ポケットモンスター-黒衣の先導者-   作:ウォセ

11 / 32
申し訳ありません、ご感想を頂いたと言うのに返信が遅れてしまいご感想が消えてしまっていました。
都合によりすぐには返信できない場合もありますが、基本的にご感想にはご返事をさせて頂きますので遅れてても少々お待ち頂ければ幸いです。

そのご感想についてはあとがきで触れていきますので、一先ずは本編をどうぞ。
今回は初のコンテスト回で、原作にできるだけ忠実に書きました。お楽しみ下さい。


バトルとコンテスト 見果てぬそれぞれの道!

ホウエンリーグ出場を目指し、旅を続けるサトシ達。

最初のジムのあるカナズミシティを目指し旅をしていたサトシ達は、カナズミシティへの近くへやって来ていた。

 

「マサト、あとどれくらいでカナズミシティに着くんだ?」

 

「えーっと地図から逆算すると…あと森を1つ抜けたらもうカナズミシティだよ!」

 

「おぉ、やっとジム戦ができるんだな! 燃えてきたぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

念願のジム戦が近づいてきていると知ったサトシとピカチュウは燃え上がり、やる気が全身からあふれ出ていた。

 

「もう、カナズミシティに着いた訳でもないのに熱いんだからサトシは」

 

「今からそんな燃えてたらカナズミシティに着く頃には燃え尽きちまうぞ」

 

やる気を出すのが早すぎるサトシ達にハルカとソラトが苦笑いを浮かべ、呆れていた。

そうして燃えがってりながら進んでいくサトシ達の前に、大きなホール型の建物が現れた。

 

「あれは…」

 

「あれがカナズミホールだね。色々イベントとかやる時に使われるみたいだよ」

 

「カナズミホール! って事はここはもうカナズミシティなんだな!」

 

「ジムのあるカナズミシティはもっと先だよ。ここはあくまでイベント会場だよ」

 

「なんだ、そうなのか…」

 

目の前の建物がカナズミホールだと知ってカナズミシティに着いたのかと思ったサトシだが、ここは唯の街の郊外に立てられたイベント会場だと知って意気消沈してしまった。

余程ジム戦が楽しみだったのだろう。

 

「でも何かイベントやってるのかしら。人とポケモンがいっぱいよ」

 

会場の近くでは多くのトレーナーがポケモンと共に技を使って何かをしていた。

しかし技はどれもバトルで使うほどの威力は無くどちらかと言えば見栄えが良い技の使い方や出し方をしていた。

 

「多分ポケモンコンテストの調整をしているんだろ」

 

「ポケモンコンテスト?」

 

聞いた事のない言葉に反応するハルカだったが、そんなハルカへ向かって何かが飛んでくる。

 

「ハァ~ン」

 

「え? きゃあああっ!?」

 

飛んできたむしタイプのようなポケモンはハルカの顔にぶつかるとしがみついてしまう。

それに驚いたハルカは足を滑らせて転んでしまった。

 

「お姉ちゃん!?」

 

「ハルカ、大丈夫か?」

 

「も~! 何なのよ~!」

 

ハルカは顔に張り付いたポケモンを振りはがそうと顔を振るうと、顔に張り付いていたポケモンは羽を使い宙へ羽ばたいた。

 

「ハァーン」

 

「このポケモンは…」

 

『アゲハント ちょうちょポケモン

甘い花粉が大好物のポケモン。花をつけた鉢植えを窓辺に置けば花粉を集めに必ずやって来る。』

 

ハルカに張り付いたポケモンの正体はカラフルな羽が印象的なむしポケモンのアゲハントだった。

アゲハントは飛び立ったかと思ったがすぐにハルカの頭の上に止まってしまった。

 

「うぅ~、重~い!」

 

「懐かれちまったな、ハルカ」

 

「も~! 皆見てないで何とかしてよ~!」

 

アゲハントは見た目に反して体重は30キロ近くあるため頭に乗られればそれは重いだろう。

今度は体全体を振るってアゲハントを振りほどこうとするハルカだが、アゲハントは中々離れなかった。

バタバタと騒がしいサトシ達の元へ、男性と女性が1人ずつ駆けつけてくる。

 

「ごめんなさーい!」

 

「君たち大丈夫かい?」

 

「もう、駄目でしょアゲハント!」

 

「ハァン」

 

女性がアゲハントを嗜めると、アゲハントは今度こそハルカの頭を離れて宙へ羽ばたいた。

 

「もしかして貴女、このアゲハントでコンテストに出るんですか?」

 

「ええ、そうなの。ごめんなさいね、コンテストバトルの練習をしていたの」

 

「僕たちのせいなんだ。モルフォンのふきとばしが決まり過ぎちゃって…完全に失敗だったよ」

 

ソラトが声を掛けると、サトシ達には聞きなれない言葉が返ってきた。

コンテストバトルや、技が決まりすぎて失敗というフレーズにサトシは頭に疑問符を浮かべて首を捻った。

 

「私、メグミっていうの」

 

「僕はエイジ。よろしくね」

 

「俺はサトシです」

 

「私はハルカ」

 

「僕マサト!」

 

「俺はソラトです」

 

「でも、バトルの練習をしてたんでしょ? 技が決まりすぎて失敗ってどういう事なんだ?」

 

