カイナシティで開催されるポケモンコンテストに参加するためにポケモンセンターに泊まるサトシ達。
昼間に起きたクスノキ造船所においてアクア団が起こした潜水艦奪取事件に巻き込まれたソラトが怪我をしたため、ポケモンセンターの個室で手当てを行っていたのだが…。
「はい、ソラトくん。これで大丈夫だよ」
「ありがとなルチア」
ソラトの傷の手当をしていたのはトップコーディネーターであり売れっ子アイドルでもあるルチアであった。
昼間の事件の後、ソラトが怪我をした事に責任を感じてポケモンセンターにまで着いてきて手当てを申し出たのである。
「…お兄ちゃん、そろそろ説明して欲しいかも」
ムスッとして不機嫌なハルカを見て、ソラトは苦笑いしながら事情を説明する事にした。
「分かってるよ。こっちはルチア、5年前にホウエンで旅をしている頃に出会ったんだ」
「私ルチア! よろしくね!」
「俺、サトシです!」
「ピカ、ピカチュウ!」
「僕マサトです!」
「私ハルカです。今度のポケモンコンテストカイナ大会でコーディネーターデビューするんです!」
「そっか、アナタがハルカちゃんなんだね」
「え?」
それぞれが自己紹介をするが、ルチアがハルカを以前から知っていたような口ぶりで話したためハルカは首を傾げて疑問符を浮かべた。
「5年前、ソラトくんと出会った時に聞いてたの。妹みたいに可愛がってる子がいるって」
「わぁ~! ルチアさんに知って貰えているなんて、光栄です!」
憧れのトップコーディネーターに自分を知って貰えていたと知ったハルカは目を輝かせていたが、すぐさま当初の疑問を思い出してソラトに問い掛けた。
「そ、それで! お兄ちゃんとルチアさんはどういう関係なの!?」
「どういう関係、か…まぁ話すと少し長くなるが…」
そしてソラトは語り出した。5年前、ルチアと出会った時の事を…。
時は遡り5年前。
父であるアラシを探す旅を始めたばかりの、まだ若き日のソラトは現在と同じルートで海路でムロ島からカイナへとやって来た。
「よーし、カイナに到着だ! 皆、降りるぞ!」
「マクロッ!」
「コノコノ!」
「ラル」
「ココッ!」
手持ちのポケモンは当時はヌマクローのスイゲツと、コノハナのフウジン。ラルトスのレイとココドラのクロガネである。
カナズミとムロのジムでバトルを経て父アラシを知る人物がいないかどうかを探している。
しかしながら上手くいっていなかったが、人やポケモンが多く出入りするこのカイナシティならば何か手がかりがあるかもしれないと一縷の希望を持ちながらソラトは定期船から降りた。
「はー…カイナみたいな港町は初めてだから新鮮だな。人も多いし、早速聞き込みを―」
「マクロマクローッ!」
「コノーッ!」
「コココッ!」
しかし初めて来た港町のリゾートビーチにスイゲツもフウジンも、クロガネも大はしゃぎだった。
目的はアラシの事を聞きこみする事なのだが、その事も忘れている勢いである。
「あーもう! お前たちはボールに戻ってろ! ったく、行くとするかレイ」
「ラルラ」
結局レイ以外のポケモンは全員ボールに戻す事になってしまい、落ち着いて聞き込みを行う事にした。
だが行方不明になってから随分経つアラシを知る人物に中々出会う事ができず、聞き込みは難航する事となる。
そして50人以上に聞き込みを行ったものの収穫ゼロという事実に打ちのめされたソラトはビーチの外れの岩場に座り込み休憩をする事にした。
「人が多いって事は、それだけオヤジを知ってる人にも出会い難いって事だよなぁ…はぁ、どうしたモンか」
「ラール」
「ん? どうしたレイ?」
「ラルッ」
海を眺めながら近くにあった手ごろな小石を海に向けて投げて気晴らしをしていると、レイが何かを感じ取ったのか小さな足を動かしどこかに移動しようとする。
アラシに関して何か手がかりを掴んだのかもしれないと思ったソラトはレイの後に着いていくと…そこにはチルットを抱え、蹲って泣いている青い服を着た女の子がいた。
「…ぐすっ、うっ、ひっく」
「チル~」
「ラル」
「…っ!? な、なにっ!? だれっ!?」
「チルッ!? チルチルッ!」
泣いていた女の子は声をかけられるまでレイに気がつかなかったのか驚いた様子で立ち上がり、振り向いた。
チルットも女の子に抱えられたままだが彼女を守るようにソラトとレイを威嚇するように鳴いた。
そして振り向いた事でソラトの存在にも気がついた。
「俺は旅のポケモントレーナーだ。名前はソラト。お前は?」
「ル、ルチア…」
そう、これがソラトとルチアの出会いだった。
そして彼女が抱えているチルットが、現在の彼女のパートナーであるチルルでもある。
海辺の岩場で泣いているルチアをレイがその感情をツノでキャッチして気になったため心配してやって来たというのが出会いの理由であった。
そしてソラトはルチアに泣いていた理由を、興味本位で聞いてみた。
