ポケットモンスター-黒衣の先導者-   作:ウォセ

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前回の話、所々修正しました。
ムーンフォースがアームハンマーになってて焦った。最初はスイゲツ戦わせてたけど直し損ねてました。

カナズミシティまで1話完結が続きます。

皆さんのお暇を潰せていれば幸いです。


喧嘩!? 分裂!? バトルスタイルを見つけ出せ!

ホウエンリーグ出場を目指すサトシ達は、1つ目のジムがあるカナズミシティを目指し旅を続けていた。

現在はトウカシティから少し離れた森の中を進んでいた。

 

「なぁソラト、カナズミシティにはどれくらいで着くんだ?」

 

「んー、どうだったかな。俺がホウエンを旅してたのは5年も前だからあんまり詳しい所は覚えてないんだ。それに色々道も変わっただろうからな」

 

「それなら僕に任せてよ! パパから貰ったポケナビがあるんだ!」

 

マサトが取り出したポゲギアは黄色い色をした丸っこい小さな機械だが、上部分が稼動するとモニターが現れて地図が映し出される。

 

「おぉ、何だそれ!?」

 

「ポケモンナビゲーター、略してポケナビだよ。今自分がどの位置にいるか詳しく分かるんだ。えーっと今僕達はここだから…カナズミシティには2週間くらいかかるかもね」

 

「そうか! ならそれまでにどんどんポケモンをゲットして特訓しなきゃな! 頑張ろうぜピカチュウ」

 

「ピカピカ」

 

ジム戦のためにポケモンのゲットを目指すサトシは周りをキョロキョロ見渡しながらどんどん先へ進んでいってしまう。

だが先ほどからバテバテのハルカはソラトとマサトの少し離れた後方でトボトボと歩いている。

 

「サトシー! あんまり速く行かないでよー!」

 

「ハルカも遅いぞ。旅の間はそう何度も背負ってやれないからな」

 

「サ、サトシ速すぎるかも~…」

 

未だに徒歩での旅に慣れないハルカはサトシとソラトはおろか、マサトにも体力負けしていた。

 

「マサトは結構体力あるんだな」

 

「うん、ポケモンと旅するには体が基本だってパパが言ってたもん」

 

「流石センリさん、マサトも将来いいトレーナーになれるぜ」

 

「えへへ、そうかなぁ」

 

小さな体だが体力は十分なのを見てソラトはマサトが将来いいトレーナーになるだろうと確信した。

マサトなら見た目に反さずポケモンの知識も豊富だろう。

ソラトに褒められたのが嬉しいのか、マサトは顔を赤くして頭を掻く。

 

「ねぇねぇお兄ちゃん! 私はどう!?」

 

「うわ速っ…!」

 

先ほどまで結構後ろに居た筈なのだが、瞬時にソラトの横に移動したハルカは自分がいいトレーナーになれるかソラトに尋ねる。

あまりの速さにマサトが呆れながらも驚いていた。

 

「ああ、まだまだこれからだけどセンスは所々で見られるな」

 

「うふふ、お兄ちゃんのお墨付き貰っちゃったかも!」

 

「もー、お姉ちゃんはすぐに調子に乗るんだから」

 

「ははは……あれ、サトシ見えなくなっちまったぞ」

 

ソラト達が話し合い、ふと前を見るとサトシとピカチュウの姿が見えなくなっていた。

 

「あれ? どこに行っちゃったんだろう?」

 

「もー、サトシったら落ち着き無さ過ぎかも」

 

ハルカとマサトが周囲を見渡すようにサトシを探すが、サトシの姿はどこにも見えない。

だがふと森の奥を見ると黄色い閃光が奔る。

 

「あれはピカチュウの10万ボルトだよ!」

 

「となるとサトシはあっちだな。行ってみるか」

 

ソラト達は10万ボルトが見えた方向へ向かってみると、やはりその先でサトシとピカチュウが偶然出会ったトレーナーとバトルを行っていた。

 

「ピカチュウ、でんこうせっか!」

 

「ゴニョニョ、はたく攻撃で迎え撃て!」

 

「ピィッカ!」

 

「ゴニョ」

 

