死が無き者の鎮魂曲 凍結中   作:鴉紋to零

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はい、またオリジナルです

あれですね、一時間で大量に書くのは骨が折れますね


全真理追求機械群 ART.凡用機体《上》

日が沈む、墜ちていく

 

地平線の果てに消えていく

 

燃え落ちるとは、このようなものなのだろうか

 

そんな言葉がふと脳裏を過る

 

そうこうしている内に、彼は地図上のノーネームの本拠地についたようだ

 

額に浮かぶ玉汗が疲労を物語っている

 

と、そこで彼は視線を上にあげる

 

廃墟を一瞥し、その先に抜けているとき、ふと彼は足を止めた

 

誰か、いる

 

そう感じた彼は、ギフトカードを懐から取り出す

 

無手でも十二分に戦えるが、牽制の意味も兼ねて見えるように胸の前で構える

 

「誰でしょうか?この世界での知人は()()()いませんので、友の友、といった人達でしょうか?」

 

木々の合間から此方をみる影達に、淡々とした声でそう告げる

 

だが、何かを迷っているのか、返答はない

 

「あまりに遅いと同士に心配されますので、そろそろお暇したいのですが……」

 

そう告げて、立ち去ろうとした時だった

 

「ま、待ってくれ!!いや、待ってください!!」

 

一人の男性が叫んだ

 

その言葉を聞いて、足を止める琥珀

 

「はい。なんでしょうか?」

 

口元に柔らかな笑みを浮かべ、男性に向き直る琥珀

 

「わ、私達のコミュニティを救っていただき、ありがとうございました!!!」

 

腰が折れるんじゃないかと言うほどのスピードで低頭する男性

 

「え、ええ……?」

 

予想できない事態に、ただただ慌てるしかない琥珀

 

そんな彼にお構い無く、次々と森の中から人が出てくる

 

何人もの人々が自分に頭を下げる状況に、軽くふらつく琥珀

 

話を聞くに、ガルドは己のコミュニティを解体、組織の一員だった彼らも名と、旗印を取り戻したそうな

 

ガルド本人はというと、自首したらしい

 

その後の消息は不明とのことだった

 

「そうですか……」

 

話を全て聞き終えた琥珀は心なしか満足感を得ていた

 

「琥珀殿、実は、折り入って話がございます」

 

先人を切った男性が真剣な眼差しで琥珀を見つめる

 

「は、はい」

 

その場の雰囲気に、軽く緊張しながらも続く言葉を待つ

 

「私達を、どうか、貴方の弟子にしていただけ……」

 

「お断りします」

 

即答だった、即決だった

 

「弟子を取るほどの武を私は持っていません。

授けられるほどの知を、私は持っていません。

施せるほどの勇を、私は持っていません。」

 

絶句する人達に、静かに告げる

 

「なので、弟子は取りません。」

 

突き放すように、厳しい声色と共に拒否の意を示す

 

だが、やはり彼は優しいから

 

「だが、それでも学びたいのなら、私の所属するコミュニティを手伝い、私の背を見なさい」

 

ちょっとだけ、情けをかけてしまう

 

「その中で、己の目で学びなさい」

 

言葉を紡ぎ終えると、また彼は優しげな笑みを浮かべた

 

『はい!!』

 

琥珀の意を察したのか、彼等も気合い一杯に返答した

 

「それでは、おやすみなさい」

 

彼の後ろから就寝前の言葉が聞こえる

 

もう夜だ、時が過ぎるのは早い

 

そして彼はノーネームに入っていった

 

待ち構えていたジンと黒ウサギに怒られたのはここだけの話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂に入り、長い髪をタオルで拭く

 

湯に使ったので、体は少し熱を帯びていた

 

上気した頬が何処か色っぽい

 

己にあてがわれた部屋のベッドに腰を下ろしていた彼は、ふと、今日手に入れたあの立方体を思い出した

 

何の気なく、ギフトカードより召喚する

 

ベッドの上に現れたそれを、膝の上に乗せた

 

そして、嘆くように一言

 

「…………まいりましたね、どうしましょうか…………」

 

その魅力に魅せられて貰い受けたものの、どうすることもできなかった

 

専門の知識があるわけでもなく、透視能力が有るわけでもない

 

淡い光を放ったまま沈黙しているこの機械にアプローチをする方法を、彼は持ち合わせていなかった

 

()()()()アプローチの方法を得ることも出来るが、私利私欲のために恩恵は使用したくない

 

指で機械の表面をなぞる

 

傷や汚れ一つない純白の表面は、明かりが反射していた

 

その行いの結果、何が行われるかも知らずに

 

ピ、と小さな電子音に彼は気付かない

 

そして

 

「…………アナタが、ます、たー?」

 

「!?!?」

 

唐突だった

 

突然だった

 

未知だった

 

あり得なかった

 

誰が予想しただろうか

 

