モモンガ自室
メイドや護衛を全て追い出し、フェンリルと二人だけになる。
骸骨の表情に変わりはないが、守護者の前の支配者モードではなく気の抜けた鈴木悟モードでフェンリルに話し掛ける。
「お疲れ様です~」
「お疲れ様です。それにしてもコキュートスに信頼してもらってよかったですよ」
「そうですけど・・・もう~血塗れになった時には焦りましたよ~、メッセージで超痛いって叫ぶし」
「あれはヤバかったですね。スプラッター映画みたいに血がドバドバ出るし、そのせいで意識が飛びそうになりましたもん」
はははと笑うフェンリルだがモモンガは本当に胆の冷える思いをした。スプラッターという言葉であることを思い出した
「ホラー映画とか好きじゃありませんでしたっけ?」
昔、他のメンバーとホラー映画で盛り上がっているのを見ていた記憶がある。まぁ話をしているのが全員異形種なのでそれもホラー映画の1シーンとも言えなくもなかった。
そしてこの現状、人狼と骸骨の組み合わせも十分ホラーである。
「見るのは好きですけど、スプラッター映画は違うんですよね~」
「違う?」
スプラッター映画とは血まみれ映画・血しぶき映画と呼ばれるホラー映画の1ジャンルである。モモンガはホラー映画などを見ないので同じホラーというジャンルなのに何が違うのだろうかと不思議に思う。
「よく勘違いされるんですけど、静かな忍び寄る系のホラーが好きなんですよ。スプラッター映画とかの怖いって驚かせる系じゃないですか、急に出てくるとか、大きい音出すとか、まぁ多少は見ますけど、リアルな痛みの奴は苦手なんですよ」
「リアルな痛み?指を切るとか?」
モモンガは何となく想像したものを言ってみた。
「そうですそうです。そういうのを飛躍させて指を切り落とすとか、喉を切るとか想像しやすくないですか?映像とかで見ると目を背けたくなりません?」
「・・・なりますね」
「逆に言うとチェーンソーで切り裂くとか銃で撃たれるとか想像できない痛みは平気なんですけどね」
「あー何となく分かります」
想像できない痛みなど
「痛いの苦手なんですよ。でもこの身体のせいですかね。痛みで意識飛びそうになったって言いましたけど、それはズタズタになったの見たからなんですよ。実際の痛みは思ったよりというか考えていたより大丈夫だったというか、なんて表現すればいいんですかね、痛みに対して耐性が出来てたんですよね」
あの時は大量の出血で驚いたせいなのか痛みをあまり感じなかった。
「耐性?」
「指先をちょっと傷つけるのと身体をザックリ斬られるのじゃ痛みのレベルというよりダメージが違うはずですよね?」
斬られる面積が違えばダメージも違ってくる。
「たぶんそうですね」
「そのダメージがつまり痛みが同じように感じたんですよね。ある一定値で無効化されるっていうような・・・」
「無効化・・・」
「感覚的なものなので説明は難しいんですけどね。それよりも〈滅狼化〉が発動しそうになったことですよ」
「それですよ。あれパッシブスキルでしたっけ?」
「アクティブスキルのはずです。でもユグドラシルの時に噂が流れたんですよね」
「噂?」
「えぇ特定条件で強制発動するって、でも出来たって人が現れなかったしその条件も分からないでデマだって事になってたんですけど・・・」
「満月の時にダメージを受ける・・・とか?」
「それも試したんですよ。満月の時に瀕死状態になるとか、色んな状態異常にかかるとか、色々試したんですけどね~、結局分からなくてオレも諦めたんですよ・・・」
まだまだこの世界や身体には分からないことがあると思った二人だった。