どうも、ふぁもにかです。お、お久しぶりですね(震え声)。ここから先の展開をどの程度原作沿いにして、どの程度オリジナル展開を入れたものかと考えに考えていたら、いつの間にか1年3か月以上もエタっていた件について。いやぁ、あまりの時の流れの早さにドン引きですわ。とりあえず、今後の展開の方針は大体固めたので、これからは遅くとも月1で更新したい所なのです。
「雲雀恭弥が10年前と入れ替わった!?」
「雲のボンゴレリングを所持しているぞ! 間違いない!」
「入江隊長のタイムトラベル技術、目の前で見られるとは……!」
「さすがは入江隊長。ボンゴレの罠すらも見越してこのような援護射撃をなさるとは!」
「これは好機だ! いくらボンゴレ最強の守護者:雲雀恭弥といえど、この時代の戦い方を知らない、10年前の奴になら勝てる……! 恐れることはない!」
グロ・キシニアがクローム髑髏に仕掛けた発信器に誘導されるがままに、ボンゴレアジトから離れた倉庫予定地へとのこのこ誘い出されてしまった、ミルフィオーレのボンゴレ強襲部隊は歓喜していた。倉庫予定地で待ち受けていた雲雀恭弥との戦闘直前で10年前の雲雀と入れ替わったからだ。リングの炎と匣兵器を駆使して戦う新時代のスタイルを知らない10年前の雲雀相手であれば、負けることはまずありえない。強襲部隊は心から安堵していた。
「……」
(はかったなぁぁああああああ!? 10年後の僕ぅうううううううう!?)
一方。ミルフィオーレの強襲部隊に取り囲まれている恭華(男装中)は、表向きは平静を装っているものの、内心では混乱の渦中だった。無理もない。リングから巨大な死ぬ気の炎を生み出す方法について、六道骸からアドバイスを受けた恭華が物思いにふけっていたタイミングで、入江正一から不意打ちの10年バズーカを喰らった時、恭華はついに幻騎士戦が始まるのかと身構えていた。なのに。10年バズーカのピンク色の煙が晴れた時。恭華の視界に入ったのは、幻騎士ではなく、大人数のミルフィオーレ構成員。加えて、これ見よがしに恭華の目の前を舞っていた紙に記されていた、10年後の僕からのメッセージ。
『後は任せたよ ┠ヽ(*´▽`*)ノ┨ 10年前の僕ww』
明らかに、幻騎士戦の前に10年前の僕と入れ替わる気満々のメッセージに、恭華はとにかく困惑していた。
なにやってんの!? なにやってるのさ、10年後の僕!?
なんで幻騎士と戦う前の、ミルフィオーレのボンゴレ強襲部隊との戦闘前のこのタイミングで僕を10年後に呼び寄せたの!? ヤバいって。この状況はかなりヤバい。この強襲部隊はミルフィオーレ日本支部のほぼCランク以上の戦士で構成されてるわけで。10年後の原作雲雀さんだからこそ強襲部隊を無傷で撃破できたけど、それと同じことを今の凡人の、それも未来に来たばかりの僕にもできると思うのはあまりに楽観的だ。
……とはいえ、賽はもう投げられた。10年後の僕の意図はわからない。だけど、嘆いていたって意味はない。ただ殺されるだけ。だったら、僕は僕のベストを尽くすしかない。どうにかしてこの強襲部隊を全滅させて、さっさとメローネ基地に行かないと、山本くんとラル・ミルチさんが幻騎士に殺されてしまうのだから。
「
ひとまず僕は状況の飲み込みが凄く早い風を装って発言する。
10年後の未来にやってきたばかりの僕がいきなり、足元に転がっている、10年後の僕が使っていたっぽい匣兵器を拾い上げて使用したら、怪しいなんてレベルじゃないからね。
「ッ! 雲雀恭弥に学習させるな! 一斉に攻撃するぞ!」
僕の状況把握の早さを危険視したミルフィオーレ構成員の号令を契機に、強襲部隊は各々リングに炎を灯して匣に注入し、動物を模した匣兵器を展開する。よし、その一連の動作を僕に見せてくれたのはありがたい。これで僕も匣兵器を使って戦える。
