匂いをたどってエリアを移動、二分ほどしてリオレウスのいるエリアに到着。
ペイントの効果は結構長持ちするから追跡は楽なんだけど…この匂いを森丘にいる間ずっと嗅がなくちゃいけないのは嫌になるわ。
リオレウスを見ると森林や高い丘…いえ、高い崖を背にずっしりと佇んでいた。
レ「さっき言った通りに行くわよ。 フラン、まかせたわよ」
フ「大丈夫よ、まかせて!」
私がエリア移動中に言ったことはリオレウスを倒すための作戦、リオレウスを倒すためにやらなくちゃいけないこと。
昨日、全員が武器を選んだりアイテムについて聞いてる間に私はこの世界のルールについて調べてみたの。
この世界はどんなに高いところから降りても足から降りれば無傷だったり、モンスターによって変わるけど特定の場所に一定量ダメージを与えると部位破壊という現象が起きてモンスターを弱らせることが出来る事とかを本から調べておいた。
上級モンスターにはこの部位破壊が特に有効な手段らしいわ、中には部位破壊をしなくちゃ倒せないモンスターもいるとか。
今回のターゲットであるイャンクック改めリオレウスには部位破壊できる箇所が四つあることもパチェから聞いておいた、その部位は頭、右翼、左翼、そして尻尾。
尻尾を切ると攻撃範囲が狭くなってこっちが有利になる、しかも私の予想では普通に立つこともしづらくなるんじゃないかと思ってるわ。
あの尻尾がなければ体重を二本の足だけで支えるのは難しいはず、飛んで逃げようにもバランスを崩して落ちたりするかもしれないわ。
尻尾の切断、そしてそのためにはフランの大剣が不可欠。
尻尾を切るには切断系統の武器――私、フラン、咲夜の武器でしかできないわ。
それに加え私と咲夜の武器は攻撃力が足りない、つまり最後はフランに頑張ってもらうしかないのよね…大丈夫よね? 私の妹だもの。
レ「さっ、行くわよ!」
まず私と咲夜が前に出る、リオレウスは足音で私たちに気づいたようで私たちを見ると首を上げて咆哮をする構えを取った。
咲「お嬢様!」
レ「わかってるわ咲夜!」
咄嗟に武器を取り出して盾を手に構えて前に出す、王者の威圧を持った咆哮が森丘に響き渡った。
パチェは咄嗟に耳を庇う、だが私たちはその咆哮の中リオレウス目掛けて走っている。
咲夜が発見したことだけどリオレウスの咆哮は盾で振動を一度防げば大丈夫らしい、半信半疑だったけど本当だったのね。
レ「王者の威圧もこの程度のようね!」
咲夜がリオレウスの前を陣取った、私は懐に潜り込み剣を持ち直して右足を斬りつける。
剣で斬った傷はほんの少し、微々たるもの。でもそれは積み重ねれば強くなる。
フランが動き出した、咲夜の横を走り抜けてリオレウスの尻尾をその目で捉えた。
地面に足でブレーキをかけながら流れるような動作で武器を構え、一気に振り下ろす。
フランの渾身の一撃が尻尾に当たったがそれでも傷は小さい、リオレウスからすれば掠り傷同等でしょうね。
…全員配置についたわね。
ポーチから閃光玉を取り出して咲夜に向かって投げる、咲夜は目を瞑りながら盾を構えた。
閃光が炸裂してリオレウスの目が眩み、十数秒動きが止まる。
レ「咲夜! フラン!」
私の合図と共に咲夜とフランは武器を背中にしまってリオレウスから距離をとった。
それを確認すると私もリオレウスの股下から脱出、そのまま三人でパチェのもとへと走る。
リオレウスは私が離れたことを気配で感じ取ったのか鎌首を持ち上げて目の前をがむしゃらに食らいつこうとしている。
でも私はとっくにパチェのところにいるからそれは無駄なのよね。
レ「ちゃんと仕掛けた?」
パ「ええ、もちろんよ」
レ「…いい位置ね、さあパチェ最大の見せ場よ」
パ「………」
パチェは弓を構えてリオレウスの頭に狙いを定める、ギリギリと弓の弦が悲鳴をあげるように音を出す。