本当はアラシに関係の無い事に首を突っ込むのは少し躊躇われたのだが、レイがルチアを心配しているため最初は渋々だが関わる事にしたのだ。
「私…アイドルの卵で、明日コーディネーターとしてデビューするの」
「アイドルで、コーディネーターか」
「うん…でも練習がうまくいかなくて、お母さんに怒られちゃって…逃げ出してきちゃったの」
話を聞いてソラトははぁ、と溜息を吐いた。
母親を失い、行方不明の父親を探すソラトからすれば親に怒られただけで泣いて逃げ出してくるとは随分と贅沢な悩みに聞こえたのだ。
だが首を突っ込んだ以上は区切りがつくまで面倒を見るのがソラト流である。
「何で上手くいかないとか考えたか?」
「えっと…ううん」
「じゃあ今考えてみろよ」
「…お母さんも言ってたけど、私に自信が無いからだって。それがポケモンにも伝わっちゃって失敗しちゃうんだって言われた」
「なら自信持てばいいじゃないか」
「無理だよ…私鈍臭いし、きっと上手くいかない」
最初からダメだと決め付けてグズってしまうルチアはまたしても膝を抱えて泣き出してしまった。
先ほどよりも大きな溜息を吐いたソラトだが、面倒を見ると決めた以上は何かしてやらなければならない。
そしてルチアを見てある事に気がついた。
「お前、その服でコンテストに出るのか?」
「グスッ…う、うん…」
ルチアの着ている服は普通の女の子らしいシャツとスカートである。別段変な所は見受けられなかったがアイドルとしては地味である。
ある案がソラトの頭には浮かんでいた。
「来い」
「え…?」
「いいから来い。カイナの出店なら、良い生地きっと売ってるからさ」
「生地…?」
ソラトはルチアの手を引いてカイナシティでは有名な出店をやっている一角、カイナ市場にやって来る。
そこで布生地が売られている店で幾つか生地を見定めていく。
結局青を基調とした生地と、キラキラの装飾ができそうな生地を購入すると、そのままポケモンセンターにルチアを連れ込んで荷物の中からメジャーを取り出してルチアの体の各部を測定していく。
「あ、あの…」
「いいから動くなって。……よし、採寸オッケーっと。また明日ここに来い」
「えっと…?」
「チル?」
「いいものやるから、絶対来い。いいな?」
「う、うん…」
ルチアは何がなにやら分からないままソラトに押されて頷いてしまった。
その後はルチアは家に帰って塞ぎこんでしまったが、不思議な黒い服の男の子、ソラトの事を脳裏に浮かべながら眠りについた。
翌日、ポケモンコンテスト当日。
ルチアはチルルと共に朝早くに家を抜け出しソラトに来いと言われたポケモンセンターにやって来た。
ポケモンセンターのロビーではフードを目深に被ったソラトが待っており、ルチアを見つけると軽く手を振った。
「来たか」
「うん…約束、したから」
「それじゃこれ、受け取れ」
ソラトがルチアに手渡したのは青を基調とした可愛らしい服だった。綿のように付いているのはチルットの翼をイメージしたものだろうか。
服を受け取ったものの、何がどういうことなのか分からないルチアは困惑した表情でソラトを見つめ返した。
「こ、これは…?」
「お前の服だよ。それ着てコンテストに出れば自信つくだろ。最近はコンテストでトレーナーがドレスアップするのも流行ってるんだってよ」
アイドルらしく可愛らしい服を着れば自信がつくという安易な発想だが悪くはない。何事も形から入った方が分かり易いものである。
「…ソラトくんが、作ってくれたの?」
「急ごしらえだから、出来についてはとやかく言うなよ。でもオフクロ仕込みの裁縫だから、激しく動いたって破れたりしないから安心しろ」
「……」
「ほら、早く行け。コンテスト、見に行くからな」
「え、あ…う、うん!」
服を受け取ったまま動かないルチアの背中を押してやりコンテストへ向かえと後押ししてやると、どことなく元気になったルチアはコンテスト会場へ急いだ。
ソラトは衣装を徹夜で作ったため少しだけ仮眠を取るとその後ルチアのデビュー戦となるコンテストを見に行ったのだった。
「結果はルチアの優勝だ。それでデビューと共に優勝した天才アイドルコーディネーター現るって話題になったんだっけな」
一通り話を終えたソラトは昔を懐かしむようにルチアに顔を向けると、ルチアは恥ずかしそうに頬を赤く染めながらも共に昔を懐かしんでいた。
「今の私が在るのは全部ソラトくんのお陰なんだ。私の大恩人なの」
「そんな事があったのか…」
話を聞き終えたサトシ達は昔のソラトの話を聞けてどことなく面白そうにしていた。
「そう言えばルチア、その衣装…」
「うん! 流石にソラトくんに貰った衣装はサイズ的に着られなくなっちゃったけど、同じデザインの服を仕立て直して着てるんだ! 勿論、ソラトくんに貰った衣装は大事に取っておいてあるよ!」
どうやら今ルチアが着ている服がソラトの作った服とほぼ同じものらしい。
