崇められても退屈   作:フリードg

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第17話 温泉は混浴が良い!

 

 

 ……と言う訳で今は休憩タイムだ。

 

  

「ふぁぁ~ ここって良い旅館って評判の場所じゃん? おー バーバラっ! 良いトコにしたな? グッチョイス♪」

  

 1人でテンションが上がってる男。

 暫くは行動の拠点とする街の一番の旅館に泊まる……と言う事になって 宿泊場所を決定し 到着した途端に合流した様だ。

 

「いつもいつもアンタは心臓に悪いね。老人を労わろうとは思わんのかい?」

「まーたまた。そーんなタマじゃないだろ? バーバラは」

「ワシャ タマなんざ ついとらん」

「それくらいしってるって、言葉の綾ってもんを知らんのかいっ? って言う、ツッコミは置いといて……」

 

 男はくるっ と振り向いて ババラの後ろについてきている2人と目があった。

 勿論 チェルシーとタエコだ。チェルシーは目が合った途端に視線を逸らせ、タエコはぺこりっ とお辞儀をしていた。実に対照的な2人だが、構う事なく男は2人の背後にするっ と移動。

 

「わっ!」

「そーんな、酷い対応しなくても良いじゃん、チェルっち! ほーら、ここって海産物が美味いんだぜ? 美味しいモン喰って、一緒に騒ごう♪」

 

 チェルシーに頬刷りする勢いで接近するが、チェルシーは 『お断りです!』と言わんばかりに、右掌で押しやる。

 

「何が『騒ごう!』よっ!! 遊びに来てる訳じゃないのよ!」

「ここってさぁ、温泉も気持ちいいって評判だぜ? なんでも肩こりとか腰痛にも訊いて、お肌つるっつるで~♪」

「人の話訊け!! そして、次いでみたいに胸揉もうとするな!!」

 

 如何なる時もチェルシーへのセクハラを止めない男は するっ と滑らか鮮やかな手捌きでチェルシーの膨らみに手を忍ばせたのだが、何と阻止されてしまった。

 

「おー、やるじゃん! チェルっち。どーよ、バーバラ。オレが鍛え上げたチェルっちの動き。こんだけ動ければ不意打ちとか喰らっても、多分対処できるぜ?」

「うっさい!! こんなんただのセクハラよ! 何『鍛えてやったゼ』 みたいな顔して言ってんのよ!」

 

 チェルシーが盛大にブーイングをしているのだが、実の所はと言うと、ババラも少しばかり驚いている。男の動きは色んな意味で神出鬼没。行動の後の先など取れる筈もなく、例えタエコであったとしても、妨げる事が出来ない。(ババラにはセクハラしないから、出来るかどうかわからない) 

 だが、チェルシーはそんな動きを呼んでいたのか、意図も容易く防いでしまったのだ。

 

「正式に教育係として雇おうかねぇ」

「止めてください!!」

 

 チェルシーは、大きく手を交差させて✖を作る。

 その間に。

 

「タエっち。行こうぜー。また 剣術見てやるからよ」

「はい。宜しくお願いします」

 

 タエコは従順そのもの。

 今 腰に手を回したりしているのだが、拒否したりはせず 身を任せたままだった。が、当然チェルシーは許しません。

 

「コラァァ! タエコさんの純血は私が守る! 手ぇ出すな!!」

 

 と 男の腕を取り上げてガード。

 

「おっ? チェルシーってばヤキモチ?? ぜーったいそーだろ? だいじょーぶだいじょーぶ。オレ2人とも愛せる! 愛してるぜぇ~♪」

「誰がよ! 迷惑っ!!」

「と言う訳で、今日は一緒に風呂にでも入ろうぜ? 裸の付き合いだって大切だ」

「絶ッッッ対ッ 嫌ッッ!!」

「ほっほ~ じゃ チェルっち。オレから逃げてみろよ~? 本気を出したオレはヤバイぜ? 『手が2本あるみたい~!』って巷じゃ女の子達の間で有名でさぁ^」

「手は普通2本よ!!!」

   

 口喧嘩をしながら(一方的にチェルシーが怒ってるだけ)2人は宿の中へと入っていく。

 

