どうでもいい世界を守るためにークオリディア・コード   作:黒崎ハルナ

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幕間 絶望へのカウントダウン

「アクアラインには千葉の人たちが待機してる! 急いで応援に行くよ!」

 

 新宿西口、有事の際に東京生徒の集合場所として利用されるこの広場に、剣の都市を束ねる姫の勇敢な声が響く。

 臨時代表の舞姫の指揮のもと、東京校の生徒たちは出撃準備を整えつつあった。

 精神的支柱を失ったとはいえ、東京校の戦闘科は選りすぐりの精鋭部隊で揃えられている。一度奮起を促せば、彼らの動きは無駄なく迅速だ。

 現に、神奈川の部隊の準備が完了次第に、直ぐにでも出撃は可能だった。

 

「ヒメさん!」

 

 呼びかけられて舞姫が振り返った先には、パンダの耳つきフードを目深に被り、目の下に濃いクマを作った、三つ編みの少女がいた。舞姫に自らの存在全てを捧げた変態集団こと、神奈川四天王の一人、音無柘榴(おとなしざくろ)が舞姫の側へと駆けて来る。

 

「来たね! 迎え撃つよ! 銀呼(ぎんこ)ちゃんと柘榴ちゃんは先遣部隊の指揮をお願い!」

「承ってた!」

「ヒメさんの為に」

 

 舞姫の隣で忠犬よろしく控えていたウルフカットの少女、佐治腹(さじはら)銀呼が柘榴と一緒に力強い返事を返す。

 彼女も神奈川四天王の一人である。この場に居ない凜堂ほたると八重垣青生(やえがきあおい)がいれは、神奈川四天王が揃っていたが、今は別任務の為に二人は不在だった。

 絶大なる信頼を寄せている戦友が二人もいるという事実は、舞姫に無限とも言える勇気を与える。今の舞姫に不安や懸念など微塵もない。

 

「天河臨時代表! 東京、神奈川共に出撃準備が整いました!」

 

 伝令係の生徒が報告に来て、舞姫は愛用の海軍軍服を翻す。

 

「諸君! 準備は整った! 順にアクアラインに向けて出撃せよ!」

 

 凜と、それでいて雄々しく、舞姫は号令を発した。

 ──その時。

 大気に鞭打つような異音が爆ぜ、紅の稲妻が空を奔った。

 

「えっ……」

 

 生徒の誰かの息を呑む音が聞こえた。

 快晴だった空は、たちまちに赤黒い雷雲が逆巻いて、陽の光を遮る。

 過去に例のない天変に、この場に居合わせた全員が絶句し固まった。

 そして次の瞬間目にしたものに、全員が茫然自失を余儀なくされた。

 雷雲から現れたのは、数えるのすら馬鹿らしいほどの数の〈アンノウン〉。オーガ級に加えて、棺のような形状をした未確認体まで見える。

 極め付けには、空を鯨のように遊泳する、飛行型の巨大〈アンノウン〉。

 地獄の釜が開いたようなおぞましい光景を前にして、抱いたものは皆同じく、混乱と困惑と疑問。

 何故だ、と舞姫は強く歯噛みした。

 何故、東京の空に〈アンノウン〉が現れる。出現用の〈ゲート〉は千葉が防衛している東京湾しかないはずだ。そして、視界に入る全生徒の首筋のクオリディア・コードが、ほのかに光っているのは何故だ。

 舞姫の疑問に応じる答えが、少年少女の悲鳴という最悪の解答で返ってくる。

 〈アンノウン〉、と。

 

 この日、少年少女たちは知る。

 

 ──自分たちがしているのは、戦争だということを。




所謂、その頃神奈川は的なお話。
たぶん次の話的にも入れないと読者置いてけぼり待った無しな気がして。え? 今もだろ?(そっと目逸らし

千文字前後に纏めた所為で人物紹介とかを割と端折ってるので、神奈川四天王とかの詳細が知りたい人は原作の小説をチェックだ!(久しぶりのダイレクトマーケティング

本編裏話 千葉の双璧
霞「可愛い妹の為なら多少の常識は無視できますがなにか?」
神楽「幼馴染の為に貧乏くじは最早何時ものこと!」
霞・神楽「「我ら千葉の双璧にできないことはあんまりない!」」

明日葉「……キモっ」

たぶん二人に酒でも飲ませたら今の台詞をポーズ付きでやってくれる。

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