自分の作った服を大事に保管してくれていて、そしてデザインをそのままに仕立て直して着てもらえていて、ソラトもどことなく嬉しそうだった。
「それでソラトくんとはその後分かれたんだけど、旅先で再会したりして…私が誘ってソラトくんもコンテストに参加したりしたんだよ」
「そういえばお兄ちゃん、昔少しコンテストに出てたって言ってたものね」
「少しなんてとんでもないよ! ソラトくんは5年前にコンテストリボンを5つ集めてグランドフェスティバルに出場した経験もある凄腕コーディネーターなんだから!」
「「「グランドフェスティバルに出場!?」」」
ルチアから出た新情報に、ハルカ達は口を揃えて復唱してしまった。
グランドフェスティバルはポケモンコーディネーターにとって最高峰の戦いを行う決戦の舞台。
それに出れるというだけで優れたコーディネーターなのは間違い無かった。
「お兄ちゃん! 何で教えてくれなかったの!?」
「…半端者だからな、俺は。初歩的なアドバイスならともかく、人に偉そうに語れるほどのコーディネーターじゃないんだよ」
「…どういう事なの?」
「それも5年前の話だな。あれはホウエンリーグが終わってグランドフェスティバルに出場した時の話なんだが…」
再び時は戻り、5年前。
ホウエンリーグでベスト4という成績を残したものの、ホウエンでの旅でアラシの情報を禄に集められていなかったソラトは意思消沈しながらもグランドフェスティバルに出場していた。
共に出場しているルチアと一次審査を勝ち抜き、コンテストバトルのルールで行われるトーナメント式二次審査。
その準決勝の試合開始まで残り数分というところで、ソラトは会場の出口に居た。
「……行くか」
「待って!」
黒いコートに付いているフードを目深に被り会場に背を向けて足を進めようとするソラトだったが、その背中に声が掛けられる。
声の主はルチアだ。
カイナでソラトが作り、渡した衣装を着ており、あれから随分と自信をつけて成長していた。
だが今は瞳を不安げに震わせて縋るようにソラトに問いかけた。
「ソラトくん! どこに行くつもりなのっ!? これから準決勝なんだよ!?」
「…さっきの対戦相手の人と話をした。そしたらほんの1週間前、シンオウ地方でオヤジを見かけたらしいんだ」
「シンオウ地方…!? シンオウ地方に行っちゃうの!? 今から…!?」
ソラトの旅の目的が父親のアラシの捜索だと知ってはいたルチアだったが、それでもまさかグランドフェスティバルを途中棄権してまで行ってしまうとは思わず責めるような口調でソラトに問いかける。
だがソラトもアラシの事で譲る気は全くなく、突き放すようにルチアに言葉を返した。
「オヤジが1箇所に長く留まるとは思えない。すぐにでも出発しないとまた見失っちまう」
「せ、せめてグランドフェスティバルが終わるまで―」
どうにかしてソラトを引きとめようとするルチア。
自分の背中を押してくれたソラトと、夢のグランドフェスティバルで共に競い合いたかった。
もっと一緒にいたかった。
ルチアにとってソラトは心の大きな支えだったのだ。
だがソラトは左手で拳を作ると会場の壁を思い切り殴る。ドンッ!と大きな音が響き、そらに驚いたルチアはビクリと体を震わせてしまう。
「俺はッ…! 何としてもオヤジを連れ戻さなきゃならないんだ…! そうじゃなきゃ、トウカの墓で待つオフクロはいつまでも1人ぼっちだ!」
その時フードの隙間から見えたソラトの表情をルチアは忘れないだろう。
ギリッと音が鳴るほど強く歯を食い縛り、愛憎入り混じったような鋭い目がアラシに対する想いを物語っていた。
『さぁ、いよいよポケモンコンテスト二次審査の準決勝が開始されます! 準決勝第一試合はアヤネ選手対ソラト選手の対決です!』
「「「わぁあああああああああああああっ!!」」」
搾り出すように叫んだソラトの言葉ですら、会場の歓声とアナウンスによって掻き消されていく。
「…俺は行く。じゃあなルチア」
遠くなっていくソラトの背中を見てルチアは堪え切れずに涙を流してしまう。
そしてどこかヤケになってしまい、ソラトの背中へと震える声で声を投げかけた。
「…っ! ソラトくんにとっては…コンテストも、私も片手間に相手をしていたどうでもいい事なんだねっ! もう知らない! ソラトくんなんて知らないっ! シンオウへでもどこへでも行っちゃえばいいんだよ!」
言ってしまってからハッとする。勢いに任せてつい心にもない事を言ってしまった。
涙で滲む視界では、どんどんソラトは離れて行ってしまう。
「あ…ま、待ってソラトくん! 違うの、今のは―きゃ!?」
今の言葉は本心ではないと言いたくて、追い縋ろうとするルチアだったが躓いて転んでしまいそれも叶わなかった。
「ソ、ソラトくん…!」
そして気がつけはソラトの姿は無かった。
「うっ…! ううっ…! ソラト、くん…!」
