レフライノールという巨悪にザヴァンデミヲンとなったマシュが盛大に立ち上がらない!
魔光聖騎ザヴァンデミヲン
「ロマンッ!」
「え、うわぁ!?」
凄まじい衝撃が部屋を襲い、私は咄嗟にDr.ロマ二を押し倒すようにして床に伏せた。
背にしていた空気圧扉が爆風で吹き飛び、私たちの頭上スレスレを滑るように飛んでいった。
間一髪!
当たっていれば頭部が潰れたザクロになること間違いなしであった。
この爆発の規模、尋常ではない。
根拠はなく、直感した。
これは、人為的な爆破だ!
そして、犯人はーーーーー
たぶん、レフ・ライノール!
わけもなく確信した。ヤツだ!
「許さんッ!トォ!」
「あ、君、ちょっと待つんだ!」
Dr.ロマ二の制止を振り切り、私は紅蓮に包まれつつある廊下を必死の形相でかけた。
目指すはレフがいるであろう管制室。
逃さぬ……!ホァ!
「ガチャリ……」
管制室のメイン扉が開かず、やむなくサブの扉に身体を押し込めるようにして内部に侵入する。
「ひどい……」
そこは真に地獄であった。
コフィンと呼ばれるレイシフト補助装置は軒並み大破し、コフィン内部に収容されていたAチームのマスター達は五体を飛び散らせてその無残な屍体を晒していた。
カルデアスと呼ばれる中央に鎮座する大きな地球儀のようなものが血のように赤く染まっている。
まさに地獄にふさわしい光景だ。
室内に充満する黒煙が視界を覆う。
じきにここも崩落するだろう。
生存者を救い、迅速に退去せねばならない。
煙る視界の中眼を凝らすと、まだ息をしている者を見つけた。
瓦礫を踏みしめて、ゆっくりと近づく。
下半身を潰され今にも息絶えそうなそれは、眼鏡をかけた淡い紫色の髪を持つ少女マシュ・キリエライトであった。
確かに、まだ、生きてはいる。
だが、それだけだ。
本当にそれだけなのだ。
このままではじきに生き絶えるだろう。
……どうする?このままではいけない。
マシュを管制室から運び出そうにも、この有様では、動かすことも叶わぬ。
猶予は一刻もない。ここが崩落するのが先か、マシュの命が尽きるのが先か。
やむなし!ここで、手術するしかない!
大丈夫。こう見えても私は得意なのだ!
僕はね、魔法使いなんだ……。
そうと決まれば話は早い。
管制室内から使えそうな部品をかき集める。
機械と人の融合……。マシュを生かすためには、こうするしかない!
マシュを魔改造違法戦士マジカル☆マシュとして復活させるのだフォウ!
〜中央管制室先輩〜
目が覚めてから、マシュは酷く冷静に自分に起こった異変を分析していた。
瞼を開くのも億劫なほど、自分のこの身体は損傷している。
ごうごうと吹き荒れる炎に晒された上半身は焼けるように熱いのに、腰から下は嘘のように感覚がない。
周囲の惨状を見るに、おそらく落下してきた瓦礫に寸断されたのだと見当をつける。
全身の傷口という傷口から、自分という存在が漏れ出て行くような感覚。
頭が朦朧として、正常な思考すら最早難しい。
否が応でも自覚せざるを得ない。
ここで自分という生命体は終わるのだ。
それを自覚できるのは、幸か不幸か。
目の前に散らばる彼ら彼女らにはきっとそれを自覚することすらできなかっただろう。
あるいはその方が、幸福だったのだろうか?
いや、そんなはずはない 。
1分1秒でも長く生きていられることが人間にとっての不幸だなんて、マシュは思いたくなかった。
ガラン。
もう目は見えなくなっていた。
音だけを頼りに、顔をあげる。
なんだろう。何かが、誰かが近づいてくる。
ここは危険です、私はもう助かりません、 はやく避難を!
そう叫ぼうとするのに、自分の喉から溢れ出るのは僅かな呻き声ばかりだった。
「……もう大丈夫。助けにきたからね」
この地獄にあって、その柔らかな言葉はどうしようもなく私の壊れかけの心に入り込んできた。
「ぁ……せん、ぱぃ……?」
よかった、この人は、生きていた……。
先輩に話したいことが沢山あった。
まずは先輩が無事で良かったこと。
どうしてここに来たのかということ。
私はもう助からないこと。
だから早く逃げて欲しいということ。
潰れた喉を動かして、必死に訴えかける。
不意に、柔らかな温もりが頭部を覆った。
先輩の腕が優しく私の身体を抱きしめる。
「マシュは、私が死なせない。殺させない。絶対に」
頬を熱いものが伝う。
これは、これが、涙……?