サトシの対戦相手のポケモンはピンクの体と独特な目が特徴的なゴニョニョだった。

ピカチュウはゴニョニョのはたくが繰り出される前に懐に飛び込んででんこうせっかを決めるとジャンプして後ろに下がった。

 

「くっ、ゴニョニョ、いやなおとだ!」

 

でんこうせっかを受けたゴニョニョだが、どうにか体勢を立て直していやなおとを発して反撃を試みる。

 

「きゃあああああっ! 何この音~!?」

 

「ゴニョニョのいやなおとだよ~! かなり嫌な音だけど、感動だ~!」

 

「今だゴニョニョ、はたく攻撃!」

 

「ゴニョ!」

 

「ピィカ!」

 

いやなおとで動きが止まっているピカチュウを狙い、ゴニョニョは頭から生えている耳ではたく攻撃を繰り出してピカチュウを吹き飛ばした。

ピカチュウは吹き飛ばされるが、空中で回転して体勢を立て直して着地した。

 

「よし! トドメの10万ボルトだ!」

 

「ピィカ! チュゥウウウウウウウウウ!」

 

はたく攻撃で隙ができた所を狙ったピカチュウの10万ボルトが決まる。

渾身の10万ボルトが決まり、ゴニョニョに大ダメージが入りそのまま戦闘不能となった。

 

「よっしゃ、やったぜピカチュウ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

「戻れゴニョニョ。お疲れ様。やるな君のピカチュウ!」

 

「君のゴニョニョも強かったぜ」

 

「ありがとう。次またどこかで会ったら、俺達もっと強くなってるから、その時はまたバトルしてくれないか?」

 

「おう、勿論だぜ!」

 

サトシは対戦相手の少年と固い握手をすると再戦を近い別れたのだった。

 

「サトシ、探したぜ」

 

「もう、勝手にバトル始めてるなんて勝手かも」

 

「ごめんごめん! 走ってたら目が会っちゃってさ。目が会ったらポケモンバトルさ!」

 

目と目が会ったらポケモンバトルはポケモントレーナーの基本である。

そして勝っても負けても恨みっこなし、いつでもどこでもできるのが旅をすう上でのバトルの醍醐味だ。

 

「でもさっきのバトル、サトシ隙が大きかったね。僕ならはたく攻撃を受ける前にでんこうせっかで防いでたよ」

 

「えぇ? あそこはダメージを受けても一気に攻める場面だろ!」

 

「いかにダメージを受けないか、サトシにはテクニックが足りないよ」

 

「テクニックはスピードでカバーできるって! そうだろソラト!?」

 

「ポケモンバトルはテクニックが大事だよねソラト!」

 

「えーっと…」

 

先ほどのバトルについて眼鏡を掛けなおしながらマサトが語るが、サトシはベストなバトルをしたと思っているようで反論する。

マサトはテクニック、サトシはスピードが大切だと思っているようで、この中で1番のバトル経験があるソラトに詰め寄って問いただす。

 

「ちょっと2人とも! お兄ちゃんが困ってるでしょ!」

 

「あー…まぁ人にはそれぞれバトルスタイルがあるからな。それぞれ得意なバトルスタイルを大事にすればいいさ」

 

「「答えになってない!!」」

 

「う…」

 

ソラトの当たり障りのなく、また正論だろう答えだがサトシとマサトは納得がいかなかったようで大声で異論を唱える。

 

「もう2人ともやめなさい! お兄ちゃんの言ってる事は初心者の私が聞いても正しいって分かるわよ!」

 

「ま、まぁトレーナーやポケモンの得意なバトルを見つけるのが大事だからな。ハルカもバトルを通じて得意なスタイルを探さないとな」

 

サトシとマサトからの問いを避けるためにソラトはハルカのバトルに話をシフトさせる。

 

「そうね。私って前もお兄ちゃんとのタッグバトルに負けちゃったし、キャモメにも負けちゃったかし…」

 

「アチャモが使える技はつつく/ひのこだよね。ならひのこで牽制してからつつくで攻撃すれば隙が少なく…」

 

「いや、つつくで突っ込んでからひのこで一気に行けば…!」

 

