と言うのもキモリ回好きなんですよね。
ジュプトルやジュカインになってもかっこよくて当時大好きでした。
でも僕はオリーブオイル。
…じゃなかった、ラグラージ。
ホウエンリーグ出場を目指し、旅を続けるサトシ達。
最初のジムがあるカナズミシティを目指し、トウカシティよりかなり離れた森の中を進んでいた。
その途中でサトシは昼休憩を取りながら、ソラトとのポケモンバトルで特訓を行っていた!
「スバメ、つばさでうつ!」
「避けろシズク!」
素早く繰り出されたスバメのつばさでうつ攻撃を、大きく長い体を捻るようにしてシズクは回避した。
「みずのはどう!」
「ミ~ロッ!」
「空へ飛び上がってかわせ!」
「スバッ!」
シズクが放ったみずのはどうを急上昇して回避したスバメだったが、その回避ルートはソラトに読まれていた。
「シズク、れいとうビーム!」
「ミロカッ!」
「スバーッ!?」
放たれたれいとうビームはスバメの翼に当たり、翼が凍り飛ぶことができなくなったスバメは上空から落下してくる。
「ああっ! スバメ! ってうわわっ!」
「ミロ」
サトシが落ちてくるスバメを助けようと落下地点まで走り出すが、その前にシズクが先回りして尻尾を使って優しくスバメを受け止めた。
勢い余ってかサトシは止まりきれずにシズクにぶつかってしまうが、シズクは器用に体をくねらせてサトシが転ばないように受け止めた。
「サンキューシズク、助かったよ」
「スバ~」
「ミロロ」
スバメを助け、更に自分まで助けてもらったサトシは律儀にシズクへお礼を言う。
だがソラトが近づいてくると一転。シズクはスバメをサトシに渡してスルリとソラトの方へ向かってしまった。
「良くやったぞシズク、お疲れ様」
「ミロッ! ミロミロ~」
褒めて褒めてと言わんばかりにソラトに向けて体をスリスリとこすり付けるシズク。
そんなシズクを見て、近くで座りながら観戦していたハルカは目を輝かせた。
因みに横にはマサトとピカチュウも一緒に座っている。
「あ~、やっぱりお兄ちゃんのシズク綺麗かも~!」
「そりゃミロカロスはポケモンの中でもトップクラスの美しさを誇るポケモンだからね。でも詳しい生態とかってほとんど分かってないんだよね」
「え、そうなの?」
「ポケモン図鑑で調べてみてよ」
「えーっと…」
『ミロカロス いつくしみポケモン
最も美しいポケモンとも言われている。怒りや憎しみの心を癒し、争いを鎮める力を持っている。』
そのデータを参考にして進化に関する情報や生息地を調べていくハルカだが、図鑑には進化不明、生息地不明と表示されており詳しい事は何も分からなかった。
「ホント、あんまり分かってないのね」
「僕の持ってる本にも、詳しい事は載ってなかったんだよ」
「すっげぇなー、俺もミロカロスをゲットしたいぜ!」
「ミロカロスのゲットを目指すのもいいが、まずはそれぞれのポケモンをしっかり育てないとな」
「おう! それじゃメシも特訓も終わったしそろそろ先に行こうぜ」
サトシ達は荷物を纏めるとカナズミシティを目指すために再び森を進む事にした。
森を進んでいると、森の中から天を突くような巨大な木が生えているのが遠目からでも発見できた。
しかし木は枯れているのか、全く葉が無かった。
「お、何だあの木?」
「大きな木ね…でもなんだか枯れちゃってるかも」
「もしかしたら珍しいポケモンがいるかもしれない! ピカチュウ、行ってみようぜ!」
「ピッピカチュウ!」
「あぁ! そっちはカナズミシティの方角じゃないよサトシ~!」
マサトの静止を無視してサトシは大樹の方へと向かって走っていってしまう。
「もうサトシったら、このまま迷子になっちゃったらどうするつもりなのかしら」
「ま、迷子って言っても旅にはつき物だからな。ピカチュウもスバメも一緒だし大丈夫だろ」
「お兄ちゃんがそういうならそうなんだろうけど…とにかく私たちもサトシを追いかけましょう!」
珍しいポケモンを求めて大木へ走り出したサトシを追い、ソラト達も大木の方へと走り出した。