「ふぅん。何やら面白い玩具を使うみたいだね。僕も試しにやってみようか。跳ね馬の発言の真偽を確かめられるし、たまには草食動物の戦い方を取り入れるのも趣があるしね」
「なに!? 雲雀恭弥がボンゴレリングに炎を灯したぞ!?」
「バカな!? なぜ10年前からやってきたばかりの奴がリングの炎の灯し方を!?」
僕は強襲部隊に見せつけるように右手中指にはめているボンゴレリングに雲の炎を灯す。続いて、僕が当然のようにリングに死ぬ気の炎を灯したことへの強襲部隊の動揺が冷めやらぬ内に、足元に転がる複数の匣を一気に拾い上げ、その内の1つに雲の炎を注ぎ込んだ。
ん? 雲雀さんってこんなにたくさん匣兵器持ってたっけ。まぁいいけど。
それよりまずは強襲部隊の数を減らすべきだ。連中が動く前に速攻で仕掛けるのが最上だろう。
ってことで――頼んだよ、ロール! やっちゃってくださいよ、ロール大先生!
僕が雲の炎を注入した匣を強襲部隊に向けると、匣から匣兵器が飛び出してくる。10年後の雲雀さんの匣兵器こと雲ハリネズミのロールは優秀な匣兵器だ。雲の炎の属性『増殖』を活かして、球状に膨らむ攻撃は、敵を串刺しにもできるし、球体の内側に敵を閉じ込めることができる。このあまり広くない倉庫予定地において、雲ハリネズミの効果は絶大だ。
ロールへの期待を胸に抱いていた僕は眼前に出現した匣兵器を見やる。
が、そこに「きゅー!」と可愛らしく鳴く、小柄な雲ハリネズミはいなかった。
代わりに、「ヴォー!」と野太く唸り声を上げる、灰褐色のカバがずっしりと鎮座していた。全身に雲の炎をしかと纏う雲カバは、見るからに迫力がある。
…………あれ。ロール、さん? 何か、太った?
「ヴォォォォオオオオオオ!!」
「ぐわぁッ!?」
「がふッ!?」
「くそ、何て重い攻撃だ! 止められない!」
思わず思考停止する僕をよそに、雲カバは咆哮とともに強襲部隊に突っ込み、己の重さを十全に活かした突進で強襲部隊を次々蹴散らしていく。一部の強襲部隊は雲カバを倒すべく死ぬ気の炎を纏わせた曲刀や槍で雲カバに攻撃するも、雲の炎の増殖効果でどんどん己の皮膚や体重を増やしていく雲カバに傷1つつけられない。
ハリネズミじゃない、カバだこれーー!!! あれ、あれあれあれ? 僕の足元に転がっていた匣だからてっきり10年後の僕が使ってた匣兵器だと思ってたんだけど、間違って敵の匣兵器を使っちゃったかな。ハハハ、僕のうっかりさん☆ (・ω<) ……でもこの雲のマークで装飾されてる匣、10年後の僕のっぽいんだよなぁ。
「今だッ!」
「喰らえぇぇぇぇ!」
「――おっと」
僕が雲カバを凝視している今を好機と見て、背後から強襲部隊が死ぬ気の炎を纏わせた武器を振るおうとしてくる。雷ホタルを、雲蛾を、雨コウモリをけしかけて攻撃してくる。死ぬ気の炎を纏った武器に、今の僕の持つただのトンファーでは分が悪い。僕は雲カバが突進で切り開いた安全地帯へと駆ける形で強襲部隊の攻撃を回避しつつ、次の匣に雲の炎を灯したボンゴレリングを差し込み、匣から飛び出したトンファーを装備し、ボンゴレリング経由でトンファーに雲の炎を纏わせる。そして、雷剣を振るうミルフィオーレ構成員の顔をトンファーで殴って気絶させ、彼の服を片手で握ると、強襲部隊の匣兵器による攻撃の盾として利用する。
「ぐぎゃああああああ!!」
僕の肉壁となった構成員が、仲間の攻撃を喰らって悲鳴を轟かせる中。僕は次の匣に雲の炎を注入し、開匣する。次こそはロールが現れてくれるはず。そう期待した僕の目の前に出現したのは、全長70センチほどの、やけに大きく黒光りする昆虫だった。その昆虫こと雲アリは素早い動きで雨コウモリへと跳躍し、思いっきり咬みついていく。
あるぇ? ロールってハリネズミだよね? 哺乳類だよね?
