久々の投稿。
今回から善子に変わり黒澤姉妹です。
ガチャアン……
「おうぇ!!」
「っ!?」
ドチュリ
怪物と化した少年が善子に触れようとした時……ある野球ボールがバスの硝子を突き破りマジニに激突した。
マジニは衝撃で床下に叩きつけられる。
その際マジニのボールが激突した場所から黄色い液体が車内に飛び散った。
「うぅ……おぇぇ!」
呆気にとられながらその一部始終を目に焼き付けていた善子は床に倒れながらもウネウネと自身の口から伸びた体細胞を動かすマジニの姿を見て嘔吐した。
「はぁ……はぁ……駄目よ……逃げ……なきゃ……殺され……る……」
這うようにバスの乗降口から地べたに降りた。
「くっ……はぁはぁはぁ……」
「無事だったか……」
無機質な男の声が真上から響く。
立って居たのは丸坊主に刈り上げ研究服を着た背の高い少年だった。
「誰……敵……?」
善子は度重なる恐怖の襲撃に完全に疑心暗鬼となっていた。
「お前に手を出す者ではないとだけ答えておく」
歳が善子と同じぐらいなのに酷く大人びた物言いだ。
「ほん……と……?」
虚ろな表情を浮かべ彼女はほそぼそと口を動かした。
そして……
「なら……良かった……」
安堵した瞬間に彼女は気を失った……。
「……うむ、まぁ一般人にしては良く今まで気を保てていた……と言ったところか……」
少年はバスに目を向けた。
窓越しにグネグネとうねる物体が映っている。
「人様の住み処で暴れるんじゃない……駆除してやるぞこの害虫が……」
…………
同日…………午前5時……
「起きなさい……」
「うゆ……」
「起きなさい!ルビィ!」
「ピギッ!……お姉ちゃん!?」
ルビィは姉ダイヤの怒号のような声を聞き、目を覚ました……起きて数秒で様々な違和感を彼女は感じた。
何故、姉のダイヤは懐中電灯で私を照らしているのか
何故、照らさなければいけない程暗い場所に自分が居るのか
ここは……何処なのか……
「お、お姉ちゃん……ここは……私達、部屋で寝てた……よね……?」
「……私も先程目を覚ました時貴女と同じような事を考えましたわ。何か手掛りが無いか暗い中手探りで調べていたら床にこれ(懐中電灯)が落ちていましてね……」
光をルビィから自分達を囲んでいる場所の壁に向けた
「どうもこういう場所らしいですわ」
壁には赤いペンキで文字が書かれた看板が張り付いていた。
『株式会社 ローゼンソーン 設計部門』
「何処かの会社の中……?」
「みたい……ですわね」
ダイヤが室内の真ん中に光を向けた所、ポツンポツンと机となんらかの紙が置かれていた。
しかし何故……自分達はただ自室で眠っていただけである。
全くの想定外の事態にルビィもダイヤも思考が追い付かない。
「誰が私達を此所に連れて来たのでしょう……寝てたから当然ですが思い当たる節が見当たりませんわ」
「ま、まさか!……誘拐……!」
怯えながらルビィは口に出した。
「誘拐……です……か」
その線も考えられないわけではない。
aquorsも人気が出てきて顔もメンバーも覚えられて来た時だ。
ファンも増えて来ている。
……ではファンがこんな事をしたのだろうか
ダイヤの両腕に寒気が走る。
「あまり考えたくは……ないわね。それに貴女のその考えには穴が有るわよルビィ」
「……」
「私達のお父様やお母様が鍵も掛けずに寝ると、お思いで?……寧ろ、顔を公にする活動を自分の娘達がしているならば……戸締まりをしないわけがありませんわ」
「うん……そうだよね……ふぇ!?」
俯きながら返事をする身体をダイヤは包んだ。
「不安なのね、ルビィ……」
「うん……」
「私にはお母様のような安らぎを貴女に与える事は出来ませんが……落ち着くまで私の胸で泣きなさいルビィ」
「うん……!ごめん!お姉ちゃん……!……うわぁぁぁぁ……!」
「大丈夫よ、貴女は悪くありませんわ……」
暗い工場にルビィの泣き声が響いた。
ダイヤはそんなルビィを力強くも優しく抱き締めた。
7分程経ち、ルビィは顔を上げダイヤの顔を見つめた。
「えへへ、ありがとうお姉ちゃん……取り敢えず大丈夫」
「さすが、我が妹ですわ。では、まずはこの工場から出ましょう」
現在ダイヤ達が得た情報はローゼンソーンと言う会社の設計部門の一室に自分達がいると言う事。
「何処かに……全体図は無いかしら?」
灯りを各場所に振り向ける。
「あ、お姉ちゃん!これ!!」
「え?」
ルビィが声を出した方を照らすと柱に案内図と書かれたプリントが貼りつけてあった。
「でかしましたわ……!」
小走りでダイヤは柱に近付いた。
「成る程……この工場は全長が50m。港の近くの貿易会社のようね……」
「ともあれ、大体の位置は分かりましたし。早く出口へ向かいましょう」
「うん!」
二人の心に希望がこもる。
出口への道を辿ろうとした時
ガシャアアアン
何処かで思いっきりシャッターが閉まるような音が響いた。
「おねぇちゃ……」
「……良い事では無いことは確かですね」
怯える妹を抱え姉は音がした方を見続ける。
ウォォォン……
「何なの……」
ダイヤは警戒を怠らない。
今度は何かが走るような音が近付いてきた。
何せ暗くて良く見えないのだ。
カチ
照明器具を付けるような音が聞こえ、彼女らを『光源』が照らした……
光と共に現れたのはフォークリフトだった。
運転手は彼女らを見つけると笑みを浮かべ狂ったように笑い始めた。
服装は所々に穴が開き、赤く汚れたり出血したりしていた……
そして、
「此処に居るぞー!黒澤家の娘共の居場所が分かったぞー」
と声を上げた。
「ルビィっ!急いで身を隠せる場所を見つけるわよ!来なさい!」
「ピギ!お姉ちゃん!」
ダイヤとルビィはこの瞬間自分達を殺そうとして居るのだと理解した……
ウォォォン!
逃げる彼女らの後ろでモーター音が近づく……
誘拐って怖いですね……
見知らぬ、会社内で奮闘する彼女らの葛藤を書いていけたらと思います。