しばらく大木を目指して走り続けていたサトシとピカチュウは木々の間を飛び回る小さな影を見つける。
木々を飛び回る深緑のような色の小さい体に太い尻尾。
「おぉ! あれはキモリだ!」
「ピカピカ!」
木々の間を飛び回っていたのはキモリの群れだった。
ピョンピョン飛び回っており、どうやら大木の方へと向かっているようだ。
「キャモキャモ」
「キャモ!」
「確かホウエン地方での初心者用ポケモンの1体なんだよな! よーし、ゲットしてやるぜ! 頼むぞピカチュウ」
「ピカピカ!」
「キャモ? キャモモ!」
サトシはキモリゲットの為にピカチュウでバトルを挑もうとするが、キモリ達はそれを見て慌てた様子で逃げ出していく。
多くのキモリ達は木々を飛び移りながら大木の方へと逃げていく。
「あっちの方へ行くぞ! 俺達も―うわぁああああああ!?」
「ピィカアアアアアアア!?」
大木の方へキモリを追おうとしたサトシであったが、大木は大きな穴ぼこに生えておりその穴ぼこの坂に気づかずにゴロゴロと転がって下りていってしまう。
穴の下に着いてもサトシは転がり続け、大木の巨大な根っこにぶつかってようやく止まった。
「いてて…酷い目に遭ったぜ」
「ピカ…ピィカ!?」
「何だ!?」
痛む箇所をさすりながら立ち上がるサトシとピカチュウの足元に1本の木の枝が突き刺さった。
木の枝が飛んできた方を見ると、そこには枯れた大木の枝に腰掛ける1匹のキモリが居た。
「今のはアイツが…よーし、ゲットしてやるぜ! キモリ、俺達とバトルしろ!」
「ピカピカチュウ!」
「キャモ…キャモキャモ!」
キモリは受けて立つ!と言っているようで、大木から飛び降りてくると先ほど地面に突き刺した枝を引き抜き口に咥えた。
「サトシー!」
そしてようやく追いついてきたソラト達は、サトシとキモリの様子を見るとバトルの様子に気がついた。
「ん? あれはキモリだな。どうやらバトルするみたいだ」
「あれがキモリね」
『キモリ もりトカゲポケモン
森の大木に巣を作り暮らす。縄張りに近づく敵を激しく威嚇する。森の木を守るポケモンと言われている。』
ハルカが図鑑でキモリの事を調べている間に、サトシはピカチュウを繰り出してバトルが始まった。
「行くぜ! ピカチュウ、でんこうせっか!」
「ピッカァ!」
「キャモッ! キャモォ!」
「ピカッ」
ピカチュウのでんこうせっかを、キモリは軽くジャンプして回避すると、大きな太い尻尾で振るってはたく攻撃で反撃をする。
はたく攻撃をまともに受けてしまったピカチュウは吹き飛ばされるが空中で体勢を立て直して着地する。
「やるなキモリ!」
「ピカ!」
「あのキモリ凄い素早いし攻撃も中々だよ」
「ピカチュウ結構苦戦するかも」
「キモリはくさタイプ、ピカチュウの電気技はこうかはいまひとつ…さてサトシはどう戦うかな」
「よし、ピカチュウ! 10万ボルトだ!」
「ピカ~チュゥウウウウウウウ!」
キモリの素早い動きを見て、サトシは距離を取って遠距離から牽制をする。
ピカチュウの10万ボルトはキモリに向かって真っ直ぐに放たれるが、キモリは再びジャンプして横に避けると素早くダッシュしてピカチュウにぶつかる。
「キャモ! キャモモ!」
「ピッカ!?」
「でんこうせっかも使えるのか!」
「キャモ…キャモモ?」
バトルの流れは完全にキモリにあった。
キモリはこの程度か?と挑発するようにサトシとピカチュウに向けて指をチョイチョイと動かした。
「くそ! 負けるなピカチュウ! 10万ボルト!」
「ピ~カ~…!」
「キャーモー!」
ピカチュウが10万ボルトで反撃をしようとした瞬間、驚くべき瞬発力を発揮したキモリのでんこうせっかがピカチュウを襲った。
「ピカー!」
「ああっ、ピカチュウ!」
「チャ~…」
「ピカチュウは戦闘不能だな。行くぜ」
でんこうせっかが決まり、ピカチュウは倒れて戦闘不能に陥ってしまった。
