里「家に帰ってしばらくして、消防車のサイレンが聞こえてきたの。

     外を見たら文野邸から煙が上がっていた。

     それを見た私は、すぐに文野邸へ向かったわ」

 

 

○文野邸・夜(15年前)

 

     文野邸が炎に包まれている。

     そこへ由香里がやってくる。

 由香里「そんな……嘘でしょ、なんで……」

     由香里はその光景を見ながら呆然としている。

     洋館の入り口から文野教授と栞が外へ逃げてくる。

 由香里「文野教授!……栞!?」

   栞「ゆ、由香里……」

 由香里「どうして栞が……?」

    その直後、他の6人が集まってくる。

  ガリ「なんなのこれ! 何があったの!?」

 由香里「みんな……」

     集まったクラスメイトに栞が口を開く。

   栞「洋子さんが……」

 ビッチ「え? 洋子さん?」

 メガネ「よ、洋子さんがいませんよ! どこにいらっしゃるんですか!?」

     メガネの言葉に、文野が首を振る。

  デブ「そんな……」

  サル「マジかよ……」

  チビ「ウソだろ……」

 

 

○日御碕灯台(現在)

 

     話を聞いていたマックスが口を開く。

マックス「文野教授と栞さんが一緒に逃げてきたのか?」

 由香里「そうよ」

マックス(なんで栞さんが……。

     それになぜ洋子さんは逃げ遅れたんだ?)

 由香里「話を続けていいかしら?」

マックス「あ、ああ。続けてくれ」

     由香里が再度話し出す。

 由香里「その火事で、洋子さんは亡くなった。

     私たちは洋子さんの葬儀にも参列したわ。

     その葬儀が終わった後だった」


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