東方開扉録   作:メトル

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ちょっと長めです。


第二十話 狩猟準備

空を見上げれば煌々と輝く太陽が目に入る。

周囲を見渡せば切り立った山々が目に映る。

砂埃を舞い上がらせて進むのは俺たちの世界でいう馬車のような乗り物。

二匹の獣が力強く引き、前に進む。引いている荷車はテントのように布が張られており太陽の光や砂埃をカバーしていた。

 

誠「涼しいなぁ」

 

魔「顔出してると危ないぜ、誠」

 

誠「へいへい」

 

その荷車の中に俺たち八人はいた、荷車と言っても結構大きいので荷物は大量に積み込めるようだ。

あまりの荷物にこの荷車を引いている獣、あいつらが疲れて倒れないかが心配になってきた。

なぜここにいるかと言うと二日前に砂漠を通りかかった商隊(いわゆる商人たちの集まり)に拾ってもらったのだ。

親切な人たちで助かる。

 

誠「…あぁ眠くなってきた」

 

博「なに? 寝てなかったの?」

 

魔「いや誠はさっき起きたばかりだぜ」

 

誠「それでも眠いんだよ、暇な時は眠るに限る」

 

荷車が走るごとに起きる小さな揺れが俺の睡眠欲を掻き立てる。

この世界は交通機関があると言っても一日で目的地に着くような簡単な物ではない、大体二日から三日かけて目的地に着くぐらいの速さだ。

道路が整備されてないのが一番の問題のため実際はそこまで遠くない場所でも回り込んで走る事なんて日常茶飯事、安全第一で結構なことだが。

 

フ「う~…」

 

レ「ふふふ…」

 

フ「…こっち!」

 

レ「残念ね、それはジョーカーよ!」

 

フ「う~…」

 

レ「ふふん、さあ私の番ね」

 

フ「…はい!」

 

レ「……こっちよ!」

 

フ「あー!!」

 

レ「ふふっ、当然の結果ね」

 

昨日から飽きもせずトランプをしている紅魔館組筆頭のレミリアとその妹フラン。

今はババ抜きを四人(・ ・)でしていたようだ。

もう一度言っておこう、四人(・ ・)だ。

つまりレミリアは「勝って当然、フランに負けるなんてことはありえないわ!」的な余裕を見せているが実はもう咲夜さんとパチュリーに負けた後である。

お嬢様、返って滑稽に見えますよ。

 

レ「あら誠、今何か不快な事を思わなかったかしら?」

 

誠「そそ、そんなことありませんよお嬢様」

 

レ「…まあいいわ」

 

吸血鬼だからかそれとも元からか、勘がいいのは時に困りものだ。

あまり勘が鋭いと下手な事に気付いてSAN値(正気度)が急低下して発狂しちゃうぞ?

…ん? そうだ八人もいるんだからTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)できるんじゃないか?

 

TRPGはゲームがない時代に作られた夢と冒険とファンタジーな世界を体験できるRPGの先駆けとなった物だ。

PL(プレイヤー)はルールブックを読んで自分のキャラクターを作成し、GM(ゲームマスター)という進行役を通じてゲームをする。

行動は全て口で言い、成功したかなどはダイスで決めるのだ。

実は俺の友人たちはバリバリの現代っ子なので「口で言うって演技するってことだろ? いや恥ずいしめんどくさそうだからパス」などと言うのでやったことはない。

俺はインターネットで見知らぬ人と遊ぶことしかしたことないがまあ大丈夫だろう。

 

初心者ばかりだがまあそれも返って面白いだろう、もちろんGMは俺でストーリーは前に暇だから書いたアレを…。

必要な物は紙と筆記具…それとルールブック。

…あールールブックないわ、創ろうにも能力できない世界だったわ。

ちぇ、残念。

 

魔「…なんだか急に冷えてきたな」

 

誠「ああ、そろそろ雪山にさしかかるところだな」

 

河「雪山?」

 

誠「そう、雪山。ちょっと予想外の事が多かったけどここまでは一応予定通り」

 

咲「予定通り、つまり目的地も知ってるってことね」

 

誠「Exactly(その通りでございます)、そろそろこのゲームのクリア条件とかも話しておくべきだな」

 

座り込んでいたその場から立ち上がってゆっくりと伸びをする、こんな狭いところに二日もいれば体が、主に骨が悲鳴を上げるというものだ。

 

博「クリア条件? 前から気になってたけどこれ好きに現実に帰れるわけじゃないのよね?