ルチアはソラトに対する想いと、酷い事を言ってしまった後悔を押し殺すようにして咽び泣いた。
その嗚咽は会場の歓声に溶けて消えてしまい、誰にも届くことはなかった…。
それが5年前のソラトとルチアの別れだった。
以降ソラトは旅先でポケモンのパフォーマンスを競うような競技大会に出る事はあっても、ポケモンコンテストには出場しなかった。
最後にルチアに言われた、コンテストを片手間にしていると言われた事がチクリと心に刺さっていたからである。
「そういう訳だ。幾ら過去に実績があっても、俺がコンテストを語るなんておこがましいよ」
「そんな事があったのか…」
5年前の過去を知り、部屋の中はしんみりとした空気が流れて皆押し黙ってしまった。
嫉妬から不機嫌になっていたハルカも、まさかそんな事情があったとは知らず先ほどまでの自分の嫉妬をとても恥ずかしく感じていた。
「私…ソラトくんがソヨカさんのお墓に誓った約束がどんなに大切かも考えずに、酷い事言っちゃったよね…。本当にごめんなさい」
「いや、俺の方こそ悪かった。結局オヤジの情報を追うばかりで見つけられてすらいない…俺にルチアをどうこう言う資格は無いよ」
改めて5年前の事を謝罪するルチアとソラト。
お互いに向かい合いながら頭を下げること数秒…。
「…お互い様ってとこか」
「…そうだね。あの時は私達もまだ幼かったから」
顔を上げた2人は、すっきりした表情で笑いあっていた。
どうやらお互いに悪い所があったため、それぞれ今の謝罪ですっかり水に流すと決めたらしい。
それを見てハルカ達も良かったと思い部屋の重苦しかった空気は四散していった。
「ところで、ルチアはどうしてカイナに?」
「私はお仕事だよ。テレビキンセツさんの番組にゲスト出演するのと…ポケモンコンテストカイナ大会に出るために来たの!」
「カイナ大会に、ルチアさんも出るんですか!?」
どうしてルチアがカイナシティにいるのか尋ねたソラトへの返答は、先ほどの造船所でのテレビ番組への出演ともう1つ。まさかのポケモンコンテストへの出場である。
それに驚きの声を上げたのはハルカだった。
「そういえば、ハルカちゃんもカイナ大会でデビューするんだよね? 5年前の私と同じ…キラキラ☆コンテストデビューって感じだね!」
「ど、どうしよう…!? ルチアさんが参加するんじゃ私に勝ち目なんてないかも…!?」
「落ち着けよハルカ。相手が誰であろうと、全力で特訓して全力でコンテストに挑めばきっと勝てるさ!」
「そうだよお姉ちゃん! 始まる前からそんな弱気じゃ勝てるものも勝てないよ!」
「そんな事言ったって…! お願いお兄ちゃん! 私の事コーチして!」
実力的に圧倒的に上であるトップコーディネーターのルチアが相手では、カイナ大会がデビュー戦のハルカにはほとんど勝ち目が無いと考えるのは普通である。
サトシとマサトが応援するものの、軽いパニック状態のハルカはあわあわとしながらソラトに助けを求めた。
「ハルカ、話聞いてたか? 俺はコンテストのコーチなんてできないよ。それに最後にコンテストに出たのは5年前のグランドフェスティバルが最後だったし…」
「ソラト、ハルカの事応援してないのか?」
「いや、そりゃ応援はしてるが…」
「だったらお姉ちゃんに協力してあげてよ! お姉ちゃんがトップコーディネーターになるには、いつかルチアさんに勝たなきゃならないんだし!」
「まぁ…それはそうだが…」
幾らハルカの頼みと言えどもコンテストのコーチをする事を躊躇しているソラトだったが、サトシやマサトに説得されてうーんと唸りながら考える。
「ソラトくん…5年前に私が言った事を気にしてるのかな?」
「…まぁ、それもあるな」
5年前、ルチアにコンテストを片手間にしていると言われたソラトはその通りだと思った。
ジム戦もポケモンリーグもコンテストも、ソラトにとってはアラシに関わる手がかりがないか探すための手段の1つという事が多かった。
勿論バトルもコンテストも全力で挑んだ。
それでも本命がアラシの情報であるという事に変わりは無かった。
「…ソラトくんが片手間でコンテストをやってないって、私は分かってるよ」
「いや、でも俺は―」
「確かにアラシさんに関する事を色んな人から聞いていたのも知ってる。けれど、コンテストそのものには全力で、本気で打ち込んでたって事も私は知ってるから」
ソラトが自分の事を否定する前にルチアは言葉を紡ぐ。
自分の背中を押してくれたソラトがコンテストに参加してくれた時の嬉しさ。共に競い合いアピールをしたコンテストの思い出。
その思い出の中のソラトは、いつだって全力だった。
「だから…もっと自分を誇っていいんだよ」
ソラトの手を取って、真っ直ぐに瞳を見つめるルチア。
その瞳は5年前に最後に見た、涙に揺れる弱々しいものではなく…しっかりと芯の通った真っ直ぐなものだった。
「………分かった、分かったよ。それじゃ、明日からハルカのコンテストの特訓を始めるか」
