東方開扉録   作:メトル

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第十八話 仮想現実

時が流れた。

幻想郷を襲っていた暑さは影も残さずに消え、幻想郷は冬に入ろうとしていた。

 

いや実際にはもう入っているんだが。

 

そして俺は今日も今日とて雅人に挨拶をしてから積みゲーの消化へ移る日々を繰り返していた。

そうそう、最近フランがレミリアとゲームをするようになった。

だいたいレミリアが勝つようだがフランも結構うまいらしい、対戦とかはしていないからわからんが。

 

誠「へ、へっくしっ!」

 

うぅ、冬は嫌いだ。手が動きづらくなってミス起こすし、風邪をひきやすいし、なにより布団から出たくなくなるからな。

 

誠「…んでだ、どうしてあなたが俺の布団に入っているんですかね」

 

フ「だって寒いんだもの」

 

そう言って俺の布団(電気毛布完備)の中でぬくぬくとしてるのは紅魔館の主レミリアの妹であるフランドールだ。

少し前は地下で過ごしていたのだがこの頃俺の隣の部屋を使っているのだ。

理由は「ゲームを取りに行くのがめんどうだから」らしい、お前そんなキャラだったか?

 

誠「子供は風の子と言う名台詞がありましてね」

 

フ「私は子供じゃないもーん」

 

と言ってフランは布団を頭からかぶった。

「もーん」で不覚にも可愛いと思ってしまったが俺はまだロリコンではないそうだ断じて俺はロリコンなどという変態ではない強いて言うならば変態と言う名の紳士なのだ自分の布団に可愛い少女が寝ていて野蛮にも襲いかかるような変態ではないのでイエスロリータノータッチと言う有名な言葉も―――

 

フ「それよりなにかしましょ? この部屋にあるのでいいから」

 

っと、少々考え込んでいたようだ。いつの間にかフランは布団から頭だけ出してこちらを覗いていた。

 

誠「なにをしますか? チェスやバックギャモンなどのボードゲームから麻雀やトランプまで

  数多くのゲームを取り揃えておりますが」

 

フ「おすすめは?」

 

誠「麻雀が好きなのですがルールを覚えるとなると少し大変なのでこちらで」

 

そう言って俺はテレビの隣にある棚から一つのゲームを取り出す。

 

誠「ただしこれをやるのならば人数が足りませんね、お嬢様と咲夜さんと美鈴はどうだろうか…

  パチュリーさんも図書館に篭っているのもよくないので連れ出すとして…」

 

フ「私、誠、お姉さま、咲夜、美鈴、パチュリー。これで十分じゃないの?」

 

誠「いや、まだ足りませんね。これは俺が腕によりをかけて創ったゲームですので…

  そうですね、最低8人は欲しいですね」

 

フ「じゃああと二人は霊夢と魔理沙?」

 

誠「美鈴は門番なのでできないかもしれませんね、とりあえず人を集めましょうか」

 

フ「そうね、私はお姉さまと咲夜を呼んでくるね」

 

誠「メインホールにお願いします」

 

フ「おーけー!」

 

そう言うとフランは布団から飛び起きて部屋から出て行った。

 

…扉を壊して。

 

誠「そんなに慌てなくても……まあいいか」

 

何個目かわからない俺の部屋の扉を創造して扉を修理しながら呟く。

そろそろ俺の部屋だけ扉を壊す癖を治してもらいたい。

 

誠「さて、メインホールに暖房と機材のセットをしなくちゃな。

  …ついでだ、あいつ(雅人)にも声かけてみるか」

 

これは面白くなってきた。そう思いながらニヤけ顔で部屋をあとにした。

 

 

 

 

 

 

メインホールには9人の人影があった、そこに俺の姿はない。

代わりにあるのはところどころボロボロなセットとステージ。

何が始まるんだとハテナマークを頭に浮かべている9人をよそに、メインホールの明かりが突然消えた。

ステージから安っぽいドラムロールが流れ始め、終わったと同時にステージの照明が輝きだした。

そこで俺が裏方から飛び出す。

 

誠「さあ本日お集まりの皆様! この寒い冬空の中紅魔館にお越し頂きありがとうございます!

  早速ですが本日のグランドフィナーレ! メギドラオンでござ――」

 

レ「そのネタは多分幻想郷じゃ私以外に通用しないから!」

 

メインホールに集まった全員が一瞬何を言っているんだと俺の方を見た。

やめてください、ちょっと茶目っ気を出しただけなんです。その冷ややかな視線は痛すぎます。

…コホン。

 

誠「本日のメインイベントであるホログラムマシーンの登場です!」

 

ヒューヒュー! 待ってました! 歓声がラジカセから流れ、俺が創ったマシーンが運び込まれ―――。

…………………。

 

誠「…あ、ちょっと待っててくださいね!」

 

急いで裏方へと降りた。

「妖精メイドさん達! 打ち合わせの通りにやってください!!」

「え、忘れてた? …次はお願いしますね」

 

フ「まことー! 聞こえてるよー!」

 

誠「気のせいです!!」

 

再びステージに上がり、マイクを持つ。

 

誠「…んんっ! それでは本日のメインイデ――」

 

……………………。

やめてください大事なところで噛むのは人の運命(さだめ)なんですその冷ややかな視線は…。

…だー! もうっ!!

