√Letter ルートレター オリジナルエンドルート投稿作品(落選)   作:高津カズ

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9章『両面の便箋』・1

○松江荘・部屋

 

     マックス、窓から外を見ている。

マックス(松江にきて今日で……9日目。空は相変わらずどんよりとしている。

     今日は夕方にクラスメイトたちと会う。

     そこで全ての謎が解ければいいんだけどな)

マックス「とりあえず残っている手紙を読んでおこう」

     マックス、バッグから手紙の束を取り出す。

マックス「えっと次は……これか」

     両面の便箋。

マックス「消印は1月11日だ」

     マックスは9通目の手紙を読む。

 

 

    『マックスくん、お元気でしょうか。新年を迎えましたね。

     私は、新しい年を迎えたのに心はまったく晴れません。

     気持ちだけでも新しく入れ替えて新しい年を迎えたいと思った。

     でも、それも出来なかった。

     戻りたい、一年前に。楽しかったあの頃に。

     だけど過去には戻れない。未来にも進む勇気がない。

     ただ、立ち止まるだけ。

     でも、どんなに辛くても前だけは見ていようと思います。

     周りを傷つけ、自分はもっと傷つくとしても、

     私よりもっと辛い人のために。その人のために頑張ります。

     こんな手紙迷惑ですよね、ごめんなさい。

     マックスくんは今年も元気なマックスくんで過ごしてくださいね。

 

                               文野亜弥』

 

 

 

○松江荘・部屋

 

マックス(この時期だから色々あるんだろうとそこまで気にはしてなかったが、

     かなり落ち込んでいたようだな。

     せっかく両面の便箋を使っているのに片面の少ししか使ってない)

マックス「まあいいか。で、俺はなんて返事したんだっけな」

 

    

    『あけましておめでとう。今年もよろしくな。

     今までとはずいぶん雰囲気が違うけど、何かあったのかな。

     卒業も近いし、受験も大変だろうからそのせいだと思うけど。

     たしかにこの時期はみんなピリピリしてるよな。

     他愛のない事でも衝突してしまうから、いつもマックスな俺も大変だ。

     まあ、ブルーになる気持ちも分かるよ。でもしっかりしろよ。

     そういう時は思い切って休むことも大切だと思うぞ。

     思いっきり遊んで、ゆっくり風呂に入って、ぐっすり眠る。

     そうすれば自然と気持ちもリセットされるはずだ。

     考えすぎたり、根を詰めすぎるのはよくないぞ。

     新しい年を迎えたんだ、心機一転頑張ろう。

 

                                 マックス』

 

 

 

○松江荘・部屋

 

マックス「しかし空気読めてないな。

     もう少し察してやる事ができたら、結果は変わっていたのかな」

  春花「お客さん、起きてますか?」

マックス「あ、はい」

     春花、部屋に入ってくる。

  春花「お客さん宛に何か届いてますよ」

マックス「ありがとう」

     マックス、荷物を受け取る。

  春花「では、お布団片付けますね」

マックス「あれ? 今日、智子ちゃんは?」

  春花「彼女はお休みですよ」

     春花が布団を片付ける。

マックス「休み? めずらしいな」

  春花「休みくらいありますよ。私だって鬼じゃないわ」

マックス「いや、そりゃそうなんだけど、毎日顔合わせてたから」

  春花「働くのが好きみたいで、私が言わないと休みもしないんですよ。

     それはそれでありがたいことですけどね」

マックス「へえ、そうなんだ」

     マックス、荷物を開ける。

     15年前の雑誌『ティーンズ・クィーン』が入っている。

マックス(注文していた『ティーンズ・クィーン』だ。

     これに俺の文通相手が載ったらしいのだが)

マックス「えっと、『街で見かけた可愛い娘』だったっけ」

     マックス、10月号を開く。

マックス「それらしいのは載ってないな。

     次は……あれ? 11月号がないな。三冊頼んだのに。

     まあいい、とりあえず12月号を……」

     マックス、12月号を開く。

マックス「12月号にも載ってない……ん? なんか手紙が入ってるな」

     マックス、箱の中から手紙を取り出し、読む。

 

『お客様のご注文された、

 11月号〈山陰の美少女特集〉は在庫がありませんでした』

 

マックス「特集内容から、載っているとしたら11月号じゃないか。

     在庫切れとは困ったな」

     春花、布団を片付け終わり、声をかけてくる。

  春花「それなんの本ですか?」

マックス「え? ああ、昔の雑誌だよ」

  春花「変な雑誌じゃないでしょうね。

     やめて下さいよ。うちには智子ちゃんっていう無垢な若い娘が……」

マックス「ちょっと勘弁してよ。違うって。女性向けのファッション雑誌だよ。

     それの15年前のなんだけど、欲しかった号が在庫切れらしいんだ」

     マックス、春花に雑誌の表紙を見せる。

  春花「あら、それたしか昔この辺りで話題になった雑誌じゃない?

     松江の可愛い娘が載ってるって」

マックス「その〈山陰の美少女特集〉が載ってる11月号が無かったんだ」

  春花「あら、それは残念ね」

マックス「春花さんは、持ってませんよね?」

  春花「私は持ってないわね。私の知り合いも多分、持っていないと思うわ」

     春花は首を横に振る。

マックス「そりゃそうか。15年前の雑誌なんて持ってる人の方が少ないよな」

  春花「そうねぇ。まあ、知り合いでも載っていれば別だと思うけど。

     でもこの辺りでもかなり売れたはずだから、

     古本屋にあったりしないかしら」

マックス「古本屋か。雑誌は期待できなさそうだけど……。

     まあ、とりあえず行ってみようかな」

  春花「そうですか。見つかると良いわね」

マックス「ありがとう。頑張ってみるよ」

  春花「それでは私は失礼します。お気をつけて」

     春花、部屋を出て行く。

 

 


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