「バランスが大切、ってことさね。タエコ」

「……うん」

 

 2人を見つつ タエコに助言をし続けるババラ。

 

「極端に崇めて、懐柔しようもんなら あの男の興味は速攻で失せる。そもそも、オールベルグの本隊は色事には向かんから大丈夫とは思うが、無理に取り込もうとはしない事。覚えときな」

「判ってる。……あの人がそばにいるだけで、こっちにとってはプラスの面が大きい。標的が女だったら邪魔される可能性があるけど、それ以上に得られる物が大きい」

「そうさね。……オールベルグの名よりも あの男を優先する場面もある事も忘れない事。メラ様もその辺は了承済みさ。(頭領が代々受け継ぐ『蠢くもの』も軽く一蹴する相手だ。その気になったら、オールベルグを崩壊させることなんざ、容易いだろう……。まぁ しないと思うが)」

 

 組織を潰される危険性は0ではない、と判っているが、それでも全く心配はしていない様子なババラ。何故なら。

 

「(オールベルグの戦士の殆どが女。……メラ様の趣向のおかげとも言えるね)」

 

 女を相手にする時 命までは取らない。そういう印象を今までに何度も受けている。

 

「さて、ワシらも行こうか」

「うん」

 

 ババラとタエコも旅館の中へと入っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 旅館内でも色々とあったチェルシーは、頭を突っ伏している。旅館の部屋に備え付けられているテーブルと対面している様だ。

 

「チェルシー大丈夫?」

「……大丈夫、じゃないかも……」

 

 タエコの声かけにも反応が薄い。

 

「あの人は そこまで酷く体力を消耗させる様な事はしないと思うのだけど……」

「………違うのー」

 

 チェルシーは、ゆっくりと頭を上げるとタエコの顔を見て また がくっ と頭を下げた。

 

「ど、怒鳴りすぎて 頭痛くなって……、おまけに声が枯れ気味で………」

 

 一悶着どころじゃないやり取りがあって、大声を出して罵倒し続けたチェルシー。

 普通に叫び続けるのにも体力は使うし、度が過ぎれば こういう風になる、と身をもって知った瞬間でもあった。

 

「さらっと流すのが、プロってもんさチェルシー。さっさとあの男にあげ(・・)ちまいな」

「……何を? とかは聞きません。嫌です」

 

 教育係のババラに真っ向から反対するのは結構凄い事だ。のらりくらりと躱すのがチェルシーだったが、生憎今は余裕が無くなってしまっている様子。

 

「これが続けばチェルシーはとんでもなく鍛えられるかもしれんな。過程はさておき」

「いやですー……、体力もちませぇん~……」

「泣き言いう暇あったら鍛えな。本気で考えてるんだからね。それ程までにアイツの力は魅力的過ぎる」

 

 からかう様子ではなく、真剣味のあるババラの言葉に、チェルシーもそれとなく真剣になりつつあった、が。中々頭だけは持ち上がらない。

 

「確かに、出鱈目なヤツですけどー…… あんなの、コントロールできる筈ないじゃないですかぁ……。ほら色気で計算ずくで~ ってしたら駄目なんでしょー? 直ぐ見抜かれる~とか。どーしよーも無いじゃないですかぁー」

 

 ぐでぇ とやる気皆無なチェルシー。いや やる気無いじゃなく 体力無いだった。

 

「そこはチェルシー。お前の出番さね。その本気で抵抗してる感じがアイツを興奮させんだろう? 使わない手はないね」

「感じじゃないです! 本気の本気! マジと書いて本気! 嫌です!」

 

 腕を起用に上げて✖を作るチェルシー。その表情までは見えないが、何だかんだと言っても 最初と比べてそれなりには柔らかくなってる。チェルシーの事を助けた辺りから、少しだが変化がある、と言う事くらい見抜いてるババラ。

 

「素材だけを見れば 良い男だと思うがね? ねぇ タエコ」

 

 話題を変えてタエコに容姿について同意を求めた。

 タエコは、少し考えた後。 

 

「ん……。整った顔立ちはしてる……と思う」

 

 顔を思い浮かべてそう返答。

 鍛えて貰った事が多々あって 至近距離で何度も見ている。そして 街で歩いている無数の男性の顔も思い浮かべて……、そう判断した様だ。

 