  と言うことはクリア条件を満たせば帰れるってわけ?」

 

誠「そうそう、それを満たさなくちゃ帰れないんだこれが」

 

ポキポキと骨を鳴らしながら体操をする、いや何故って寒いから体を動かしてるんだよ。

 

パ「で、そのクリア条件はなによ」

 

パチュリーはレミリアからカードを引きながら横目でこちらを見る。

 

誠「はい。このゲームはモンスターハンターというゲームであり、その名の通りモンスターを

  狩るゲームです。クリア条件は一つ、あるモンスターをこの世界の物で狩って貰います。」

 

魔「あの魚みたいな気持ち悪い奴か?」

 

誠「あれはいわば雑魚。ボスとしては力不足だぜ」

 

魔「じゃあ何を狩るってんだぜ」

 

誠「まあ慌てなさんな、私は小三の頃から豆すら…ってこれ違うわ。

  …んんっ!!今回のターゲットはずばり王道、イャンクックです…って名前じゃわからんか」

 

まあ伝わらなくてもいいだろう、多分後で分かるだろうし。

 

誠「そしてこの荷車が向かっている場所こそがハンターの拠点、一年中雪で覆われた村。

  名前はポッケ村です、それほど大きい村ではありませんが設備は大体整ってます」

 

河「温泉とかはあるのかい?」

 

誠「温泉はあるけど入ってる暇はないぞ、次回作に期待しとけ」

 

残念そうな顔でこちらを見るにとり、まあ落ち込むなって。

 

誠「さて、そろそろかな」

 

俺がそう言い終えた瞬間荷車がガタンと大きく揺れた、バランスを崩しそうになるがなんとか持ちこたえる。

ここで倒れたら周りの七人のどれかにダイブすることになるのだ、ラッキーイベントの前に好感度下がるだろ。

いや俺がヘタレだとかそんなことはない、やる時はやるから…って何考えてんだ俺。

 

誠「さあ出ましょうか、そしてようこそポッケ村に」

 

荷車の布を捲るとそこには雪、銀色に輝く雪が一面覆いながら八人を歓迎していた。

 

 

 

 

 

 

誠「次にお前は『寒い!』と言う」

 

レ「寒い!…ハッ!!」

 

誠「半袖じゃ寒いですよね~」

 

俺はちゃっかり防寒着を荷車から拝借していたため寒くないのだ! フゥハッハー!!

 

レ「そう言う誠は震えてるじゃない」

 

誠「そ゛う゛て゛す゛、さ゛む゛い゛て゛す゛」

 

鼻水をすすりながら答える、ああそうさ極度の寒がりだよ私は!

こたつでぬっくぬくしたいよ! 足がしもやけで痛いのは毎年だよ!

 

さて、今俺たちはポッケ村に建つ一つの家にお邪魔させてもらっている。

ここは本来ゲームでプレイヤーが一人で使う家であり、非常に狭い。

八人なので非常に狭いのだ、人口密度が高いってレベルじゃねっぞ!

 

博「それで? これからどうするのよ」

 

誠「ま、待ってください。囲炉裏に火を付けるので…へっくし!!」

 

囲炉裏に赤い草を入れて木の棒で擦る、すると火花と共に火が出始めた。

 

河「その草は?」

 

誠「火薬草と言って爆弾にも使われるこの世界に自生する植物だぜ、強く擦ると爆発するぜ」

 

魔「人の口調を盗むなと何度言ったら分かるんだぜ」

 

誠「そんなことより火がついたぜ、あったまるぜ」

 

魔「…もういいぜ」

 

もういいも何も人の喋り方は個人の勝手だぜ!

嘘だぜゴメンだぜ!! だからその木の棒を下ろすんだぜ!!

