東方開扉録   作:メトル

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第五話 迷走

さて、とりあえず言わせて貰おうか。

 

ここどこですか!!

 

かれこれ歩き回りながら部屋を開けて周る事十五分、日没が来たのかも分からないこの紅い廊下をトボトボと歩いている。

途中妖精メイドにすれ違ったが他には誰にも会えない、妖精メイドに道を聞いたが何言ってるのかわからず会話終了。そして扉を開けて周っているがいかんせん広すぎる為どれもこれもハズレばかり、未だに階段すら見ていない始末。

ちょっとここに住むのが不安になって来た、とりあえず今はわからない部屋から拝借した紙とペンとインクで地図を描きながら歩いているのだが、描いた地図を見るとどう見ても直線しかありません本当にありがとうございました。

あぁ、せめて屋敷の見取り図でも貰うべきだった。失敗したなぁ・・・

また一つ扉を開ける、綺麗に手入れされた部屋の様だな。これで何回見たかも分からない部屋である。

ハァ、と溜め息をし扉を閉める。

おかしい、流石にこれはおかしいだろ・・・もうずっとこの部屋しか見てない気がする。

地図も途中からずっと真っ直ぐ、さっきから真っ直ぐしか進んでない。

こんな時にケータイとかあれば地図情報が・・・いやケータイあるけど圏外だったんだ。

もうだめぽ。

 

誠「誰かいないんですかああああああ!」

 

悲鳴を上げるように叫ぶと声が壁を反射しやまびこの様に響き渡った、やまびこはどんどん音量を下げて行きまた先程のように静寂が俺に襲いかかる。

孤独だ、寂しいな・・・

 

もうこうなったら全力でこの館を出てやろう、最終手段として壁を壊すとかもやってやる・・・

そうとなれば簡単だ、能力でなんか創ればいい。まあ問題があると言ったら何を創ればいいのか全く分からんと言う事だが。

まあとりあえず最初は部屋を回るより外に出る事を考えよう、そうすれば大体の見取り図は分かるし美鈴にでも聞く事が出来る。

とりあえず「行き止まりまで道を進みまくる戦法」と「大きな扉を見つけるまで進みまくる戦法」を使うしかない、ネーミングセンスについてはご了承ください。

さて、創り方はさっきので分かったから何を創ろうか。やはりここは乗り物だろうか?

バイク?車?免許がないからパス、やはり自転車か・・・

深呼吸をする、手を前にかざし念じる。するとなんかわからん光が集まりハイ完成。

ね?簡単でしょう?

 

ゲーセンへ行く時に愛用している自転車にそっくりの自転車に乗りペダルを力強く踏み込む、前へと走りだした。

風を切って走るのって気持ちいいよね!そんな事はない、俺はただの移動手段として使っているのでサイクリングとか絶対にしない。足が疲れるし、何よりつまらん。

さて、さっきからずっと真っ直ぐに走っているが前はずっと先まであるようだ、曲がり角一つ見えない。

・・・もしかして、あれか?いやもうあれしかない。

異変に気付き自転車のブレーキを握りしめて強引に止める、自転車を消してすぐさま近くの部屋へと入る。

綺麗に掃除されたこの部屋、実は地図として使っている紙とペンとインクがあった部屋にそっくりなのだ。

部屋に入るとすぐさま紙があった机へと急ぐ、机の上にあったのは・・・

 

誠「・・・やっぱり」

 

あったのは普通の紙束、メモ帳のような物だ。そして上には乱暴に千切られた紙が跡として残っている。

実を言うと俺はこう言うのが苦手であり雑誌の閉じ込みも途中からビリッ!とやってしまうタイプなのだ、不器用すぎだろ俺・・・

そんな事はさておき紙束と俺の持っている紙とを合わせる、案の定跡は完全に一致した。

と言う事は、もう分かったぞ・・・この迷路事件の犯人が・・・!!