眼前の機械の表面を撫でただけで、起動するとは、思っていなかった

 

突然の展開に目を白黒させる琥珀

 

そして、沈黙が続く

 

ハッっと正気に戻った琥珀はまだこの状況が飲み込めないまま、素直に返答する

 

「え、えっと……買ったのは、私……ですね。はい」

 

自己暗示のように己の行いを確認する琥珀

 

その返答をして、数秒

 

また有り得ない返答が帰ってきた

 

「…………登録、完、了」

 

一瞬だけ淡かった光が強くなる

 

「へ……?」

 

予想外の展開に呆けた声で返すしかない琥珀

 

と、次の瞬間

 

「マスター、こは、く」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

驚愕のバーゲンセールである

 

もう何がなんだが分からない

 

彼はとりあえず、目先の質問を問うことにした

 

「な、何故名前を……」

 

その質問には、アッサリとした回答が帰ってきた

 

無論、彼の感覚からすれば有り得ないものだったが

 

「記憶を、よみと、り、まし、た」

 

今度こそ唖然とする琥珀

 

ここまで驚いたのは彼からすれば百年ぶりだろう

 

驚嘆の出血大サービス

 

日頃では有り得ない展開に、遂に彼はおかしなベクトルで思考を放棄した

 

「ま、まあ。いいですかね……」

 

そうだ、そうだよ、ここは箱庭

 

神々が住まう地なのだから、この程度の事は普通なんだ

 

彼はおかしくなった思考をなだめ、休めるようにベッドに横になる

 

「…………おやす、み、なさい、こは、く」

 

やはりと言うか何と言うか、案の定目を閉じると吸い込まれるように彼は夢の世界に旅立った

 

意識が消える寸前に、就寝の言葉を聞いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーテンの隙間を縫うように、木漏れ日が彼の頬に伸びる

 

その光に照らされて、彼は薄く目を開いた

 

そして、一つ大あくび

 

「ふぁぁ……」

 

剣客とは常に気張るべし、等と昔に聞いた記憶があるが、流石に起きたばかりなのだ、父も許してくれるだろう

 

「おはよ、う。こは、く」

 

何故か胸元から声が聞こえた

 

誰かを抱き締めて寝たのだろうか、と寝惚けた頭は思考する

「おはようございま、す?」

 

とりあえず、誰であっても挨拶をされた以上、挨拶で返すのが道理であろう

 

と、その時、胸元にいた何かが端麗な顔を覗かせた

 

顔に浮かべる表情は無、だが、黒色から先に行くほど白くなる髪が人形のような美しさを醸し出している

 

げんに、()()()()()()()()()()()

 

側面に生えているとも付いているとも表現できるような感覚で機械があったからだ

 

足に当たる感覚からするに、身長は彼とほぼ同じであろう

 

まさか過ぎる展開に、またしても彼は気の抜けた声を発する

 

「へ?」

 

琥珀の視線が謎の女性に注がれるなか、その対象はというと

 

唐突に立ち上がった

 

何故かは彼には分からない

 

只、分かることがあるとするならば

 

「どう、したの?琥珀?」

 

()()()()()()()()姿()()()()

 

彼は驚愕がパニックとなり、そして、驚愕が一周して現実と空想が分からなくなりつつあった

 

なので、彼は事実確認からすることにしたようだ

 

「ふ、服………着てません、よね?」

 

眼前にある女性の裸体相手に何を聞いているんだろうかと、本来の彼なら思うのだろうが如何せん、彼は痴女に会った経験などないのだ

 

「そう、だよ?」

 

何を今さらと言わんばかりに平然とした顔で返される

 

「え、えっと…………な、何故?……というか、誰、ですか?」

 

事態がいっそう分からなくなった彼は矢継ぎ早に質問する

 

「昨日、琥珀に、貰われ、たの」

 

その返答に、彼はおかしな点を感じた

 

昨日自分が貰ったのは機械であって女性ではない

 

「え?で、でも。昨日買ったのはどう見ても機械では…………」

 

その返答に彼女は沈黙した

 

かに思ったが、実際は異なった

 

見上げている体勢であるためどうやって出てきたのかは分からないが彼女の背中から殺傷道具が現れた

 

その様は翼のようであったが、如何せん、翼にしては物騒すぎた

 

「その、機械、なの」

 

つまり、彼女はこれを見せるために沈黙したのか

 

停止していた思考の歯車がやっと動き始めた

 

納得したと受け取ったのか彼女は殺傷道具を元に戻した

 

彼は彼女に座るように指示をすると、大人しく彼女はベッドにしゃがみこんだ

 

そして、流石に裸のままでいさせるわけにもいけないのでついさっきまで被っていた掛け布団をかける

 

やっと普通に目を合わせて話せることができるようになった

 

美しい瞳に見られながら、彼は質疑応答を始めた

 


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