それは力を込めて振りおろそうとしている握り拳のように、静かに力を溜めて矢を支えていた。
リオレウスが首を二度振ってからこちらを睨む、その睨みはこの場を静ませるには十分の威圧…いえそれ以上の威圧を内に秘めていた。
リオレウスは鎌首を持ち上げて森丘全体に轟く咆哮の構えを取る。
パ「…そこよっ!!」
パチェの凛とした声と共に放たれた矢は吸い込まれるようにリオレウスへと飛ぶ、それは寸分の狂いもなくリオレウスの小さな右目に突き刺さった。
ギャアウゥッ!! 王者の声とは思えない弱々しい悲鳴が聞こえた、それは紛れもなくリオレウスから発された音であり、リオレウスの威圧を崩すには十分だった。
レ「さすがねパチェ、よくやったわ」
パ「自分でもよくやったと思うわ、あれ5cmあるかないかってとこじゃない」
レ「帰ったら大図書館の本でも増やしてあげるわよ」
パ「期待してるわ」
ポーチの道具を確認して次の行動の順序を確認、周囲を見るとフランが近くにいない事に気付く。
もう尻尾を切りに行ったのかしら?
パ「レミィっ!!」
はっとなってリオレウスの方見た、いつの間にかリオレウスが体制を立て直してこちらに向き直っていた、右目にはパチェが放った矢が痛々しく突き刺さっている。
リオレウスはその矢を抜こうともせず口に火炎を溜めた、無傷の左目でこちらを威圧しながら超高熱の火炎を巨大な口から放つ。
それは火球となって空気を燃やし、通った場所は草の欠片一つ残さず全てを燃やし尽くしながら私に向かって飛んできた。
あまりの速さに私は避けることができなかったわ。
いいえ、私には避ける必要がなかったわね。
だって私には。
誠「もしも~し? 生きてますか~?」
魔理沙の帽子を頭に被りながらにとりに声をかける、いやだってうつ伏せで倒れてたから苦しそうだなーとか思ったんだよ。
俺の声が聞こえたのかいきなりガバッと起き上がるにとり。
なんだろう…ガバッとにエロスを感じてしまった俺はさすがにもう末期だわうん。
河「こ、ここは…紅魔館みたいだね、ってなんで誠は魔理沙の帽子を被ってるんだい?」
誠「クリアしたから帰ってきたようだぞ、その質問にはノーコメントだ」
にとりが起きたら他の二人も起きたようだ、魔理沙は自分の頭に帽子がないことを確認してから周囲を見回した。
俺の頭の上に帽子があるだろ? これを見てどう思う?
すごく…大きいだろ?
こんなの被っていつも過ごしているとかちょっとありえないかな、いや幻想郷では常識は投げ捨てるものだって紫様が言ってたしなぁ。
博「誠、その帽子すごく似合ってるわよ」
誠「そうだろ? さっき落ちてたのを偶然拾っちゃってさぁ~!」
おうおう魔理沙さん、肩が小刻みに震えてますよ? 笑いでもこらえているんですかね?
魔「それは私のだ!」
颯爽と箒に跨った魔理沙は俺の帽子を頭から掻っ攫うと自分の頭にそれを被せた。
なんという箒の無駄遣い、いや有効活用?
誠「さて、咲夜さんがいないから紅魔館組はまだクエスト中だな」
博「じゃあ私たちの勝ちね!」
誠「残念、これはモンスターを倒すまでの総合時間じゃないんだこれが。
競うのはモンスターと交戦した時間だけだ」
博「そうなの? じゃあまだ分からないってわけね」
誠「そういうこと」
問題はいかに作戦を立てて早く狩るかだ、つまり撤退や作戦会議などじゃんじゃんしてくれていいんだよね。
でもこれを俺のチームだけ明かしたり、全員に明かしたりするとどうしても知恵という面で俺が有利になる。
俺が何も言わない場合人数的に紅魔館チーム有利だしさ、つまりこれは伏せといたほうがいいと思ったわけだ。
さて、俺たちは先にクリアできたけどそれはイャンクックとずっと戦ってたわけだからな。
あっちはどう戦っているのかは知らんが、見学くらい良いじゃない?
