東方開扉録   作:メトル

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続・ と書かれていたらボクらの太陽を思い出します。


第十五話 続稗田家

稗田家には幻想郷の歴史が記された貴重な資料が多々あるらしい、だがそんなものはどうでもいい。

歴史に興味などない、過去を勉強することも大切だがそれより大切なのは未来なのだ。

今について嘆き悲しみ落ち込むことなど無駄なのだ、大切なのはこの先を考える事だ。

そう、過ぎ去った過去になど意味はない。それによって起きた『今』が大事なのだ。

さて、俺が何を言いたいか…わかってくれただろうか。

つまり…だ。

 

誠「申し訳ありませんでしたー!!」

 

土下座をしながら言う俺を涙目で見るのはこの稗田家九代目当主の稗田 阿求である。

当主に「やかましい! うっおとしいぞ!」的な感じで怒鳴ったのだ、当たり前だろう。

 

阿「い、いえ! 私が話しかけるタイミングを見誤ったのが原因ですから!」

 

そもそも喧嘩してなかったら話しかけないだろうからやはり俺が原因なのだ。

 

誠「誠に申し訳ありません! 誠心誠意きっちりと謝らせていただきます!」

 

そういえば俺の名前、葉隠 誠だがこの由来を親に聞いたところ。

「誠心誠意謝ることができる子になって欲しいから」と言われたのを思い出した、いや謝ること前提で名前つけられても…。

 

雅「おい貴様、私への謝罪を忘れるなよ」

 

誠「(チッ、うっせーよ)反省してま~す」

 

雅「キサマァッ!!」

 

誠「ヒャッハーッ!!」

 

蛇を模した鎖を阿求の後ろへ放ち空中へ固定させる。

そのまま鎖を収縮させて後方へと飛んだ。

 

誠「捕まるわきゃねーだろテメェはアホか!?」

 

雅「テルミィィィィ!!」

 

誠「ラグナ=ザ=ブラッドエッジィィィィ!!」

 

雅「…ハッ!? また口が勝手に!!」

 

誠「そのノリだけは記憶なくしても消えないのな」

 

なんでこんなところで、しかも阿求が見ている前でブレイブルーしなきゃなんないのさと。

…まあネタをふったのは俺なんだけども。

 

阿「えっと…とりあえずあなたは一体…?」

 

っと、自己紹介をしていませんでしたねぇ。

私は世界虚空情報統制機構諜報部のハザ…いやこれ違うよブレイブルーじゃん。

 

コホン。

 

誠「私は紅魔館から来ました、葉隠 誠といいます。少しお伺いしたいことが

  ございまして屋敷に侵入させてもらいました」

 

阿「聞きたいこととはなんでしょう?」

 

侵入に関してはスルーなのね、普通は怒ると思うぞ。

 

誠「私は外来人であり、ある『扉』を通ってこの幻想郷に来ました。

  その『扉』を探しているのです」

 

阿「『扉』…ですか?」

 

誠「ええ、幻想郷に通じていた『扉』です。ご存知ありませんか?」

 

阿求は少し考え込む素振りを見せたが、すぐに首を横に振った。

 

誠「そうですか、残念です」

 

阿「お役に立てなくてすみません…」

 

誠「いえいえ、ありがとうございます」

 

ダメか、こんなに探して未だに手当たり無しとは心が折れるな…。

仕方ないな、また大図書館で手がかり集めの作業でもしますかな。

 

誠「それでは、用は済みましたので帰るとしましょうかね」

 

部屋の奥から中庭に出れるようなので、そこから帰ろうか。

 

阿「待ってください、せっかくですし一緒にお茶でもいかがですか?」

 

誠「よろこんで」

 

ぐるりと体を捻って即答、甘いものには目がないから仕方ないね。

羊羹ですか? お団子ですか? お饅頭ですか?

 

阿「羊羹ですよ」

 

これには思わずガッツポーズせざるを得ない。

侵入者とお茶するんだから使用人である雅人が何かいうと思ったが何も言わないようだ。

 

雅「使用人は当主の命令を第一に考えて行動する。当主がお茶をすると

  言った、ならばその相手は客だ。それが少し前までは侵入者だった

  としてもだ」

 

なるほど、てかお前がそういうこと言うと違和感通り越して恐怖を感じざるを得ないな。

マジで震えてきやがったぜ…。

 

阿「それではお茶の用意をおねがいします」

 

雅「はい、ただ今」

 

雅人が足早に部屋から出て行った。

今俺と阿求がいる部屋はだいたい10畳くらいの大きさで、部屋の中心に机――ちゃぶ台が置かれており、客間や応接間と言った印象を受けた。

 

…なぜに阿求はこの部屋にいたのだろうか。

疑問に思ったので聞いてみると。

 

阿「部屋の前を通りかかった時に、知らない声が聞こえましたから」

 

…そりゃ侵入者の俺の声を知っているわけないからな。

 

そうこうしてる内に雅人がお茶とお菓子を持ってきた。

こ、これは間違いなく羊羹…久しぶりすぎて口元がゆるんでよだれがでそうだ。

 

阿「どうぞ」

 

誠「いただきます」

 

羊羹を一口で口の中に放り込む、口の中に羊羹の甘味が広がって舌を潤す。

糖分が脳を駆け巡る感じと共に歯から食感が伝わってくる、幸せだ…。

 

阿「丁寧な口調をしていますのに食べ方は結構野性的ですね」

 

誠「この頃糖分が足りない食事ばかりでしたので」

 

一欠片目を食べ終え、二欠片目に手を伸ばす。

 

阿「誠さんは外来人ですよね? 少し質問させてもらってもいいですか?」

 

