因みにヘイガニじゃありません。
でも後日ヘイガニもちゃんとゲットしますのでご安心を。
あと活動報告に劇場版編の事を書いておきました。
気が向いたら読んでみて下さい。
ムロ島でのポケモン修行を本格的に開始することにしたサトシ達。
島の外れにあるビーチの近くにある広場でキャンプをしていたサトシ達は、日が昇った頃に目を覚まして朝食を食べていた。
ゆっくりと自分たちのペースで食べていくソラト、ハルカ、マサトに対してサトシはガツガツと一気に食べておりあっという間に食べきってしまう。
「モグモグ…よしっ、ごちそうさま! ソラト、早速ソラトの修行法を教えてくれ!」
「ピッカ!」
「んあ、まだ食ってるんだが…むぐむぐ」
サトシとピカチュウは一気に食べてもう修行の準備に入っているが、修行を看るはずの肝心のソラトはまだ朝食を食べている途中である。
だがサトシはもう待ちきれないといったキラキラした表情でソラトを見つめていた。
「…分かった分かった、だからその視線やめてくれ」
「やった! サンキューソラト!」
「いいのお兄ちゃん?」
「後で食うから大丈夫だよ。それじゃお前ら、出て来い!」
ソラトは4つのモンスターボールを用意すると空高く放り投げると、それぞれのボールからはスイゲツ、レイ、クロガネ、ヒョウカが現れる。
「4体もポケモンを使うのソラト?」
「ああ、特殊で危ない修行法だからな。今日はレイとやるか、スイゲツ、クロガネ、ヒョウカは位置についてくれ」
「サナ!」
そう言うとソラトはレイと共に位置につく。
それに向かい合うようにスイゲツとクロガネが構えを取り、ヒョウカは海へと入り海面に浮かぶ。
「よし、それじゃ始めるぞ! レイ、めいそうだ!」
「サーナー…」
「ラグッ!」
「ゴドォ!」
開始の合図と共にレイはソラトの指示に従いめいそうを初めて能力を高める。
そして向かい合っていたスイゲツ達も行動を開始する。
スイゲツはグロウパンチを繰り出し、クロガネはがんせきふうじで岩を生み出して発射する。
「えっ!? スイゲツ達とバトルするのか!? それも3対1で!?」
「スイゲツ達も指示を出してないのに自分で技を出すの!?」
驚くサトシとマサトを他所にソラトの修行は進んでいく。
グロウパンチを繰り出したスイゲツはレイに肉薄すると闘気を纏った拳を振り上げ、更に周囲にはクロガネの放ったがんせきふうじが落ちようとしている。
このままでいればグロウパンチを受けてしまい、避けようとしてもがんせきふうじを受けてしまう。
「レイ、サイコキネシス!」
「サーナッ」
レイはサイコキネシスを発動して周囲のがんせきふうじをキャッチすると、それを自分の前方に集めて岩の壁を作り出す。
グロウパンチは岩の壁にぶつかり止まる。
サイコキネシスでグロウパンチとがんせきふうじの2つの技を同時に防いだレイは、逆に攻撃の体勢に入る。
「レイ、そのまま岩を撃ち出せ!」
「サーナー!」
「ラグッ!」
「ゴド!」
「クゥー。クゥウー!」
サイコパワーで岩を弾き返したレイだがスイゲツはまもるで、クロガネはてっぺきを使い防御し、ヒョウカは海に潜って回避する。
潜ったヒョウカはすぐさま浮上すると氷を生み出して凄まじい速度でそれを発射した。
「レイ、めいそう!」
「サーナ…サナッ!?」
ヒョウカの撃ち出したこおりのつぶてはでんこうせっか等と同じように相手の先手を取ることができる技であり、回避が困難であると判断したソラトはめいそうで特殊防御力を上げて防御の姿勢に入りこおりのつぶてを受け止めた。
「ラグァ!」
「グォオオオ!」
その隙を突いてスイゲツはたきのぼり、クロガネはアイアンテールを発動してレイとの距離を詰める。
「後ろに跳んでかわせ!」
「サナ!」