「やったぁ! ありがとうお兄ちゃん!」
皆からの説得で考えを改めたソラトはようやくハルカへのコンテストのコーチを受ける事に決めた。
そしてそれに合わせてルチアも元気に手を挙げた。
「それじゃ、私も一緒にレクチャーするね!」
「ルチアさんも一緒にですか!?」
「うん! 実はこう、ハルカちゃんからはコーディネーターとしての才能をビビッと感じてるんだよね! そう、言うなれば…突然の出会い! ミラクル☆アイドルスカウトって感じかな!」
「わぁ~! ありがとうございますルチアさん! よーし、明日から頑張るわよ~!」
憧れのルチアとソラトから一緒にコンテストのコーチをしてもらえる事になったハルカはよりコンテストへの熱意を高める事になった。
しかし、そんなハルカ達の会話を外から盗み聞きする人影が3つ…。
毎度お馴染みロケット団である。
「ほー、明日コンテストの特訓ね…」
「これはチャンスニャ! 明日特訓するヤツ等の隙を突いて、まとめてポケモンゲットだニャ!」
「おぉ、そりゃいいな!」
今の会話内容から次なる作戦を思いついたニャースにコジロウも賛同する。
ムサシも大賛成である。ロケット団として悪事を働くだけではない…。
「フフフ、いいわ! ジャリガールと、あの青いアイドルの小娘のポケモンを奪ってやればコンテストに参加できない…つまりライバルを潰せるって事じゃない!」
強力なライバルが現れたら、それに対抗して腕を磨くのではなく相手の足を引っ張るのがロケット団流である。
「それじゃ早速準備にかかるニャ!」
「ソーナンス!」
こうしてロケット団は徹夜の作業で明日の作戦のための準備にかかるのであった。
翌日、ハルカ達は街から離れた人目の少ない広場までやって来ていた。
無論ポケモンコンテストの特訓のためである。
アイドルで有名人のルチアがいてはすぐ騒ぎになってしまい街中では特訓ができないためこういった場所を選んだのである。
サトシとピカチュウとマサトは少し離れた場所で座ってハルカ達を眺めており、ハルカとルチアとソラトはそれぞれモンスターボールを用意した。
「よーし、出てきてアゲハント!」
「ハァン」
ハルカが繰り出すのは勿論アゲハント。カイナ大会はアゲハントに全てを託すつもりなのである。
「お願い、チルル!」
「チル~」
「頼むぞ、レイ!」
「サナ」
ルチアはチルタリスのチルル、ソラトはサーナイトのレイを繰り出していよいよハルカへのコーチが始まる。
「さて、まずは一次審査に向けての特訓だな。審査内容は技を駆使したかっこよさ、たくましさ、かしこさ、かわいさ、うつくしさを競うものだ」
「自分のポケモンの外観や、技を把握してどんな方向性で審査員にアピールするかを決めるのが重要だよ」
「アゲハントが使える技はたいあたり、いとをはく、かぜおこし、ぎんいろのかぜだから…よーし、それじゃあまずはぎんいろのかぜよ!」
「ハァーン!」
使える技を考えてどういうアピールを行うのか頭の中でイメージし、実際にアゲハントに指示を出す。
羽から巻き起こる文字通り銀色に輝く風は単体で見ても美しく思えるがこれだけではコンテストで勝てはしない。
「続いてかぜおこし!」
「ハァン!」
そのまま通常の風を起こすと、宙を舞っていた銀色の鱗粉が風で吹き飛ばされて掻き消えてしまった。
失敗である。
「あ…うーん、失敗かも…」
「風を使ったタイプの技はコントロールが難しい。特にぎんいろのかぜとかぜおこしの組み合わせは難易度が高いだろうな」
「そうだね。今は別の組み合わせを考えた方がいいと思うよ! 一次審査に限っては小道具の使用も許可されているし!」
「そっか…それならコレね!」
今の失敗とアドバイスを踏まえて別のアピールに切り替える事にしたハルカは荷物の中から小さなフリスビーを取り出した。
「それっ! アゲハント、かぜおこし!」
「ハァン!」
フリスビーを投げて再びかぜおこしを指示し、巻き起こす風でフリスビーがその場で回転しながら滞空する。
数秒ほど滞空したフリスビーだったが、風が僅かに乱れてしまい落下してしまった。
「惜しい! でも良い調子よアゲハント!」
「ハハァーン」
確かに結果こそ失敗したもののフリスビーの滞空自体はできていた。練習を重ねればそう遠くない内にマスターできるだろう。
ハルカも実際にやってみてそれを確信しているのかニコニコ笑顔で地面に落ちたフリスビーを手に取った。
「この調子で技を磨けば、結構良いセンいけるかも!」
「確かに技を磨くのは大事だけれど…ハルカちゃんにもポケモンコンテストで1番大切な事を教えておくわね」
「1番大切な事?」
「大切なのは技を魅せるだけじゃない。1番アピールしなきゃいけないのはポケモンだって事だ」
「そう、例えば…チルル、コットンガード!」
ルチアとソラトのアドバイスを受けるものの、あまりピンと来なかったハルカは首を傾げる。