「隙を少なくしてテクニックで行った方が絶対いいよ!」

 

「いや、スピードで一気に押すんだ!」

 

お互いの意見を認めずにケンカ腰で言い合うサトシとマサト。

ハルカの事だというのに熱くなっている2人に、ソラトとハルカとピカチュウはため息を吐いて肩を竦めるのだった。

 

 

 

昼食時、サトシ達は森の中で休憩をしていた。

折りたたみ式の鍋を吊り下げてそこでシチューを煮込んでいた。

 

「わぁ~、シチュー美味しそうかも!」

 

「よし、そろそろいいな。昼飯できたぞー」

 

「ほらサトシとマサトも…」

 

「「うん! あ…ふんっ!」」

 

昼食が完成し皆の分のシチューを皿に盛るが、サトシとマサトは同時に皿を差し出す。

先ほどの口論が後を引いているのだろう、気に入らなかったのか2人は顔を背けてしまう。

 

「もうマサト! いい加減にしなさい! 人には人のバトルスタイルがあるってさっきお兄ちゃんも言ってたでしょ!」

 

「サトシもそう意地になるなよ。お前のバトルスタイルを大事にするのはいい事だがマサトの言うことにも一理あるんだぜ」

 

「「………」」

 

「ったく、どうにも面倒な事になってきたな」

 

「もういいわ。とりあえずご飯にしましょ」

 

サトシとマサトの仲を直すのはまだ後になるだろうと判断したソラトとハルカはとりあえず昼食を摂ることにした。

4人はソラトの作ったシチューを食べてお腹を満たしていく。

 

「う~ん、やっぱりお兄ちゃんのお料理サイコーかも!」

 

「「おいしー! あ…ふんっ!」」

 

「息が合ってるんだか合ってないんだか…まあシチューは沢山作ったからどんどんおかわりしろよ」

 

そうしてシチューを食べていき残りのシチューが半分になった頃、サトシ達の後ろの草むらがガサリと揺れる。

草むらを揺らした小さな影は突然飛び出してサトシ達の前に現れた!

 

「ゴロ」

 

「うわっ、何だ!?」

 

「こいつは…懐かしい、ミズゴロウだな」

 

「これがミズゴロウなのね」

 

『ミズゴロウ ぬまうおポケモン

頭のヒレはとても敏感なレーダー。水や空気の動きから、目を使わずに周りの様子をキャッチすることができる。』

 

サトシ達の前に飛び出してきたのはホウエン地方の初心者用ポケモンの1体であるミズゴロウだった。

ミズゴロウはシチューが煮込まれているのを見つけて匂いを嗅ぎ始めた。

 

「ミズゴロウはお兄ちゃんの初めてのポケモンなのよね」

 

「ああ、進化して今じゃラグラージになったしな」

 

「ゴロ? ゴロゴロ」

 

「おーい、ミズゴロウ!」

 

ミズゴロウの後を追いかけて同じ方向の草むらから飛び出してきたのは、なんとも巨大なジグザグマだった。

通常のジグザグマは高さ40cm程度の筈だが、巨大ジグザグマは確実に1mを超えている。

しかも何と人の言葉を喋っていた。

 

「ジグザグマが人の言葉を喋ってる!?」

 

「違うよサトシ! あれは人間だよ!」

 

マサトの言うとおり、巨大ジグザグマの正体は人間だった。

どうやらジグザグマのきぐるみを着ているようだった。

 

「お、そのきぐるみちょっと良いかも」

 

「ってそうじゃないだろ…」

 

度々ちょっとズレた発言をするソラトにずっこけるサトシ。

きぐるみを脱いで現れたのは赤いスカーフを身につけ、見事な短パンを履いた少年だった。

 

「おぉ! これは美味そうなシチューだ! いただきまーす!」

 

「ってちょっと! それ私達のシチューよ!」

 

「お? 何だお前たちは?」

 

「ゴロゴロ?」

 

今の今まで気がついてもいなかったという態度でサトシ達に尋ねる短パン小僧。

その様子に呆れるサトシとソラトとマサト。ハルカは相手の失礼な態度を見てプリプリ怒っていた。

 