自己紹介を終えると、サトシは今しがた感じた疑問を聞いてみる。

バトルで全力をぶつける事を信条とするサトシからすればおかしな話である。

だがそんなサトシの疑問に答えたのはマサトとソラトだった。

 

「もー、サトシってコンテストの事何も知らないんだね。コンテストバトルは普通のバトルとは全然違うんだよ」

 

「技の出し方や魅せ方で、かっこよさやうつくしさを競い合うんだ」

 

「魅せ方…?」

 

「そう、そこが私達、コーディネーターの腕の見せ所なの!」

 

コンテストに出場し、ポケモンの魅力を最大限に引き出すトレーナーを俗にポケモンコーディネーターと呼ぶのだ。

そしてそこまで聞いて、やはりサトシはよく分からないといった表情をしていた。

逆にハルカは何かを思い出したようである。

 

「そっか、ポケモンコンテストって優勝するとリボンが貰えるんですよね!」

 

「ええ、そうよ。ほら、こんな感じのね」

 

メグミは荷物の中からケースを取り出すと、そこには手のひらサイズのコンテストリボンが2つ収められていた。

このリボンこそコンテストで優勝した証なのである。

 

「凄い! 2つも持ってるんだ!」

 

「僕はまだ1つだけだけどね」

 

エイジもケースを取り出すとそこには1つのリボン。

メグミとエイジのリボンを見るハルカの目は輝いており、明らかな憧れがあった。

 

「あーんいいなー。私も欲しいかも!」

 

「そのためにはまず出場しなくちゃね」

 

「出場ってコンテストに?」

 

「俺も出てみたいな」

 

ハルカは勿論、サトシもコンテストを体験してみたくなったのか2人はコンテストに出場してみる意欲が出てきたようである。

 

「確かコンテストのエントリーはまだ締め切ってなかったわよね」

 

「ああ、急げば間に合うかも」

 

「じゃあ急がないとな」

 

こうしてサトシ達はコンテストに出場するために急いで受付に向かった。

受付に来ると係員の女性にすぐにエントリーしたい旨を伝えるが、返ってきた返答は残念なものだった。

 

「えーっ!? もうエントリー締め切りなんですか!?」

 

「はい…先ほどエントリーされた方で定員になってしまったんです」

 

「ショックかも…」

 

折角の機会だと言うのに希望通りいかず、ハルカはガックリと項垂れてしまう。

それを見かねたメグミはせめてもと思って係員の女性にお願いをする。

 

「じゃあ、コンテストパスだけでも発行して貰えます?」

 

「はい、畏まりました」

 

「じゃあ、ついでに俺の分もお願いします!」

 

便乗してサトシもコンテストパスを発行して貰う事にしたようだ。

普段はバトル一筋でも、何か機会があれば出てみたいのだろう。

 

「マサト君はまだトレーナーじゃないからパスを発行できないけど…ソラト君はどうするの? 発行して貰う?」

 

「いえ、俺はもうコンテストパスは持っているので大丈夫です」

 

「え? お兄ちゃんコンテストに出たことあるの?」

 

「ああ、まぁ少しだけな」

 

「へぇ、お兄ちゃんはリボン幾つ持ってるの!?」

 

「い、いやまぁ…昔少しだけしか出てないから大した事ないさ」

 

ソラトがコンテストへの出場経験があると知り、ハルカは目を輝かせて質問するが、当のソラトは何かを誤魔化すように返答をした。

そんなソラトを見てメグミとエイジが何かを思い出そうとする仕草をする。

 

「うーん、そういえば昔コンテストで君のような黒服を着ていたコーディネーターが居たような…」

 

「ええ、何て名前だったかしら…」

 

「い、いやー黒い服着た人なんて幾らでもいますから! 気のせいですよ! あはははは…」

 

「うーん、そうかな…? まぁそうだね」

 

あからさまに誤魔化そうとするソラトだが、皆変だと思いながらもそれ以上の追求はせずにその話はそこまでとなった。

こうしてサトシとハルカはコンテストパスを発行して貰った。

 

「これがあればコンテストに出られるんですね」

 

「ええ、無くさないでね」

 

「あーあ、やっぱり残念かも…」

 

余程出たかったのかまだがっかりしているハルカを見かねたメグミは、ある事を思いつきハルカに提案した。

 

「そうだハルカちゃん、もし良かったら私のアシスタントとしてコンテストに出てみない?」

 

「え!? いいんですか!?」

 

「いいんじゃないかな。アゲハントもハルカちゃんの事気に入っているみたいだし」

 

「それじゃあ、お願いします!」

 

エイジの勧めもあってハルカはアシスタントとしてだがコンテストの舞台に立つことを決めたようだ。

そんなエイジは先ほどからパートナーのモルフォンに何か食べさせていた。

 

「エイジさん、それは何ですか?」

 

「これはポロックだよ。ポケモンの体調を整えるおやつみたいな物さ」

 

小さな四角いおやつは、ポロックと呼ばれる物だ。

コーディネーターの必需品である。

 

「ポロックは木の実を混ぜ合わせて作る物だ。日ごろから食べさせておけば毛並みや色艶が良くなったりするぜ」

 

エイジの解説にソラトが補足を入れる。

重ねて食べさせる事によってポケモンの体調やコンディションを変化させる事ができるポロックの話をハルカは熱心に聞き入っていた。

 

