OVER LORD外伝~ワニの大冒険~   作:豚煮込みうどん

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やっちゃったぜ…


オリ設定が今回強く出ています。不満を感じる人もいるかもしれませんがこれはこれで…と思って貰えるとありがたいです。


とある赤鰐の超・超大戦斧(オーバー・グレイトアックス)

爆音と共に氷塊と、凍り付いた土砂が湿地帯に舞い上がる。

大地を走った衝撃波が、ギャラリーの如く周囲に配されたスケルトンを魔法の鎧諸共に粉砕した。

 

 

「オオオオォォォッ!!!」

「ガァァァアアアアァァッ!!!」

 

一体誰が信じられるだろうか…?その圧倒的破壊のもたらす情景がたった2人の『怪物』の闘いの余波でしかないと言う事が…

 

それが連続して轟くと同時、湿地帯から白色の極光が天空への階段の如く天地を繋いだ。

 

『スマイト・フロストバーン』

 

コキュートスが放った、それこそが先程の閃光の正体だ。

閃光が掻き消えた後に残っているのは、腕を交差させた防御の姿勢で真っ白に凍り付いたクロコダインの姿。

すわ決着か?と思う者も観戦していた中には居たかも知れないが、こと実際に対峙しているコキュートスの思考にはそんな考えは欠片たりとも湧いてはいない。

 

続けて、コキュートスが放つのは《ピアーシング・アイシクル》大気の水分から氷柱の槍が一瞬で形成され、コキュートスの周囲に浮かび上がる。その数66本。

さらにそこからコキュートスは手にした斬神刀皇の切っ先を「カチャリ」と音を立てながらクロコダインに向け構えると、神速の踏み込みで突進する。それは牙突と呼ばれる突きの極地だ。

それを追う様に66の姿無き騎兵達による突撃(チャージ)が敢行された。

 

「おい…!コキュートス!!」

 

だが、ガチガチに凍り付いた筈のクロコダインの口元が動いた。次に動いたのはその瞳、鋭く、そして澄み切った武人の眼光が閃光の様な早さで迫るコキュートスをはっきり捉え、ギラリと光る!

 

「いつまで…調子に乗っとるかあぁっ!!!」

 

そして、獣王の咆哮と共に体を縛る氷結の呪縛が砕け散った!

舞い散る氷が光を乱反射させ、煌めく獣王のその姿に目を剥きながらも、コキュートスは疾走を緩めない…元よりこの程度の事は想定していた。

自らよりも僅かに速く、ピアーシング・アイシクルがクロコダインに殺到した瞬間、しかし、全力の突きを放った筈のコキュートスの体は肉を貫いた確かな手応えを感じるままに、地面に背中を叩き付ける様にクロコダインに投げ飛ばされていた。

 

それはクロコダインがカウンターで放った見事な雪崩式エクスプロイダーであった。(※所謂裏投げ風スープレックス)

 

 

「グ…ヌゥ…

(コレ程トハ…)」

 

砕けた大地に力任せに埋め込まれた様な体勢となったコキュートスは、素早く飛び上がると一度距離を取る。

時間差で届いたピアーシングアイシクルを迎撃し終えたクロコダインからの追撃は無い…

 

先の一合、確かに斬神刀皇の切っ先はクロコダインに届いた…

しかし、クロコダインは信じられない事にあの突きを手の平を貫通させる事で真正面から受け止め、尚且つそこからコキュートスの突進の勢いそのままに、カウンターのエクスプロイダーにて痛烈な反撃を返したのだ。

そして、クロコダインのダメージを確認して判ったのが、コキュートスの通常のピアーシング・アイシクル程度ではあの頑強な表皮を貫くには至らないと言う事だ。

 

(セメテ他ノ武器ガ有レバ…)

 

思わずにはいられない…

実際、此処までの戦闘の流れでコキュートスの攻撃をクロコダインが受け止め、クロコダインが反撃を放つ…というのが繰り返されてきた。

そして、徐々にではあるが確実に、斬神刀皇で与えられるダメージが減っている…

元来徒手空拳での闘いを行う事の無い、コキュートスの現在の攻撃力は実質4分の1である。

 

並の相手ならばそれでも良かったが、残念ながら獣王クロコダインは容易い相手では無かった…

 

 

 

____________

 

(まるで、あのハドラー親衛隊の様な男だな…。)

 

何度かのぶつかり合いを経て、クロコダインがコキュートスに抱いた印象はその一言に尽きた。

 