バックステップで大きく後ろに下がったレイは回避に成功し、さきほどまでレイがいた場所にたきのぼりとアイアンテールが叩き付けられる。
「スイゲツ達の足元にサイコキネシス!」
「サーナー!」
「ラグッ!?」
「ゴォドッ!?」
「おおっ、上手い!」
「凄い、お兄ちゃんってばさっきから3対1でも全然怯んでないわ!」
サイコキネシスでスイゲツ達が着地した場所の土を崩すと、地面に穴が開いてしまいそこへスイゲツとクロガネが落ちてしまう。
体重が重い2体は穴に落ちてしまうとうまく身動きが取れなくなっていた。
「クゥー!」
そんなスイゲツ達をカバーすべく海にいたヒョウカは水のパワーを引き出して大きな波を起こしてその波に乗る。
「なみのりだ!」
「なみのりは周囲の味方にも攻撃しちゃう技だよ!? このままだとスイゲツとクロガネまで―」
「ラグ!」
ヒョウカがなみのりを発動するとマサトがスイゲツ達を心配するが、スイゲツがすぐさままもるを発動して自分とクロガネをバリアで守った。
「おおっ、こっちも上手い連携だ!」
「ハイパーボイスで波に穴を開けろ!」
「サァーナァアアアッ!」
それに対抗するレイはハイパーボイスで大きな音の振動を起こすとなみのりの波の中心に大穴を開けてこれを凌いだ。
だがその波に空いた大穴からたきのぼりを使いスイゲツがレイに接近する!
「ラグラ!」
「何っ!?」
「サッ!? サナッ!?」
これは完全に予想外でソラトとレイをもってしても避けることはできず、レイは大きく吹き飛ばされて地面を転がった。
そしてここぞとばかりにクロガネのがんせきふうじとヒョウカのこおりのつぶてが放たれる。
「レイ、地面を転がって避けるんだ!」
「サナッ」
「ラグ、ラッ!」
地面をゴロゴロと転がり、どうにか追撃を避けるレイ。
隙を見て立ち上がり、同時にスイゲツのマッドショットが放たれる。
「ハイパーボイス!」
「サァーナァアアアアアッ!」
ハイパーボイスとマッドショットがぶつかり合い、互いに相殺されて再び睨み合う。
だが流石に1体でずっと相手をしていたレイは息が切れておりあちこちに傷を負っていた。
「サナッ…サナッ…」
「…そこまでだ。今日はここまでにしておこう。お疲れ様、戻れスイゲツ、クロガネ、ヒョウカ」
「サナ…」
どうやら修行に区切りをつけたようで、全員緊張を解く。
疲れたのかレイはその場に座り込んでしまい、ソラトはスイゲツとクロガネとヒョウカをボールに戻すとレイの横に腰を降ろした。
「お疲れさんレイ。オボンの実を食べて体力を回復させるんだ」
「サナ、サナサナ♪」
疲れているレイを見て、ソラトはリュックから体力を回復させる木の実であるオボンの実を取り出してレイに手渡した。
オボンの実を受け取ったレイは嬉しそうに実を齧って体力を回復させた。
「今のがお兄ちゃん流の修行法ってことなの?」
「ああ。3対2形式でバトルしてポケモンは不利な状態でも活路を見出し、限界に挑み続けて能力を高めるんだ」
「3対2? 3対1でしょ?」
「いや、俺がついてるから3対2さ。そして相手の方が手数が多い状態でトレーナーも状況の把握や思考の瞬発力を高める訓練になるのさ」
ソラト流の修行方法とは自分の手持ちポケモンで3対1の状態を作り、1体の方へソラトは指示を出して不利な状態からあえて抗う事でトレーナーとポケモンの能力を高めるという手法らしい。
確かにポケモンは常に全力を要求され、トレーナーも必死に思考するため能力は磨かれるだろう。
「やっぱ自分を追い込んでるのか」
「端的に言うとそういうことになるな。その上で活路を見出す、格上との戦いを想定した訓練方法だな。まぁ自分より強い人と戦った方がいい経験になるからな」
「よーし、なら俺もトウキさんとのバトルを想定しつつ、今の修行法をやってみるぜ!」