 

誠「さて、推理ショーの幕開けですね」

 

キリッ!とキメてみたが俺がやるとなんのカリスマもかっこよさも無いな・・・

 

誠「不可解だった点は三つ、第一に途中から廊下が直線だけであった

  所、第二に入る部屋が全て同じである所、第三に歩いても歩いても

  他の所へ辿りつけない所・・・

  いくら紅魔館が広くてもここまで広かったらまず美鈴が

  お嬢様の所へ行く事が不可能。では道を間違えたかと言うと

  それもない、ここまで一本道だからですよ。

  ならば館自体が変わった?それもないですね、そんな大事直ぐには

  出来るわけがないのですから・・・

  ならば答えは一つ、私が同じ場所をループさせられていたのです。

  ・・・時を止められている間に移動させられてね。

  それ以外にこんな事が出来る人はいません、つまり犯人は・・・」

 

後ろからの気配を感じて横へ跳び、振り返り様おもちゃのナイフを投げる。

・・・どうやら俺の推理は正解だったようだ。

 

誠「貴女しかいないんですよ、メイド長である・・・」

 

俺の投げたおもちゃのナイフが銀色に輝く金属に弾かれた、それは俺の足元に着弾し、床に深々と突き刺さった。

 

誠「十六夜 咲夜(イザヨイ サクヤ)さん、貴女しかね!」

 

咲「・・・」

 

十六夜 咲夜、紅魔館のメイド長をしておりその働きは「完全で瀟洒な従者」と言う二つ名に恥じぬ働きをしている。銀髪、銀髪、銀髪。大事な事なので三回言いました。

えぇ、只今テンションがウナギ登り中であります!かわいい!かわいいよ咲夜様!

笑みが表情に出ないように隠しているけどこれちょっとした事で崩れるよ!ポーカーフェイスとかそんなもん関係無いね!

 

さて、時を止めてから殺さないって事は殺すのが目的ではないらしい。

・・・ちょっと前まで普通の人間だったのに数時間で殺される殺されない言っちゃう能力持ち人間になってしまったんだな俺・・・

っと、気を抜いたら事故で死ぬ世界だったな幻想卿。気を抜かないようにしないと・・・

殺すのが目的ではない、となるとやっぱり試す為であるのだろうか。

戦闘も知恵も経験も平々凡々な俺だから試されても困るんだけども、まあいいだろそんな事は。それよりこれで試し終わったのか、だな。

 

誠「さて、私の実力はどうでしたか?

  期待には遠く及ばないでしょうがね」

 

レミリアとの戦闘が終わって気が抜けていたのもあったからこれは赤点付けられるな、お説教位は覚悟した方がいいかもしれない。

 

咲「・・・合格、お嬢様が採用した意味が良く分かったわ」

 

・・・へ?

え?え?合格?一発合格?お説教無し?

 

誠「そ、それは一体どういう事なのでしょうか?私はてっきり

  不合格かと・・・」

 

咲「第一に私が背後に立った直後の反射神経の良さと気配察知能力の

  良さ。第二に私が投げたナイフの弾道を見切った力。貴方、私の

  ナイフが足元に刺さると見切って避けもしなかったでしょう?

  見切っていなかったら足に刺さるかもしれないナイフの前で

  突っ立ってたりしないわ。第三に・・・」

 

ふぅ、と溜め息を付く咲夜さん、かわいい。

 

咲「時を止めたと言う事が分かった点ね、お嬢様も美鈴も私の能力に

  ついては一切口にしていない筈。前から知ってるのなら話は別

  だけど外来人じゃ知っている訳がない、それを貴方は見破った。」

 

・・・これは本当の事言ったら減点されるパターンですねわかります。

 

咲「どうしてわかったのかしら?ばれる要素は無かったと言っても

  過言ではないのに」

 

ど、どう言えばいいだろうか・・・

 

誠「た、ただの直感ですよ!閃きって奴です!」

 

う、嘘ではないぞ!ちょっと廊下ループで本当に時を止められて階段を上る事が出来ないジョジョの奇妙な冒険で有名なアイツみたいだと思ったのは本当であって・・・

 

咲「それならばその閃きも凄いわ。時を止めるなんて発想は

  普通の人間には出来ない発想よ」

 

あ~・・・それもそうだった。

 

誠「たまたま偶然ですよ、そこまで私は勘が鋭い訳でもありません

  それよりお嬢様から聞いていると思いますが・・・」

 

咲「えぇ聞いているわ、これからよろしく。

  それで貴方の名前は?」

 

レミリアから聞いていないのか。

 

誠「私の名は誠、葉隠 誠と言います。

  これからよろしくお願いしますね咲夜さん。

  ・・・あ、様の方が良いでしょうか?咲夜様?」

 

咲「『さん』で良いわ『さん』で」

 

大事な事らしいので二回も言ってくださりました。俺的には是非とも『様』で呼びたいのだが咲夜様がそう言うなら仕方がない・・・

今の内に心の中で『様』呼びしておこう。咲夜様咲夜様咲夜様咲夜様咲夜様・・・

 

咲「・・・聞いてるの?」

 

誠「うわっと!すみませんつい考え事を・・・」

 

咲「まあいいわ。さ、美鈴やパチュリー様に挨拶して来なさい。」

 

と言って手渡してくれたのは一枚の紙。

こ、これは!!