全身を覆う見ようによっては、ブルーメタリックとも言える白銀の甲殻はまさにオリハルコンの輝きだ。

身体の各所に備えられた鋭いスパイクは全身凶器の体現、『フェンブレン』を想起させ、寡黙だが何よりも雄弁な武のあり方は城塞の体現、『ブロック』を…悪には悪の正義とでも表すべきか、その威風堂々とした士道のあり方は『シグマ』を思い出さずにはいられない。

そして主に対する忠誠心と、放つ氷の技一つ一つの優美さは女王『アルビナス』と比べても遜色は全くないだろう。

 

何より、氷と熱、対極の性質であってもその純粋な戦士としての在り方は兵士『ヒム』の姿をクロコダインに幻視させる程だった。

 

拳を握り、開き、ダメージを確認する。

 

まだまだ、戦える。

 

自身のスキル『戦闘耐性』はその戦闘中、同じ攻撃を受ければ受ける程その攻撃にダメージ軽減が作用する。その効果を実感しながらクロコダインは軽く腰を落とし、深く息を吸い込み呼吸を整える。

 

瞑想による体力の回復を終えて、クロコダインは今一度構えを取った。

 

 

肺腑に染み渡る空気は凍てつく様に冷たい…

 

 

 

 

_____________

 

 

2人の戦闘を観戦しながらアインズの頭に様々な考えが過ぎっていた。

 

そもそも、未だにクロコダインがプレイヤーであるという明確な証拠は無い。

もしやすれば現地のリザードマンの上位種、そう仮定し、その上であの戦闘力だとすれば現地の強力な個に対する戦力を弱く見積もり過ぎた…今後の自分達のやろうとしている事はもっと慎重をきする必要がある。

 

戦闘を止めるか?いや、まだ状況は何一つ動いていない…

 

他の監視者は?探知カウンターは作動している…シャルティアへの洗脳を行った者との関係は?

 

戦闘が終わった後でどの様な態度で接するべきか…敵対は避けたいがアレを味方にするにはこちらの行いが如何せん悪すぎた。話が出来るだろうか?

 

あの魔法発動体になっている斧はどういう事だろうか?少なくともユグドラシルでそんな事が可能なのはアイテムとしての側面を持つ『復活の杖』等に代表させるワンド系統だけだったはずだ…クレマンティーヌから回収したスティレットともまた違う様に思える…

 

 

 

「アインズ様、只今、戻りんした。」

「お待たせ致しました、アインズ様。」

 

 

アインズの思考はゲートから舞い降りたシャルティアとパンドラズ・アクターの声によって中断した。どちらにせよこの後の全てはこの闘いの流れ次第だ…それならばコキュートスには勝ってもらいたい。

 

「御苦労だったな2人とも。それではアルベド、今から私がコキュートスにメッセージで伝える故、私の合図でコキュートスに向かって武器を投げ渡してやってくれ。」

 

「畏まりましたアインズ様。」

 

アルベドはそう答えるとシャルティアから3つの武器を受け取った。それぞれが透明度が非常に高い氷塊によって封印が施されている。つまりこれを手にし、武器として振るう事が出来るのはコキュートス以外にはいないと言う事だ。

 

《コキュートスよ、聞こえているな?》

 

《コ、コレハ…アインズ様!!》

 

《これより、大閻魔反命、断頭牙、轟キ破壊スルモノをアルベドがそちらに放る。使え、そして私に勝利を見せて欲しい。》

 

《「ハハァッ!!必ズヤ!!」》

 

感極まったコキュートスはメッセージと同時に思わず言葉を声に出していた。頭と耳に届いたコキュートスの言葉に状況を忘れ、思わずアインズの口元に僅かな緩みが浮かぶ。

 

「やれ、アルベド…当てるなよ。」

 

アインズが片手を軽く掲げると、アルベドの手によって槍投げの要領でまるで砲弾の様に氷塊が豪速で風を切り裂き、三度撃ち出された…

因みにこれらは仮にアインズが投げようとすれば、その重量故どうしても両手投げとなっていたであろう…所謂、百年の恋も冷めると言われる女の子投げである。まぁその女の子が男らしい投擲を見せているのが皮肉な所である…

 

 

 

 

_____________

 

 

 

突然、奇声を発したと思うとコキュートスはゆっくりと構えを解いた。

 

「見事ダ、獣王ヨ…故ニコレヨリ我モ持チウル全テヲ出シ尽クソウ。」

 

次の瞬間、コキュートスの両脇に、飛来してきた3つの氷柱が突き刺さった。

 