バトルを見届けたソラト達は穴を滑り降りてサトシの元へと駆け寄っていった。
「大丈夫か?」
「残念だったわね」
「ピカチュウは大丈夫さ。な?」
「ピカチュ」
ピカチュウは多少のダメージは残っているものの、しばらく休めば元気になるだろう様子だった。
そして負けたというのにサトシは先ほどのキモリの強さに感激して武者震いしていた。
「あのキモリすっげぇ強いぜ! これは何としてもゲットしたいぜ!」
「って、そのキモリはどこ?」
「あれ? どこいった?」
「ピカ、ピカピ!」
「って…何かいっぱい出てきたな」
キモリの姿が見当たらずに皆で周囲を見渡して探していると、辺りいっぱいにキモリが現れた。
若いキモリが多いが、その中に1匹だけ年老いたキモリが混ざっていた。
しかし先ほどの木の枝を咥えたキモリは居なかった。
「でもさっきのキモリが居ない! どこに…」
「そこだ、大木のすぐ下」
大木のすぐ根元に先ほどの木の枝を咥えたキモリが寂しげな背中をして佇んでいた。
そのキモリを見つけると年老いたキモリは近寄ってそのキモリに声をかけた。
「キモ…キモキモ…」
「キャモ! キャモモ!」
「キモ…」
「キャモモー!」
年老いたキモリが木の枝を咥えたキモリと話しているが、どうも険悪の雰囲気での会話をしている。
そして木の枝を咥えたキモリが年老いたキモリを突き飛ばしてしまう。
「何だかモメてるみたいだね」
「……………」
「お兄ちゃん? 何してるの?」
ソラトはキモリ達の様子を見てすぐに目を閉じて何か集中するような様子を見せていた。
まるで何かを感じ取っているかのように…。
「…あの若いキモリから、不安や焦燥、怒りが感じられるな。年老いたキモリからは不安と哀れみが感じられる」
「え!? 何か分かるのかソラト!?」
「何となく、な…多分この枯れた大木の住処を捨てるか捨てないかで揉めてるのかもな」
「ポケモンの気持ちも分かるなんて、やっぱお兄ちゃんって凄いかも」
年老いたキモリと周囲のキモリ達は説得を諦めたのか渋々と去っていってしまう。
だが木の枝を咥えたキモリはそんな仲間たちを気にすることなく、大木を昇って枝からジャンプして穴から出て行ってしまった。
「ああっ! キモリが!」
「大丈夫だよ。あのキモリはこの大木を住処にしてるんでしょ。ならきっと戻ってくるよ」
「そっか、それもそうだな。絶対キモリゲットだぜ」
そうしてサトシ達はあの木の枝を咥えたキモリをゲットするためにこの大木の近くで待ち伏せをする事にした。
そんなサトシ達を見つめる3つの視線…
「キモリが沢山いるわね。これはキモリ大量ゲットのチャンスよ」
「うううう…!」
「そうだな。ついでにピカチュウも頂きだぜ」
「うぅうう、うニャ~…」
ご存知ロケット団のムサシ、コジロウ、ニャースである。
双眼鏡でサトシ一行とキモリ達の様子を伺っているムサシとコジロウに対してニャースは何故か男泣きしている。
「ちょっとニャース、何泣いてるのよ!」
「どうかしたのか?」
「ニャーはあの若いキモリに感動したのニャ。今まで自分が生まれて、住んで、守られてきた大木…その大木が枯れかけているのに、あの若いキモリは今度は自分が木を守ると言っていたのニャ。これが泣かずにいられるかニャー!」
「そうだったのか…くぅー! なんていいヤツなんだあのキモリはー!」
ニャースの通訳の内容に感動したのか、今度はコジロウまで男泣きを始めてしまう。
だがそんな2人をムサシは冷たい目で見ていた。
「アホくさ。男と家は新しいモノに限る! これは最早世界を飛び越えて、宇宙の常識よ!」
「「えぇー!?」」
「ともかく、キモリの大量ゲット作戦の準備をするわよ!」
「「おー!」」
かくしてロケット団も作戦の準備に入るが、そんな事も知らぬサトシ達は大木の下でキモリを待ち続けた。
そして日も暮れた頃、大木が燃えないように少し離れた場所で焚き火を焚いて夕食を食べていた。
「モグモグ…あのキモリ帰ってこないね」
「もう戻って来ないんじゃない? この大木もう枯れちゃってるし…」