泣いているのは、先輩?それともーー
私は遠のく意識の中で、ずっと先輩の事だけを考え続けた。
〜その後しばらく〜
「フフォゥ!フゥーハハハッハハン!ンッ!フハンッゲホッ!オフオフッ」
マシュの改造手術が無事成功した。
マシュは手術のショックで今は深い睡眠状態にある。
彼女が目を覚ました時、自分の身体の変化にどんな顔をするだろうか。
いや、考えるまでもない。
きっと満面の笑みを見せてくれるだろう。
腕部にはホーミング機能を備えたマルチロックオンシステム搭載マジカルロケットパンチ《タラスク》を搭載し、おっぱいからはビームが出る。
また頭部にはアクティブなマジカル全周囲索敵装置《千里眼》や、マジカル赤外線・マジカルX線レーダー兼マジカルビームアイ《カルナ》を搭載し、おっぱいからもビームが出る。
そして、マシュに搭載された数多い機能の中でも最大の特徴を持つのが、この霊基融合システム ーーFusional ATtempted Engagement ーー 通称《FATE》である。
これは英霊を文字通りマシュの身体に融合させるための画期的なシステムである。
本来なら英霊をその身に宿せば、並の人間ではただではすまない。だが、改造人間・ザヴァンデミヲンとなったマシュなら耐えられる。
その身に余る程の力を使いこなし、サーヴァントとすら戦えるようになる!しかもなんとおっぱいからはビームが出せるようになる。
まさに人間でありながら人間を超えている超存在。
その魔眼から放たれる極光は分厚い岩盤すら抉り穿ち、その両腕は捕らえた敵を地の果てまでも逃さない。燃える魂抱える胸は、ゴールデンに煌めき輝き光る!
魔光聖騎サヴァンデミヲン!未来に向かって、レディ、ゴー!
突如、地鳴りが起きる。
崩落が始まったのだ。
天井が崩れ、鉄屑達が文字通り雨のように降り注ぐ中、私は腕を胸の前で組み、仁王立でただただ天を見上げていた。
結局、管制室内の生き残っていたモニターを使い、カルデア内をスキャンしたがレフらしき姿は発見できなかった。
レフのことは気がかりではあるが、まずは私は生き残りとして特異点の修正をしなければならない。
カルデアについて無知蒙昧な私にはあずかり知らないことではあったが、どうやら特異点の修正なくして人類の未来はないらしい。
爆破のタイミングが特異点突入を妨害するものであったことから、特異点修正はレフにとって都合の悪いことであるに違いない。
故に私が特異点へ突入すれば、自ずとレフに関する手掛かりが掴めるはずだ。
邪魔してやる。奴の計画を。それも徹底的に。
私の直感が告げている。奴を野放しにしてはいけない。必ず始末するフォウ。
管制室内の部品を流用して改造したマシュの眼鏡《ダウィンチくん》が起動し、シークエンスを開始する。
《デバイサー、バイタル正常。該当マスター検索……認証完了。起動電力基準値クリア》
《アンサモンプログラム、スタンバイ》
《エネルギーライン全段直流》
《座標軸固定。転移進路クリア。スチームエンジン内正常加圧中》
《ワールドシステムオールグリーン、レディ?》
地獄の中で私は歌う。未来への賛歌を。
レフ・ライノールに死の鎮魂歌を!
「目標、日本!冬木!ーー転移ッ!ハァッ!」
《アンサモンプログラムスタート。霊子変換開始。レイシフト開始まで、スリー、トゥー、ワンーー》
《全工程クリア。ファーストオーダー実証開始》
待っていろ、レフ・ライノール。
貴様の往くその先は、地獄だーー
次回! 魔光聖騎ザヴァンデミヲン!
燃え盛る都市の中で、死んだはずの所長と出会ったわたしたち。
死にかけの所長を改造手術でなんとか助けることができたけど、カルデア爆破の犯人であるレフに所長を奪われちゃった!
操られた所長のおっぱいビームが私とマシュに襲いかかる!
このままじゃやられちゃう!
わたしたち、いったいどうすればいいのぉ!?
次回!爆散!レフライノール!
来週もまた見てね!
おっぱいからビームを書きたかっただけ