東方開扉録   作:メトル

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第十九話 疾走

ホログラムマシーン、風景を映し出すための機械として作られたのだがどう転んだのか仮想現実世界を創りだすことができるマシーンになった。

この発見に俺とにとりは椅子からガタッと立ち上がり「イヤッッホォォォオオォオウ!」と言うくらい喜んだ。

 

ちなみに発音の仕方はホログラム(→)マ(↓)スィーン(↑)だ。

 

さて、俺は今空にいる。

実はホログラ…ああもう言いづらい、マシンは能力や空中浮遊などのアクションはできないように設定してあり、自身の力では飛べないようにしてある。

 

誠「どうしてこうなった」

 

ではなんで俺が空にいるのか、それはこう言うことだ。

 

 

 

 

 

 

誠「…り、リオレウスっ!?」

 

俺の驚く声に反応したのか、どっしりと佇むリオレウスはこちらに巨大な首を向ける。

 

ガアアァァアアァァァァアアアッ!!

俺の鼓膜どころか体事態を破壊できるのではないかと思えるほどの咆哮が辺りの空気を震わした。

武器も防具も持っていない弱者を逃すほど、王者は大きな器を持っていないようだ。

 

誠「クッ…ソ!!」

 

に、逃げなくちゃ、死ぬ。

自分の創ったマシンで死ぬとかちょとsYレならんしょこれは…。

俺は踵を返して後ろへと飛んだ、リオレウスは確か突進や飛びつき、ブレスなどは全部直線的だったはずだ。大丈夫プレイ時間カンストしてる俺なら全て避けられるはず。

 

誠「…?」

 

飛んだ途端の落下感。一瞬気のせいかと思ったほどの小さな感覚だったがそれは気のせいなどではない。

体が落下を開始する、足元を見ればそこに地面はない。

あまりの高さに顔が青ざめる、高所恐怖症ではない俺でも見た途端に危険だと分かる高さ。

それは奇妙にも自分の足よりも下に雲があるという光景、それはこの状況でなければ美しく感じただろう。

 

誠「ああああああああああああああ!?」

 

あまりの出来事に叫ばずにはいられなかった、フランとガチでやった時に肩を負傷したがその時の痛みでもこんな叫びしなかったのにだ。

寒い、血が全てなくなったように体が冷えた。

 

俺はここで死ぬのか、そう思った時だった。

 

ガッと全身に衝撃が走った、なにか硬い物の上に落ちた感じだ。

地面? いやそれはない、あの高さだ、体が痛い程度で済むはずがない。

つまり…どういうことだってばよ?

 

ガバっと体を起こして周りの見渡す、風は自転車に乗っている時のように強風を俺の体に叩きつけていた。

前だけを見ているのに右へと景色が移動していて、たまに視界に緑色の何かが入る。

 

まさかと思いその場から立ち上がる。

 

誠「…マジですか」

 

そこは赤い王者と対を成す緑の女王、地の女王リオレイアの背中だったのだ。

 

 

 

 

 

 

助かったには助かったけど…これは巣に持ってかれるフラグだ、早々にここから脱出しなくては…。

リオレイアは俺が背中に乗っていることに気づいていないようだ、それなら尚更早く逃げねば。

気づかれないように慎重に緑色の巨大な背中を這い歩いて地面を覗く。

ちょうど真下が砂漠、しかも砂が柔らかそうだしリオレイアも低空飛行気味。

運がいいけどある意味怖いくらい万全のタイミングだ。

 

ふっ! と足に力を入れて地面へと飛び降りる、リオレイアが羽ばたく旅に舞い上がる砂のお陰もあり気づかれずに降りることができたようだ。

シュタっ! とかっこよく地面に…着地!

