もしも人形が目の前で突然動き出したら、どうするか。
しかもその人形には首がない、だが笑い声も聞こえる。
そして人形の右手には鉄の槍、左手には盾を構えてる。
この場合は普通どうするか?
逃げる? 戦う? 人に任せる?
俺? 俺は迷わず逃げるね。
なんでこんなことを聞くのかって?
ちょっと大げさに言ってるけど今その状況だからだ。
誠「ひぇぇーお助けー」
緊張感も必死感も全く伝わらない口調で助けを求める、もちろん俺の声に反応するやつはいない。
ただ一人を除いて。
ア「こ…っの!! 余裕綽々な態度してんじゃないわよ!!」
アリスの周りに現れた人形たちが一斉に俺へと襲いかかる、だがその手に持つ槍は空を突くのみだ。
誠「あー死ぬかと思ったー」
人形の攻撃を全て避けてアリスの背中をとる、魔法使いと言えど少女の姿をしているアリスの背中をポンと叩いて距離を取る。
誠「槍はダメですよ槍は、刺さったら痛いでしょう。 ねえアリス・マーガレットさん」
ア「だからマーガトロイドよっ!!」
アリスの周囲を人形たちが飛び回る、よく見たら槍ではなく剣を持った人形までいる。
危ないなぁもう。
誠「そろそろ先を急ぎたいのですが、アリス・マッガーレさん」
視界を埋めるように迫る人形を弾幕で撃墜、そのまま後ろに飛んでアリスを集中的に攻撃していく。
アリスは俺の弾幕攻撃を2体の人形を操って迎撃すると俺から距離をとった。
ア「ようやく戦う気になったようね」
誠「おっとと? 私は自身の命を守り、虫を駆除しようとしたのですが…もしかしてあれで
戦闘だと思ったのですかね? 戦闘というのは弾幕ごっこではなく殺す気でいかなくては」
俺の挑発にぷるぷると肩を震わせるアリス、あ、こりゃ本気で怒ったな。
いやでも魔法使いさんならもうちょっと寛大な心を持ち合わせているはず!
ア「…そう、本気で殺されたいみたいね」
あー、こりゃ怒ったな。
ア「それなら今から全力で殺してあげるわよ!!」
誠「俺が勝ったら情報よこせよ? んじゃ,遊んでやっから来な」
アリスの目に殺意が宿ったように見えた。数はさっきの倍以上に増えており、動きは人形とは思えない程に素早く自由に動いている。
アリスの右手が上がった、人形は合図を聞いたとばかりに散開し、四方八方を俺中心に取り囲む、それはさながら
俺は一瞬の動きに身動きも取れず、人形たちで作られた虫籠の中でアリスを睨む。
誠「………」
ア「あまりの動きに身動きがとれないようね、人間じゃ魔法使いに勝てないのよ」
アリスは勝利の笑みを浮かべながら俺を見つめていた、その眼には蔑みと怒りが
アリスから視線を外し、周囲を飛ぶ人形を見る。人形は俺を逃がすまいと動きまわり、隙を出せば即座に刺し殺せるようにと目を光らせていた。
ア「さあ、今謝れば許してあげなくもないわ」
あ~、俺は速くこの寒い季節を終わらせたいだけなのになぁ。
…ここはあれだな。
誠「ん? あぁゴメン、『あま』までしか聞いてなかったわ」
ア「……死になさい」
アリスの右手が振り下ろされた。
周りの人形が一斉に俺を殺さんと襲いかかった。
鉄の槍は俺の心臓を突き刺し、剣は俺の体を切り刻もうと迫る。
その動きは素早く、常人なら反応できない速さだった。
誠「はやっ…!?」
キィンと甲高い音が空気を震わせた。
それはいくつもの鉄の塊によって反響し、機械のように幾度もリピートしながら冬空の下で響き渡った。
アリスの目の前に浮かんでいた人形たちで出来た虫籠は一瞬のうちに1メートルほどの球体となっていた。
響いていた音は勢いを増してきた吹雪によってかき消され、人形でできた球体は雪を浴びながら静かに佇んでいる。
ア「………ふん、所詮人間ね。 口が達者でも力がない」
誠「そうだねぇ、人間は力がないから仕方ないわ」
ア「そうよ、さえずるだけじゃな…い……?」
アリスが俺のほうに振り返った、信じられないだとか化けものだとかそんな感じの眼をこちらへと向けている。
誠「そうそう、でも人間にも知恵があるんだよねぇ」
ア「な……なな…なんで生きてるのよ!?」
そんなに信じられないか? いやいやあんなので死んだら幻想郷じゃ生きれないから。
誠「仕方ないなぁ、確認をしないで勝手に殺したと思ってたアリス・マージャンに種明かしだ。
襲ってきた瞬間隙間が見えたんでそこから出ました、OK?」
ちなみに『はやっ…!?』とか言ったのは油断させるためな。
誠「人間の動きじゃ逃げれない速さでも逃げることはできる、俺はもう半分人間じゃないし」
未成年なのに酒飲めるし、常人より遥かに運動能力高いし、能力でパワーアップできるし。
…うん、我ながらもう人間辞めかけてるな。
誠「それじゃあ改めてやるか? いや殺るか? 半殺しにするけどな!」
冗談めいた口調で言う、アリスは怒ったような眼をこちらに向けたがすぐに肩を落として踵を返した。
ア「…もういいわ、今回は私の負けよ! 春を取り戻したいなら冥界よ」
誠「冥界? そういや冥界は行ってなかったな。 ありがとさんアリス・マスカット!」
ア「………ハァ…」
アリスが深い溜め息を吐くがそんなことに構ってる暇はないのだ、今は速くこの冬を! この冬を終わらせるために急がねばならないのだ!