「それからポロックはポケモンの好みに合わせてトレーナーがそれぞれで調整する物なんだ。世界で自分だけのポロックが作れたりもするんだぜ」

 

「へぇー、やっぱりお兄ちゃん詳しいかも。ほんとに昔はコンテストにちょっと出ただけなの?」

 

「えっ!? あー、いやその…これくらいは基本だからさ」

 

ハルカの突っ込みにギクリと体を硬くしたソラトは誤魔化すようにフードを目深に被って誤魔化した。

首を傾げるハルカだが、ソラトが聞かれたくない事は聞かないでおこうとそれ以上言うのは諦めた。

 

「なるほど、だからメグミさんのアゲハントは羽がいっそう綺麗なんだね!」

 

「エイジさんのモルフォンも何かカッコいい気がするぜ!」

 

「ありがとう。そう言われると日ごろから調整をしてる甲斐があるよ」

 

「私からもお礼を言わせてもらうわ」

 

「えっ? 何でお礼を…?」

 

マサトとサトシがアゲハントとモルフォンの姿を褒めると、メグミとエイジは嬉しそうにしながらお礼を言った。

それがマサトとハルカには意外だったようで不思議そうな顔をしている。

 

「自分の育てたポケモンが褒められるのは嬉しいものよ」

 

「あっ、それ分かります!」

 

「自分の日ごろの努力が実ったような気がしますからね」

 

「うん、そんな時は自分が褒められた時より嬉しいもんな」

 

メグミの言葉にサトシとソラトも思うものがあったらしく頷いて同調していた。

そんな皆を見てハルカとマサトはそういうものなのかと納得した。

 

「そういえば君たちはカナズミシティにはジム戦に来たのかい?」

 

「はい! 俺とソラトが挑戦するんです! 頑張ろうぜピカチュウ!」

 

「ピッカ!」

 

「っとそうだった。サトシ、ピカチュウにいわタイプに有効な技仕込んでやるから後で特訓しようぜ」

 

「お、そうだったな! 頼むぜソラト!」

 

以前ピカチュウでいわタイプのジムに挑むためにピカチュウが覚えられる技を調べていたソラトだが、ロケット団とのゴタゴタですっかり忘れられていたようである。

 

「それじゃ準備して会場の裏に回っててくれ。俺も必要なポケモンを連れて行くからな」

 

「分かった!」

 

「それじゃあ私達はそろそろ会場に入りましょう。もうすぐコンテストの時間よ」

 

「「はーい! よろしくお願いします!」」

 

こうしてサトシとソラトはバトルの特訓へ。

ハルカとマサトはメグミに連れられてコンテストの舞台へと向かうのだった。

そしてホールの裏でサトシとピカチュウ、そしてモンスターボールを持ったソラトが向かい合っていた。

 

「それじゃやるぜサトシ。出て来い、クロガネ!」

 

「ゴォオオオオオッ!」

 

ソラトが持っていたボールから出てきたのは、黒い体に鋼鉄の鎧を身にまとった刺々しい大型のポケモン、ボスゴドラだった。

 

「初めて見るポケモンだ」

 

『ボスゴドラ てつよろいポケモン

ココドラの最終進化系。山ひとつを自分の縄張りにしており、荒らした者は容赦なく叩きのめす。いつも山の中を見回りしている。』

 

図鑑を開いてボスゴドラのデータを確認したサトシは、この刺々しく大きな体を持つボスゴドラにかっこ良さを感じて興奮していた。

 

「ボスゴドラのクロガネだ。よろしくな」

 

「ゴォド」

 

「ボスゴドラ…かっこいいなー! よろしくな!」

 

「ピッカ!」

 

「それじゃまずはお手本を見せるぞ。クロガネ、あの岩に向かってアイアンテール!」

 

「ゴォドラッ!!」

 

ソラトは近くにあった適当な大岩を指差してクロガネに指示を出すと、クロガネはスピードは遅いが勢いよく岩に向かって突進していき、射程範囲に入ると身を捻って輝く尻尾を大岩に叩き付けた。

バガン! と大きな音が辺りに響き渡るとクロガネがアイアンテールを叩き付けた大岩は粉々に砕け散った。

 

「おぉ! すっげぇ!」

 

「ピィカー!」

 

「アイアンテールははがねタイプの技だから、いわタイプにこうかはばつぐんだ。ピカチュウでも覚えられるが、尻尾を鍛えるとこがミソだな」

 

「なるほど…よーし、やってやるぜピカチュウ!」

 

「ピィッカ!」

 

まずはピカチュウの尻尾の筋力を鍛えるため、石を括りつけたロープをピカチュウの尻尾に繋げて上げ下げして筋トレを行う事にした。

それに合わせて、何故かサトシも一緒に腕立て伏せをしていた…。

 

「頑張るぞピカチュウ! 絶対アイアンテールを習得するんだ!」

 

「ピィ…カ! ピィ…カ!」

 

「いや、何でサトシまで一緒に鍛えてるんだよ…」

 

サトシとピカチュウの2人の同時特訓が始まり、ソラトは微妙に呆れながらも2人を見守った。

一方でコンテストも開催時間となった。

会場全体に響き渡る歓声を合図にコンテストが始まった。

 

「さぁ始まりましたポケモンコンテストカナズミ大会! 今回も審査員は大会事務局長のコンテス太さん、ポケモン大好きクラブ会長のスキ蔵さん、カナズミシティのジョーイさんが厳しく審査してくれます!」

