死が無き者の鎮魂曲 凍結中   作:鴉紋to零

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ええと、文章量から察した方もいるかと思いますが

このシリーズは一話一話を長めで行こうかなと思っております

故に、更新スピードは…………これも察してください


死が無き彼はその場を治めた

(眩しいな…………)

 

彼が目を開けて最初に見たものは、太陽と無限に広がる大空があった

 

彼は体を軽く動かし、節々を確認する

 

死がない身なので別にする必要はないのだろうが、どうにもやっておかないと不信感が残るようだ

 

首、肩、肘、手首…………

 

上から下にかけて順々に行ってゆく

 

丁度全ての節々の確認が終わったときだった

 

「お、気が付いたか?」

 

彼は右側から男の声が聞こえた

声から判断するに、まだ若い者であることは分かった

上半身を起こして、声の主を見る

声の主は齢十六、七といったところだろう

金色の髪に、紫色の目という変わった風貌だったが、見に纏う雰囲気のせいか、別段おかしくは思わなかった

 

「はい……ええと、ここは?」

 

金髪の少年に訪ねたところ、回答は一言

 

「どこぞの大亀の背中じゃないか?」

 

と、冗談を言うような笑顔で答えた

 

金髪の少年はそう回答すると後ろを振り向き、後ろにいた女性二人を見た

 

一人は黒い綺麗な髪を後ろに伸ばし、昭和時代の学校の物とおぼしき服装だった

 

もう一人は短く揃えた茶髪で、夏場に着るであろう薄手の服装だった

 

金髪の少年は、二人を見つつ、時よりこちらを横目で見ながら尋ねた

 

「まず間違いないけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前らにも変な手紙が?」

 

「そうだけど、まずは、``オマエ''って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後は気をつけて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」

 

黒髪の女性、いや、少女は茶髪の少女に訪ねる

 

「………春日部耀。以下同文」

 

素っ気ない態度で茶髪の少女は切り返した

だが、黒髪の少女は気にする様子もなく、今度は金髪の少年に問う

 

「そう、よろしく春日部さん。それじゃあ、野蛮で凶暴そうな貴方は?」

 

高圧的で、物怖じすることもなく、彼女は問う

 

そのような態度も嫌いではないが、初対面の場合はあまりよい印象は受けないだろう

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴そうな逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

 

ケラケラという効果音が付きそうな笑みを浮かべる逆廻君

 

「そう。取り扱い説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

 

久遠さんはそう言うと逆廻君から目を背けた

 

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

反応の仕方が愉快だったようで、楽しそうに逆廻君は笑っていた

 

「それで、私達を助けてくれた貴女は?」

 

…………気のせいだろうか、貴方が貴女になっている気が……

 

「ええと、月盛 琥珀(つきもり こはく)と申します。すみません、私がもう少し上手く風を操作できていれば汚れませんでしたのに……」

 

()()頭を垂れる

 

容姿がどう見ても女である上に、着物を着ているため女に見えるが、()()頭を垂れる

 

「気にしないで。水に叩きつけられるよりは、少し荒っぽかったけど地面に下ろして貰った方がいいもの」

 

久遠さんは柔らかく微笑み、励ます……が、何故だろう、勘違いされている気がしてならない

 

 

 

閑話休題

 

 

何かを特にするでもなく、私はただぼんやりと何かが起きるのを待っていた

 

一応、気配から一匹の獣とおぼしきモノが近くの茂みにいるのは気がついている……が、隠れているようなので気にしないでおこう

 

「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」

 

招待して、この待遇である。言いたいことも理解できる

 

逆廻君は苛々した様子でそう告げた

 

「そうね。何の説明もないままでは動きようがないもの」

 

どうやら、苛々していたのは久遠さんも同じなようだ

 

「………。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」

 

春日部さんが的確なツッコミである

 

「そうですね…………何かこの状況を打破する策でもありますか?」

 

と、私は言いながら、茂みに近寄る

 

薄々気付いてはいるのだ、多分、一般常識を逸脱したものが集まっているのだろうと

 

でなければ、兎の気配を感じさせながら人の気配を感じさせる等できない

 

だが、行動に移す前に逆廻君がこう言った

 

「ーーー仕方がねえな。こうなったら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

茂みが動揺を表したように揺れる

 

「なんだ。貴方も気付いてたの?」

 

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだせ?そっちの二人も気付いてたんだろ?」

 

逆廻君の同意を求める声に無論私はyesと答えた

 

そして、春日部さんもだ

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「まあ、一応ですが、はい」

 

気配を読むという行動に、確実な根拠はない

 

故に一応、なのである。もっとも、正解しているであろうと踏んでいるが

 

「………………へぇ?面白いなお前ら」

 

逆廻君はそう告げると、三人は見計らったように揺れた茂みを冷たい目で見る

 

自慢のように聞こえるかもしれないが、私があの風を使っていなければ私を含む四人は湖に着水していた

 

故に、このような目を向けているのだろう

 

だが、不憫に思えてきたので一言告げようと思ったその時

 

「や、やだなあ御三人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいまよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じて、ここは一つ穏便に御話を聞いて頂けたら嬉しいでございますヨ?」

 

「嫌だね」

 

「断る」

 

「却下」

 

「はい。構いませんよ」

 

「あっは、取りつくシマもないですね♪。最後の御方はありがとうございます」

 

バンザーイと降服を示しながら、黒ウサギ?さんは言った

 

だが、心なしか目が違った

 