昆虫だったっけ? あんなに鋭い顎、持ってたっけ? 仮面ライダーみたいな顔してたっけ?
……うん。アリだねこれ。どう見てもアリだ。少なくともハリネズミじゃない。
え、待って。嫌な予感がしてきたんだけど。まさか10年後の僕って雲ハリネズミを持ってないの? ウソでしょ!? 今までロールがいてくれてること前提で幻騎士戦の立ち回りを考えてたのに、この展開は想定外すぎるってば!
って、違う。問題はそれだけじゃない。10年後の僕が雲ハリネズミを持っていないってことは、ツナくんがボンゴレの試練を受けてない可能性すらある、これが一番ヤバい。だって、10年後の雲雀さんはツナくんをロールの球針態の中に閉じ込めて酸欠に追い込む形で初めてボンゴレの試練が始まったのだから。ボンゴレの試練を通して、ツナくんは
うぅぅぅ。10年後の僕は一体何を考えてるのさ。わけがわからないよ。
10年後の僕が雲ハリネズミを所持していない可能性の戦慄しつつも、僕は肉壁のミルフィオーレ構成員がまだ機能している内に次の匣に雲の炎を注入する。結果、開匣とともにドシュゥゥとの音を引き連れる形で、匣から白色の煙幕が噴出し、倉庫予定地の景色を白一色に塗り潰した。
「な、何だ!? 何が起きた!?」
「ちぃッ、これでは何も見えやしない!」
「雲雀恭弥め、煙に紛れて我らを奇襲するつもりか!?」
(まーた原作の雲雀さんが持ってなかった匣兵器だよ……。でも、煙幕は都合がいいね。いつまでも敵を盾にはできないし、今の内に残りの匣も全部開けちゃおうっと)
僕は速やかに開匣されていない匣に次々と雲の炎を注入する。だが、2つの匣は雲の炎を入れても何も反応を見せない。怪訝に思いつつも、次の匣に雲の炎を注入すると、匣から匣兵器が飛び出した。煙幕で視界が不明瞭な中でも、何かと優秀な雲雀さんボディは匣兵器の姿形を捉えた。その匣兵器は、背中に大量の針を抱えるその匣兵器は、間違いなく雲ハリネズミだった。
ロール! ロールじゃないか!
