死神と9人の女神   作:獄華

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ここからは2年生組以外のキャラ達に焦点を当てたお話を投稿していきます。



第7話 悪魔(マジニ)の誘い

ブー、ブッブー

 

「なによ……これ……」

運転手と乗客1名の2人だけのバスは身動きを取れないでいた。

 

津島善子はこの日も同じくバスに乗り自身が通う浦ノ星女学院に向かう予定であった。

バスの中から変わらぬ街を眺めながら今日は何をしようかとかどんな衣装を着ようかとか……小さな事から大切な事まで身の回りの事に思いを寄せる気楽な時間の筈だったのだ。

だが今の彼女の瞳には……普段自分が冗談半分で口に出している『地獄』のような光景が写し出されていた。

 

他方から舞い上がる黒煙と鳴り止まないクラクション。

 

紙のように呆気なく紅蓮の炎に包まれ、いともたやすく燃え広がる沼津の街……。

 

ガードレールをぶち破り、壁に激突した車や他の車に衝突している車……此方は酷い物は運転席がひしゃげ生々しく車内に血が飛び散りハンドルや硝子を赤く染めてるものもあった。

良く良く見ると、まだ死体が運転席に残っている車両も。

しかしいくら事故を引き起こしたとしてもこんなに短時間に数十台規模の車両が一斉に事故を起こすのは明らかに異常な事である。

「昨日の警察署と言い………何なのよ……」

 

まさか……。

本当に呪いでも降りかかったのだろうか……。

「……馬鹿馬鹿しいわ。こんな悲惨な事が現に起こってるのに……呪いとかそういうオカルトの類いにしようとするなんて」

 

この地獄のような出来事は津島善子にとって現実なのだ……自分を悪魔としたてあげても、神頼みしても……ただ単なる現実逃避に過ぎず、いくらそう自分で思っていても目の前の悪夢が尽きる事は無い。

 

そして……

 

『ぎゃあ!』

 

外より聞こえる人の悲鳴。

 

「え……ちょっと!?」

 

『く、来るな!……此方に来るなぁぁぁ!!』

目の前で新たな悪夢が発生していた。

彼女がバスの車内から見下ろす歩道で身体中から出血している若い男性を赤く染まった金属バットを片手に掲げ目が荒ぶってる少年が迫りながら男性のあちこちを思いっきり叩いていた。

……とてもまともには見えない。

 

『おらぁ!』

 

ガゴン

 

狂気の振りが男性の腹部に直撃した。

 

『ガフッ……』

 

バタ……

 

「ひ!……」

 

事切れたように仰向けに倒れ伏す男性……口元からは血が溢れ……顔は見下ろしている善子を逆に見つめ返すかのように眼を見開かせて。

 

逃げろぉ!と言う声と共に外に居る人々は今自分達が向い合っている状況を次々と放棄しだす……。

バスの運転手の男性もうわぁ!と声を挙げ乗車口の開閉スイッチを急いで起動させ逃げ出した。

外からの悲鳴は金属音が鳴ると同時に善子の耳に入ってきた。

 

バゴン、ガゴン、ガンッ!

 

(ヤバイわ……もし見つかったら!)

 

簡単にどういう目に遭うか余裕で想像出来た。

安易に外に出るのは危険だと判断した善子は直ぐ様屈み自分が今座っていた座席の下に入り込んだ。

(何でよ……何でバットを持った男は、あの男性を攻撃したの!?)

 

背中を丸め両足の膝を両手で抱えながら思案するが答えは出てこない。

とにかく一刻も早くここから逃げ出した方が良いと言う事を身に染みる程痛感した。

 

しかし場所は何処へ?

 

(分からないわ……何か、何処か場所は……)

 

ビー、ビッビ

 

その時、自身のスマホのトークアプリの着信音が鳴り響いた。

 

(ヤバイ!……聞かれた、かしら!?)

 

しかし少年が此方へと向かって来る事は無かった。

変わらず人間の悲鳴が木霊する。

 

(誰かしら……?)

 

画面に表示されているサムネイルの主は千歌だ。

内容は

 

 

『善子ちゃん!もう気付いてるかも知れないけど内浦や沼津が大変な事になってるの!今、私からaquorsのメンバーに連絡してるところ!このメッセージを見たら早く災害避難センターへ向かって!』

 

 

「千歌さん……」

 

悲劇に遭遇しているのは自分だけでは無かった。

自分達のリーダーの千歌も……いや、もしかしたら他のメンバーだって悲劇を目にしながらも頑張って進もうとしてるのかもしれない。

 

「ありがとう……やっぱり千歌さんが……私達のリーダーね……」

 

(一人じゃないんだ……私は)

善子に少しだけ強い気持ちが芽生えた。

絶対にここから抜け出そう!と言う強い意志が……。

一先ず、『分かった』とだけ返事し彼女は如何にしてここから沼津避難センターにまで向かうか考え出す。

 

すぐそこには異常な人間が金属バットを持ち無差別に人を襲っているのだ……。

それに、バスの扉は前も後も開きっぱなしだ少年がいつ乗り込んで来たっておかしくない。

 

(どうすれば……)

 

ゴギ、バギ!

「あ……あぁ……」

 

また一人犠牲になったようだ。

「ははは!馬鹿な奴等だな!あの人にさえ忠誠を誓えば俺と同じくこの素晴らしい力を持てたのによ!」

 

ガンッ!ガンッ!

 

「最高だ!あの人は!非力だった俺でもこんな事が出来るなんて!」

 

善子は少年の言動に悪寒と底なしの恐怖を感じた。

さも、ゲームをやってるような感覚で笑いながら楽しそうに人を痛め付けてるのだから。

(それに……あの人って……)

 

此方も少年の腹の中のように想像がつかぬがこんな狂った人間から崇拝されてる時点で碌でも無い人間だと言う事は確かだろう。

 

(あれ……?)

 

考え事に時間を費やしていたら金属音が聞こえなくなっていた。

人のうめき声も聞こえない……全員殺られたか。

 

「俺がお前の存在に気付かないとでも?」

 

ビクッ!

 

窓硝子のすぐそばから悪魔の声が囁かれた。

 

「きゃ……」

 

バリーン!

 

悲鳴を上げる時間すら与えずに無情にも硝子はバットでは無く少年の拳によってくだけ散った。

顔前で広がる破片に善子は顔をガバンで防いだ。

「よっと」

 

カタン

 

逃げ場を防ぐかのように少年はバスの通路に降り立ち、屈んで居る善子を見下ろした。

 

「私も……殺す気?」

 

彼女は思わず問う

 

「どうだかな……外見から察してお前は高校生だ。俺の組織の『計画』の対象年齢の範囲内でもある」

(組織、範囲内……全く先が読めないわ……)

 

今すぐ殺す気は無いと言う事は何となくではあるが分かったようだ。

 

「お前も協力してみないか?ストレス発散にはうってつけだぞ」

 

「……貴方馬鹿じゃないの?人を殺すのがストレス発散?理性も保たないで暴れるのが楽しいってわけ!?」

 

善子は立ち睨み返しながら反論する。

 

「何が組織よ……何が協力よ……人を小馬鹿にしないで!」

 

「よく分かった……では名前も分からないが御別れだな」

 

ジュルジュルジュル……

 

「っ!……」

 

少年の口からつぼみのような物が出現し、花弁のようにゆっくり開いていく。

 

「我々の仲間になる気が無いなら此処で死ね」

 

善子は覚悟を決め……目を閉じた……

 





バイオ7のファミパンとのドライブには笑ってしまったw
先月バイオハザード7を購入したのですが忙しさと疲れでやれて無いのが現状です。

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