「俺はマサラタウンのサトシ。こいつは相棒のピカチュウ」

 

「ピカ、ピカチュウ」

 

「俺はソラトだ、よろしくな」

 

「僕はマサト」

 

「…ハルカよ」

 

「おう! 俺は短パン小僧のキヨだ! よろしくな!」

 

突然飛び出してきたジグザグマのきぐるみを着ていた短パン小僧はキヨと名乗った。

ソラトはキヨが脱いだジグザグマのきぐるみを見ると興味深そうにきぐるみを広げて眺めている。

 

「ほー、よく出来てるな。他のきぐるみもあるのか?」

 

「おう! 色んなポケモンになりきってポケモンの気持ちを理解するためだからな! たっくさん持ってるぜ!」

 

「おぉ! 良かったら見せてくれないか!」

 

「はいはい、話進まないからそこまでね~」

 

「いでででででで!」

 

きぐるみに何故か興奮したソラトは色々見せてもらえるか頼むが、話が横道にそれて進まないためかマサトがソラトの耳を引っ張って引っ込めた。

 

「そうじゃなくて! それは私達のシチューなの! 勝手に食べないでほしいかも!」

 

「むむむ、お前たちさてはポケモントレーナーだな? なら俺とポケモン勝負だ! 俺が勝ったらこのシチューを頂くぞ!」

 

「いいわ、受けてたつかも!」

 

「「えぇー!?」」

 

唐突なキヨのバトルの申し入れを、ハルカはそのまま勢いで受けてしまう。

サトシとマサトは自分たちの昼食の残りを賭けたバトルをハルカが勝手に受けてしまった事に驚きの声をあげる。

因みにソラトは、端の方で引っ張られた耳を押さえて痛みを堪えていた。

 

「バトルは1対1! 先にポケモンが戦闘不能になったら負けだ!」

 

「いいわよ! お願い、アチャモ!」

 

「行け、ミズゴロウ! そしてポケモンチェーンジ! ミズゴロウ!」

 

ハルカはモンスターボールを投げてアチャモを出し、キヨは隣にいたミズゴロウを繰り出してきた。

そしてキヨは瞬時にジグザグマのきぐるみを着替えてミズゴロウのきぐるみを着た。

 

「タイプ的にはお姉ちゃんが圧倒的に不利…ここはひのこでけん制しながら戦った方が確実だよ!」

 

「いや、つつくのスピードでガンガン押すんだ! 頑張れハルカ!」

 

「ちょ、ちょっとうるさいかも…アチャモ、ひのこよ!」

 

「チャモー!」

 

「ミズゴロウ、みずでっぽうだ!」

 

「ゴロー!」

 

アチャモはひのこを、ミズゴロウはみずでっぽうを放つとお互いの技がぶつかり合う。

だがほのおタイプの技のひのこはみずでっぽうに掻き消されてしまい、アチャモにみずでっぽうが直撃する。

 

「あー、耳痛ぇ…こうかはばつぐんだな。頑張れハルカ!」

 

「ほら、つつくで攻めないからだ!」

 

「今のはたまたまだよ! お姉ちゃん、慎重にね!」

 

「しゅ、集中できない…とにかく、アチャモ! つつく攻撃!」

 

「チャモー!」

 

「ミズゴロウ、たいあたりだ!」

 

「ゴロロ!」

 

「チャモ! チャ…チャモー!?」

 

アチャモのつつく攻撃とミズゴロウのたいあたりが激突する。

だがパワーはミズゴロウの方が強かったらしく、アチャモは吹き飛ばされて地面に倒れてしまう。

 

「アチャモは戦闘不能だな。ミズゴロウの勝ちだ」

 

「アチャモ! 大丈夫!?」

 

「チャモ…」

 

「おっしゃあ! これで昼飯頂きだー!」

 

タダ飯を手に入れたからかキヨはとても嬉しそうにシチューを食べていく。

ハルカがしょんぼりと落ち込みながらアチャモを抱き起こしている間に、サトシとマサトがまたも睨み合いを始めた。

 

「マサトが余計な事言うからだぞ」

 

「なんだよ! それはサトシの方だろ!」

 

「なんだと!?」

 