 

司会の男性が審査員の3人を紹介すると、ポケットから可愛らしくも綺麗なピンク色のコンテストリボンを取り出した。

 

「そしてこの大会で優勝されたコーディネーターにはこのカナズミリボンが授与されます。そして晴れて5つのリボンを集めた強者にはトップコーディネーターの祭典、ポケモングランドフェスティバルへの参加が認められます! それでは一時審査スタート!」

 

「よーし、行けルージュラ!」

 

「ジュラー!」

 

「おーっとルージュラ、登場と同時にトリプルアクセルを決めたー!」

 

早速始まった一時審査に、エントリーナンバー1番のコーディネーターが登場し、モンスターボールを投げてパートナーを呼び出した。

ボールから出てきたルージュラは空中でトリプルアクセルを決めると優雅に着地した。

それを控え室のモニターで見ていたハルカはまたもや目を輝かせていた。

 

「わぁー! すごーい!」

 

「登場はね、1番気を遣う所なのよ。この一瞬で評価が変わると言っても過言ではないわ。技の美しさや決まり具合、ポケモンの成長度やコーディネーターとのコンビネーションが総合的に判断されるのよ。それを各審査員が審査してポイント制で争うの」

 

「凄い凄い!」

 

メグミによるコンテストのポイントの説明を、目の前で実際に様々な演技を見ながら聞いていたハルカはもう興奮状態だった。

先ほどから凄いとしか言っていない。

ハルカのボキャブラリは微妙な様である。

 

「お姉ちゃんさっきから凄いばっかりじゃん」

 

「だって凄いんだもの! ほんと、ポケモンって凄い!」

 

一方で盛り上がっているコンテスト会場の外ではサトシとピカチュウがアイアンテールの習得のための特訓を続けていた。

サトシの投げるボールを尻尾で弾き、スバメの落とす木の実を尻尾で受け止め、キモリの咥えている木の枝を尻尾で弾き返していた。

そして特訓の最中、ピカチュウの尻尾が僅かに光った。

 

「ピカ?」

 

「おっ! 皆、今の見たか!? 確かに尻尾か少し光ったよな!」

 

「キャモキャモ」

 

「スバー!」

 

「キモリの時のエナジーボールといい、サトシのポケモン達は中々センスがあるよな。そう思わないかクロガネ?」

 

「ゴゥ」

 

皆で特訓をして盛り上がっているサトシ達の傍でそれを見守るソラトとクロガネ。

だがそんなサトシ達の目に、コンテスト会場の外に設置された大型モニターが入る。

モニターにはエイジと相棒のモルフォンの演技が映し出されていた。

 

「おーっとこれは凄い! モルフォン、ねんりきで道具を自在にコントロールしています!」

 

「おおーっ! ってもうエイジさんの番だったのか!?」

 

「どうするサトシ、特訓も区切りつけてコンテスト見に行くか?」

 

「ああ! 急がないと! 行くぞ皆!」

 

「戻れクロガネ!」

 

サトシとソラトは手持ちのポケモンをボールに戻すと急いでコンテスト会場に入り、メインホールの扉を開けて観客席に滑り込む。

だが既にエイジの演技は終わっており、得点が表示されていた。

 

「出ました! 今までの最高得点です!」

 

「あちゃー、エイジさんの演技終わっちまったみたいだな」

 

「失敗した…特訓に集中しすぎたぜ…」

 

「ピィカ」

 

知り合った人の演技を見れずがっかりするサトシとピカチュウだったが、次の出番の人影が見えると表情を明るくした。

 

「おっ、あれは!」

 

「では続いてはエントリーナンバー17番、メグミさんの登場です!」

 

「メグミさんとハルカ達だな。さぁて、お手並み拝見といこうか」

 

出てきたのはメグミさんと、アシスタントとして小皿のような物を沢山持っているハルカとマサトだった。

 

「行くわよアゲハント! えいっ!」

 

「ハァ~ン!」

 

ボールから飛び出したアゲハントは美しい羽を大きく広げ、その美しさをアピールしていた。

輝く羽から毀れるように光る鱗粉が宙を舞っていた。

 

「アゲハント、フラッシュよ!」

 

「ハーン!」

 

フラッシュの技により羽が金色に輝き辺りをとてつもない明かりが包み込む。

さながら光の羽を背負ったアゲハントだった。

 

「キレーイ…」

 

「お姉ちゃん、見とれてる場合じゃないよ!」

 

「え? あっ、いけない!」

 

ハルカとマサトも思わず見とれていたらしく少し慌ててアゲハントの左右に移動すると、手に持っていた小皿を宙に向けて放り投げた。

それをアゲハントはいとをはくで吐き出した糸を鞭のように扱い、次々に小皿を砕いていった。

 

「フィニッシュ行くわよ! アゲハント、めざめるパワー!」

 

「ハァーン!」

 

パワーを纏った球体を体の周囲に出現させると、それを取り込んで周囲に撃ち放った。

輝くパワーは周囲を照らし、光の粒が会場全体に降り注いだ。

評価は文句なしの満点である!