「いや、アイツは絶対に帰ってくる! 俺には分かる!」
「あぁ、多分戻ってくるだろうな。あのキモリは諦めて木を捨てるようなヤツじゃないだろ」
「ああ、俺には分かるぜ。アイツの大木を守ろうとしてる心意気が!」
キモリの心に何か共感できるところがあったのか、サトシの瞳も燃え上がっていた。
「あはは、ちょっと暑苦しいかも…」
夕食も食べ終わり、日も完全に暮れた頃にキモリは帰ってきた。
キモリは大きな葉っぱをお皿代わりにしてそこに水を入れて水を運んでいた。
食事の後片付けをしているサトシ達に目もくれずに、キモリは運んでいた水を大木の根元に流し、すぐに乾かないように沢山の葉っぱを水を流した場所に被せた。
「アイツ、ああやってこの大木を守ってるのか…よし! 俺達も手伝ってやろうぜ!」
「いいぜ。俺、あのキモリみたいなヤツ嫌いじゃないしな」
「僕もやるー!」
「それじゃあ私も!」
サトシ達はそれぞれ葉っぱや鍋を持って穴を昇り近くの水場まで行き水を汲む。
そしてキモリと同じように大木へ水を流して葉っぱを被せる。
「キャモ?」
「へへへ、俺達も手伝うぜ」
「ピカピカチュ」
「……キャモ」
サトシとピカチュウが手伝うと、キモリは好きにしろといった態度でそっぽを向いて葉っぱを地面に慣らし続けた。
寝る間も惜しみ、しばらく水を運び葉っぱを慣らす作業を続けていると、サトシは何か違和感を感じる。
「ん? …うわっ!? 何だ!?」
突然地面を揺るがす振動が伝わり驚くサトシ。
そして少し離れた場所から沢山のキモリ達の声が聞こえてくる。
「キャモー!!」
木の枝を咥えたキモリは先ほどと同じように、大木の枝を使って穴の外へと出て行く。
「俺達も追いかけよう!」
サトシ達も穴をよじ登りキモリ達の声がする方へ向かうと、そこには巨大なブルドーザーのようなメカが木々をなぎ倒し、側面から出ている虫取り網でキモリ達を捕まえていた。
「キモリ達が!」
「あの変なの何なの~!?」
ハルカの言葉を合図にブルドーザーの上部のハッチが開き、中から3つの影が現れる。
「あの変なの何なの~!? と聞かれたら」
「答えてあげるが世の情け」
「世界の破壊を防ぐため」
「世界の平和を守るため」
「愛と真実の悪を貫く!」
「ラブリーチャーミーな敵役!」
「ムサシ!」
「コジロウ!」
「銀河を駆けるロケット団の2人には」
「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ」
「ニャーんてニャ!」
「ソーナンス!」
現れたのはあいも変わらずムサシ、コジロウ、ニャースのロケット団3人組である。
「ロケット団! キモリ達を放せ!」
「じょーだんっぽい! 折角ゲットしたキモリを放すワケないでしょ!」
「ヘッ、ジャリボーイ達に攻撃だ! 行け、サボネア!」
「サーボサボサボ!」
「いででででで! こっちじゃなくてあっちだあっち!」
コジロウがモンスターボールを投げると、出てきたのはいつものマタドガスではなく新しいポケモンのサボネアだった。
しかしサボネアはサトシ達には向かってこず、コジロウに抱きつき腕のトゲをコジロウに突きたてた。
「ロケット団、新しいポケモンをゲットしたのか!」
『サボネア サボテンポケモン
砂漠などの乾燥した地域に生息している。強い花の香りで獲物をおびき寄せ、鋭いトゲを飛ばして仕留める。』
「あのサボネア、自分のトレーナーに攻撃してるのかしら?」
「いや、あれは多分甘えてるんだと思うよ…」
「ああ、俺のサジンやシズクと同じ感じだな…まぁトゲ刺さってるけど」
ハルカが見当違い…とも言い切れないが、とにかくちょっと違う発言をするが、マサトが苦笑いしながら否定する。
「サ、サボネア! ミサイルばりだ!」
「サーボネッ!」
「「「わぁあああああっ!」」」
サボネアはコジロウに抱きつきながらもサトシ達に向けてミサイルばりを放ってくる。