「2人ともうるさーい! そんなんじゃバトルに集中できないでしょ!」

 

サトシとマサトの2人のケンカに苛立ったのか、ハルカまでも爆発してしまい大声をあげる。

しかしサトシもマサトもハルカも興奮のボルテージが収まる事は無かった。

 

「おいおい、お前らちょっと落ち着けって」

 

「ふん! こんな事なら1人で旅するんだったぜ!」

 

「それはこっちの台詞かも!」

 

「勝手な事ばっかり言って! 僕は正しい事を言ってるんだぞ!」

 

「「「ふん!!」」」

 

「あー、えーっと…はぁ、何でこうなるんだ…」

 

「ピカピ…ピカチュ!」

 

どうにか3人をなだめようとするソラトだが、ソラトの声がまるで耳に入っていない3人は、顔も見たくないのかそれぞれ別の方向へ歩き出してしまった。

ピカチュウは呆れながらもとりあえずサトシについて行く事にした。

ソラトは誰を追うか悩んで3人の背中を見送ることしかできなかったが、どうにもならないと思ったのか顔を手で隠してその場に座り込んでしまった。

 

「うーん、このシチューうめぇ!」

 

「ゴロゴロ!」

 

「そりゃどうも…気楽でいいなお前ら…」

 

ソラトには、美味しそうにシチューを食べるキヨとミズゴロウに呆れながらそう言う事しかできなかった…。

 

そしてそんなサトシ達を見つめていた3つの視線…

 

「どうやら、ジャリボーイ達はケンカしたみたいだな」

 

「やーね子供っぽい。まともなのはあの黒服だけじゃない」

 

「あの黒服のバトルの腕は半端じゃニャいニャ。それにあそこまで冷静だと相手にするのは厄介ニャ」

 

ご存知ロケット団のムサシ、コジロウ、ニャースの3人組である。

今日も今日とてサトシ達を追いかけてニャースの気球の上から双眼鏡を使って様子を伺っていたようである。

 

「でもこれはチャンスだニャ! 奴らがバラバラになってるニャら1人ずつ捕まえていけばいいニャ!」

 

「幸い黒服はあそこでジッとしてるみたいだし、やるなら今のうちだな」

 

「よし、作戦開始よ!」

 

「ソーナンス!」

 

 

 

 

 

ハルカはサトシ達と別れ、文句をブツブツ言いながらアテも無く進んでいる。

 

「もう! サトシもマサトも色々言って集中できないじゃない! 私は私のバトルを探してるのに!」

 

ずんずんと大股で森を進んでいくハルカの後を、アチャモもちょこちょこと不安そうについて行く。

 

「チャモー…」

 

「あっ…ごめんねアチャモ。アナタが悪い訳じゃないのよ。悪いのは私なんだから」

 

「チャモ…」

 

今のところアチャモは勝率があまり良くない。

その事を気にしているのかアチャモは落ち込んでしまうが、ハルカはアチャモを抱えて慰める。

 

「でも、どうしたら勝てるようになるのかしら…」

 

「チャモー…チャモ!? チャモモー!」

 

「ああっ、アチャモ! 誰!? 何するのよ!」

 

ハルカが考え事をした一瞬の隙を突いてどこからか伸びてきたアームがアチャモを掻っ攫い空へと連れ去ってしまう。

 

「誰!? 何するのよ! と聞かれたら」

 

「答えてあげるが世の情け」

 

「世界の破壊を防ぐため」

 

「世界の平和を守るため」

 

「愛と真実の悪を貫く!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「銀河を駆けるロケット団の2人には」

 

「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ」

 

「ニャーんてニャ!」

 

「ソーナンス!」

 

アチャモを連れ去ったアームは、空に浮かぶニャースの気球から伸びており、当然その気球に乗っているのはロケット団の3人組だ。

 

「ロケット団! 私のアチャモを返しなさい!」

 

「やーなこった!」

 

「フン、どうしても返して欲しいならジャリボーイとピカチュウと一緒にこの森の先に来ることね!」

 

「ではこれにて失礼ニャ!」

 

「チャモチャモー!」

 

そのままロケット団は気球をコントロールして森の先へと去っていってしまった。

 

