†ボンゴレ雲の守護者†雲雀さん(憑依)   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回はイーピンが満を持して登場します。しかし、イーピンは原作では中国語を喋っているのですが、私は中国語が全然わからないので。イーピンのセリフは【 】で囲って、中国語を話していることにします。ごめんなさい、イーピン。



風紀9.†唐突に入院して風紀を守ろう†

 

 結論だけ言うと、リボーンは僕に変装技術を教えてくれることになった。

 自宅で待機していろと言われたため、僕は今、自室のベッドで二度寝を試みている。

 雲雀さんの体に憑依してからというもの、睡眠欲が膨れ上がってるからね。

 睡魔には勝てなかったよ。ま、眠るのって気持ちいいから勝つつもりなんてないのだが。

 

 ちなみに。今日は平日だから、本当は並盛中へ行かないといけない。

 しかし、雲雀さんを校則ごときが縛れるわけがないのだ。仕方ない仕方ない。

 

 

「誰だい? 降りてきなよ」

 

 と、ここで。天井からかすかに人の気配を感じ取ったので、呼びかける。

 十中八九リボーンだろうけど、もしかしたら別人――例えば、雲雀恭弥のことを知らずに忍び込んだ恐れ知らずの泥棒とか――かもしれないので、声色に不機嫌オーラを乗っけてみる。

 

 

「ほう。オレの接近に気づくとは、やるじゃないか。パオーン!」

(パオーン? え、リボーンじゃないの?)

 

 直後、天井板がクルリと回転するのに合わせて一人の老人が部屋に飛び降りてきた。

 ゾウの被り物。白いあごひげ。小さな体躯。露出した上半身。老成された雰囲気。

 とてもリボーンとは思えない人物の唐突な登場に僕は内心で混乱する。せざるを得ない。

 

 

「オレはパオパオ老師。ムエタイを極めに極めた男だ。パオーン!」

「……ワォ。で、そのムエタイの達人とやらが僕に何の用かな?」

「オレとの約束を忘れたのか? パオーン!」

「約束? ……ん? もしかして君、リボーン?」

「正解だ」

 

 まさかとは思うが、眼前の人物が変装したリボーンではないか。

 『約束』というキーワードからその可能性に気づいた僕は確証がないまま率直に問いかけると、パオパオ老師はニヤリと笑い、一瞬の内に黒スーツ姿に着替え終える。

 

 

「ちゃおッス。ヒントを与えたとはいえ、すぐに見破ってきたな」

「へぇ……」

 

 いつもの服装に戻ったリボーンが僕の観察眼を素直に褒める。

 一方、僕はリボーンの変装技術に戦慄した。僕は原作でリボーンの変装一覧の中にパオパオ老師のスタイルがあることを知っていたはずだ。しかし、それでもいざ目の前にしたら、パオパオ老師がリボーンだとは全然わからなかった。一切、違和感を抱かなかったのだ。

 

 

「なるほど、これがプロの変装か……」

「オレレベルになれば、性別を隠し通すのも簡単だろうな」

「どうすればいい?」

「そうだな。動物の着ぐるみパジャマを作れ」

「え?」

「犬、猫、兎、鼠、亀、虎、鯨、蛙、羊、パンダ、イルカ、ランボ。何でもいい、いっぱい作って着ろ。そして、着た動物の気持ちになった言動に心掛けろ。これが第一段階だ」

「……それで本当に変装が上手くなるのかい?」

「今のオレは家庭教師だ。相手が誰だろうと、教育に手は抜かないぞ」

「……わかった」

「んじゃ、ヒバリが上達した頃にまた来るぞ」

 

 僕の返事を聞いたリボーンは窓を開けて飛び降りるようにして僕の家から去る。

 自室に一人残された僕は、しばし考える。今、リボーンが提示した方法ではたして変装が上手くなるのか。着ぐるみパジャマなんて作っても無駄にしかならないのではないか。

 

 

(ま、リボーンは変装の達人なわけだし、今は信じるか。それに、色んな動物の着ぐるみパジャマを着たきゃわわな恭華さんを見てみたいしね)

 

 かくして。僕は着ぐるみパジャマの世界へと足を踏み入れた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 さて。そんなこんなで時は過ぎ。僕は着ぐるみパジャマの作成に熱心に取り組んでいる。

 もちろん、並盛町の巡回も忘れない。風紀を守るため、男装モードで今日は朝から巡回している。が、しかし。ただいま体調が最悪です。急に体調が凄まじく悪化しちゃってます。