誠「いいですよ、スリーサイズ以外ならば」

 

阿「そうですか残念です」

 

誠「え、スリーサイズ必要だったの!?」

 

阿「いえ、全くいらないですね」

 

誠「そ、そうですか」

 

びっくりして一瞬普通の口調に戻っちゃったよ…。

 

阿「ずばり、能力はなんですか?」

 

誠「対象に接触すると対象は転生ができなくなる程度の能力」

 

阿「ええっ!? そ、それはこまっ、こまりますっ!!」

 

誠「失礼ですが握手してくださいませんか?」

 

阿「い、嫌です! お断りします!!」

 

誠「…実はさっき背中をちょっと触っておきました」

 

阿「ええええっ!? ななな、なんということをするんですか!!」

 

誠「…ま、もちろん嘘ですが」

 

阿「…どこまでが嘘なのですか?」

 

誠「能力からです」

 

阿「…ひどいです、嘘はいけませんよ…」

 

さっきびっくりさせてもらったからそのお礼? 結構信じやすいタイプなんだな。

 

誠「実際は『想像を具現化する』以下略、それと『幻想郷の主要人物を把握する』

  以下略です、多分ですけど」

 

阿「多分、とは?」

 

誠「想像を具現化だと例えば本を具現化するとき本の内容を一字一句間違えず正確

  に暗記しなくちゃ具現化は無理なはず、だが実験したらある程度知っていれば

  正確な物が創れる。

  なぜなのかは未だに不明です」

 

阿「なるほど…」

 

ここで二人共お茶をすする、会話というものは情報の伝達はできるが喉が渇くのだ。

まあ当たり前だが。

 

阿「それでは次に―――」

 

 

 

 

 

 

 

阿「使用人の雅人さんですか?」

 

誠「ええ、あいつは記憶を無くしているようですが間違いありません。

  あいつは俺の友人です、外の世界からの大切な友人です」

 

一通りの質問を終え、話は雅人のことに移った。

あいつがなぜに記憶をなくしているのか、それによってこれからどうするべきか。

それを決めるのは雅人だ、だが友人として助けになれるなら助けになりたい。

 

阿「…雅人さんは屋敷の前で倒れていたんです、後頭部にコブがあったようですが

  それ以外に怪我や病気はなかったそうです」

 

後頭部をを殴られて記憶を失った? 確かに頭を殴られたら脳になんらかの異常が出てもおかしくはない。

だが雅人が殴られただけで記憶を失うだろうか…。

 

仮にもアイツはバトルマスター、異常な運動神経と体力、更に筋力もあるという人間辞めた代表だぞ?

そんな奴が不意打ち食らって記憶喪失はないだろう。

 

誠「他になにかありませんか?」

 

阿「そうですね…他は特にありません」

 

誠「そうですか…」

 

まあそんなに簡単にわかるわけがないか。

仕方ない、これも聞き込みとかして調べておかないと…。

 

誠「ありがとうございました、それではそろそろ」

 

阿「そうですね、もう夕日が輝いていますし」

 

つまりもう五時、あるいは六時くらいというわけか。

晩御飯は七時だから…間に合うな。

 

誠「貴重なお話をどうもありがとうございました」

 

阿「いえ、こちらも貴重なお話が聞けましたし」

 

誠「光栄です、それでは!」

 

中庭へ出て鎖を出す、紅魔館の方角に定めながら鎖を伸ばし空中に固定させた。

鎖を収縮させてその勢いで体は空へと舞い上がる、普通に飛べばいいじゃないかと言うだろうがこっちの方が楽なのだからこっちを使う。

思わず「ヒャッハー」と叫びたくなる衝動を抑えながら紅魔館へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝、朝食を取ろうと部屋を出たらレミリアが何かを持って立っていた。

 

レ「誠、今朝美鈴がこれを持ってきたわ」

 

それは新聞のようだった、幻想郷の新聞は外の世界の新聞と変わらない感じだな。

…へぇ、妹紅の焼き鳥屋が繁盛しているようで良かった。

 

レ「見るべき場所はそこじゃないわ、ここよ」

 

そう言って指を差したレミリアは呆れた顔で息を吐く。

そこにはこう書いてあった。

 

空に人の影? 光線を発射しながら進む影を激写!!

 

昨日夕方、霧の湖上空で夕日に照らされながら空を飛ぶ人影が目撃された。

目撃者の情報によりますと人影は時々宙で静止しては光り輝く光線を放ち、空を駆けていったとの事。

人間の里では動きが奇妙な事から宇宙人や特殊な妖怪なのではないか、などと囁かれている模様。

(写真=博麗神社にて激写された人影)

 

誠「…」

 

レ「…誠、これはどういうこと?」

 

…うん、どうしてこうなった。

訂正箇所が多々あるけどこれはひどい。

まず第一に俺は宇宙人でも妖怪でもないから!

次に光線は鎖が夕日を反射して光ってるだけだから!

最後に宙で止まったのは方向を微調整してただけだから!!

 

…どうしてこうなった。




レミリアは誠が光線を放っていた事に興味津々だったようです。





次回予告
平穏な弾幕生活をしていた誠に一通の手紙が届く、それは幻想郷一の弾幕を決める戦いである通称D-1が行われるとの通知だった! 最初は渋る誠も参加を表明! 順調に勝ち進む誠に敵の魔の手が忍び寄る! 「永遠亭代表として勝たせてもらうわ!!」こ、この弾幕はまさか世界中の弾幕カメラマンが撮影を断念したあのトラウマ弾幕!? 次回「そろそろガチバトル回が迫ってきた」そのレーヴァテインは何を壊すのか

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