「アチャモ! 待ってて、必ず助けてみせるから!」

 

ロケット団はサトシとピカチュウを連れて来いと言っていた。

ハルカはサトシが向かっていった方向へと走りサトシを探しに行く。

 

「サトシー! どこに居るのー!?」

 

5分も走りながらサトシを探していると、それほど離れていなかったのかサトシを見つける事ができた。

 

「サトシ!」

 

「ん? 何だよハルカ…何か文句でもあるのかよ」

 

まだ先ほどの口論の事を根に持っているのか、サトシは低い声で喧嘩腰で返事をする。

だがハルカはそんなことは気にしていられない。緊急事態なのだ。

 

「サトシ、大変かも! ロケット団にアチャモが連れていかれちゃったの!」

 

「何だって!?」

 

「この先で待ってるって言ってたわ。サトシとピカチュウをつれて来いって…」

 

「任せろハルカ、絶対にアチャモを取り戻す!」

 

サトシとハルカはロケット団が飛び去っていった方向へと走り、アチャモ救出へと向かう。

そして近くの木の陰に隠れていたマサトは今の話を聞いていた。

 

「お姉ちゃんのアチャモが…これは大変だ…!」

 

マサトはサトシ達を追いかけ…る事はなく別の方向へと駆け出した。

 

 

 

そして森の先にある岩場の広場にて、ロケット団は気球を降ろしてサトシ達を待っていた。

大急ぎで走ってきたサトシとハルカは広場に辿り着くと、ロケット団と小さな檻に閉じ込められたアチャモを発見した。

 

「見つけたぞロケット団!」

 

「私のアチャモを返して!」

 

「来たわねジャリボーイ」

 

「ノコノコやって来るとはカモネギが鍋しょってやって来たぜ!」

 

「ピカチュウ、アチャモを助けるんだ。10万ボルト!」

 

「ピカ~チュゥウウウウ!」

 

「おっと、そうはさせないのニャ!」

 

ピカチュウが10万ボルトを放つと、電撃は真っ直ぐにロケット団へ向かっていたが、突然カクンと曲がってしまう。

曲がった10万ボルトはロケット団の傍に置いてあったパラボラアンテナのような装置に吸収されてしまう。

 

「な、何だ!?」

 

「へへーん、このマシンは電気を吸収するんだよ」

 

「ほーら、ピカチュウもこっちに来るニャ!」

 

ニャースがリモコンを操作すると、気球の中からアームが伸びてきてピカチュウを掴んで連れ去っていってしまう。

 

「ピィカー!」

 

「しまった! ピカチュウ!」

 

「「「ピカチュウゲットでイイカンジー!」」」

 

「くそ! ならスバメ、君に決めた!」

 

「スバー!!」

 

「悪いけど目的を達成した今、アンタ達に用は無いのよ!」

 

ピカチュウを連れ去られたサトシは、スバメを繰り出しピカチュウを取り戻そうとする。

だがニャースが再びリモコンのボタンを押すと地面が大きく揺れて広場の土が盛り上がる。

 

「きゃああああ! いったい何なのー!?」

 

「なーっはっは! これぞロケット団の英知を結集したメカ、電気技も効かないけど他にも色々効かない鈍感メカ君1号だ!」

 

「無駄に長いしそのまんまかも!」

 

「無駄とか長いとか言うニャー!」

 

盛り上がった地面の中から出てきたのは高さ10mはあろう巨大なヤドラン型のメカだった。

ロケット団はピカチュウをアチャモと同じ檻に入れると、檻を抱えて素早くメカに乗り込んだ。

 

「さぁ、このまま逃げるわよ!」

 

「逃がすなスバメ! でんこうせっか!」

 

「スバッ!」

 

メカに乗って逃げようとするロケット団だが、サトシはスバメのでんこうせっかで攻撃を仕掛ける。

だがスバメの攻撃はメカの装甲に対して傷一つつける事もできなかった。

 

「そんな!?」

 

「ニャハハ! このメカの装甲は名前の通り色々効かない特殊金属で出来ているのニャ!」

 

「またこのメカ作るのに借金かさんじゃったけどな…」

 