ふざけているような目ではなく、此方を値踏みするような目だった

 

しかし、その値踏みは唐突に終わりを告げた

 

「えい」

 

「フギャ!」

 

春日部さんが音もなく黒ウサギさんの横に移動し、直上に伸びるウサギ耳を鷲掴みにしたのだ

 

黒ウサギさんにウサギ耳があることより、音もなく移動したことの方が私は唖然としていた

 

「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか、初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きにかかるとはいったいどういう了見ですか!?」

 

体を捻り、必死に手を解かせようとする黒ウサギさん

 

「好奇心の為せる業」

 

先程から聞いていた静かな声色とはうってかわって、心なしか弾んでいるように聞こえる声色だった

 

「自由にも程があります!」

 

黒ウサギさんはそう叫ぶと、一瞬だけ痛みを堪え、手を振りきった

 

だが……

 

「へえ?このウサ耳って本物なのか?」

 

逆廻君が右耳を

 

「………。じゃあ私も」

 

久遠さんが左耳を掴んだ

 

そして、互いに逆の方へ引く…………前に私は現状を理解した

 

「ちょ、ちょっと待_______!」

 

「二人とも、ストップです」

 

ギリギリ間に合った、危なかったと、心の中で軽く安堵する

 

「幾ら彼女がやったことが不快に思ったとはいえ、それを暴力で返すのは如何なものかと思いますよ」

 

優しく諭すように私は告げた

 

「…………わかった、月盛がそう言うなら」

 

「…………わかった、琥珀さんがそう言うなら」

 

二人は少し不満足そうな顔をして手を離す

 

このままでは良くないだろうか、私は

 

「黒ウサギさん……でいいですよね?」

 

私は黒ウサギの方を向く

 

「は、はい」

 

黒ウサギさんは緊張した面持ちで答えた

 

「先程触るなら構わないと言っていましたが、よろしいんですか?」

 

「ま、まあ、その程度なら大丈夫なのですよ」

 

(ふむ…………確認は取れましたね)

 

「……らしいですが、どうしますか?」

 

「「!!」」

 

二人は今度は優しく黒ウサギさんの耳を触り始めた

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

先程の湖を下り、今は私達は川の浅瀬に移動していた

 

風が心地よい温度で吹き抜ける

 

「先程はありがとうございました!琥珀さん!それではいいですか、御四名様。定例文で言いますよ?さあ、言います!ようこそ、゙箱庭の世界゙へ!我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」

 

黒ウサギさんはハイテンションでそう告げた

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです!

既に気づいていらっしゃるでしょうが、御三人様は皆、普通の人間ではございません!

その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。

『ギフトゲーム』はその゙恩恵゙を用いて競いあう為のゲーム。

そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 

アメリカンさながらの身ぶり手振りで箱庭をアピールする黒ウサギさん

 

「まず初歩的な質問からしていい?貴方の言ゔ我々゙とは貴方を含めた誰かなの?」

 

久遠さんが右手を肩ほどの高さに上げ、告げる

 

「yes!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある゙コミュニティ゙に属して頂きます♪」

 

「嫌だね」

 

(そ、即答ですか……)

 

「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの゙主催者゙が提示した商品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております」

 

「……………゙主催者゙って誰?」

 

今度は春日部さんだ

 

「様々ですね。

暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開発するグループもございます。

特徴として、前者は自由参加が多いですが゙主催者゙が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。

しかし、見送りは大きいです。゙主催者゙次第ですが、新たな恩恵を手にすることも夢ではありません。

後者は参加の為にチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらはすべで主催者゙のコミュニティに寄贈されるシステムです」

 

「後者は結構俗物ね……………チップには何を?」

 

「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間…………そしてギフト掛け合うことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑むことも可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然ーーご自身の才能も失われるのであしからず」

 

笑顔の内に黒い影を見せる黒ウサギさん

 

挑発的な声色に、挑戦的な声が飛んだ

 

「そう。なら最後に一つだけ質問させてもらっていいかしら?」

 

「どうぞどうぞ♪」

 

「ゲームそのものはどうやったら始められるの?」

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 

「………つまり『ギフトゲーム』とはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

楽しげに驚く黒ウサギさん

 

「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解二割間違いです。

我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。

ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞な輩は悉く処罰します

ーーが、しかし!『ギフトゲーム』の本質は全くの逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だと言うことですね」

 

「そう。中々野蛮ね」

 

「ごもっとも。しかじ主催者゙は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」

 

「さて、皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補であふ皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話させて頂きたいのですが…………よろしいですか?」

 

「待てよ。まだ俺が質問してないだろ」

 

私と同じく清聴していた逆廻君が腰かけていた岩から立ち上がる

 

その声は威圧的な声であった

 

そして、先から見ていた軽薄な笑みはなかった

 

「………………どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」

 

身構えるような雰囲気で、黒ウサギさんは答えた

 

()()()()()()()()()()()

 

彼は切り捨てた

 

純粋に、単純に、そんなものはどうでも良いと、彼は切り捨てた

 

「腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでオマエに向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねえんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねえ。俺が聞きたいのはただ一つ」

 

そう言うと、言葉を区切り、逆廻君は此方を見た

 

そして、空を見上げ、言葉を続かせた

 

「この世界は…………面白いか?」

 

その目は至って真剣だった、笑み一つ浮かべないその表情に、言動に、彼女は……

 

「ーーyes。『ギフトゲーム』は人を超えたもの達だけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 

自信たっぷりな様子でそう答えた

 


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