 

「出ました30点満点!」

 

「やったわ! ありがとうアゲハント!」

 

「ハァーン」

 

「「わぁ~!!」」

 

メグミの見事な演技に手伝いをしたハルカとマサトは勿論、会場全体が一丸となってメグミ、そしてアゲハントに拍手を送っていた。

会場の興奮が最高潮に達する中、メグミ達は控え室に戻っていき、サトシとソラトも急いで控え室に駆けつけた。

サトシは控え室のドアを勢いよく開けた。サトシもまた先ほどの演技に魅せられたのだろう。

 

「やりましたねメグミさん!」

 

「お見事でした」

 

「えへへ~、ありがとー!」

 

「やったのはメグミさんとアゲハントでしょ…」

 

何故か賞賛の言葉に返事をしたハルカだが、マサトの突っ込みにお茶目な笑みを浮かべて誤魔化した。

 

「2人が手伝ってくれたからよ。本当にありがとう」

 

「いえいえ!」

 

「どういたしまして」

 

貴重な体験をしたハルカとマサトが嬉しそうにメグミに返事をしていると、とうとう一時審査最後のコーディネーターがモニターに映し出された。

 

「さぁいよいよ最後のエントリーとなりました。エントリーナンバー30番、マドマゼル・ムサッシーさんです」

 

映し出されたのは赤紫の長い髪をキメている女性とアシスタントらしき青紫髪の男性とニャースだった。

…どこかで見たことのあるような気がするのは気のせいである。

 

「さぁ、いけムサシ!」

 

「スターは君だニャ」

 

「任せときなさいって。行けハブネーク!」

 

「ハブネーック!」

 

マドマゼル・ムサッシーと名乗る女性が繰り出したのはハブネークだった。

勢い良く登場し、着地したハブネークにムサッシーは指示を出した!

 

「魅せるわよハブネーク! まずはせいなるほのお!」

 

「…ハネ?」

 

「はニャ?」

 

「ハブネークってそんな技使えたっけ…」

 

ハブネークが何もせず白ける会場。

同じく控え室でも微妙な雰囲気が流れていた。

 

「せいなるほのお? どんな技なの?」

 

「伝説のポケモン、ホウオウやエンテイが使うとされる強力なほのおタイプの技だが…ハブネークが使えるって話は聞いた事無いな…」

 

モニターを見ていた全員が首を傾げ、この中でポケモンに最も詳しいソラトにハルカが質問するとそう答えが返ってきた。

勿論ソラトの言うとおりハブネークはせいなるほのおは使えない。

 

「ハブネーク、せいなるほのおよ! ほら早く!」

 

「ハププッ!」

 

「え、ダメなの? じゃあみずのはどう!」

 

「プルルルル!」

 

使えない技は使えないので首を横に振って無理だとアピールすると、何故か今度はみずタイプの技を指示される。

当然だがこちらも使える訳が無い。

 

「ならばブレイズキック!」

 

「プルルルルルルルッ!」

 

そもそも足の無いハブネークがどうやってキック系の技をすると思ったのだろうか。

ハブネークは激しく首を横に振って無理無理アピール全開である。

 

「あの…ハブネークはそういう技は使えないんじゃ…」

 

「ソーナンス!」

 

「そーなの!? えーとじゃあえーとえーとじゃあえーっと…ドラゴンクローは? サイコウェーブは? ラスターパージは?」

 

次々と使えない技を言われてハブネークは滝のような…というかまんま滝の汗を流してあせっていた。

そもそも自分のポケモンの技を確認できていない時点で何というか…。

 

「だーっ! もう、アンタはいったい何の技が使えるのよ!」

 

「こらー! 何やってるんだ!」

 

「いい加減にしてよー!」

 

モタモタグダグダし過ぎて会場からはブーイングの嵐である。

審査員の3人も厳しい目や呆れた目、困った目をしている。

 

「あらららら…」

 

「皆怒ってるニャ! ここはとりあえずポイズンテールでキメるニャ」

 

「あぁ…しょうがないか…ハブネーク、ポイズンテールよ!」

 

「ハブッ!? ハッブネーク!」

 

ようやく自分の使える技を指示され、気合を入れて全力でポイズンテールを放ったハブネーク。

だが勢い余ってムサッシーに尻尾をぶつけてしまい、ムサッシーは会場の天井に向かって吹っ飛んでしまう。

 

「キャー!? こうかはばつぐんよーっ!?」

 

ムサッシーはそのまま天井を突き破り、空の彼方へとキラン☆と消えていってしまった。

 

「「ああっ!?」」

 

慌ててアシスタントの2人が吹っ飛んでいった方へ向かって駆け出していき、得点が出た。

誰がどう見ても0点である。

控え室のサトシ達も呆れて声も出ず、ただただモニターに映し出された0点を眺めていた。

 

「えー、お見苦しい場面があった事、謝罪致します。それでは一時審査を突破した4名を発表致します! 此方の方々です!」

 

モニターに映し出された4人の中には一時審査で得点1位2位だったメグミとエイジも勿論含まれていた。

それぞれトーナメントでは別ブロックであり、ぶつかり合うとしたら決勝である。

 

「やった! メグミさんもエイジさんも一時審査突破だ!」

 

「エイジ、絶対負けないわよ」

 

「それはこっちの台詞さ」

 

「「それじゃあ、決勝戦で!」」

 

メグミとエイジはお互いに腕をガッとぶつけ合い、それぞれの健闘を祈った。

 

 

 

一方、吹き飛ばされてしまったマドマゼル・ムサッシーことロケット団のムサシは泣きながらハブネークに抱きついていた。

 