間一髪でそれをかわしたサトシ達も、キモリ達を助ける為に反撃に出る。
「行くのよアチャモ!」
「チャモ!」
「ライ、バトルの時間だ!」
「プラー!」
「やるぞピカチュウ!」
「ピカ!」
ハルカはアチャモ、ソラトはライ、サトシはピカチュウを繰り出してロケット団に対抗する。
「ピカチュウ、かみなりだ!」
「ライ、10万ボルト!」
「ピカ~ヂュウウウウウウウウウ!!」
「プ~ラ~!!」
ピカチュウとライの電撃が同時に放たれ、合体して強大な電撃となってロケット団に襲い掛かる。
「そうかいかないのニャ! とニャ!」
だがニャースがリモコンを操作すると、前回のメカに付いていたようなアンテナがブルドーザーから現れ、電撃を吸収してしまう。
「何だ!?」
「アレって前のヤドラン型のメカに付いてたのと一緒だな。イカすぜ…」
「そんな事言ってる場合じゃないだろー!」
「あだだだだだだ! 耳引っ張るなマサト!」
またも場違いな発言をしているソラトの耳を、マサトは思いっきり引っ張った。
耳を思いっきり引っ張られたソラトは思わず大声を上げて抵抗するが、逆に更に痛みを感じてしまい、あっちこっちに走り出す。
「こらマサトやめなさい!」
「分かった! 分かったから! マジメに戦うから放してくれマサト!」
ソラトとハルカ2人がかりでマサトを引き離しにかかっているのを、サトシとピカチュウとライ、ロケット団は呆れながら見ていた。
「あニャ…とりあえず今の内にピカチュウもゲットだニャ!」
「ピカー!?」
「しまった! ピカチュウ!」
ソラト達がドタバタしている隙にブルドーザーの網でピカチュウが連れ去られてしまう。
そしてブルドーザーの上部ハッチが大きく開くといつものニャース気球が現れ、ピカチュウを入れた網とキモリ達を閉じ込めた檻を吊り下げて空へと逃げ去っていく。
「クソ! 電撃は効かないし…!」
「ライの電撃もダメか…ならここはサジンで…!」
「キャモ!」
ソラトがサジンのボールを投げようとすると、木々を飛び移るあの木の枝を咥えたキモリが飛び出し、背の高い木の天辺に登るとロケット団の気球に飛び移った。
「あれ、まだキモリが残ってたのか」
「アイツもゲットしてやるニャ」
「キャモ!」
「うぎゃ!」
気球に飛び移ったキモリをロケット団は捕まえようとするが、コジロウとニャースの腕をかわすとはたく攻撃をムサシに繰り出した。
よろめいたムサシはお尻で檻のコントロールパネルのスイッチを押してしまい、檻が開いてキモリ達が脱出する。
「「「あーっ! キモリ達が!」」」
「やった! いいぞキモリ!」
「キャモ! キャモモ!」
「「「こなくそ! 邪魔するな! このこの!」」」
その後も枝を咥えたキモリは気球の上を跳び回り、ロケット団を翻弄する。
そしてその隙に檻から逃げたキモリ達は網の柄に向けてはたく攻撃をして柄を破壊した。
「キャモ」
「ピッカ! ピカピカ!」
「ピカチュウ! 良かったぜピカチュウ!」
キモリに助けられて空から落ちてくるピカチュウを受け止め、サトシは無事ピカチュウを取り返した。
そして気球の上でロケット団を翻弄していた枝を咥えたキモリはサボネアに向かって舌を出して挑発をする。
「キャモモ~」
「サボッ! サーボネッ!」
まんまと挑発に乗ってしまったサボネアは気球にしがみついているキモリに向けてミサイルばりを放つ。
「ああっ、やめろサボネア! ギャーッ!?」
「あギャーッ!?」
コジロウの静止も虚しく、ミサイルばりは気球に突き刺さり気球はパンッと割れてしまい気球が墜落してしまった。
「いでで…こうなったらバトルでポケモンを奪ってやるのよ! 行きなさいコジロウ!」
「って俺かよ!?」
「あったり前でしょ! 今の私にはソーナンスしかいないんだから!」
「わ、分かったよ…サボネア! ニードルアーム!」
「サーボサボサボ!」
ムサシの命令によりコジロウはサボネアに指示を出す。
サボネアは腕を振り回して力を溜め、渾身の力でニードルアームを繰り出した!