てなわけでマシーンにモニターを接続、これで中がどうなってるか分かる。
どれどれ…。
…ん? クエスト終わって疲れたのかな俺? イャンクックが別のモンスターに見えるぞ~?
…はぁ!? これどう見てもリオレウスじゃん!! 二回目をゴシゴシしたけどリオレウスだこれ!!
待て待て…よく見たら武器が俺たちのより強いやつじゃないか…、出発の時とは微妙に違う武器を持ってるぞ咲夜さんたち…。
リオレウスのクエストになったバグと一緒に武器も強くなるバグでも発生したのか? うわぁ…、まあ倒せなくもない装備だからいけるだろ。
危なくなったら俺が行って倒せば良いわけだ、何も心配することはないな。
…お、おいレミリア。ターゲットから視線を外しちゃ…。
な…火球の
クソッ!!! 間に合うか!? 待ってろお嬢様!!
焦げるような匂いが私の鼻腔をくすぐった、それは私の服が燃えた匂いではない。
それは、鉄が溶けたような匂いと草木が燃えた匂いが混ざった匂い。
レ「…さすが私の従者ね、見事な動きだったわ…咲夜」
咲「お褒めの言葉、ありがとうございます。ですがお嬢様、敵から視線を外してはいけません」
レ「次は気をつけるわ」
咲夜は盾になると言っておいて出来ないような無能じゃないものね、有能な従者よ。
…? 視界の端で何かが動いた気がしたのだけど…。
いえ、それよりも今はリオレウスね。咲夜がリオレウスの前で注意を惹きながら戦ってくれてる。
私のやることは…。
レ「咲夜は一旦引いて! パチェはリオレウスの注意を引いて突進攻撃の誘発!」
剣と盾を両手に構える、私がやることは…全員のサポートと指揮。
ポーチから小さなビンを取り出して空に放り投げる、それは白い粉を撒きながら宙に舞ってから地面に落ちると跡形もなく砕け散った。
ゴワアアアアアァァァァァァァァァッ!! 一際大きな咆哮と共にリオレウスは私たち目掛けて突進してきた。
レ「…よし!」
リオレウスは私の頭を喰らおうと鎌首を振るうがそれは私に届くことはなかった。
電流が走ったように体を痙攣させて私の顔を喰らう寸でのところで止まったリオレウスの足には黒っぽい色をした円盤が電流をながし続けていた。
レ「今よフランッ!!!!」
空に向かって私ができる最大の音量で叫ぶ。
私の遥か頭上で何かが風を切って落下を始める、それは、その影は大きな剣を両手で持っていた。
その影は―――フランは叫びながら大剣を振りかぶる。
フ「そおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっれぇッ!!」
重力が乗ったその一撃はリオレウスの脳天に激突し、リオレウスを地に伏せた。
いや、それだけじゃ済まない。
大剣はリオレウスの頭と共に地面にメリ込み、リオレウスの頭が地面に埋まるという半ばギャグのような光景へと変貌していた。
リオレウスは体を一度大きく痙攣させると、そのままの格好で動かなくなってしまった。
レ「………えっと…終わりよね?」
咲「そのようですね、完全に倒したようです」
パ「…フラン、尻尾を狙った攻撃じゃなかったの?」
フ「…ちょっとだけ飛ぶ方向間違えちゃったみたい、まあ結果オーライだよ!」
フランがにっこりと子供っぽい笑みを浮かべた、あの高さから落ちたにもかかわらず傷一つないようね…、本当に変な世界。
レ「…まあいいわ、さっさと剥ぎ取って終わりにしましょ?」
こうして私たちの初めてのクエストが終わったわ、予定外なことが多かったけど…。
…まあ、フランの言う通り結果オーライ…ね。
誠「………」
河「…誠、モニターに顔突っ込んでも入れないのはちょっと前に実験したってば」
誠「………咲夜さんナイス…」
いや危なかったな、咲夜さんがいなかったらどうなってたことか…。
パーフェクトだ、咲夜。…さん。
博「誠~、レミリアたちが起きたって何してるのあんた」
誠「二次元と三次元の境界がなくなればいいのにと思いました」
博「紫に頼みなさい」
今度本気で頼んでみよう、うん。
俺がモニターを置いて振り返ると全員が立ち上がっていた、紅魔館組は周囲を見たりして帰ってきたと把握したようだ。
誠「うぇ~いみなさんおまちかね…、けっかはぴょーう」
パ「もうちょっとやる気出しなさい、誠」
誠「お腹が減ったんですよ、やる気が出ないわ」
咲「終わったら夕飯にするから速くしなさい、誠」
誠「さ~あみんな盛り上がって行きましょー!! 第一回モンハンタイムアタック!!