 雲雀さんの体は頑丈で病気にも強く、滅多に風邪を引かない。となると、これは毒の症状か。

 ここ最近はポイズンクッキングにどうにか慣れてきた頃だったので、完全に油断した。畜生。

 

 うぅ。視界がグルグルしてて気持ち悪い。頭がガンガンとハンマーで殴られているようだ。

 キィィィンと金属系の耳鳴りも脳を揺さぶってくるし、南極にでも放り出されたかのような悪寒と、日中の灼熱砂漠に降り立ったような暑さが交互に迫ってくるし、もうわけがわからない。

 幻覚に酔うとこんな感覚になるのだろうか。

 だとしたら、僕は耐えられる気がしない。先が思いやられるね。

 

 あーうー、あつい。ひざしがやばい。さむい。あつい。あつい。うん、あつい。

 いま、なんがつだっけ? 10がつ? 11がつ? でも、すごくあつい。やける。

 いっそぬいでしまおうか。ここ、あさっぱらのじゅうたくがいだけど、だいじょうぶ。

 あ、でもせいべつばれあるかな? どうしよう。ぬぎかたしだいでなんとかなる? おー?

 ……ん、あれ? ぼく、なにかんがえてる。なんか、おかしい。ぐにゃぐにゃきもちわるい。

 これ、ほんかくてきにまずい。どこか、ひかげできゅうけいしな、いと。

 

 え、う? あれ? なんかうごけない。どういうこと?

 あ、あー。これこんくりーと? へぇ、こんくりーとってひんやりしててきもちいい。

 どうろのまんなかでねころがってたらめいわくかな。でも、いいきもち。

 もうすこし、このままで。あとすこししたらおきるから、うん。ふぃ――。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 人間爆弾と称される香港の殺し屋ことイーピンは日々、修練を積んでいた。

 風船が木に引っかかり、取れなくて泣いている自分より年上の子供を助けたり、腰が痛そうなご老人の荷物運びを手伝ったりと。5歳の少女でありながら、イーピンは善行を積んでいた。

 

 そんなある日。規則正しく朝早くに起床し、並盛町を見回っていたイーピンは見つけた。

 住宅街の路上の中心で、誰かが倒れているのを偶然にも発見した。

 

 

【―――!?】

(訳:大丈夫!?)

 

 イーピンは倒れている人物に駆け寄り、中国語で声をかける。

 が、当の人物の意識は沈んだまま。荒々しい呼吸を繰り返すばかり。

 額に手を当ててみると、酷い高熱だとわかる。汗も凄い。明らかに重症だ。

 

 

(救急車、呼ばないと!)

【――! ―、――――! ―――! ――――!】

(訳:急患! 人、倒れてる! 住宅街! 早く来て!)

 

 イーピンは周辺を一瞥し、公衆電話を見つけ、早速119番に連絡する。

 が、イーピンの言葉は通じない。どうやら電話先の人物は中国語がわからないようだ。

 

 

「あれ? どうしたの、イーピンちゃん?」

 

 困り果てていると、ふと背後から落ち着いた女性の声がかかる。

 イーピンがバッと背後を振り向くと、最近仲良くなった女性がコテンと首を傾げていた。

 

 

(京子さん!)

 

 笹川京子。イーピンが現在居候中の沢田家によく足を運んでくる優しい人で。

 イーピンにケーキの素晴らしさを教えてくれた恩人の一人だ。

 

 

【――――! ―――、――! ――、―――――!】

(訳:京子さん! あの人、重症! 早く、死んじゃう!)

 

 イーピンは京子を見上げて必死に言葉を紡ぐ。京子も中国語はわからない。

 それでも京子はイーピンの様子から事態を速やかに察知した。

 

 

「イーピンちゃん、受話器貸して」

 

 京子はイーピンから受話器を受け取り、倒れている男の容態や居場所を電話先に伝え、救急車を要請する。その後、京子はイーピンの力を借りて男の体を日陰に移す。

 やっぱり京子さんは頼りになる、と。イーピンの京子への尊敬度がぐんと上昇した。

 

 

「えッ? この人、まさか……!?」

 

 京子の驚愕の声を置き去りにして。

 イーピンはキラキラとした眼差しを京子に向けるのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 重症だった人物は並盛中央病院に運び込まれ、適切な治療が施された。