良かった! ロールがいたよ! 安心した。凄くホッとした。
これなら、僕の影響で原作が悪い方に大幅に変化している説は考えなくて良さそうだ。
雲ハリネズミが敵へと突撃する中、段々と煙幕が晴れていく。すると、僕の視界に入ったのは――二回りほど大きくなって、強襲部隊に攻撃されまくっている割には無傷のまま暴れる雲カバ。増殖属性を活かして巨大な球針態を作り出し、敵を串刺しにする雲ハリネズミ。そして、何気に40匹くらいに増殖して強襲部隊やその匣兵器を襲撃する雲アリたち。
え。なに、この地獄絵図。僕はいつの間に地球防衛軍の世界に来ちゃったの? 大きいアリに蹂躙される人間って絵面が凄くホラーなんだけど。……雲アリが味方で本当に良かったよ、うん。
「何てことだ、このままでは全滅してしまう!」
「ぐぅ、どうしたら奴の匣兵器を止められるんだ……!」
僕は改めて周囲を一瞥し、状況を確認する。強襲部隊の面々は4割ほどが既に倒れ、残りは僕の繰り出した雲ハリネズミ、雲カバ、雲アリの対処で手一杯のようで、僕の元までたどり着く猛者は存在しない。急場は乗り切ったと判断していいだろう。この様子なら、ミルフィオーレの増援が来ない限りは、もはや僕が直接戦わずとも問題ない。
僕は一旦、強襲部隊の相手を頼もしい匣兵器たちに任せ、先ほど開匣できなかった2つの匣を見やる。その2つの匣は何の装飾もされていない、藍色と水色の匣だった。
この色、もしかして匣を開けられる炎の種類を示してるのかな? ということは、藍色は霧の炎。水色は雨の炎になるんだけど……え、雲雀さんって雨の炎は使えなかったよね? 雲雀さんの体を流れる波動の種類は雲と霧だけだったはずだし。……いや、もしかして。
僕は試しに付近に転がるミルフィオーレ兵の指から目的の指輪を抜き取って己の指に装着し、死ぬ気の炎を灯そうとする。すると、指輪から小さいながらも澄んだ水色の炎が灯しだされた。
おおおおおお!! 雨の炎だ! 雲雀さんボディから雨の炎が出せてる! なんか新鮮だ!
これはきっと、僕が雲雀さんに憑依したことで、雲雀さんの体内の波動の性質に変化が発生した結果だろう。僕に幻術が通じない、
僕は強襲部隊と戦闘中という今の状況を半ば忘れて、期待を胸に小さな雨の炎を水色の匣に注ぎ込む。結果、現れたのは、僕の期待を裏切る代物だった。それはコイキングみたく、おっさんのような声質で、床の上でビタンビタン跳ねる雨金魚。
「コイコイコイコイコイ……」
「……」
(アイエエエ!? コイキング!? コイキング、ナンデ!? いや、なんでこんなの持ってるの、10年後の僕!? 10年間でどんな心境の変化があれば、こんな役に立たない匣兵器を携帯するようになるの!? 心の病気だったりするの!? コワイ! 見てはいけない闇を覗いちゃった感があって凄く怖いんだけど! 見なかったことにしたいんだけど!?)
しばし絶句状態で雨金魚を眺めていた僕は、最終的に雨金魚をそっとしておくことに決めた。僕は雨金魚が視界に入らないように、雨金魚のことを一切考えずに済むように、トンファーに雲の炎を纏わせ、僕の匣兵器に苦戦している強襲部隊へと積極的に攻撃を仕掛けていく。
強襲部隊の全滅には今しばらく時間がかかりそうだった。
雲雀恭弥→本作の主人公、かつボンゴレ雲の守護者。本名は雲雀恭華。今は凡人が憑依している。10年後の自分に盛大に振り回されながらも、なんだかんだで無傷で強襲部隊を全滅できそうな辺りが、さすがの雲雀さんクオリティ。
ミルフィオーレのボンゴレ強襲部隊→ミルフィオーレ日本支部に所属するホワイトスペルとブラックスペルの内、Cランク以上の優秀な戦士で編成されている、割には原作では雑魚敵扱いされていた可哀想な面々。まぁ10年後の雲雀さんが相手だったから仕方ないね。
恭華「あれ? 僕が霧シラスを見た時の反応、描写し忘れてない?」
ふぁもにか「いい感じのリアクションを思いつけなかったので、ひとまずカットしました」
霧シラス「……(涙)」
というわけで、38話は終了です。序盤にあった戦闘への緊張感はどこへやら、段々と凡人憑依者のリアクション芸が主体となる、そんな感じの話でしたね。しっかし、執筆するのが久しぶりゆえに、凡人憑依者のテンションが今までと違わないか不安になっちゃいますな。