サトシも今のソラト流の修行法を早速試してみようと燃えているが、この修行を行うに当たっての問題点があるのに気づいていなかった。
が、サトシ以外は気がついていたようで即指摘される。
「でもサトシは今3体しか持ってないよね?」
「お兄ちゃんの修行法ならポケモンが4体要ると思うかも」
「あ…そういやそうか…。でもそれなら新しい仲間をゲットしに行けばいいんだよ! 昨日行った石の洞窟に行けば沢山ポケモンがいる筈だ!」
「ピカピカチュウ!」
この修行にはポケモンが後1体必要ならば、新たにポケモンをゲットすればいいだけの事である。
昨日行った石の洞窟にいるポケモンに目をつけたサトシは、善は急げとばかりにリュックを背負って石の洞窟の方へと駆け出した。
「ちょっとサトシ!」
「ま、待ってよー!」
「お、おい! 俺は朝飯もまだ食べきってないんだぞ!? 待てよ!?」
「サナ? サーナ」
さっさと石の洞窟へ向かって走っていくサトシを慌てて追いかけるハルカとマサトだが、ソラトは朝食が途中だったにも関わらず修行法を見せていた。
そのため満腹には程遠いが仲間外れになるのが嫌だったのか、はたまた年長者として皆を放っておく事に抵抗があったのか律儀に皆の後を追いかけるのであった。
所変わって石の洞窟では様々なポケモンが活動していた。
あざむきポケモンのクチートも、この石の洞窟に生息しているポケモンの一種である。
今日は食料となる物を求めて石の洞窟を練り歩いていた。
「クート、クート。クー?」
この石の洞窟を支配しているボスゴドラの巡回ルートを外れているので安全な場所の筈なのだが、クチートは何か妙な音を感じ取る。
ガガガガという何かを削り取るような、抉っているようなそんな音。
普通ならばこんな自然溢れる洞窟では聞こえる筈の無い音に、クチートは警戒レベルを引き上げる。
「…クート」
自分の住処の近くで何か異常事態は発生しているのならば見過ごせない。
クチートは少し怖かったが勇気を振り絞り嫌な感覚がする方向へと足を進めた。
そしてこの後、クチートの嫌な予感は的中してしまう事となってしまうのである。
一方で石の洞窟へとやって来たサトシ達。
意気揚々と洞窟の一本道を歩いていくサトシとピカチュウ、その少し後をキョロキョロしながらついていくハルカとマサト。
そしてお腹がグ~と鳴りつつ若干項垂れ気味に最後尾を歩くソラトで石の洞窟のポケモンを探していた。
「いい奴で、かくとうポケモンに強いポケモンなら文句無いんだけどな」
「ひこうタイプ、エスパータイプ、フェアリータイプが候補だね。でも石の洞窟にそういうタイプのポケモンっているのかな?」
確かに洞窟のような場所はいわタイプ、じめんタイプ、はがねタイプ等のポケモンが一般的でありかくとうタイプに有効なタイプのポケモンはあまり見られない。
「そんな事はないぞ。ズバットみたいなポケモンもいるし、複合タイプなら条件にあったポケモンが十分いる筈だ…ハァ、腹減った…」
サトシの狙うポケモンについて説明をするソラトだが、思いのほか朝食が中途半端になってしまったのが効いているらしい。
珍しく弱弱しくお腹を押さえて空腹をアピールしていた。
「大丈夫お兄ちゃん? チョコのお菓子持ってるけど食べる?」
「お、ありがとな。それじゃ頂きま―」
「クート!!」
「どわっ!?」
ハルカに貰ったチョコバーのお菓子の袋を開けていざ口に放り込もうとしたその時、洞窟の奥から先ほどのクチートが大慌てで走ってきてソラトの足元を通る。
そのせいでソラトの足にぶつかってしまい、その衝撃でソラトは持っていたチョコバーを落としてしまった。
チョコバーには小石やら砂利やらが沢山付着してしまい、もう食べられる物ではなかった。