そんなハルカのために手本を見せようとルチアがチルルへ指示を出すと、チルルは翼の綿をフワフワと大きくして羽ばたいた。
「チルーッ!」
そして一際大きく翼を羽ばたかせると綿でできた羽の塊が幾つか宙へ浮く。
「そこでみだれづき!」
「チルチルチル!」
フワフワと浮かぶコットンガードによる綿をみだれづきで貫いて弾けさせると幻想的な細かい綿のシャワーを浴びるようにしてチルル自身が輝いていた。
これにはハルカだけではなく離れて見ていたサトシとピカチュウとマサトも目を奪われる。
「レイ、ドレインキッス!」
「サナ! サーナッ!」
続いてソラトもレイへ指示を出すと、レイは投げキッスをする仕草で空中へと大きなハートを撃ち出した。
「からのサイコキネシス!」
「サーナーッ!」
そしてそのハートへとサイコキネシスをかけ、ギュギュギュッとハートを圧縮していく。
圧縮されていくハートはどんどん小さくなっていく。
「フィニッシュ!」
ソラトの合図と共にサイコキネシスを解除したレイ。
サイコエネルギーによる圧縮を解除されたハートは風船が割れるように弾けると、小さなハートへ分裂してハートの雨を降らせた。
その中心にいるレイはとても可愛らしくアピールできたと言って良いだろう。
「凄い…! お兄ちゃんもルチアさんも、技だけじゃなくてポケモンが輝いてる…!」
「審査員がよく見るポイントだよ。技の綺麗さやかっこよさも採点内容だけれど、ポケモンがより輝ければ一次審査の突破の可能性はグッと高くなるよ!」
「初心者は技のアピールばかりに拘る節があるからな。一次審査突破の鍵はそこだ」
「よーし、なら私もアゲハントが輝けるようにアピールしなくっちゃ!」
こうしてソラトとルチアのコーチを受けながらハルカはコンテストへの練習をアゲハントと共に進めていった。
そして気がつけば数時間も練習をしてしまっていた。
「はぁ…はぁ…ちょっと、いや大分疲れてきちゃったかも…」
「ハァ~ン…」
流石に数時間も練習してしまっていては体の方が持たず、ハルカもアゲハントも地面にへたり込んでしまった。
「それじゃ休憩にするか」
「そうだね! そろそろお昼ご飯の時間だし! カイナシティのレストランに何か食べに行く?」
「「「さんせーい!」」」
そろそろお昼時でもあるため、皆でカイナシティで何かを食べに行くというルチアの提案にサトシ達も大賛成である。
サトシもマサトも見ているだけとは言えお腹は減るものだ。
「ピカピカ! ピッ!?」
一緒にいたピカチュウもご飯に大喜びだが、そんなピカチュウを狙ってマジックハンドのようなアームが伸びで来るとガッチリとピカチュウを捕らえてしまった。
「なっ!? ピカチュウ!」
「こ、これはいったい…!」
「こ、これはいったい…! と聞かれたら」
「答えてあげるが世の情け」
「世界の破壊を防ぐため」
「世界の平和を守るため」
「愛と真実の悪を貫く!」
「ラブリーチャーミーな敵役!」
「ムサシ!」
「コジロウ!」
「銀河を駆けるロケット団の2人には」
「ホワイトホール白い明日が待ってるぜ!」
「なーんてニャ!」
「ソーナンス!」
ピカチュウを捕まえたアームの元を見れば、そこには巨大なロボットに乗り込みながら口上を決めるロケット団が居た。
ロボットは下半身が戦車のようなキャタピラになっており、上半身は人を模しており、右腕の先を伸ばしてピカチュウを捕らえたのだ。
「ロケット団! またお前らか!」
「ロケット団…?」
「人のポケモンを奪おうとする、悪い奴らなんです!」
ホウエン地方では馴染みの薄いロケット団の名前を聞いて疑問符を浮かべるルチアにサトシが説明をする。
人のポケモンを奪う、というワードにルチアも表情を厳しくする。
「おおっ! 相変わらずイカすメカデザイン!」
「はいはい、そういうのは後回しにしてねー」
「い゛っ!? あだだだだ!? ちょ、マサト! タイムタイム!」
と、そんな周囲の雰囲気とは関係なく相変わらずソラトはロケット団のお手製メカを見て目を輝かせていた。
しかしながらいつも通りマサトに耳を引っ張られて退場する事になるのだが…。
「ピカチュウ確保でイイカンジー!」
「そうはいくか! ピカチュウ、10万ボルトだ!」
「ピカ! ピーカーチュゥウウウウウウッ! ピカッ!?」
10万ボルトを放って抵抗しようとするピカチュウだったが、電撃はロボットに吸収されるように掻き消えてしまった。
どうやら今回もちゃんと電撃対策してきたらしい。
「オホホホーッ! このメカは電気を吸収できるステキ設計なのよ!」
「どうせ今回も電撃以外の対策はしてないだろ? ルチア、ピカチュウを助けるぞ!」
「うん! チルル、りゅうのいぶき!」
「レイ、サイコキネシス!」
「チルーッ!」
「サーナーッ!」
「と、そうは問屋が卸さないのニャ!」
いつもの如くピカチュウの電撃以外の想定対策はしていのだろうとソラトがルチアと共に攻撃の姿勢に入るが、それを見越していたニャースは操作盤のボタンをポチッと押した。