 

ぶにっと足の裏から砂ではありえない感触が伝わった、それはまるで大きな魚のような…。

 

ギャアアァァァアアッ!! と人間では出せない鳴き声が足元から聞こえた。

…ま、まさか――。

 

突然俺の体が宙に舞った、下から強烈な勢いで押し上げられたかのように俺の体が空を飛ぶ。

それだけではない、ついでに何か砂と同じ色をした2メートルくらいの生き物が俺の隣に浮いていた。

よく見るとそれの頭頂部には俺の靴の痕がくっきり残っていた。

 

地球の重力は偉大だ、どんなに人間が飛び上がっても地面から足を離すことを許さないからな。

いやはや、いい仕事ぶりである。

だが今回は言わせてもらおう、仕事しすぎですよ重力さん。

 

飛び上がっていた俺は空中で停止し、青ざめた顔をしながら地面に落下していく。

下を見ると鋭い牙と硬い背ビレをした生き物であり、俺の隣で落下しているのと同じ奴――ガレオスが三匹群れを成して俺の着地地点に留まっていた。

 

誠「…死ぬなこれ、あー嫌な人生でした――って死んでたまるかよおおお!!」

 

こんな時に一人漫才なんかしている場合ではないのは分かっていたがこうする事によって良い案が閃く事が多いのだ。

 

…よし。

 

口を開けていたガレオスAの上顎に着地、そのまま急所…だと思う小さな目を蹴りつける。

言葉に出来ないような小さな悲鳴があがり、首を振るったガレオスAの頭を蹴ってその隣にいたガレオスBを踏みつける。

ガレオスCが耐え切れず飛びかかってきたが、それは予想の範囲内だ。

飛びかかってくるガレオスCを背に走り出す、ガレオスCは俺の背中を噛み付こうとスピードを上げたが、もう少しというところで空から落ちてきたガレオスと激突、そのまま地面に崩れ落ちる。

 

…おし、逃げよう。

 

 

 

 

 

 

誠「確かここら辺にベースキャンプがあったはずなんだけど…」

 

この世界、モンスターハンターは人間とモンスターが共に生きる世界であり、それと同時に弱肉強食の世界でもある。

共に生きる=共存ではない、それは狩る者と狩られる者がいる世界だ。

貧弱な人間は強大なモンスターに狩られる、だが狩られる者は狩られっぱなしではない。

人間は知恵を出して武器を手に取り、強大なモンスター達を狩るのだ。

もちろん全員が武器を持つわけではない、狩る者はハンターと呼ばれており、強靭な武器と堅固な防具を身にまとい戦うのだ。

 

…なんて恐ろしい、勇気ある奴だよねハンターは。

 

さて、話しを戻すがベースキャンプとはそのハンター達がモンスターを狩るために使う拠点であり、この世界唯一の交通機関がある場所である。

普段は大型モンスターも入れない場所に立ててあるため、破壊される心配はない。

 

誠「おかしいな…プレイ時間カンストした俺が道を間違えるなんて…」

 

いつの間に俺は方向音痴になったんだ? そんなわけないんだけど…。

困った、これじゃどうすることも出来ないな…。

 

…っと? あれはなんだろうか。

砂漠を歩き回って一時間、岩と岩の間に小さな亀裂があるのを発見した。

その下を見ると大人一人が通れる程の穴がポッカリあいている。

 

誠「………」

 

さすがに俺もバカでない、この中には大型モンスターはいないだろう。

慎重なくらいが丁度いいこの世界だ、モンスターに襲われたこともあるので用心してしまう。

 

…ここで立っていてもしょうがない。

スイッチがあって、押すなと言われたら押すタイプの俺は中に入ることにした。

 

誠「せっかくだから俺はこの赤い亀裂を選ぶぜ!」

 

欠片も赤くない亀裂に向かって身を低くし、中に進む。

距離は10メートルくらいだろうか、そのくらいの距離を歩くと岩に囲まれたドームのような空間に出た。

ドームといっても天井は開いており、一応ベッドらしきものとテントが貼られていた。

 

誠「…そう簡単に見つかったらこんなところすぐ壊されるからな、そりゃ隠れてるわな」

 

うはーやっと休むことができ――。

 

?「…誠? …誠なのか?」

 

いきなり聞こえた声でビクっ! となりながらも声をした方に振り返った。

声の主は俺が通ってきた亀裂から顔を出し、全身を亀裂から出す。

 

誠「ま…魔理沙!? ちょ、お前左腕は…」

 