思いがけずお預けをくらう事になってしまったソラトは先ほどよりも深く項垂れてしまい、何時に無く落ち込んでいた。
「あぁ…食べれると思ったのに…寸前でこうなると余計に力抜ける…」
「が、頑張ってお兄ちゃん! 早くポケモンゲットしてご飯にしましょう!」
落ち込んでいるソラトとそれを励ましているハルカを他所にサトシとマサトは今すれ違ったクチートに目が行ってしまっている。
「今のポケモンは…」
「クチートだよ!」
『クチート あざむきポケモン
鋼の角が変形した大きな顎を持つ。大人しそうな顔に油断していると突然振り向きガブリと噛みつかれてしまう。』
図鑑でクチートの事を検索するとクチートの情報が表示される。
タイプの覧を見れば、それはサトシが今求めていた条件そのものだった。
「お! クチートははがね/フェアリータイプなんだな!」
「それなら十分トウキさんのかくとうタイプのポケモンに対抗できる筈だよ!」
「よーし、そうと決まればゲットだぜ!」
ゲットするポケモンをクチートに絞ったのか、サトシとマサトは走り去っていったクチートの後を追うために来た道を戻るように駆け出した。
「あっ、お兄ちゃん私たちも行かないと!」
「…分かってる、行くとするか」
それを更に追いかけるようにしてハルカは落ち込むソラトを励ましつつその後を追いかけた。
しかしソラトは食べるものが無くてあそこまで落ち込むとは余程お腹が減っているのか、思っていたよりも食いしん坊なのか…。
先ほどソラトがいた場所に小さな湿りがあるような気がするが泣いていない。
泣いてないったら泣いてないのだ。
「クート…」
先ほどソラトにぶつかったクチートが走り去っていった先は行き止まりになっており、クチートは立ち止まる事になってしまっていた。
その為サトシとマサトはすぐに追いつくことができ、かつ退路を断つ形になっていた。
「見つけた! 行き止まりになってるよ!」
「よーし、早速バトルだぜ! 行けピカチュウ!」
「ピカッ!」
「ク、クート…」
選ばれたピカチュウはサトシの肩から飛び降りると、クチートと向き合い電気袋からビリビリと発電をする。
それに対してクチートは怯えているような、戸惑っているような表情を見せており、バトルをする意思は出してはいなかった。
「…どうしたんだろう、何だか様子が変だよ」
「ああ…なんだかバトルするって感じじゃないな」
「ピィカ…」
マサトもサトシもクチートの様子がおかしいのに気がつき、やる気に満ちた気配を四散させる。
「追いついた! どうサトシ、ゲットできた?」
「ん? どうした、バトルしてないのか?」
そこへ後から追いかけてきたハルカとソラトがやって来る。
既にバトルを始めているものだと思っていたようだが、サトシがまだバトルをしていない事に気がつき不思議そうな表情をする。
「あ、ソラト! ちょうどいいや。あのクチートがどんな様子かって分かるか?」
「波動で感情を読み取れって事か。お安い御用だ」
ソラトが波動を感じることでポケモンの感情を把握できる事を思い出したサトシはソラトにクチートの様子を見て貰おうと考える。
ソラトは快諾すると瞳を閉じてクチートから発せられる波動を感じ取る。
「…何だか怯えているな。不安と焦燥、それから悲しみを感じる」
「そんなに怯えてるんだ。何があったんだろう」
「悪いが波動を感じるだけじゃそこまではな…」
「ク、クート…!」
クチートは未だに怯えた様子でサトシ達を見つめている。
だがこんなに怯えているポケモンを捕まえるなどサトシからしてみれば言語道断である。
サトシはピカチュウと共にゆっくりと歩きながらクチートに歩み寄る。
「ク、クート!」
クチートはサトシに乱暴をされると思ったのか顔を背けて目を瞑る。