「キャモ!?」
「危ない! キモリ避けるんだ!」
「キャ!? キャモ!」
サボネアに狙われたキモリだったが、咄嗟のサトシの指示でサボネアのニードルアームを回避する事ができた。
「いいぞキモリ! でんこうせっかだ!」
「キャモ!」
「させないわ! ソーナンス、カウンターよ!」
「ソーナンス!」
「キャモ!? キャモッ!?」
キモリはでんこうせっかを繰り出すが、珍しく前に出てきたソーナンスのカウンターによって弾き返されてしまう。
「アチャモ、ひのこよ!」
「チャモー!」
「はいはいソーナンス、ミラーコートよ」
「きゃああああああ!?」
「チャチャチャ! チャモー!?」
アチャモがひのこで援護するが、同じくソーナンスのミラーコートでひのこを倍返しされ、ハルカとアチャモに返されてしまう。
ひのこを浴びて逃げ惑うハルカとアチャモだが、攻撃が収まる頃には服のあちこちがブスブスと黒い煙を出していた。
「うぅ…熱かったかも…」
「サトシ、お姉ちゃん! カウンターは物理攻撃を、ミラーコートは特殊攻撃を倍返しするんだ! 気をつけて!」
ポケモンの知識が豊富なマサトがサトシとハルカにアドバイスを出すが、ムサシとソーナンスも簡単には破らせまいと笑みを浮かべる。
「くそっ、キモリ! もう1度でんこうせっかだ!」
「何度やっても同じよ! ソーナンス、カウン―」
「ライ、ソーナンスにアンコールだ!!」
「プラ、プラプラ! プラプラ!」
「ソ、ソーナンス? ソーナンス!」
ライは突然拍手をしながら踊り、まるでソーナンスをおだてるように技を繰り出す。
ソーナンスは突然おだてられ、顔を赤くして照れた様子でミラーコートを発動してしまう。
それによりでんこうせっかを撥ね返す事ができず、ソーナンスは吹き飛ばされてしまった。
「ちょっとソーナンス、何してんのよ!」
「何やってるニャ! ミラーコートじゃでんこうせっかは撥ね返せないニャ!」
「無駄だ。アンコールを受けたポケモンはしばらく同じ技しか出せなくなるんだ」
「な、何ですって!?」
「よーし、なら今のうちね! アチャモ、つつく攻撃!」
「チャモチャモー!」
カウンターを使えないと知ったハルカはチャンスと見てアチャモでつつく攻撃を繰り出す。
ソーナンスは逃げようとするがアチャモの攻撃から逃げられず、お尻につつく攻撃を受けてしまう。
「ソーナンス! ソソ、ソーナンス!?」
「何やってんのソーナンス! カウンターよ!」
「ソソソ、ソーナンス!?」
慌ててムサシはカウンターを指示するが、ソーナンスが発動できるのはミラーコートだけだった。
ソーナンスはアチャモの攻撃を受けて体力が削られ続けてしまう。
「まずい! サボネア、ミサイルばりでソーナンスを援護するんだ!」
「サボサボー」
「ライ、サボネアにもアンコール!」
「プラプラ~!」
「サボ? サボサボネー!」
サボネアにもアンコールをすると、サボネアは先ほど繰り出したニードルアームを繰り出してしまう。
「アチャモ、避けるのよ!」
「チャモ!」
「サボ!?」
「ソーナンス!?」
「ああっ!? ソーナンス! あべしっ!?」
アチャモを狙ったニードルアームだが、アチャモがその場から飛び退くとニードルアームはソーナンスに命中してしまう。
今の一撃により、ソーナンスは吹き飛ばされてムサシにぶつかり倒れてしまう。
「今だキモリ! はたく攻撃!」
「キャモー!」
「サボネー!?」
「サボネアー! いでっ! いででで、しがみつくなサボネアー!!」
キモリのはたく攻撃が決まり、今度はサボネアが吹き飛ばされてしまいコジロウに命中する。
またもコジロウにしがみついているのかコジロウが悲鳴をあげていた。
「よーし、トドメの一撃いくぜ! ピカチュウ、でんこうせっか! キモリははたく攻撃!」
「ライ、まねっこだ!」
「ピッカ! ピカチュ!」
「キャーモッ!」
「プラプラ~プラッ!」
「「「あわわわわわわ!? ギャーッ!?」」」