コキュートスが空いていた手を3本差し出せば、氷は意思を持つ様に砕け散るとそれぞれ内部に封じられていた武器を露わにする。

三つの武器は納まるべくして納まると言うべきか、自ら浮遊しコキュートスのその手に納まる。

 

その外観を白銀の一色で構成された、これ以上は無いだろうといえる程、質実剛健と絢爛豪華を絶妙に融合させたハルバード…『断頭牙』

 

地獄の鬼の金棒と言われれば誰もが想像するであろうソレ。いっそ清々しい程にそうとしか表現出来ない打撃武器『轟キ破壊スルモノ』

 

艶の無い漆黒の捻曲がった刀身は命を刈り取る形。それは凶悪な昆虫の顎を毟り取り、そのまま剣へと加工された物だろう…瘴気を発する呪われた巨大ショーテルは『大閻魔反命』

 

 

それらがコキュートスの手に納まった時、そこには完全な『アスラ』が立っていた。

 

「…成る程、やはりそれが本来のお前のバトルスタイルか。」

 

「ソノ通リダ。」

 

コキュートスの口元から冷気が吹き出す。それは己の完全な戦闘体勢を誇っている様だった。

 

「ならば…俺も出し惜しみ等している場合では無いな…」

 

自然、一度仕切り直しの様相に成っていた戦場に、今のままでは勝ち目が無いと悟ったクロコダインは呟きを漏らすとあっさりと真空の斧をインベントリである空間の歪みに収納して見せた。

 

それによりアインズはクロコダインがユグドラシルプレイヤーだと確信を得る…

 

「出シ惜シミダト?」

 

コキュートスの疑問には僅かに怒りの感情が乗っていた…が、自分もたった今まで万全の装備で無かった事を思えばそれも筋違いかと思い直した。

 

「その通りだ。作成していた当時、些か悪ノリが過ぎた…原作に設定されていた性能を著しく超えてしまったせいで最早別物と化してな…」

 

言いながら、クロコダインの真っ直ぐに伸ばされた腕に引き寄せられる様に空間の歪みから、荘厳な無地の縛布にくるまれた何かが現れる…

コキュートスには何となく分かった。あの布は封印なのだと…

 

 

「正直に言えばあまり使いたくは無いんだ。」

 

クロコダインの豪腕が、躊躇いなく現れた『ナニカ』を掴むと勢いよく、空間から引きずり出す。

 

それが何かは布にくるまれていてもコキュートスには瞬時に理解出来た。

クロコダインの身長よりも長く、断頭牙と比べても尚、厳めしいそれはスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンに匹敵する程の超弩級の大戦斧だ…

 

 

「さしずめ『オーバー・グレイトアックス』とでも呼ぶべきか…行くぞ、コキュートス…」

 

 

クロコダインの手によって取り払われた縛布が宙を舞い、消える。

 

露わになった鋼の刃…

陽光を反射するコアとして内蔵された魔法の水晶は些かに小さな物だ。されど、故に圧倒的存在感を放つ。

アインズはスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを持つとそのステータスを大幅に上昇させる。そしてクロコダインの手にしたオーバー・グレイトアックスもそれは同様の効果を持っていた。

これはギルド武器では無い。しかし、故に実際に戦闘に持ち出される事を前提に創造と強化が施された武器だ。捧げられたデータクリスタルの質と量はスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンに劣る物では決して無い。

 

最早、それはワールドアイテムに匹敵する…

 

 

「第二ラウンドと行こうか!!羽ばたけ鳳凰!!」

 

キーワードと共に、クロコダインによって振り抜かれたグレイトアックスの斬撃の軌跡が渦巻く炎となり、炎は鳳凰となり、コキュートスに向かい飛翔する。

 

 

 

それは、かの大魔王バーンの代名詞、彼の放つメラゾーマ、『カイザーフェニックス』の再現だった。

 

 

 




『何故にと問う。故にと答える。
だが、人が言葉を得てより以来、問いに見合う答えなどないのだ。
問いが剣か、答えが盾か。
果てしない打ち合いに散る火花。
その瞬間に刻まれる影にこそ、真実が潜む。
次回『決着』
笑う骸は常に問い、答えは常に誤解の果てに。』


大体4000文字位を目安で書いとるけぇ、コキュートス戦が長ぉなってしもうとる事に関して、ほんまに申し訳のぉ思う。
一応、これでも描きたいシーンがかなりお蔵入りしとるんよ。



次回、岡山県北の川沿いの土手の風評被害が無くなったら。

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