√Letter ルートレター オリジナルエンドルート投稿作品(落選)   作:高津カズ

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10章『木洩れ日の便箋』・2

○松江荘・表

 

     マックスと渡辺が出てくる。

  渡辺「しかしまあ、

     揃いも揃ってお前みたいなやつのどこがいいんだろうな」

マックス「ほっとけよ。あと、別にあの娘はそんなんじゃないぞ」

  渡辺「どうだか。お前には前科があるからな」

マックス「前科? どういう意味だよ」

  渡辺「なんでもねえよ」

 

 

○松江しんじ湖温泉駅

 

     マックスと渡辺がやってくる。

マックス「どれくらいかかるんだ?」

  渡辺「電車とバスなら1時間半くらいだな」

マックス「結構遠いな」

  渡辺「本当だよ。全くめんどくせえ」

 

 

○一畑電車・車内

 

     マックスと渡辺が電車に乗っている。

マックス(そういえば、まだ10通目の手紙を読み返してなかったな。

     あっちに着く前に読んでおくか)

     マックス、10通目の手紙を取り出す。

     木漏れ日の便箋。

マックス(10通目、15年前最後の手紙。

     優しい陽の光があしらってある便箋だ。消印は……2月27日)

     マックスは10通目の手紙を読む。

  渡辺「……なあ」

     渡辺が不意に口を開く。

マックス「ん? なんだ?」

  渡辺「お前、栞のことが好きだったのか?」

マックス「なんだよいきなり」

  渡辺「15年も経った今更会いに来るくらいだから、気になってな」

マックス「会いに来た理由は違うけどな。

     ……まあ、遠い地にいる文通相手に恋心を抱くなんて、

     ありがちな話だろ」

  渡辺「今は?」

マックス「今? 今は良い思い出って感じだな。

     あ、でも俺は亜弥さんだと思って文通してたわけだから……」

  渡辺「そうか……」

     渡辺はうつむく。

マックス(どうしたんだこいつ。あ、もしかして)

マックス「……ガリか?」

  渡辺「!」

マックス「やっぱり今でも好きなのか?」

  渡辺「う、うるせえな。関係ないだろ」

マックス「おいおい、そっちから言い出したんだろ」

     マックスはため息をつきながら続ける。

マックス「その後、一度も告白してないのか?」

  渡辺「そりゃそうだろ、好きな人がいるって言われたんだから」

マックス「ダメ元でもう一回アタックしてみたらどうだ?

     なんだかんだでお互い独身なんだし」

  渡辺「簡単に言うなよ」

マックス「言わないでもやもやしてるよりマシだろ」

  渡辺「……」

     渡辺はしばらく黙り込んだあと、口を開く。

  渡辺「お前、本当に変なヤツだよ。

     いきなり現れて俺たちを掻き回して過去を暴いて……。

     マジで無茶苦茶なヤツだと思った」

マックス「で、今は心を開いてくれてるわけか」

  渡辺「馬鹿かお前。俺は今でもお前のことは嫌いだし、好きにはなれねえ。

     けど……」

マックス「けど?」

  渡辺「……少し、羨ましいと思った」

 

 

○日御碕灯台付近

 

     渡辺とマックスがやってくる。

     その他のクラスメイトがいる。

  美咲「遅いわよ」

  理子「まったく、こんな所まで呼び出して。あなた何様なのよ」

  田中「本当ですよ!」

     美咲、理子、田中はマックスへ口々に文句を言う。

マックス(文句は言いながらも、結局来てくれてるんだな)

  大森「でも、懐かしいな。あれから一度も来る機会無かったし」

  野津「そういやそうだな」

 由香里「……そうね」

     大森、野津、由香里が懐かしそうに話す。

  渡辺「とりあえず灯台まで行こうぜ」

 

 

○日御碕灯台への道

 

     7人が灯台への道を歩いていく。

     15年前を懐かしむように言葉を交わしながら。

     マックスはその後姿を見ながら、着いていく。

マックス(15年前もこうやって、みんなで灯台へ歩いたのかな。

     でも今は……一人足りない)

     こちらを振り返る制服の亜弥(栞)の姿が浮かび、消える。

マックス(それはもう二度と戻らない……風景なんだろうか)

 

 

○日御碕灯台

 

     マックスとクラスメイトたちがやってくる。

マックス「さて、到着したな」

     灯台のふもとに7人がいる。

マックス(よし、話を始めるか)

マックス「じゃあ、話を聞かせてもらうぞ」

     マックスの言葉に野津が反応する。

  野津「まあ、もう話すことなんてないけどな。

     お前が脅すから仕方なく来てやったんだ」

  大森「そうだよ。僕も15年前のことは全部話した。

     栞の居場所も知らない。それ以上何があるっていうんだ」

  田中「そうですよ、いい加減にして下さい。

     だいたい、思い出したくない過去だったんですよ。

     それをあなたが無理やり探るから仕方なく話したのに。

     ひどいですよ、そうですよね」

  理子「そうよ、本当はずっと隠しておきたかったのに」

マックス「それなんだよ」

     マックスは遮るように言う。

  理子「な、なにがよ」

マックス「たしかに嫌な思い出だったかも知れないが、

あそこまで必死になって隠すほどの事にはどうしても思えなかった」

  田中「そ、それはあなたが決めることじゃありませんよ!」

マックス「自殺は偽装だ。実際に誰かが死んだわけでもない」

  美咲「だから言ったでしょ。そういうのを記事にされたら困るって」

マックス「そのわりに、俺が『文野亜弥』を探している理由、

     それを聞いてくるヤツが一人もいなかったな。

     しかも、『文野亜弥』の名前を聞くだけで拒絶したり、

     『何を調べているか』そればかり気にしていた。

     そんなの『私たちは何か隠しています』、

     って言ってるようなもんだろ」

  美咲「……」

マックス「理由さえわかれば、

     真実を隠したまま俺を納得させて、

     島根から追い返すことも出来たはずだ。

     幽霊や妖怪やUFOのせいなんて馬鹿げた話をしなくてもな」

  理子「……」

マックス「だから違和感を感じた。

     これがそこまでして隠したかった過去なのか?

     本当に隠したかった真実は他にあるんじゃないか? ってな」

     7人は黙り込む。


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