するとメカはピカチュウを捕まえているのとは反対、左手のアームが引っ込むとそこからバシュッと網を発射した。
「サナッ!?」
「チルチルルーッ!?」
不意を突かれたレイとチルルは網を避けることができずに捕らえられてしまう。
「ニャハハハハハ! サーナイトとチルタリスゲットだニャ!」
「「やったーやったー!」」
「ソーナンス!」
驚異であったレイとチルルを捕まえる事に成功たロケット団は手放しで喜んでいた。
だがタダで捕まっているほどレイもチルルも甘くない。
「そんな網、レイのサイコパワーなら簡単に脱出できるっての! レイ、サイコキネシス!」
「チルルだって黙って捕まってなんかいないんだから! みだれづきだよ!」
「そうはさせないのニャ!」
網に捕らえられながらも脱出するために技を繰り出そうとするレイとチルルだったが、ニャースはそれも想定内とばかりに操作盤のもう1つのボタンを押した。
バチバチバチッとレイとチルルを捕らえる網に電流が流れ、レイとチルルを苦しめる。
「サナーッ!?」
「チールーッ!?」
「レイ!」
「チルル!」
「どうニャ! ピカチュウから受けるであろう電撃を吸収し、それを放って別のポケモンを抑えるこのシステム!」
「考案は俺、作成はニャースが担当したんだぜ!」
どうやら今回は単に電撃を吸収するだけではなくその電撃で得たエネルギーまで利用しているらしい。ロケット団にしてはよく考えられている。
網への電撃が収まるとレイもチルルもぐったりとしてしまっている。
「なーっはっはっは! 今回は俺達の完全勝利だぜ!」
「そうはいかないわよ! アゲハント、たいあたり!」
「ハンッ!」
まだ捕まっていなかったアゲハントが皆を助けようとメカに向けてたいあたりを繰り出す。
だが疲れのせいかキレがなく、頑丈なメカに対してはあまり効果的にダメージを与えられていないように見えた。
「そんな攻撃、このメカには通じないわよ! ほらニャース、アゲハントも捕まえちゃって!」
「って、そうは言うけど手が足りないニャ」
右手のアームではピカチュウを捕まえており、左手の網ではレイとチルルを捕まえている。
アゲハントを捕まえるには3本目の腕が必要になるがこのメカにはそこまでの機能は無かった。
「ったく! なら一時撤退よ! 今捕まえてる3匹をどっかに置いてきてもっかい奪いに来るわ!」
「ラジャ!」
ムサシの指示を受けたニャースはメカのキャタピラを反転させるとサトシ達に背を向けて逃げ出そうとする。
「ああっ! 逃げられる!」
「ど、どうしたら…!」
「お姉ちゃん! アゲハントのいとをはくで止められないかな!?」
「そ、そっか! アゲハント、いとをはくよ!」
「ハァーン!」
アゲハントは口から糸を吐いてメカの右腕を巻き取り糸の反対側を地面へと固定する。
狙い通りメカのキャタピラは地面を削るだけで進めなくなっていた。
「おいニャース、どうなってんだ!」
「ぐぬぬ、むしポケモンの糸は厄介ニャ! こうなったパワーを右腕に集中して脱出ニャ!」
メカの余剰出力を右腕に集中してパワーを上げるとミキミキと音を立ててアゲハントの放った糸が千切られていく。
このままでは数秒も持たずに逃げられてしまうだろう。
「ど、どうしよう…! ただのいとをはくじゃ逃げられちゃう…!?」
打開策が思いつかずにおろおろとするハルカ。
逃げようとするロケット団を追撃しようとソラトとサトシは別のポケモンを出すためにモンスターボールに手を伸ばすが恐らく間に合わない。
どうすればピカチュウ達を助けられるか、必死に思考するハルカはある事を思いついた。
「…パワーを集中しなきゃ糸が切れない。なら、全体に糸を巻きつければ…! アゲハント、いとをはく!」
「ハァ~ン!」
アゲハントは空中へ向けて糸を吐いた。糸は日の光を浴びてキラキラと輝きながらフワリと宙を舞う。
「かぜおこしよ!」
「ハァーン!」
ハルカは空中の糸に向かってかぜおこしを繰り出すように指示をすると、空中で風を浴びた糸はバラバラと解れて広範囲に広がると、ロケット団のメカの全体に絡みついた。
広範囲に広がった糸はより細かく光を反射して美しく輝いた。
「ニャニャッ!? メカが雁字搦めになってしまったニャ!?」
「何してんのよニャース! もっとパワー上げなさい!」
「そうだそうだ! あともうちょっとなんだぞ!」
「それニャら、オーバーフローで最大パワー発動ニャー!」
メカの残るパワーを全体に発動させて糸を千切ろうとするニャースだが、幾重にも重なり合い絡み合った糸は全く切れず、寧ろメカの方が悲鳴をあげていた。
ミキミキ…メキメキと金属が軋む音が響き、それでもパワーを上げて力ずくで糸を切ろうとした結果…結局メカの強度が足りずにバキバキバキンッ!と音を立ててメカがバラバラになってしまった!