 

誠「…はい、それではこれからの事を話しますよ」

 

全員の視線がこちらを向く、改めて見たら霊夢の腋が寒々しい。

ああ、見てたらこっちも寒くなってきた。

 

誠「まずそこにあるボックス、そこには狩りに使うアイテムがあります。

  そして隣の部屋には武器防具や大きいアイテムが保管してある部屋、奥の部屋はキッチンです。

  まずは武器防具の選択ですがまあ細かいことはおいといて好きなのを選んでください」

 

パ「質問いい?」

 

誠「どうぞ」

 

パ「武器の種類はどうするのかしら?」

 

ってパチュリーさん、その手に持つ本は『月刊・狩りに生きる』!? 棚にあったものを目ざとく見つけて読んだのか。

 

フ「武器の種類?」

 

誠「そう、武器には種類があって大きく分けると剣、槍、ハンマー、ボウガンって感じ。

  それに関しては自分で扱ってみて自分に合った物を選ぶべきですね、もし決められないの

  ならば私がオススメを選びますよ」

 

モンスターハンターの武器はシリーズを重ねるごとに多くなるが今回使用できる武器は11種類だ。

重い斬撃を敵に食らわせる大剣。

華麗なコンボと美しい刀身で魅了する太刀。

小回りがきくサポーターの片手剣。

身軽な動きと高いダメージを狙える双剣。

抜群の破壊力で敵を叩き潰すハンマー。

笛の音色で味方を援護しそのまま殴れる狩猟笛

高い防御力を持つが使う人の技量を問われるランス。

防御力に加え高い火力を持ち合わせるガンランス。

身軽な動きで後方から敵を狙い撃つライトボウガン。

重い銃撃で敵を圧倒するヘビィボウガン。

矢の弾幕を張りながら敵を翻弄する弓。

この11種類だ、これらを使って狩りをする。

 

俺の案内で全員は隣の部屋に移動、飾られた武器から自分が使う武器を選択してもらう。

今回の狩りはそこまで強力な装備でなくても勝てるので初心者が扱う武具がおかれている。

 

パ「私は弓でいいわ、軽くて私にも扱えそう」

 

パチュリーは遠距離武器だろうと思ったけど弓か、パチュリーなら扱えるだろう。

 

魔「私は一番破壊力のありそうなハンマーを選ぶぜ」

 

誠「絶対選ぶと思ったわ、殴った時の爽快感とか派手なところとか。

  あ、ちなみに重さは考えなくていいですよ、この世界のハンター並の筋力は勝手に

  ついているように設定してありますので」

 

そうしなくちゃ魔理沙がハンマー持てないだろうし。

 

咲「私はランスにするわ」

 

誠「あらら? 咲夜さんなら片手剣を選ぶと思ってたんだけどな」

 

咲「お嬢様を護る盾になるためよ」

 

なるほど、納得の答えだわ。

 

河「私はヘビィボウガンにしよっと、なにより仕組みが気になる!」

 

うん大体予想できてた、ガンナー二人目と。

 

博「私は双剣を使おうかしら」

 

双剣か、霊夢は何使うか予想できなかったんだけど双剣を使うのか。

そういえば双剣には鬼神化と言うパワーアップ状態になれる行動があって…。

ん? 鬼神化?

…そういうことか、流石は鬼巫女と言われるだけある。

 

フ「私は大剣がいい! 楽しそう!」

 

小さな少女が大剣背負って狩りに出る…ありだな。

 

レ「最後は私ね、ランスが良かったのだけれど咲夜がやるなら違うのにしようかしら…。

  誠、オススメは?」

 

誠「片手剣はいかがでしょうか? 剣で切りつけ盾でガードできる万能な武器です」

 

レ「それでいいわ」

 

誠「これで全員が決め終わったか、次は人数分けだな。

  この世界は大体4人パーティで狩りに出かける、てなわけでこれからチーム分けをするぞ」

 

なぜ4人パーティなのかは詳しいことは知らない、だがハンターの中で5人以上で狩りに出るのは不吉だという迷信があるらしい。

では人数分けもといパーティ決めだ。

 

誠「そうだな、綺麗に武器が分かれてるしチームワークも取れるようにしたい。

  お嬢様、フラン、咲夜さん、パチュリーさんでパーティ組んで貰うかな。

  霊夢、魔理沙、にとり、そして俺でパーティ組むことにしよう」

 

前衛後衛キチンと分かれてるしいいんじゃないかな?