だがサトシは膝を着いて姿勢を低くすると優しくクチートに語りかけた。
「クチート、俺たちは何もしないよ。何か困ってる事があるなら力になりたいんだ」
「ピカ、ピカピカチュウ」
「クート? クー……クート!」
クチートは最初はまだ少し警戒している様子で、少し悩んだ素振りを見せたがサトシ達が何もしないのを見て少し信用したのか自分が着て道を指差した。
「お前が来た方の道に何かあるのか?」
「クート! クークー!」
「あっ、クチートが行っちゃうよ!」
「追いかけよう!」
クチートはこっちに来て!と言う様にして道を走って戻って行ってしまうのを見て、サトシ達も慌てて追いかけたのであった。
一方此方も石の洞窟内部にて。
ウィーンガシャン、ウィーンガシャンと耳障りな機械音を立てて2本のアームが動き先端にあるスコップやツルハシによって石を砕き、穴を掘って周囲の壁を削っていく。
大きな工業機械のような黄色いメカは元々あった少し広い広場を更に広くしていた。
そのメカには、正面に大きなRのマークがついていた。
勿論ロケット団お手製の穴掘りメカである。
「どうニャース? 進行状況は」
「順調ニャ。このままロケット団ホウエン支部の秘密基地をさっさと作ってしまうニャ!」
「しかし、このメカ作るのにまた借金嵩んじゃったな…」
いつものムサシ、コジロウ、ニャースのロケット団の3人組は穴掘りメカを使い秘密基地用の穴を掘り進めているらしい。
「秘密基地作っちゃえばチャラよチャラ!」
「でもこんなにガシャガシャうるさくやってたらまたあのボスゴドラや他のポケモンを刺激しちゃうんじゃないか?」
「もう! 心配性ねアンタは。そこらへんもちゃんと対策してあるんでしょニャース?」
「勿論ニャ! このメカはバッチリ頑丈にできてるからその辺のポケモンも蹴散らせるニャ!」
「そっか! さっきもクチートだったか…あのポケモンを追い返したもんな」
どうやら先ほどサトシ達とであったクチートはこのメカの作業音に刺激されてメカに近づいたようだが、追い返されてしまったらしい。
こうもガシャガシャうるさく、住処の近くを荒らされては周囲の野生のポケモンも黙ってはいれないだろう。
「クート!」
噂をすれば何とやら。
先ほど追い払われたというクチートが広場に入ってきてメカの前に立ち塞がる。
「ニャ!? アレはさっきのクチートだニャ!」
「何、邪魔する気なの? ニャース、ちゃっちゃと追い払っちゃって!」
「ハイニャ!」
「クッ!?」
ニャースはメカのレバーやボタンを操作するとスコップの着いているアームを振り上げ、クチートを攻撃しようとする。
クチートは咄嗟の事で避ける事もできずに頭を抱えてその場にしゃがみこんでしまう。
「ピカチュウ、アイアンテールだ!」
「ピカ~、ピカピッカ!」
だがスコップが振り下ろされる直前にピカチュウのアイアンテールで横払いされ、スコップの着いたアームは間接部分の半ばから折られてしまう。
「クチート、大丈夫か!?」
「ピッカ!」
「クート!」
クチートを助けたのはサトシとピカチュウであり、すぐさま広場へ入ってくる。
それに続いてマサト、ハルカ、ソラトも広場へと駆け込んでくる。
「う、うぉおおお! 何だあのイカしたマシンはぁああああ!?」
「何だあのイカしたマシンはぁああああ!? と聞かれたら」
「答えてあげるが世の情け」
「世界の破壊を防ぐため」
「世界の平和を守るため」
「愛と真実の悪を貫く!」
「ラブリーチャーミーな敵役!」
「ムサシ!」
「コジロウ!」
「銀河を駆けるロケット団の2人には」
「ホワイトホール白い明日が待ってるぜ!」
「なーんてニャ!」
「ソーナンス!」
通常運転のソラトと、通常運転で口上で名乗り上げるロケット団であった。