「まぁピカチュウとアチャモゲットできたからチャラよチャラ。それじゃ…」

 

「「「帰る!」」」

 

メカはサトシ達に背を向けて去ろうとしてしまう。

 

「くそ、逃げられる!」

 

「そんな、アチャモー!」

 

だがロケット団が逃げようとした先へ黒と青の影が飛び出した。

 

「スイゲツ、たきのぼりだ!」

 

「ラグ! ラグァアア!」

 

水を纏ったスイゲツがたきのぼりを放ち、メカに突撃する。

メカは全く動じなかったが、足を止める事には成功した。

 

「ソラト!」

 

「お兄ちゃん!」

 

「サトシ、お姉ちゃん大丈夫!?」

 

「マサトが俺を呼びに来たんだ。無事で良かった」

 

「俺も来たぜ!」

 

ロケット団の行く手を遮ったのはソラトとキヨ、そして2人を連れて来たマサトだった。

たきのぼりを放ったスイゲツはそのままソラト達の方へと戻ってくる。

やはりメカには傷一つついてはいなかった。

 

「フン、この特殊金属でできた電気技も効かないけど他にも色々効かない鈍感メカ君1号には流石の黒服も敵わないみたいだな」

 

「な、長い名前…しかしあのメカは中々イカすな。頑丈なのを鈍感とかけてヤドラン型にするとは…」

 

「お兄ちゃん言ってる場合じゃないかも! アチャモとピカチュウが捕まってるの!」

 

「よし、ここは俺に任せろ! ミズゴロウ、みずでっぽうだ!」

 

「ゴロー!」

 

キヨが先頭に飛び出し、ミズゴロウがメカに向かってみずでっぽうを放つがやはり効果は見られない。

 

「えーい邪魔臭い! ニャース、反撃するのよ!」

 

「了解ニャ!」

 

「「「「わぁあああああああああああ!?」」」」

 

今度はメカが腕を振り下ろして反撃をしてくる。

間一髪で腕を避けたサトシ達だったが、ソラトとスイゲツは怯まずに更なる反撃に出た。

 

「スイゲツ、グロウパンチ!」

 

「ラグ! ラーグラッ!!」

 

闘気を纏ったパンチがメカに決まるが、メカは何とも無く効果は無かった。

 

「ソラト、スイゲツ! スピードでかく乱して攻めるんだ!」

 

「違うよ! まずはまもるで相手の体勢を崩して攻撃するんだ!」

 

「ちょ、ちょっと2人とも…!」

 

先ほどと同じようにバトルに対する考え方の違いから別々の戦い方をアドバイスするサトシとマサト。

それを見たハルカはソラトが集中できなくなるのではないかと心配するが、ソラトは不敵な笑みを浮かべた。

 

「大丈夫だ、ハルカ」

 

「え?」

 

「サトシ、マサト! 2人とも見てろよ! スイゲツ、連続でグロウパンチ!」

 

「ラグ! ラグラグラグラグラグラグラグ!!」

 

闘気を纏ったパンチを何度も何度も繰り出してメカを殴りつけるが、未だにメカが傷つく様子は無かった。

 

「ソラトは何をする気なんだ!?」

 

「凄いラッシュだ。ミスゴロウ、しっかり見ておくんだぞ」

 

「ゴロゴロ」

 

「無駄だ無駄だ」

 

「このメカにはどんな攻撃も通じないのよ!」

 

「ソイツはどうかな!? スイゲツ、グロウパンチ!」

 

「ラグゥウウウラッ!」

 

最後のグロウパンチを最大の力を込めて放つと、ベキィ!と何か堅い物にヒビが入るような音が響き渡る。

スイゲツがパンチを放った手を退けるとそこにはハッキリとした拳の痕があり、メカにダメージを与えていた。

 

「「「えぇえええええええ!? 何でー!?」」」

 

「あの堅い装甲にヒビを!?」

 

「でも、最初は全然効いてなかったのに何で!?」

 

あまりの出来事に、ロケット団だけではなくサトシやマサトも目を見開いて驚いている。

 