「うわぁああん! ハブネーク、アンタのポイズンテールは最高よ~!」

 

「ハプルルルル!」

 

どうやら使えない技を指示した事は反省し、ありのままのハブネークの実力をムサシも認めたようである。

コジロウとニャースも面倒くさそうにそれを眺めていた。

 

「なぁ、それはもう分かったから何時も通りやろうよ」

 

「単純に優勝したポケモンを奪えばいいニャ」

 

「それもそうね! それじゃ作戦開始よ!」

 

「ソーナンス!」

 

なんとなくだが纏まったようで、改めてロケット団は作戦行動に入るのだった…。

 

 

 

場面は戻りコンテスト会場。

準決勝はメグミとエイジが難なく勝ち進み、いよいよ2人の決勝戦が行われようとしていた。

 

「ついに2人が戦うのか」

 

「アゲハント対モルフォンね」

 

「どんなバトルになるんだろう!」

 

「楽しみだな」

 

サトシ達も見やすい位置にある席に座り、メグミ達のコンテストバトルを見守る。

会場のメインモニターにメグミとエイジが映し出され、その下にコンテストバトルのポイントバーが表示される。

 

「あれ、何だあのバー?」

 

「あれがコンテストバトルのポイントだ。お互いに技を出してアピールしながら攻撃を繰り出してあのポイントを奪い合う。制限時間の5分が経った時に多くポイントが残ってた方の勝ちになるんだ」

 

「へー、聞いてた通り普通とはちょっと違うバトルなんだな」

 

「それでは、決勝戦スタート!」

 

向かい合ったメグミとエイジはモンスターボールを構えると、審判でもある司会の合図によりモンスターボールからポケモンを繰り出した!

 

「行け、モルフォン!」

 

「頼むわよアゲハント!」

 

「モルフォン、しびれごな!」

 

「アゲハント、かぜおこし!」

 

モルフォンは羽からしびれごなを振り撒きアゲハントの動きを止めようとするが、アゲハントは羽を羽ばたかせて強烈な風を巻き起こした。

かぜおこしの風に流され、吹き飛ばされてしまったしびれごなは不発に終わり、2人のコンテストポイントが減ってしまう。

だがその減り方はエイジの方が僅かに多かった。

 

「あれ、お互いにポイントが減ったけどエイジさんの方が減りが大きいぞ」

 

「しびれごなは決まったけど、かぜおこしに吹き飛ばされちゃったからね。アゲハントのかぜおこしの方がポイントが高かったって事さ」

 

「攻撃だけじゃなく、反撃や防御の仕方1つで相手のポイントを削る事ができるのもコンテストバトルならではだな」

 

「「へぇ~」」

 

サトシの疑問にマサトとソラトが答え、ハルカも一緒に納得していた。

これは確かに普通のバトルでは見られない展開である。

 

「アゲハント、めざめるパワー!」

 

「上昇してかわすんだ!」

 

「ハァーン!」

 

アゲハントが放っためざめるパワーをモルフォンは高く飛んで回避したかに思えたが、空中で軌道を変えためざめるパワーは吸い込まれるかのようにモルフォンに命中した。

今の一撃はかなりの好評価だったらしく、エイジのポイントが大きく削られた。

 

「へぇ、メグミさんのアゲハントのめざめるパワーは軌道をコントロールできるみたいだな」

 

「良くやったわ、アゲハント」

 

「くそ、このままじゃ終わらないぞ! モルフォン、サイケこうせん!」

 

「モルフォ!」

 

モルフォンも負けじと反撃をし、目からサイケこうせんを放つ。

攻撃を当てて油断していたのかメグミとアゲハントの反応が遅れてしまい、サイケこうせんはクリーンヒット、きゅうしょにあたった!

 

「アゲハント!」

 

「エイジさんの反撃でポイントはまたほぼ互角だ! 勝負はまだまだ分からないぜ!」

 

「頑張れアゲハントー!」

 

どうやら先ほどのメグミの演技に感銘を受けたらしいハルカはエイジそっちのけでメグミの応援をしていた。

ポイントを大幅に削られたメグミだが、その表情に焦りは無かった。

 

「アゲハント、あさのひざし!」

 

「ハァーン…ハァアアーン!!」

 

アゲハントの全身が輝き、会場全体が光に包まれた。

天候によって効果が左右されるが、自身の体力を回復させる技によりアゲハントは元気を取り戻した。

更に今のあさのひざしの美しさによりエイジのポイントが更に削られる。

 

「綺麗…」

 

ハルカはすっかりアゲハントの虜になっており、目を輝かせながら釘付けになっていた。

 

「回復技か! 何時の間に…」

 

「メグミさんのアゲハント凄いな。エイジさん、こりゃかなり追い込まれたな」

 

「いいな…私もメグミさんとアゲハントみたいに、コンテストバトルできたらな」

 

「……そっか」

 

ハルカの口から思わず毀れた憧れ…夢を聞いて、ソラトは嬉しそうに口角を上げてフッと笑った。

残りの試合時間が1分を切り、バトルも終盤に入る。

 

「サイケこうせん!」

 

「めざめるパワー!」

 

ぶつかり合ったそれぞれの技は相殺され、再びお互いのポイントが減っていく。

 

「アゲハント、フラッシュよ!」

 

「モルフォン、ねんりきだ!」

 