「ロケット団! 何やってるんだ!?」
「何って、ロケット団のホウエン支部を作ってるんだよ! 邪魔するな!」
「こんな所に作ったら周りのポケモンが迷惑かも!」
「もしかしてクチートもロケット団に刺激されて住処を追い出されたりしたのかも!」
「使い方はイカしてねぇな」
「うるさいわね! ニャース、やっちゃいなさい!」
「とニャ!」
律儀に目的を教えるコジロウにサトシ達が大声で反論するがそんな事で、ハイ分かりました他所に作ります、とは言わないのがロケット団である。
ニャースは再びボタンを押してメカのアームを操作する。
先ほど折れたアームも半ばからスペアが現れて再び元の長さに戻る。
「頼んだぞピカチュウ! 10万ボルトだ!」
「ピーカーチュウウウウ!」
ピカチュウの10万ボルトの電撃が奔りメカに直撃するが、メカはすぐに電撃を弾いてしまう。
「ピカ!?」
「何っ!?」
「今回も電撃対策は万全なのニャ! 今度はこっちから行くニャ!」
「「「わぁああああああっ!?」」」
「っと! キノコ、バトルの時間だ!」
「ガッサ!」
メカのアームが振り上げられ、スコップとツルハシが振り下ろされる。
当たればひとたまりも無いだろうが、大雑把な動きだったためサトシ達は間一髪でその場から飛び退いてこれを避けた。
そしてソラトは避けると同時にモンスターボールを投げてキノガッサのキノコを繰り出した。
「キノコ、マッハパンチ!」
「ガーッサ!」
キノコのマッハパンチがメカの正面に直撃するが、メカには目立った傷はなく効果は無かったようだ。
「私だって! お願いケムッソ、たいあたりよ!」
「ケムケム。ケムー!」
ハルカもケムッソを繰り出してバトルの姿勢に入り、すぐにたいあたりを指示する。
ケムッソのたいあたりもメカにヒットするが、やはり効果はなくケムッソの方が弾き返されてしまった。
「ケムー!?」
「ああっ、ケムッソ!」
「ニャハハ! そんなヘナチョコ攻撃効かニャいニャ!」
「下がれピカチュウ!」
「キノコ、バックステップだ!」
「きゃああっ!? 危なぁい!?」
「ク? クーッ!?」
再びニャースはメカのアームを振り回してサトシ達を攻撃する。
サトシとピカチュウ、ソラトとキノコは軽い身のこなしで攻撃を掻い潜り後ろに下がり、ハルカも弾き返されたケムッソを抱きかかえて慌てて後ろに下がった。
だが、クチートは誰の指示を受けた訳でもなく、アームのなぎ払いを受けてしまい吹き飛ばされてしまう。
「クチート! 大丈夫か!?」
「ク、クー!」
サトシが吹き飛ばされてしまったクチートに駆け寄ると、多少のダメージは受けているようだがまだ大丈夫そうである。
「ニャハハハハ! これはこの洞窟の主であるボスゴドラをバトル相手に想定してるのニャ! ピカチュウの電撃は勿論、細々とした攻撃は効かニャいニャ!」
「…ふむ、だったら! クロガネ、バトルの時間だ!」
「ゴォオオオド!」
対ボスゴドラを想定しているというニャースの言葉を聞いてソラトは続けてクロガネも繰り出した。
野生のボスゴドラではなくソラトが育てたクロガネならば通常よりも能力は上である。
「クロガネ、アイアンテール!」
「ゴォド!」
鋼の尻尾が繰り出されてメカの胴体を横薙ぎにし、メカは大きく後退するがやはり目立った傷は無かった。
「なーっはっは! 今回は俺たちの圧勝だぜ!」
「ニャース、トドメよ!」
「了解ニャ!」
ロケット団が最後の反撃に出ようとしたその時、サトシの頭にある光景が浮かんだ。
それは先ほどクチートを助ける時、ピカチュウのアイアンテールがメカのアームを叩き折った光景である。
今、クロガネのアイアンテールでさえ効果的なダメージを与えられなかったのに、何故ピカチュウのアイアンテールは通用したのか…?