ピカチュウのでんこうせっか、キモリのはたく攻撃、そしてライのまねっこによるはたく攻撃が放たれ、それぞれロケット団に見事クリーンヒットした。
「「「ヤなカンジーッ!!」」」
キラーン☆と夜空のお星様の1つとなって空の彼方へ消えていくロケット団を見送り、サトシ達はキモリ達の救出に成功した。
「やったぜピカチュウ、キモリ!」
「ピッカ!」
「キャモ」
「サトシやるじゃん!」
「ああ、野生のキモリに指示を出してあそこまでのコンビネーションが取れるとはな」
「キモリが頑張ったからさ。でも…なぁキモリ、もし良かったら俺達と―」
キモリに向かってサトシが何かを言おうとした瞬間、大木の方からバキバキと何か折れるような、割れるような音が辺りに響き渡る。
「今の音は何!?」
「まさか、キモリの大木が…!」
「キャモー!」
サトシ達は急いで大木の方へ戻ると、大木は縦に亀裂が入り今にも割れてしまいそうになっていた。
「大変だ! 木が!」
「キャモ!」
「キャモキャモ、キャモ!」
割れそうになっている大木を見て、木の枝を咥えたキモリを筆頭にキモリ達は大木を左右から支えてどうにか割れるのを防ごうとする。
だが大木はどんどん左右に傾いていってしまう。
「俺達も手伝うぞ! サトシ、ロープを巻いて木を固定するんだ!」
「分かった! 頑張ってくれよキモリ!」
「キャモ…! キャモー!!」
キモリの叫びと共に地平線から太陽が昇り光が差す。
大木の割れ目から日の光が差し込み、サトシ達はこんな時だと言うのにあまりの美しさに動きが止まってしまう。
いや、サトシ達だけではなくキモリ達も体が動かなくなってしまった。
そして光の中にそれを見た―
小さな豆が穴の中へ転がり、小さな芽を出して少しずつ少しずつ大きくなっていく。
周りには荒野が広がっていたが、穴の中で大きくなっていく木が始まりとなり徐々に木々が増え、緑豊かになっていく。
そして大木の緑は光の中へ消え、元の枯れた大木へと戻る。
それを最後に大木は真っ二つに割れ、大きな音を立てて倒れてしまった。
「今の、何…?」
「もしかして、この木が大きくなっていく所じゃないかしら…」
「……この森の始まり、なのか」
今の光景は過去に大木の生まれた瞬間から、今の大木まで成長していく大木の記憶だったのだろうか。
真相は分からないが、サトシはゆっくりと枝を咥えているキモリに近づき横に座る。
「キャモ…?」
「なぁキモリ、あの木はお前にありがとうって言いたかったんじゃないかな?」
「ピィカ」
「…キャモ!」
「どわぁあああああ!?」
優しげに語り掛けていたサトシだったが、キモリは突然尻尾を振るってサトシを吹き飛ばした。
「な、何するんだよ!」
「キャーモ、キャモ」
尻尾ではたかれたサトシだが、キモリはそんなサトシに掛かって来いとジェスチャーをする。
どうやらバトルを自分をゲットしてみろと言っているようだ。
「え…もう1度俺達とバトルしてくれるのか!?」
「キャモ」
「よーし、行けピカチュウ!」
「ピッカ!」
昨日は負けてしまったが、サトシはピカチュウと共に今度こそキモリゲットのためのリベンジマッチをする事にする。
「サトシ大丈夫かな? 昨日はあのキモリのスピードにやられちゃったけど…」
「キモリの技も把握したし、同じようにはいかないだろ。ただ問題なのは…」
「問題なのは何? お兄ちゃん?」
「……」
ハルカに聞かれるが、ソラトはあえて答えなかった。
そうしている間にバトルが始まりピカチュウとキモリが同時に駆け出した。
「行くぞピカチュウ! でんこうせっか!」
「ピッカ!」
「キャモッ!」
ピカチュウとキモリが同時にでんこうせっかを繰り出し、空中で激突すると両者とも弾かれて着地した。
「なら今度は10万ボルトだ!」
「ピーッカチュゥウウウウウ!」
「キャモ!」
放たれた10万ボルトを、キモリは避けることもせずに真正面から受けてたった。