 

咲「これが紅魔館の地図、パチュリー様は大図書館にいるわ」

 

ねんがんの こうまかんのちずをてにいれたぞ!

 

 殺してでも(ry

 

誠「ありがとうございます!」

 

方向音痴だったりする俺に地図は必要不可欠である。

 

咲「さ、行って来なさい。私は今晩の夕食の準備をしないと」

 

誠「私の分もお願いしますね!」

 

咲「分かってるわ、それじゃあね」

 

と言った瞬間に消えた・・・だと・・・!?

あぁ時を止めて移動したのか何だビックリした。

 

さて、早速美鈴とパチュリーの所へ行ってきますかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門の前に行ったら居眠りしている美鈴が居たので起こそうとしたらナイフが飛んできて美鈴が「ピチューン」と言う音を立てて消えてしまった、合掌。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで美鈴を後回しにして大図書館へとやって来ました。

こ、ここが大図書館・・・どこを見ても本棚と埃しかない!後は巨大な机!

と、とりあえず読書用の本を数冊持ってい・・・借りて行こう!

本の整理をしていたらしい女性が俺に気付いた、手を振っておく。

あれは・・・小悪魔さんか、ゲームクリアする途中散々ピチュった小悪魔さんか。

・・・なんか悪い事した気がしてとりあえず深々と頭を下げておいた。

おっと、一応紅魔館の住人なんだから挨拶して置くべきか?やっぱりするべきか。

小悪魔さんの近くまで歩き、小悪魔さんの肩をトントンと・・・

 

小「ひゃぅっ!!」

 

かわいい、このリアクションが取れるとはやはり天才か。

持っていた本を床に下ろしながら振り返った小悪魔さんは安心したような顔をし。

 

小「び、ビックリしました・・・」

 

どこに驚く要素があったのか。

 

誠「驚かせてしまってすみません、この度紅魔館に住む事となった

  葉隠 誠と言います」

 

小「えぇ!?紅魔館に住むんですか!?だだ、大丈夫なんですか!?」

 

そこまで紅魔館はヤバイのかと疑いたくなるぞこれ。

 

誠「ええ、お嬢様に許可は貰いましたから。

  ところでパチュリーさんはどちらにいるのでしょうか?」

 

小「パチュリー様ならあそこにいますよ!」

 

誠「ありがとうございます」

 

一礼してパチュリーの方に歩き始める、周りの本棚を見ると綺麗に整頓されており様々な種類の本が集まっている様だ。

・・・読みたい。

先程の巨大な机の前に立つと目的の人物であるパチュリーを探す、角の方で本を読んでいる様だ。

分かる、分かるよそれ。部屋のどっか座れと言われたらついつい角の方とか狭いとこに座っちゃうんだよねうん。

パチュリーに近付くと影で気付いたのか俺へと振り返る。ふむ、肌が白いな。日光を浴びないと骨粗しょう症になりやすくなって骨を折るぞ、割と真面目に。

 

パ「・・・あなたは?」

 

誰ですかあんたと言いたげな瞳で見つめられ、ちょっと言葉が詰まりそうになるが自己紹介を始める。

 

誠「私はこの度新たに紅魔館の住人となりました葉隠 誠といいます。

  と言っても決まったのはつい先程ですがね」

 

パ「そう、レミィが決めたなら何も言わないわ

  ようこそ紅魔館へ」

 

誠「よろしくお願いします。所でパチュリーさんにお聞きしたい

  のですが、世界を移動出来る扉について知りませんか?」

 

パ「・・・?」

 

この反応だと知らないみたいだな・・・うむむ困った。

まあ帰れなくてもいいけど行き来出来ればそれはもう助かるのだが、まあそんな都合のいい話がある訳がないか。

 