「タエコは色事(そっち)方面は鍛えてないからね。でもそこまで感じ取れるんなら それもあの男の影響 と言った所か。乳や尻を何度も揉まれた甲斐があったと言うべきか」

「……………」

 

 ふむ、と大真面目に言うババラ。チェルシーはもうツッコまなかった。

 

「所で、あの男は何処に行ったんだい?」

「んえー……、女の子漁りに行く~ とか言ってた様な気がしますよー。なんでも 匂うとか何とかって」

「そんなこったろうと思った。ほれ 今の内に温泉にでも入ってきたらどうだい? チェルシー、アンタ臭うよ」

「っっ!!」

 

 色々と運動? をし続けた。

 あの男がいるから肌を見せる様な真似出来る訳もなく、逃げ続けて風呂(混浴)拒否続けた。長い長い時間がたったかの様に感じたが実際に時間は経っているのだ。髪や肌はべたべた。確かに女の子が発して言い匂いではない。

 

「お、おんせん~……!! アイツいないし……、い、今の内に……」 

 

 よろよろ~ と立ち上がったチェルシーは、至福の時を求めて温泉へとGO.

 

「まー、気を付けるんだねぇ。いつどこで狙ってるか判ったもんじゃないよ」

 

 チェルシーがいなくなったと殆ど同時にそう呟くババラ。

 

 この後、お約束。『ぎゃーー!』と言うチェルシーの叫び声が旅館内に響き渡る……様なお約束な展開には実はならなかったのだった。

 

 

 何故なら――、男は また別の桃源郷へと行っているから。

 

 

 

 

 

 

 場所は郊外。

 少し街から離れた森の中には評判の天然温泉が数点存在している。勿論 外だから色々なリスクは有ったりする。……当然、命に関わる様な事だってありうる。それは 危険種の生息域だから。覗かれたりするリスクなんて、それに比べたら随分と可愛いものだと言えるだろう。

 

 そして、今夜もお客さんが数人 天然温泉に足を踏み入れていた。

 

 ぴっちぴちの肌。引き締まった身体。起伏の富んだ身体。まだまだ幼さが残る少女たちが、露天風呂を満喫しているのだ。

 それも女のみだから危険では? と思うのだが、恐れるなかれ 彼女達は超がつく野生児。一級の危険種でも逆に狩って喰ってしまう程の剛の者達なのだ。

 

 勿論、言うまでも無いが アカメやツクシ、ポニー コルネリアである。

 

「……はぁ ここらへんは温泉が湧く、とは聞いていたが、良いな」

「だよねー。ほれツクシ。きっと肩こりに効くよ?」

「べ、別にこってないよ! ポニィちゃん!」

 

 楽しそうな会話が聞こえてくる。世の男どもにとっての桃源郷はここ。巨○ 貧○ 美○ と色とりどり様々……と言うのは置いときます。

 

 アカメは温泉の湯を顔にぱしゃん! と掻けると皆に言った。

 

「……反省はしなければならないな。……私達が完全に遊ばれた上に、情けをかけられた。あの男は一体何者だったんだ?」

 

 アカメは河での戦いの事を言っていた。

 あの戦いでは、異常な敵を前にして、誰もが一番の危機を感じていたのだが、結果は誰も負傷者を出す事なく、終わった。……でも それは納得のいく結果ではなかった。

 よくよく考えてみれば、黒衣を纏った男は、攻撃らしい攻撃を一切してこなかったのだ。受けばかり。受け流して同士討ち等はあったが、それでも追撃をみせる様な事はなかった。

 

「あんなの初めてだったよね……。パパに訊いてみたけど、正体は不明だって言ってたし……」

「う~、アイツとは二度と会いたくないわ。チーフの剣とか普通に当たってるのに まーーーったくこたえないし。あたしのキックも直撃した筈なんだけどなぁー」

 

 ポニィは、シッ! と脚を上げて蹴りを放った。

 全裸だと言う事を忘れてないでしょうか? 見事なY字開脚になってます。秘境が露わになってます。

 

「コラっ! お風呂の中で暴れないの。はしたない」

「別に良いじゃん。男どもが来てる訳でもなさそうだし」

 