 当の患者は今、病室で深い眠りについている。

 

 イーピンは椅子に座って、ベッドで眠る患者をジッと見つめていた。

 人を助けようとしたが結局は救急車を呼べなかったイーピンは、己の未熟さを悔いた結果、患者が目覚める時までは経過を見守りたいと思ったのだ。

 

 

「……ん」

 

 昼下がりの日光が、白いカーテンの隙間から差し込む中。患者がおもむろに目を覚ます。

 未だ意識がハッキリしていないのか、どこかぼんやりとしている。

 

 

「こ、ここは……?」

「病院ですよ、雲雀先輩」

 

 患者こと雲雀が無意識に呟いた問いに、イーピンの隣の椅子に座る京子が答える。

 雲雀は京子の姿を意外そうにしばし見つめる。イーピンの存在にはまだ気づいていない。

 

 

「君は、笹川京子だったか。助かったよ」

「先輩を助けたのは私じゃなくてイーピンちゃんですよ」

「……そう」

【――――!? ――――、――――――! ―――、――――――! ―――――!」

(訳:京子さん!? イーピン、何もしてない! 救急車、呼べなかった! 助けてない!)

 

 京子は雲雀の感謝を受け取らず、代わりに隣のイーピンを抱きかかえる。

 自分は力になれなかった。そう考えていたイーピンは京子の言動に困惑する。

 どうにか雲雀の誤解を解こうと言葉を畳みかけるも、その行為は途中で遮られた。

 雲雀が手を伸ばし、イーピンの頭にポンと乗せたからだ。

 

 

「?」

「ありがとう、イーピン」

 

 雲雀の意図がわからず、雲雀に目を向けると。雲雀はよしよしとイーピンの頭を撫でて。心からの感謝を告げ、笑顔を浮かべた。もしも今の雲雀が冷静に頭の回る状況であれば、より雲雀らしくあろうと、少なくとも笑みを浮かべることはなかった。が、意識が朦朧としているこの時の雲雀に、そのような判断能力はなかった。

 

 

(mpt#:2t9-m%&!?)

 

 今の動作で体力を使い切った雲雀が再び眠る中、イーピンの頬はカァァと赤く染まっていた。

 脳裏に映るのは、先ほどの雲雀の屈託のない輝かしい笑みのラッシュ。

 破壊力抜群な雲雀の笑顔を前に、イーピンは。あっという間に。雲雀に心から惚れた。

 雲雀の真の性別を知らない現状のイーピンは、まさしく知らぬが仏の好例であった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ちなみに。イーピンは恥ずかしさが頂点に達すると、筒子(ピンズ)時限超爆を発動する。額に九筒が現れ、八筒、七筒と切り替わる形でカウントダウンが為され、一筒になったのを最後に、盛大に自爆をするのだ。

 当然ながら今回も恥ずかしさのあまり、無意識に筒子時限超爆を発動させようとした。

 あわや大惨事だったのだが、ちょうど同時期に入院していて、リボーンと愉快な仲間たちのハチャメチャっぷりに巻き込まれていたツナにより、筒子時限超爆の被害が雲雀や京子に及ぶことはなかった。

 

 




雲雀恭弥→本作の主人公。本名は雲雀恭華。今は凡人が憑依している。雲雀さんが毒への耐性をつけるのと同様に、凶悪性を増していったポイズンクッキングにやられちゃった模様。
リボーン→ツナを立派なボンゴレ10代目にするために、イタリアから派遣された凄腕の殺し屋。雲雀を着ぐるみパジャマの道へと誘導しているが、その心中やいかに。
イーピン→人間爆弾と称される香港の殺し屋(5歳)。礼儀正しく、暇あれば、居候先の沢田家に恩を返している。恥ずかしいことに出くわすと、問答無用で筒子時限超爆を発動させる。
笹川京子→主人公ツナの憧れのクラスメイト。色々とぶっ飛んだ兄の背中を見て育っているせいか、天然属性を育んでいる。
沢田綱吉→ボンゴレ10代目候補たる主人公かつ、非常に優秀な爆弾処理班。筒子時限超爆による並盛町の危機を幾度もなく救ってきた陰ながらの英雄、と言えなくもない。

 というわけで、9話は終了です。イーピンの口調の難易度が高い気がしたせいで、投稿が遅れた件。中国語をもっときちんと学んでおけば、早めに投稿できただろうに。やれやれ。

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