誠「いえ、ご存じ無ければいいんです」

 

情報は追々調べていけばいいか、さあ次は美鈴だな。

今の時間は・・・げっ!もうこんな時間かぁ・・・うわぁ食事までに間に合うよな・・・

 

誠「それでは私は美鈴に挨拶して来なければいけませんのでこれで!」

 

速足で大図書館から出ると廊下を一気に走りぬけて門の前へと急ぐ。

幸い運動神経は良い方なのですぐに門の前に辿りつき美鈴を探した、が。

 

いない。ピチュったらそんなに回復しないもんなの?いやいや普通に回復するでしょう幻想卿ならば尚更。

って事は・・・

館の庭を見渡すと見えたのはあの緑色をした帽子と紅い髪。

なんだ庭の手入れか、美鈴が庭の手入れをしているのってあんまり想像出来なかったけどこれはこれで絵になるな。

庭を荒らさないように気を付けながら美鈴の近くへと行くと美鈴がこちらに気付いたようだ。

 

誠「どうも、美鈴さん」

 

紅「葉隠さん良かったですね!

  お嬢様に合格点を貰うなんて凄い事ですよ!」

 

誠「あれは能力が万能でしたので出来たんですよ、そこまで私は

  凄くありません。それよりも食事って大体いつ頃ですか?」

 

紅「食事は・・・」

 

時計へと目線をずらした美鈴は途端に表情が硬くなった。

え、まさか?

 

紅「も、もうすぐ始まっちゃいます・・・」

 

なん・・・だと・・・!?

 

誠「で、ですが少し位なら遅れても・・・」

 

紅「咲夜さんは時間に遅れると大体ご飯は無しにしてるんです・・・」

 

・・・沈黙、嵐の前の静けさとはこう言う時に使う言葉だったんだな。

すぐに俺と美鈴は紅魔館の中へと駆け込んだ、勿論花壇が荒れない様に細心の注意を払いながら駆けだした。妖精メイドが何事かと見ているがそんな事は関係ない、飯が無くなるかもしれない絶体絶命のピンチなのだ。

廊下の角を曲がり全速力で目的の部屋へと駆け込んだ、扉が勢いよく開き俺と美鈴が部屋へと滑り込む。

 

その時。

 

パーンと何かが破裂する音がした、その音は幾度も鳴り響き光る紙やカラフルに色が付いた紙片をばら撒いた。

何事かと顔を上げればクラッカーを持ったレミリア達が立っていた。

 

レ「さあ主役が来たわ!始めるわよ!!」

 

一際大きな声で言うレミリアは俺を立たせて席へと迎え、グラスを持たせられた。

未だに何が起きているのか混乱状態である俺としては何が何だかと言う感じであり、多分鳩が豆鉄砲食らったような顔をしているんと思う。

 

レ「さ、乾杯は誠がやんのよ!」

 

ようやく状況が理解出来てきた、成程歓迎パーティですね俺の。

ほんの数時間前にやって来た俺の為にパーティを催してくれるなんてお嬢様マジかっけーッス!

 

誠「乾杯の前にお嬢様、これはお酒ではありませんよね?」

 

レ「ただのジュースよ、さあ速く速く!」

 

嬉しいわ、純粋に嬉しい。

 

誠「私の為にこんな素敵なパーティを開いて下さり

  どうもありがとうございます!それでは皆さん乾杯といきます!」

 

美鈴も席に着きグラスを持った、良く見ればパチュリーや小悪魔や妖精メイド達もいる。

 

誠「それでは・・・乾杯!!」

 

全員「かんぱーい!!」

 




この後実はジュースはぶどう酒でみんな酔い潰れました。
















次回予告
新たに紅魔館組に入った誠、パーティのお陰で紅魔館の住民達と打ち解けてすっかり仲良しに!そんなある日レミリアに勝負を挑まれる誠、勝負の種目は・・・麻雀!?レミリアと咲夜による一方的な役満あがりによってフルボッコにされた誠は肌を白くしながら静かにブチ切れる!「初めてですよ・・・ここまで私をコケにしたおバカさん達は・・・」誠の怒りが頂点に達する時!誠は第二形態へと変身を始める!次回「ところでフランちゃんがいないのはストーリー的にまだ出せないからですすみません」フランちゃんの戦闘力でスカウターがッ!!

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