「ニャニャーッ!?」
「「わぁああああああっ!?」」
「ソーナンス!?」
操縦席もバラバラになってしまい地面に落ちるロケット団。
そしてメカがバラけてしまった事でピカチュウ、レイ、チルルは即座に脱出してそれぞれのトレーナーの元へと戻った。
「ピカチュウ、無事か!?」
「チャァ~!」
「レイ、大丈夫か?」
「サーナ」
「チルル、良かった…!」
「チル~」
「ありがとなハルカ!」
「まさかいとをはくをああして使うとは…イカしてたぜ」
「光り輝いてた糸も綺麗だったし、あれならきっとコンテストでも通用するよ!」
「え、えへへ…そ、そうかな?」
それぞれ戻ってきたポケモンの無事を確認すると、ハルカにお礼を言う。
今のハルカの気転が無ければ逃げられていたかもしれない。
まさかいとをはくで動きを封じるだけでなくメカそのものを破壊してしまえるとは、思いついたハルカですら思わなかった予想以上の展開である。
「ぐぬぬ~! 絶対ピカチュウ達を逃がすんじゃないわよ!」
「おう! こうなったら直接あいつ等を纏めてゲットしてやるぜ!」
「一斉にかかるニャ!」
メカを破壊されてしまい半ばヤケになるロケット団だったが、サトシ達が一斉にロケット団を睨みつけるように向き直ると思わず怯んでしまい体を硬くする。
「な、何よ…!?」
「あ…これは嫌な予感…」
「多分…同時攻撃来るニャ…!」
「ソ~ナンス!」
そう、ニャースの予想通り。
サトシ達はそれぞれのパートナーにお礼だと言わんばかりに指示を出した。
「ピカチュウ、10万ボルト!」
「ピーカーチュゥウウウウウウッ!」
「アゲハント、ぎんいろのかぜ!」
「ハァアアアンッ!」
「レイ、ハイパーボイス!」
「サァアアアナァアアアアアアアアッ!」
「チルル、りゅうのいぶき!」
「チィイイルッ!」
「「「ひぃいいいいいいいいいいいっ!?」」」
電撃が、輝く風が、強烈な音波が、竜のエネルギーが。
放たれたそれぞれの技が合体すると1つの強烈なエネルギー波となりロケット団い襲い掛かった。
勿論そんな強烈な一撃を受けて無事に済む訳も無い。
ドカーン!と地を震わす衝撃が辺りを揺らすと共に、ロケット団はぐんぐん青い空に向けて吹き飛んでいく。
「「「ヤなカンジーッ!」」」
「ソーナンス!」
こうして変わらずロケット団は今日も星になっていくのであった。
「やったわね! アゲハント、頑張ってくれてありがとう!」
「ハン」
今回のMVPであろうアゲハントを労わるハルカは、先ほどのいとをはくからのかぜおこしのコンビネーションを思い出していた。
光を細かく、広範囲に反射するあの技ならコンテストで使えるだろうと。
「今回はハルカと、アゲハントに助けられたな」
「本当にありがとうね、ハルカちゃん!」
「えへへ…!」
憧れで在り続けるソラトとルチアを助ける事ができて、ハルカもとても嬉しそうにしていた。
しかしそこへ場違いな、クゥ~とお腹の鳴る音が響く。
「あ…」
音を出してしまったのはハルカである。思わぬお腹の主張にハルカは顔を赤くした。
だが無理も無い。何時間もコンテストへ向けて練習して、これからお昼にしようと思っていた所に今の全力バトルだったのだ。
「「…あははははっ!」」
「も、もうサトシ! マサト! 笑わないでよっ!」
「くく…! いや、それじゃ一段落したし、メシ食いに行くか」
「ウフフ! そうだね!」
あまりに可愛らしいハルカのお腹の主張に、皆で笑いあいながらも、今度こそ食事のためにサトシ達はカイナシティの街へと足を進める事にしたのだった。
ソラトとルチアの過去を知り、頼もしいコンテストのコーチを得たハルカ。
ポケモンコンテストカイナ大会まで…特訓あるのみである!
to be continued...
という訳でコンテストへ向けてハルカの練習が開始されました。
ご感想や評価…活動報告へのリクエストなどお待ちしております。
話は変わりますがソードシールドにおいてメガZが廃止されるそうですね。Zワザはサンムーンを買ってないので馴染みが薄くあまり実感無いのですがメガシンカが無くなるのは寂しいですね。
と言うかアニポケ好き勢としてはああいう覚醒パワーアップや取って置きの切り札みたいな要素は燃えるからあって欲しかったんですよね。
ダイマックスに期待です。
次回はようやくリクエストを反映できるお話になります。
ご期待下さい。