アゲハントとモルフォンが最後の一撃を放とうとするが、その前に残り時間が0秒になってしまい試合は終了した。

モニターに映し出されたポイント量から優勝が決まる。

 

「バトル終了です! さぁ果たしてその結果は…!」

 

モニターに映し出された勝者は………メグミだった。

 

「優勝は、メグミさんとアゲハントです!」

 

「やったぁー!」

 

激戦を制したのはメグミだったが、負けたエイジも晴れやかな顔をしていた。

全力を出して敗れた以上、悔いは無いのだろう。

ハルカもメグミの勝利を自分の事のように喜んでいた。

 

「はいはーい、この度はおめでとございまーす!」

 

と、そこへ会場全体に通るような声が響き渡る。

声の正体は突然現れたタキシードを着てシルクハットを被った謎の男女2人組みであった。

 

「我々は今回特別に呼ばれたお祝い係です」

 

「そんなの予定には―」

 

「はいはーい! 此方のアゲハント最高最強ビューティブル!」

 

「お祝いの花束をどうぞ!」

 

「あ、ありがとう…」

 

司会者の言葉を遮って勝手に言葉を続け、祝いの花束をメグミに渡す自称お祝い係の2人組み。

だがメグミに渡された花束からは突然煙幕のような煙が吹き出し、瞬く間に会場の視界を潰してしまった。

 

「きゃあっ!? 何なの!?」

 

「きゃあっ!? 何なの!? と聞かれたら」

 

「答えてあげるが世の情け」

 

「お待たせしましたショータイム」

 

「豪華絢爛ショーアップ」

 

「愛と真実の技を鍛える!」

 

「元祖ポケモンアーティスト!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「銀河を駆けるロケット団の2人には」

 

「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ」

 

「ニャーんてニャ!」

 

「ソーナンス!」

 

と、いつものキメ台詞を決めたロケット団の手には虫取り網が握られており、アゲハントとモルフォンが網に捕まっていた。

どうやら今の煙幕の隙に捕まえたらしい。

 

「ロケット団!」

 

「またあなた達なの!?」

 

「やれやれ、こういう舞台にも野暮な水差すかアイツら…そーいう所はイカしてねぇな」

 

「強いポケモンあるところ、必ずロケット団は現れるのよ!」

 

「大体育てるとか技を魅せるとか面倒くさいぜ!」

 

「それより人が育てたポケモンをゲットした方が楽で賢いのニャ」

 

その言葉を聞き、この会場にいる全てのポケモントレーナーやコーディネーターがムッとした表情をする。

育てる事に意義を見出す者だってもちろんいるし、何より育てたポケモンを奪うという言葉を不快に感じたのだ。

そしてそれはメグミやエイジも同じだった。

 

「おいお前たち、その言葉は全てのポケモンとトレーナー、コーディネーターに対する侮辱だぞ!」

 

「そうよ、取り消しなさい!」

 

「うるさいわね! ハブネークやっちゃいな!」

 

先ほどコンテストで0点を貰った腹いせもあるのか今日は嫌に好戦的なムサシはハブネークを繰り出すと狙いをメグミに定めた。

 

「ハブネーク、あの女にポイズンテールよ!」

 

「ハッブネーク!」

 

「えっ!? きゃああああああっ!?」

 

「メグミさん、危ない!」

 

ハルカがメグミに駆けつけようとするが、それよりも早く隣に座っていたソラトが黒い影となって飛び出し、メグミとハブネークの間に割り込んだ。

 

「クロガネ、バトルの時間だ!」

 

「ゴォオオド!」

 

「受け止めろ!」

 

そしてボールを投げて繰り出したのは先ほどと同じくボスゴドラのクロガネである。

ソラトは防御の指示を出すとクロガネはその体でハブネークのポイズンテールを受け止めた。

普通ならば多少なりともダメージがあると思われるが、クロガネの鋼の鎧には傷一つ付いていなかった。

 

「メグミさん、大丈夫ですか?」

 

「え、えぇ………」

 

メグミの身が大丈夫だった事を確認し、ロケット団からメグミを庇うように立つソラト。

そしてそんなソラトを見て、メグミは顔を赤く染めていた。

 

「な、何ですって!?」

 

「ハブッ!?」

 

「クロガネ…ボスゴドラははがねタイプを持っているからどくタイプの攻撃は効果が無いんだよ!」

 

「だったら…ハブネーク、かみつく攻撃!」

 

「させるか! ピカチュウ、アイアンテール!」

 

「チュゥウ…!」

 

どくタイプの技が効かないと知ったムサシは今度はかみつく攻撃を繰り出そうとするが、その前にピカチュウが割り込んで尻尾を輝かせる。

既に習得したならば凄まじい習得速度だが…ピカチュウの尻尾の輝きはすぐに失われてしまった。

失敗である。

 

「ピィカ…」

 

「あちゃ…まだ無理だったか…」

 

「アチャモ、頼むわよ!」

 

「アチャー!」

 

と、今度はハルカもバトルに乱入し、アチャモを繰り出すとソラトの横に立った。

だが少し不機嫌そうな表情でハルカはソラトの腕を引っ張った。

 

「ん、どうしたハルカ?」

 

「お兄ちゃん、メグミさんに近すぎるかも! もう、離れてよ!」

 

「え? ああ分かったよ」

 