 

誠「そして先に獲物を仕留めたパーティがご褒美を貰える、OK?」

 

レ「誠がいるならどう見てもそっちの方が有利じゃない!」

 

誠「そんな事はないですよ、俺の武器を考えればむしろそちらの方が有利です」

 

魔「ところで誠はどの武器にするんだ?」

 

誠「ふっふっふ! よくぞ聞いてくれた」

 

すぐさま俺はふところからあるアイテムを取り出す、その数は五つ。

 

博「うわ、どっから出したのよソレ」

 

誠「気にするな俺は気にしない。これはただの板切れに見えるでしょうが違います!

  これはブーメランと言って技量がある人が投げたら帰ってくるアイテムです。

  ちなみにダメージはごく微量であり、壊れることもあるアイテムです」

 

ブーメランを両手の指に挟んでナイフを投げるように構える、どや!!

 

魔「…そんなのじゃこっちが負けるぜ」

 

誠「ところがどっこい! なんとこれを使って狩りをする人もいるのです!」

 

ごく少数だが、本当にごく少数だがいるんだよ、そういうもの好きが。

 

誠「さて、今日は飯食って寝ましょう。長旅の疲れをあるでしょうし」

 

パ「賛成ね、ちょうどお腹が空いてきたところよ」

 

窓から外を見ると夕焼けが目に入った、結構長話をしていたようだ。

 

誠「では、料理を頼んでくるので少し待っていてください」

 

レ「頼むって誰に?」

 

誠「それは後のお楽しみです」

 

キッチンに入ろうと一歩目を踏み出して振り返る。

 

誠「絶対に覗かないでくださいね…絶対にですよ…特に魔理沙とお嬢様とフラン…

  絶対に覗かないでくださいね…」

 

魔「え!? わ、わかったぜ」

 

レ「も、もちろんよ」

 

フ「う、うんわかったわ」

 

誠「テーブルを用意しておいてくださいね…ふふふ…」

 

そう不敵に笑いながら俺はキッチンに入っていった。

 

 

 

 

 

誠「お待たせしました、それでは料理を運んできて貰いましょうか」

 

一時間経ったかそこらでキッチンから出ると全員がお腹が空いていると顔で分かった。

いや咲夜さんは普通だわうん、パーフェクトメイドは伊達じゃなかった!

 

博「運んでもらうってこの家には使用人でも雇ってるの?」

 

誠「そうそう、立派な使用人を雇ってるぜ。それじゃあお願いしまーす」

 

後ろを振り返り声をかけると二足歩行をする猫のような生き物が料理を頭の上に乗せて運んできた。

まるで板前のような服をした猫やコックの服装をした猫が重そうに料理を持ちながらテーブルに料理を並べていく。

 

河「おーかわいいねぇ! 二足歩行する猫がいるんだ~この世界」

 

フ「かっわい~!!」

 

魔「まさかこの猫たちが料理したのか?」

 

誠「そうです、この猫たちが料理したのです。味はばっちりです」

 

博「料理に猫の毛がごっそり入ってたら食欲が失せるわね」

 

誠「衛生上の管理は問題ありません」

 

レ「それなら安心ね! もう食べてもいいのかしら?」

 

誠「料理は全部並んだようですね、それでは皆さんご一緒に!」

 

「いただきます!」




ここだけの話しスラッシュアックスがない2ndGにしたのはスラッシュアックスの模写が難しそうだなぁとか思ってゲフンゲフン。







次回予告
その手に「く」の字に曲がった板を持ち、防具も付けずに狩りに出るそのハンターを皆は尊敬の念を込めてブーメランハンターと呼んだ。そして今このポッケ村に新たなるブーメランハンターが誕生しようとしていた! 「全てのモンスターをこのブーメランで…狩る!!」少年はその手にブーメランを構え、大自然へと足を踏み出す。その先に待つのは栄光か!? 名声か!? それとも絶望か!? 次回『クリスマスですね。…クリスマスですね…』孤独な少年に幸あれ!

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