魔理沙は右手で左肩を抑えながら苦しそうに呻いた、右手の指の間からはとめどなく赤い色をした液体が流れ出ている。

左肩には噛みちぎられた痕が出来ており、そこにあるはずの左腕は――。

 

…そこになかった。

 

魔「…ここに来る途中…化け物共に襲われてな…スペルカードも使えないし…

  飛べないから逃げるのも苦労したぜ…」

 

誠「ま、まさか…ガレオスにやられて…」

 

魔「へへ…大変だったぜ…」

 

誠「ほ、他の皆は!?」

 

魔「…パチュリーが足元から…不意を突かれて…そこから一人ずつ…」

 

そんな―――。

 

魔「…残ったのは私一人だぜ…グッ!!…」

 

誠「…すまない、本当にすまない…俺が選択ゲームをミスったばかりに…」

 

謝って許してもらえるわけがない、でも口が勝手に動いていた。

 

魔「…いい、私がヘマしただけだぜ…」

 

涙が出そうになる、俺がもっとちゃんと設定していれば…。

悔しさとやり切れなさで胸が押しつぶされそうだった。

 

魔「…ぷっ…くくく…」

 

下を向いて涙を必死に堪えていると笑い声が聞こえた。

咄嗟に顔を上げると魔理沙が必死に笑いをこらえているのが見えた。

 

魔「くっ…くく…ふふふ…あははははははは!!」

 

ついに堪えきれなくなったのか、魔理沙が血まみれで大笑いし始めてた。

ま、魔理沙…腕食われてSAN値(正気度)が0になったのか…?

 

ぷっふふふふ…。

こ、こら! 聞こえちゃうでしょうが!

だ、だって…! わ、笑いが堪えきれな…あはははは!!

盟友が泣きそうじゃないか、さすがにこれはやりすぎ…。

いいじゃないの、テトリスでフルボッコにしてくれたお返しよ!

テトリスってなによレミィ。

ブロックを一列並べて消していくゲームだそうです。

へぇ、帰ったらやってみようかしら。

あはははははは…お、お腹いたい…!

あんたは笑いすぎよ。

 

誠「…魔理沙…? これは一体どういうことだね?」

 

魔「え…っとだな! 違うぞ! 私は霊夢達に言われた通りに…ぷっふあははは!!」

 

………。

 

誠「…さて、どう料理しようかね」

 

げ! 魔理沙が白状したわ!

逃げるわよ!!

ま、待ってお姉さまー!!

 

誠「…霊夢、お嬢様、妹様の三人、おまけに魔理沙だな…。

  にとりと咲夜さんにパチュリーさんは違うだろうし」

 

魔「に、逃げるぜ!!」

 

魔理沙が右手に持っていた血袋を投げ捨てて左手を服の中から出した、そして一目散に亀裂の中へと走っていく。

 

誠「お前らッ!!死ぬより恐ろしい物を見せてやろうかゴラァッ!!」

 

キャンプから頑丈そうな縄を持って魔理沙達を追いかける。

 

魔「誠が来たぞ!!」

 

レ「バカ! こっちくるんじゃないわよ!!」

 

博「げっ! 今まで見たこともない顔してるじゃない!!」

 

フ「きゃーこわーい!」

 

誠「激マズ茶飲ませるぞテメェら!!」

 

 

 

 

 

 

誠「(…全員けがしてなくて本当に良かった…)」




霊夢以外の三人は縄で縛られてありがたいお説教を誠に延々と聞かされたと言う。






次回予告
全員無事に集まった誠達は船に乗り込んで雪国のポッケ村へとたどり着く。一面に広がる銀世界を堪能した誠達は、ある家のボックスから武器防具を整えてることができた。あとは道具だ、村にいる行商婆さんに意気揚々と話しかける。「すいません、商品を見せてもらってもいいですか?」「ヘェ~イ、アラブゥ」「え、あの」「アンガラ、アンガラ」「ちょ」「フングァ」意味不明な言葉で受け答えする行商婆さんを見て誠は一つの間違いに気付く。「…言語変更ボタン押し忘れてた」次回!『偉い人は言った、ブーメランでも大型モンスターは狩れると!!』あの動画の更新を何年も待ち続ける。

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