「グロウパンチは使えば使うほど攻撃力が上がる技なんだ。何発も撃ち込んで攻撃力を上げたって訳だ。スイゲツ、そのままたきのぼり!」

 

「ラグラ!」

 

再び水を纏ってたきのぼりを繰り出しメカの胴体目掛けて突進する。

先ほどは傷一つつけることはできなかったが、今度は胴体を貫通してメカの背中側まで貫いた。

スイゲツはピカチュウとアチャモの入った檻を抱えており胴体を貫通した時に救出したようだ。

 

「ラグ!」

 

「ピカピカピ!」

 

「チャモモー!」

 

「ピカチュウ! 無事で良かったぜ!」

 

「アチャモ! ありがとうスイゲツ!」

 

「よし、よくやったぞスイゲツ!」

 

そして胴体に巨大な大穴が開いたロケット団のメカはしばらくビリビリとショートした後、ドカン! とお約束のように爆発して吹き飛んだ。

 

「あーあ、またダメだったニャ」

 

「なぁ、今度からあの黒服のことヒーローボーイって呼ばないか?」

 

「そりゃピッタリニャ! ジャリん子達がピンチの時は颯爽と現れて解決してくニャ!」

 

「って、そんな事言ってる場合じゃないでしょーが!」

 

「「「ヤなカンジー!!」」」

 

キラーン☆といつものように空の彼方へと吹っ飛んでいる間にソラトの呼び方をロケット団の間で決められたようである。

そして今日も今日とて見えなくなるまで吹き飛んでしまった。

 

「すっげぇ! 俺のミズゴロウも進化したらあんな風に戦えるんだな!」

 

「ゴロゴロ!」

 

キヨとミズゴロウも進化系のラグラージであるスイゲツの戦いぶりを見て興奮していた。

そしてソラトはサトシとマサトを見据えて不敵に笑った。

 

「どうだサトシ、マサト。これがスイゲツのバトルスタイルだ」

 

「「え?」」

 

「ラグラージは元々スピードがイマイチなポケモンだから、スピード戦法は向いてない。まもるにしてもあの巨大なメカ相手じゃ守りきるのは難しい。だから攻撃を受ける前に自分の攻撃力を上げて一気に突き破ったんだ」

 

「そうか、そうだったのか」

 

「ソラト、色々口出ししてゴメンね」

 

ソラトとスイゲツのバトルスタイルを説明され、納得したサトシとマサトは口出しをしてしまった事を謝る。

だがソラトは首を横に振るとハルカを指差した。

 

「謝る相手は俺じゃないだろ。何度も言うが、人には人の、ポケモンにはポケモンの得意な事がある。それぞれに合うスタイルを時間をかけて見つけ出すのがトレーナーとしての最初の課題なんだ。人に無理やり押し付けるなよ」

 

「うん…ごめんなハルカ」

 

「ゴメンねお姉ちゃん」

 

自分には自分の戦い方が、そして人には人の戦い方があると教えられたサトシとマサトは素直に謝る。

ハルカもすっかり苛立ちは収まっていた。

 

「ううん、分かってくれたならいいかも! そうだキヨ、また私とバトルして!」

 

「え、俺が?」

 

「そうよ。自分のスタイルを見つけるにはやっぱり経験が大事かも! だからバトルして!」

 

「おう! 俺も早くミズゴロウを進化させたいからな! 負けないぞ!」

 

「頑張って、アチャモ!」

 

「チャモチャモー!」

 

「行くぞミズゴロウ!」

 

「ゴロッ!」

 

アチャモとミズゴロウが向かい合い、それぞれバトルの準備に入る。

先ほどのバトルの時にあった苛立ちやピリピリとした雰囲気はまるで無く、皆が楽しそうにバトルを行っていた。

 

ケンカを通じて、自分と人の違いを認め合う事を知ったサトシ達。

ホウエンリーグ出場を目指す彼らの冒険は、まだまだ続く!

 

 

 

to be continued...




今回登場したきぐるみチェーンジ! のキヨ君ってどれくらいの人が覚えてるんでしょうね。
それとソラト君には妙なセンスが追加されました。マサト君に耳引っ張ってもらいましょうねー。

次回はキモリが出ます。

きゃももー。

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