勇者代理は現代兵器とともに   作:Bishop1911

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氏名:伊達龍一
スキル:
・軍事知識 ・召喚能力(ロック)
・身体能力向上(ロック)


1-3

…温かい

 

これは…人の体温…?

 

そして何かケモノ臭い…?

 

でもそれは不快に感じるどころかむしろ心地よい…

 

『ごめんなさい、ルーク…。』

 

優しい響きの声だ。

 

でもルークって誰だ?

 

誰に謝っている?

 

『私を許して…。』

 

グラっと体が傾き、少しの浮遊感を感じた。

 

ーードサッ

 

重たい瞼をゆっくり開けてみると、傾いた視界に女性の顔が映った。

赤子を見るような優しい目で俺を見つめる女性の耳には犬のような耳があった。

 

「あぁ、ルーク…本当に…ごめん…なさい…」

 

少しずつ失われていく温もりを感じながら俺は理解した。

この俺はこの女性に抱かれていること。そしてこの女性は…死にかけている。

 

誰か…!誰でも良い!この人を…!!

 

しかしどれだけ声を出そうとしても、俺の口は言葉を発しなかった。

 

耳をつんざくような赤子の鳴き声を聞きながら、俺はいつのまにか疲れ果てて意識を失った。

 

 

 

 

『こいつは?』

 

また女性の声だ。でもさっきの人とは違う。

いや、真逆だ。この声は冷たい。

 

『今朝、教会の前で亡くなっていた女性に抱きかかえられていました。』

 

さっきまで俺を抱きしめていた女性の事だろうか?

結局助からなかったのか…

 

『で、なぜ私のところに?』

 

『えっと…。あなたと同じ犬族だから…?』

 

犬族…?確か俺を抱きしめていた女性には言われてみれば犬っぽい耳があったが…

 

『なぜ疑問形で返す…。

はぁ…メアリー、まず第一に私は黒狼族だ。

第二に私は孤児院を始めた覚えは無い。

孤児を育てるのはお前たちの“カミサマ”が教会に与えた神聖な仕事だろう。

そのために私も領主と教会に税を納めている。』

 

こくろーぞく…?教会?

あの神は俺に一体何をしたんだ…??

 

『でも…』

 

『待て。聞きたく無い。子音がDで始まる言葉はくだらん言い訳だけだ。』

 

『教会はこの前の戦争で流れてきた孤児でいっぱいなんです。』

 

戦争があるのか…。

 

俺の脳裏に死ぬ前の記憶がよぎる。あれはテロであって戦争では無い。

でも、同じようなことが起きているなら、今すぐにではなくても、戦いが待ち受けているかもしれない。

 

『それがなぜ私のところに来る理由になる?』

 

この女性はなんとしても孤児の引き取りを拒みたいようだ。

事情もあるのだろうが、この女性の冷たい声はあまり良い印象を受けない。

もし俺が会話に上がっている孤児ならこっちから願い下げだ。

 

『……。』

 

『……。』

 

しばし沈黙が流れる。

 

『あー…わかったわかった!そんな顔をするなメアリー。』

 

どうやらこの冷徹な女にも人の心があるようだ。

 

『ありがとうございます!』

 

『ただし、条件が1つある。』

 

『なんでしょう?』

 

『こいつが成人するまでの間、税を免除しろ。』

 

…は?

 

『うっ…それは…』

 

『ダメならこいつは引き取れない。

そっちが奴隷商にでも売り飛ばすんだな。』

 

前言を撤回する必要がある。

 

こいつ…、子どもをネタに教会を脅しやがった…。

 

『…わかりました。神父に掛け合ってみます。』


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