くさタイプであるキモリにでんき技はこうかはいまひとつ。キモリはまだまだ余裕の表情で体を捻ってはたく攻撃を繰り出す。
「かわせピカチュウ!」
「ピッカ!」
「スピードと直接攻撃のパワーは互角だし、電気技はこうかはいまひとつ…どうすればいいんだ…」
バトルの戦略を考えるサトシだが、手ごわいキモリ相手にどうすればいいのか思い悩んでしまう。
「やっぱり相性でピカチュウじゃキモリには不利なんだよ」
「サトシ、大丈夫かしら…」
心配そうに見守るハルカとマサトだがサトシは焦りの表情を見せたまま動けずにいる。
行き詰ったサトシを見て、ソラトは一歩前に出ると大きな声でサトシに向かって叫ぶ。
「サトシ! 木に電気が流れないのは、受けた電気を地面に受け流しているからだ!」
「え!? どういう事だ!?」
「キモリはくさタイプ! 木もくさタイプって事だ!」
「キモリはくさタイプ…木に電気が効かないのは地面に流してる…そうか! そういう事か!」
ソラトのアドバイスでサトシは何かに気がついたらしく、突然大声を出す。
その様子にソラトもニヤリと不敵かつ満足そうな笑みを浮かべた。
「ピカチュウ! でんこうせっか!」
「ピッカ!」
「キャモッ!」
ピカチュウは再びでんこうせっかを放つと、キモリは今度はジャンプをして上にかわした。
だがそれこそがサトシの狙いだった。
「今だピカチュウ! かみなりだ!」
「ピカ~ヂュウウウウウウウウウ!」
「キャモ!? キャモォオオオオオ!?」
ジャンプしてできた隙を突いてピカチュウが強力なかみなりを放つとキモリに直撃する。
今度は先ほどの10万ボルトより効果が見られる。
どうも10万ボルトとかみなりの威力の違いだけでは無さそうだ。
「えー!? キモリにかみなりが効いた!?」
「くさタイプは電気技を受けた時、その電気を地面に逃がしてるからこうかはいまひとつなんだ。だが空中ならそれはできない…そういう事だ」
「へー。普通の相性だけじゃ分からない事もあるのね」
まともに強力なかみなりを受けたキモリは地面に倒れ、何とか動こうとするが膝を着いてしまう。
「よし! 行け、モンスターボール!」
今がゲットのチャンスと見たサトシは即座にモンスターボールを投げる。
投げられたモンスターボールは見事にキモリに命中すると、キモリを吸い込んで地面に落ちた。
キモリの最後の抵抗に、モンスターボールが激しく揺れる。
だがモンスターボールから出る力は残されておらず、モンスターボールの揺れが収まりゲット成功した。
「やったぁ! キモリ、ゲットだぜ!」
「ピッピカチュウ!」
「出て来いキモリ!」
「キャモ。キャモモ、キャモモ」
「キャモ…キャモモ」
ゲットされたキモリはすぐにボールから出されると、周りで見守っていた仲間のキモリ達と別れの挨拶をする。
そして年老いたキモリが何かを取り出す。
それは先ほど光の中で見た、大木が生まれた小さな豆だった。
「あぁ! もしかしてあの木と同じ豆なのか!」
「キャモ!」
サトシがゲットしたキモリは豆を受け取ると、地面に穴を掘って豆を入れると葉っぱを被せた。
「この豆がいつかあんな大きな木になるんだね!」
「それって何か感動かも!」
「何十年も先になるだろうけど、きっとキモリ達が守ってくれるだろうな」
サトシ達は豆を植え終わると、カナズミシティを目指してキモリの森を後にする事にした。
森から出るまでキモリ達が見送ってくれ、最後の別れに皆で手を振り合う。
「じゃあなー! また会おうぜー!」
「キャモモー!」
大木を守り、そして新たな大木を育てる事になったキモリ達。
そしてサトシは新たな仲間、キモリをゲットした。
カナズミシティのカナズミジムを目指すサトシ達の旅は、まだまだ続く!
to be continued...
BWのアニメ見ながらAGの小説書いてると微妙に混乱しますね(やめれ)
次回はキモリVSハブネークです。
キモリ君魔改造しちゃおうねー(ゲス顔)