優勝は…あ、妖精メイドの皆さんドラムロールお願いしま~す」
妖精メイドたちが一斉に小さなドラムを抱えて一生懸命ドラムロールを始めた、だがドゥルルルルルと言うドラムロールにはなっておらず、どぅるるどぅるどぅるるる…と変な音になっているが妖精メイドさんたちは一生懸命やっているんだ。察してあげてください。
十秒くらい流れていたドラムロールはピタっと止み、最後のドンを俺が予め用意しておいたドラムで合わせる。
誠「優勝は07分49秒の紅魔館チーム、おめでとうございまーす!!」
レ「当然ね!!」
いや当然ってお嬢様? 死にかけたでしょうあなた…ってそういやこの人吸血鬼だったわ、死なないわ。
誠「ち、ちなみに私率いる異変解決チームは09分16秒です、さすがにブーメランじゃきついわな」
魔「あいつ一番ダメージ与えてたよな?」
博「そうね、ブーメランで乱舞とかやってたし」
誠「はいはいお静かに、紅魔館チームには私が創ったものを得る権利が与えられます。
ただし今から創るやつね、さあなに創る?」
レ「…パチェ」
パ「いいの? …わかったわ」
レミリアとパチュリーが少し言葉を交わした、なんだいなんだい約束でもあったような感じですの。
パ「大図書館に置く本を創って頂戴、ついでに本棚もあれば尚良いわ」
ほう、そう来たか。
誠「願いを叶えよう、本棚も創るよ! あとで大図書館に創っておくから」
パ「ありがとう、誠。できれば面白い本より魔導書のほうがいいわ」
誠「了解であります」
ふと後ろを見ると霊夢が魔理沙と話しているのが見えた。
何話してんだ?
博「誠に厄払いの御札でも創ってもらおうと思ってたのに…」
魔「私は本を借りるのが楽になるアイテムを創ってもらうつもりだったぜ」
あ~あるね、どこ○もドアとか。
残念! 次の機会に頑張れ!
誠「さあ咲夜さん! 夕飯お願いします! もちろんこの全員でパーティですよね?」
咲「最初からそのつもりよ、どうせ誠がいるとパーティになると思って下ごしらえは済ませてあるわ」
誠「さすが咲夜さん! おっし腹いっぱい食うぞ!!」
今の時間は7時、大体5時間はあのゲームやってたのか。
いやはや5日くらいいた気がするな、まああながち間違ってもないんだけど。
さあ5日ぶりの咲夜さんの飯だ! 美味し料理が俺を待ってる!
俺はダイニングルームへと全速力で走り出したのだった。
次回予告
冬、それは誠が一番嫌いとする季節。
春、それは誠が一番昼寝をする季節。
新年を迎えて季節は冬から春に変わる時が来る、それまでコタツの中で待とう…。
2月、3月、4月…だが一向に訪れない春を待ち続けてついに5月。
いつまでコタツに入って鼻水をかむ日々を続ければいいんだ、いい加減春は来ないのか…。
誠の脳裏を電流のように駆け巡ったのは一つの閃きだった。
こないなら よべばいいよね ホトトギス
次回『いつも嘘予告してるのに今回普通の予告みたいだね? どうせやらないんでしょ?「やります」…え?』やります。