 

魔「グダグダだぞー!」

 

誠「はい、ギャラリーはお静かに! ホログラムマシーンの登場です!」

 

早口で言うとステージ右側のカーテンが上がった。妖精メイド達が持ってきたのは地球儀のような形をした一つのマシーン。

 

誠「あ、そこに置いてね」

 

博「…置き場所くらい打ち合わせしときなさいよ」

 

聞こえなかった、何も聞こえなかった。

耳を塞ぎながら心の中で呟く。

 

誠「さて、このマシーンの仕組みは! かくかくしかじか」

 

レ「これこれうまうま」

 

フ「なにを言ってるのお姉さま」

 

レ「はっ! しまったわつい癖で!」

 

誠「ノリがいい人は大好きです。ではこのマシーンの使い方をさらっと紹介しましょう!」

 

ステージから降りてマシーンを手に持つ、重さは1キロあるかないかってところだ。

 

誠「まずこのマシーンはホログラムマシーンと言います。

  この上にある穴にディスクを入れることで機械が作動、そのディスクに応じた風景が

  周囲に映し出されます」

 

これだけならただの観賞するだけのマシーン、だが本題はここからだ。

 

誠「そして! 入れたディスクがゲームディスクだった場合、そのゲームがプレイできる!

  これが俺が設計、開発したマシーンなっのっだ!!」

 

レ「わかりやすく説明するなら、仮想現実世界を作り出せるのね」

 

誠「その通り!excellent(エクセレント)っ!!」

 

「ふふん! 簡単よ!」と胸を張るレミリア、可愛いなぁ。

 

魔「おもしろそうだぜ!」

 

魔理沙が肩を慣らすように腕を回した。

 

博「もちろんクリアでご褒美よね?」

 

霊夢が胸の前で腕を組みながらこちらに問いかける。

 

誠「もちろんです!」

 

グッ、と腕を前に突き出して親指を立てる。

 

誠「他の皆さんもよろしいですね?」

 

レミリアがもちろんと言う眼差しでこちらを見る、その後ろにはフランが同じようにして立っていた。

その傍らに咲夜さんが立っている、視線を向けると「大丈夫よ」と返事をしてくれた。

左には本を脇に携えたパチュリーがムスっとした顔でこちらを見る。

大丈夫そうだな、そのまた左に立つ少女へと視線をずらす。

緑色の帽子に水のように綺麗な青い髪をした少女が立っていた。

背中にはリュックを背負っており、水色を基調とした服を身にまとっている。

この少女は俺の友人であり、幻想郷探索中に知り合った。

名前は河城 にとり(カワシロ ニトリ)、種族は河童らしいが皿も甲羅も見たことがない。

 

河「もちろん、私はちゃんと完成したか見ないといけないからね」

 

幻想郷には妖怪の山という場所があり、そこに探索しようとして知り合ったのだがその時持っていたゲーム機について知りたいと言われたのがきっかけだった。

興味深々で俺のゲームを見るにとりの目は子供に新しいおもちゃを与えた時のそれだった。

っと、話がそれてしまった。

 

誠「大丈夫ですね、それでは起動しましょう!」

 

マシーンを足元におろしてから視線を全員に送る。

 

誠「栄えある第一回目のディスクは―――」

 

その時だった。

ガタン、と言う音と一緒に照明が全て消え、メインホールが暗闇に飲み込まれる。

 

誠「あれ、電気が切れたかな?」

 

発電器と懐中電灯を創り、部屋の照明をつけた。

電気が消えてから付くまで、約2分。

 

たったそれだけの間だった。

 

誠「大丈夫ですかみなさ―――」

 

後ろを見ようとした、だがその前にある異変に気づいた。

ここは紅魔館、だが俺の目には自然豊かな丘の上に見えた。

それだけではない、他のみんなの姿がない。

視線を後ろに移すとそこには誰もおらず、代わりに――。

 

誠「…り、リオレウスっ!?」

 

赤い甲殻を身に纏い、空を駆ける王者がいた。




最新ではなく3rdでもない、2ndGです。








次回予告
どこで設定をミスしてしまったのかモンハンの世界で離れ離れになってしまった誠達、このままでは誰かがやられてしまうかもしれない。焦る誠をよそに他のメンツはちゃんと村からスタートし、意気揚々と狩りに出かけるのであった。次回「狩りに出るなら二度荷物確認だ!」あれ、クーラードリンクが…。

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