「そうか! ピカチュウ、あのアームの間接にアイアンテールだ!」
「ピカ! ピカ~ピカピッカ!」
ピカチュウはサトシの指示通りにアイアンテールをメカのアームの間接に叩き込むと、アームは間接から先が叩き折れてしまった。
「よし! あのメカ頑丈だけど、繋ぎ目は脆いぞ!」
「ナイスサトシ! 装甲の繋ぎ目にキノコはマッハパンチ! クロガネはアイアンテール!」
「ガッサ!」
「ゴド!」
マッハパンチとアイアンテールがメカの装甲の繋ぎ目に叩き込まれると、装甲が剥がれてメカの内部が一部むき出しになってしまう。
「ニャニャ!? しまったニャ、頑丈さばっかり追求して繋ぎ目が甘かったニャ!?」
「「えーっ!?」」
「ソーナンス!」
「撤退よ! 一時撤退!」
「逃がさないわよ! ケムッソ、いとをはく!」
「ケムー!」
逃げ出そうとキャタピラをフル回転させてメカをバックさせて逃げ出そうとするロケット団だが、ケムッソのいとをはくでネバネバした糸がメカに巻き付いて動きを止める。
パワーを上げて逃げ出そうとするが、余計に糸が絡まり動けなくなっていく。
「よし、もっと装甲を剥がしてやる! ピカチュウ、10万ボ―」
「クート!」
サトシがメカに更なるダメージを与えようとするが、それを遮ってクチートがサトシの前に出て何かをアピールする。
どうやら自分にも戦わせて欲しいと言っているようだ。
「―ってクチート、お前も戦ってくれるのか?」
「クー! クー!」
「よーし、頼むぜクチート! かみつく攻撃だ!」
「クート!」
クチートはメカに接近すると体を翻して後頭部にある大きな偽の口を突き出してメカの装甲に噛み付いた。
そしてそのまま頭を振るい装甲を引き剥がす!
この一撃によりメカの前部の装甲が全て引き剥がされて内部がむき出しになる。
「クー!」
「いいぞクチート! よし、トドメだピカチュウ! 10万ボルト!」
「ピーカーチュウウウウウウ!」
むき出しになった内部には電撃対策も何も無い。
10万ボルトの電光が奔りメカの内部に直撃し、バチバチとショートしてメカは爆発四散する。
爆発により石の洞窟の天井に穴が開き、そこから何時も通りロケット団が吹き飛ばされていく。
「あーあ。今回はいけると思ったのになぁ…」
「ちょっとニャース! メカの設計甘いんじゃない!?」
「というか予算不足でどの道繋ぎ目は脆くなってたニャ」
「ソーナンス!」
「「「ヤなカンジ~!」」」
「ソーナンス!」
キラン☆
今日もめでたく空の彼方の星となったロケット団を見届ける。
これでもう石の洞窟のポケモン達も住みかを脅かされずに済むだろう。
「やったぜ!」
「ピッピカチュウ!」
「これでもう石の洞窟の野生のポケモンも安心だね。これからはまた静かに暮らせそうだし。クチートも住処に戻るのかな」
「あっ、そういえばクチートをゲットしたかったのすっかり忘れてた!」
勝利の喜びも束の間。
マサトの言葉に元々はクチートをゲットしようと思っていたのを思い出すサトシだが、せっかくロケット団を倒して住処の安全を確保したのにゲットしてしまっては意味がないように思える。
どうしようかと頭を抱えているサトシだが、クチートはそんなサトシをジッと見つめるとバッと大きく飛び退いてバトルの体勢を取る。
「クートクト!」
「サトシ! クチート、バトルしたいみたいよ!?」
「えっ? 俺とバトルしてくれるのかクチート?」
「クー!」