 ポニィは脚を元に戻して、コルネリアにそういう。

 ここまで覗きに来る男は、知る中では1人しかいない。ガイと言う名の性欲魔人。

 こんなハダカでいたらいつみられてもおかしく無いけれど、そこはしっかりとガードをしてくれる様にチーフたちに頼んでいるから大丈夫だと言う安心があった。

 

「気配は確かにないけど、それでも 止める」

「はーいコル姉ぇ」

 

 コルネリアに怒られて、とりあえず返事をするポニィ。

 姉と呼ばれるだけあって、色々と無視しそうなポニィでもちゃんと聞いている様子だった。

 

「うーん…… 話、戻すけど もし、アイツがまた来たらどーすれば良いかなぁ。カエルうちにしてやる! って、普通の敵なら思うんだけどー ちょっとアレはなぁー」

「それを言うなら返り討ちだよ? ポニィちゃん」

 

 冷静にツクシからのツッコミが冴えわたる。

 結構深刻な悩みだと思うのだけど、ツクシのツッコミやポニィの天然で 場の空気は和んだ。

 

「え~~い! こっちは真剣に考えてんのにー! そんなの、どっちだっていいジャロっ!」

 

 とりゃあ! とツクシに抱き着くポニィ。

 

「あわわっ ごめんごめんっ!」

「おおー、天然の大きな大きなクッションをお持ちでー 動きづらいんじゃないのー」

「きゃー も、揉まないでーー」

 

 チーム一の大きさを誇るツクシの胸を鷲掴みにして揉みしだくポニィ。

 楽しそうなスキンシップを見ていたアカメは、自分も疼いた様で。

 

「私も混ざる!」

 

 と言って ポニィとツクシに向かってダイブ!

 

「きゃんっ!」

「ほれほれ~」

「あははは!」

 

「こらこら。暴れないのーって」

 

 3人は楽しそうに遊んでいて、それを見ながら注意しつつも微笑むコルネリア。

 そして、もう1人がコルネリアの横で風呂を満喫。

 頭にはタオルを乗せて温泉に来てます雰囲気もばっちり出していて、コルネリアと一緒に遊んでいる3人を見ていた。

 

「いやぁ、それにしても絶景かな絶景かな。成長が著しいなぁ。まだまだ皆成長すると思うぜ? 歳の割に見事なもんだ。あの子のおっぱいなんか すっごいなぁ。そう思わね?」

 

 コルネリアに話しかける。 

 

「うーん、ツクシの事でしょ? まー 見慣れてるけど、やっぱり凄いわよね。……ちょっとうらやましいかも」

「ん?? だいじょーぶだって、コルネリアだって良い形してるぜ! ほら、美乳ってヤツ? いやぁ 膨らみの先っぽも良い色してるし、眼福ですなぁ はい」

「ちょっと、胸の話ばかり! おっさんみたいなこ……と…………?」

 

 ここで漸く違和感に気付く事が出来た。

 本当に自然に会話に入り込んでいる。何故だろうか、ドストレートに色々と口に出していると言うのに、声色を訊いたら明らかに仲間内の誰の物でもないと言うのに、直ぐにいは気付く事が出来なかった。

 

 

「「「!!!」」」

 

 

 遅れながら3人も はっ! と視線を向けた。

 コルネリアがいる方に向かって――。

 

「いやぁー 良い湯だな~ はははんっ♪ いっ、い 湯だ~な、あぱぱんっ! ゆっげに、か~すんだ、大きな2つのふく~らみ♪ さわりごこっちは? はははんっ♪ きっと良ーいだろっ!? るるるんっ!」

 

 呑気に歌までうたってる侵入者。

 あまりの事に数秒ばかり放心していて、一番早くに動く事が出来たのは。

 

「誰だ貴様は!」

 

 びゅんっっ! と前蹴りを放ったアカメだった。

 湯につかっているが、それでも持ち前の脚力を活かして 放つ強力な攻撃はなかなかの速度で侵入者の顔面に叩きこまれた。

 

「ぶげっっ!」

 

 歌に夢中だったからかアカメの蹴りを、まともに受けた男はそのまま沈んでいったのだった。

 


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