よく分からないという表情をするソラトだが、ハルカの不機嫌は収まらなかった。

ハルカはこのイライラした気持ちをロケット団にぶつける事に決めた。

恋する乙女はフクザツなのである。

 

「えーい、邪魔すんじゃないわよ! ハブネーク、かみつく攻撃!」

 

「お前も行けサボネア、ニードルアーム!」

 

「ハブネーク!」

 

「サーボサボネッ!」

 

ムサシは改めてハブネークを攻撃させ、コジロウもサボネアを繰り出して同時攻撃をしてくる。

だがその前に立ち塞がるのは巨大な鋼の鎧だった。

 

「クロガネ、てっぺき!」

 

「ゴォオオド!」

 

「ハプッ!?」

 

「サボネッ!?」

 

クロガネは白銀の鎧を輝かせて防御力をぐーんと高めると、真正面からハブネークとサボネアの攻撃を受け止めて弾き返した。

相変わらずその鉄の鎧には傷一つ付いていなかった。

 

「今よアチャモ、ひのこで網を焼き切るのよ!」

 

「アチャー!」

 

その隙を突いてアチャモがひのこを放ち、アゲハントとモルフォンを捕まえていた虫取り網の網を焼き切った。

それによって自由になったアゲハントとモルフォンはメグミとエイジの元へと帰ってきた。

 

「「「あー! 折角捕まえたアゲハントとモルフォンが!」」」

 

「ありがとう、ハルカちゃん! いくわよエイジ!」

 

「おう!」

 

「俺達もやるぞ! 茶番はもうここまでだ!」

 

「やってやるぜ!」

 

「ええ!」

 

それぞれパートナーのポケモンと息を合わせると、ロケット団に対して一斉攻撃を指示した。

 

「アゲハント、めざめるパワー!」

 

「モルフォン、サイケこうせん!」

 

「クロガネ、がんせきふうじ!」

 

「ピカチュウ、10万ボルト!」

 

「アチャモ、ひのこ!」

 

白いパワーが放出され、七色の光線が放たれ、巨大な岩が数多く打ち出され、電撃が奔り、炎の弾丸が宙を舞う。

それぞれの渾身の技は一直線にロケット団に向かい見事命中して爆発した。

 

「「「うわああああああっ! ヤなカンジー!!」」」

 

ドカーン! キラーン☆とまたしても天井を破り、今度こそロケット団は空の彼方へと消え去っていった。

こうしてポケモンコンテストカナズミ大会は無事に幕を閉じ…る前にリボンの授与式が行われた。

 

「では、コンテス太氏から優勝者のメグミさんにカナズミリボンの贈呈です!」

 

コンテス太から桃色のコンテストリボンを受け取ったメグミは、嬉しそうにそのリボンを眺めていた。

 

「メグミさん、見せて見せて!」

 

「ええ、どうぞ」

 

「うわ~、素敵! メグミさん、私ポケモンコンテストに必ず出ます! そしてリボンをゲットしてみせます!」

 

「ハルカにも自分の旅の目的ができたな。いい事だ」

 

そんなコンテスト出場への意欲を見せるハルカに、ソラトも嬉しそうにしていた。

妹分のハルカに目指す物が出来、成長しようとしてるのを見ているのが嬉しいのだろう。

と、そんなソラトにメグミが頬を赤く染めながら近づいていく。

 

「あ、あの…ソラト君、ポケギア持ってるかしら? もし持ってたら電話番号交換しない?」

 

「え? あー、すいません…俺ポケギアは持ってないんです」

 

「ならこれ、私の番号だから! いつでも掛けてきて!」

 

メグミは自分のポケギアの電話番号が書かれたメモをソラトに手渡していた。

何やら甘いオーラを出すメグミに対し、ソラトは頬を掻きながらメモを受け取り、それを傍から見ていたハルカはムッとして頬を膨らませた。

 

「俺達もジム戦頑張ろうぜソラト!」

 

「ああ、だがその前にサトシとピカチュウはアイアンテールの習得、頑張れよ」

 

「ああ、やってやろうぜピカチュウ!」

 

「ピカピカ!」

 

コンテストに触れて、ポケモンの更なる奥深さと魅力に気がつき、新たなる自分の目標を見つけたハルカ。

そしてピカチュウの特訓を開始したサトシ。果たしてカナズミシティでのジム戦はどうなるのだろうか。

1つ目のジムのあるカナズミシティは、もうすぐである!

 

 

to be continued...




では消えてしまっていたご感想について触れていきたいと思います。

Q,タケシは出ないの?

A,出ない事はないですが出番はまだ先になると思います。そしてタケシポジションとしてソラトがいるので、レギュラーメンバーとしては難しいと思います。タケシ好きの方、申し訳ありません。

Q,サトシって原作以外のポケモンゲットする? ボーマンダ、ミロカロス、クチート辺りなんてどう?

A,ゲットは予定しています。しかし残念ながらボーマンダは別トレーナーの手持ちになる予定で、ミロカロスもソラトの手持ちに居るため難しいと思います。しかしクチートは他のトレーナーが持つという事はあまり考えていなかったので今のところ第一候補になりますね。

皆さんもサトシやハルカ、ソラトにゲットして欲しいポケモンがいたらご意見を頂ければできれば反映していきたいと思います。
流石に全部は無理ですが…2、3体くらいなら追加はできると思いますので!

これからもこの小説をよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。