住処を取り戻す戦いを共にしたサトシに何かしら影響されたのか、クチートは自らゲットされる可能性のあるバトルを挑んできた。
これはサトシも願ったり叶ったりである。
「よーし、頼むぜピカチュウ!」
「ピッカ!」
「でんこうせっか!」
「ピカ、ピッピッ!」
先手必勝とばかりにピカチュウは凄まじい速度でクチートに体当たりをするが、正面からの攻撃を態々受けるわけはないとばかりにクチートはジャンプしてでんこうせっかを避ける。
そしてクチートは先ほどのように後頭部の大きな口をピカチュウに向けて突き出した。
「クーット!」
「ピィカ!?」
大きな口が目の前に突き出され、ピカチュウは驚いて怯んでしまう。
「クチートのおどろかすだよサトシ! 怯むとピカチュウは動けなくなっちゃうよ!」
「来るぞピカチュウ! 避けるんだ!」
「クー、クゥウウウウウ!」
「ピ!? ピィカー!」
クチートは怯んでいるピカチュウに向けてようせいのかぜを巻き起こして攻撃する。
動きが止まってしまっていたピカチュウは避けることができずにまともにようせいのかぜを受けてしまうが、地面をコロコロと転がると素早く立ち上がった。
「あれってトウキさんのやってた攻撃を受け流す動きじゃない!?」
「ああ。どうやらピカチュウはあの動きも体得したみたいだな。ベンチで見てた分動きがよく見れたのかもな」
「よーし、いいぞピカチュウ! かみなりで反撃だ!」
「ピーカヂュウウウウウウウ!」
「クー!?」
素早く反撃の体勢に入ることができたピカチュウは、素早くかみなりを繰り出す。
クチートもピカチュウの素早い反撃は予想できなかったのかかみなりを避けることができずにダメージを受けてしまう。
「たたみ掛けろ! アイアンテール!」
「ピカピッカ!」
「クァウ!」
ピカチュウのアイアンテールとクチートのかみつく攻撃がぶつかり合い弾き合う。
だがピカチュウは空中でクルリと回って体勢を整える。
「行けピカチュウ! 10万ボルト!」
「ピーカーチュウウウウ!」
「クゥウウウウウッ!?」
再びピカチュウの電撃が放たれ、その電撃は見事にクチートに命中する。
これにより十分にダメージが蓄積したと見たサトシはモンスターボールを構える!
「いっけぇ! モンスターボール!」
投げられたモンスターボールは真っ直ぐにクチートに向かって飛び命中すると、クチートを中に吸い込んで地面に落ちる。
クチートの最後の抵抗とばかりにモンスターボールが激しく揺れる。
だが揺れが徐々に小さくなっていき、ポンッと音を立ててボールは動かなくなった。
「よっしゃぁ! クチートゲットだぜ!」
「ピッピカチュウ!」
新たなる仲間であるクチートをゲットし、ボールを高く掲げるサトシと、それを共に喜ぶピカチュウ。
そしてそれを見守っていたハルカ達も新しい仲間のゲットを喜んでいた。
「やったわねサトシ!」
「これで修行もできるな」
「フェアリータイプの技があれば、トウキさんのかくとうポケモンにも対抗できるね!」
「ああ。これからの修行が楽しみだぜ!」
ロケット団を撃退して石の洞窟の平和を守り、新しい仲間であるクチートをゲットしたサトシ。
ムロ島でのポケモン修行は、まだまだこれからである!
to be continued...
クチートの技とかとくせいを纏めたページって作った方がいいですかね?
またサトシやハルカのポケモンが増えたりしたら執筆考えておきますね。