…決して名前を間違えることが楽しくなってきたわけではないのだ。
冥界。幻想郷で言う冥界は…そのまんま冥界である。
紫様に聞いたがそこは普通に桜も咲くし紅葉もあるらしい、ただ死んだやつしかいないってだけだそうだ。
そんなところに行こうとしてるのか俺…、まあ霊は信じるタイプだし別にいいんじゃないかな。
呪われたりとかはしないだろう、多分。
冥界に行くには面倒なことに雲の上まで飛ばなくてはならない、しかも結界があるので冥界に入ることは普通できないようになってる。
え? 立ち往生じゃないかって?
ところがどっこい、この結界は
紅魔館の大図書館には数多くの種類の本があり、その本の中に結界の仕組みが載っている本があった。 暇だからと読んでみたら結構面白かったので全部読んだよ。
1週間くらいかかったが、まあこういう時のために読んでおいてよかったわ。
ずばり、こう言う結界はどこか弱いところがあるからそこから入れる!
…と、本に書いてあった。
冥界の入口である門が見えてきた。 アレを抜けるのか、見た感じ脆そうなところはないんだが…。
誠「さて、どこが壊れるのかな。 …雲の上で桜吹雪とはおもしろい」
?「そうね、下は猛吹雪だっていうのに」
誠「…ん? 雲の上には美少女3人組までいるのですか」
振り返るとそこには少女が3人、全員が楽器を持って俺と同じように飛んでいた。
妖精のようにも見えたが妖精にしては体も大きく、見た感じ頭も良さそうだ。
待てよ? こいつら見たことあるな。 確か…プラズムドバー…あれ違う。
誠「そうだ、プリズムリバー楽団だ。 これから冥界で演奏ですか?」
リ「そういうこと~」
三姉妹の三女であるリリカ・プリズムリバーが答える。 おへその前にはキーボードが浮いており、リリカが動くにつれてキーボードも動いた。
手を使わずに演奏できる…だっけ? 便利だな。
メ「それで、あんたは誰?」
一番最初に声をかけてきた次女、メルラン・プリズムリバーが言った。
…ふむ、いい髪をしている。 少し青みがかかっているが、それも合わせて美しい髪の色をしている。
その青みかかった銀髪の上には中央がトンガった帽子を三姉妹全員が被っていた、だが見る限り雪は積もっていない。
誠「人間であり、探検家であり、冬が大嫌いな葉隠 誠と言います。 以後お見知りおきを」
リ「よろしく~」
リリカがにこやかな笑顔で挨拶を返してくれた、美少女には笑顔が似合うなぁ。
誠「そうだ、冥界へ行くならついでに私も連れて行ってはくれませんか?」
旅は道連れと言うしな。
俺の言葉に三人は難しそうな顔をした、やっぱり生きた人間はダメかな?
ル「…いいわ、連れて行ってあげる。 少しお花見には早いけど」
長女のルナサ・プリズムリバーが答えた、いやぁ話はしてみるもんだ。
誠「それは助かります! では行きましょう!」
ル「そのまえに」
俺が門へと急ごうとしたがルナサの言葉がブレーキをかけた、俺には一瞬の時間も惜しいのだが。
ル「生きた人間は入れない、だから加工する」
誠「加工ですか、まさか挽き肉とか勘弁してくださいね!」
ル「大丈夫、ただのお肉だから」
誠「どっちにしろ死ぬとはこれいかに」
メ「演奏の練習もしないと」
リ「練習、練習~」
誠「せめて本番で殺して!」
更新が遅いくせにちょっと短い、もうちょっとゆとりある生活がしたいです。
…え? 弾幕ごっこをやれ?
じ、次回は弾幕ごっこやります(震え声)
次回予告
プリズムリバー三姉妹との弾幕決闘を見事勝利し冥界へと侵入した誠。 だがそこには大量の霊がうじゃうじゃふよふよ…。 正気を失いそうになるも冬を終わらせるために無我夢中で進む誠だがその行く手に一人の少女が立ちはだかる! 「…誠、こんなところで何してるのよ。 前に貸したお金を三倍で返すんじゃなかったのかしら?」紫様に金銭の創造は禁止され、今は無一文の誠に紅白の巫女少女は容赦なく襲いかかる! 果たして誠の運命はいかに!!次回『今年は2月、3月に欲しいゲームが出過ぎだと思うの』ドラクエシリーズは10以外クリアしました。