†ボンゴレ雲の守護者†雲雀さん(憑依)   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回の話はヴァリアー編で書きたかったシーン第1位だったりします。ですが今回、私はお酒ブーストで執筆意欲を半ば無理やり書き立てて描写していますので、文章の拙さが少し目立つかもしれませんね。なお、今回は前半は主にレヴィアたん視点、後半は主に大空戦を観戦するリボーンたち視点でお送りします。



風紀28.†自力本願で風紀を守ろう†

 

 

「――ボス! ありがたき幸せ!」

 

 レヴィ・ア・タンもとい女体化したレヴィアたんは現在、歓喜の境地に至っていた。

 ザンザスが雷のボンゴレリングを設置したポールを憤怒の炎を注いだ銃を用いて破壊してくれたおかげで雷のリングがレヴィアたんの目の前に落ち、それを拾ってリストバンドの凹みに差し込むことでデスヒーターという名の猛毒を解除できたからだ。それは、ザンザスがレヴィアたんの存在をはっきりと認めたことを示している。

 

 沢田綱吉の雷の守護者の牛ガキを打ち破った私をボスが必要とされている。これほどの誉れが他にあろうか。ゆえに。ボスの期待に応えるために私にできることは、一人でも多く。毒に苦しみ動けない、沢田綱吉の守護者を潰すこと。

 

 

(ベルも私と同じくボスのお慈悲により毒から解放された身、ならばベルよりも多くの守護者を狩らないといけないな! ボスのために! そしてボスから寵愛を――ふへへ)

「さて、まずは近くの牛ガキから殺そうか。どこにいる? さっきのボスの炎で焼け死んだか?」

 

 沢田綱吉の守護者殺しのMVPを獲得した私にボスがデレにデレまくって最上級の褒美をプレゼントする。そのような、まず現実にはなり得ない未来を脳内で構築しつつも、同時にレヴィアたんは自身のすぐ側でデスヒーターに苦しんでいたはずのランボを探す。

 

 

「見つけた。……よし、まだ息はありそうだ。ならばその忌々しい才能:電撃皮膚(エレットゥリコ・クオイオ)とともに、盛大にミンチにしてやろう!」

 

 レヴィアたんはザンザスの憤怒の炎の爆風で少々吹っ飛ばされていたらしいランボを見つけ、トドメを刺すべくランボとの距離を詰めていく。雷の守護者戦にて重傷を負って、入院していた所をチェルベッロ機関により強制的に大空戦に参加させられたゆえに、昏睡状態のランボは抵抗できない。レヴィアたんの致死レベルの攻撃を回避できない。

 

 ランボの命は風前の灯火と化していた。だが、その時。銃声が轟いた。レヴィアたんはランボへと駆けるその足をとっさに止めた。直後、レヴィアたんの眼前を銃弾が突き抜ける。もしもレヴィアたんが今、止まっていなければ、銃弾は彼女の胴体を抉っていたことだろう。

 

 

「誰だ!?」

「君ごときに名乗る名前はないよ」

 

 レヴィアたんは銃弾の飛んできた方向を、屋上の扉の方へと勢いよく振り向く。

 すると、レヴィアたんを鋭く見据える雲雀恭弥の姿があった。

 

 

「き、貴様は、雲雀恭弥!」

「へぇ。僕の名前、覚えたんだ。強者に首を垂れて命を乞うしかできない草食動物らしい、殊勝な心掛けだね」

「……この牛ガキを助けに来たか。そのような性格には見えなかったが」

「それは違う。9代目の実子とやらは沢田綱吉に譲ったからね、代わりの獲物を探してたんだ。ちょうどいい所に君がいてくれて良かったよ」

 

 雲雀の一挙手一投足を見逃してなるものかと、レヴィアたんは雲雀を警戒しながら雲雀と対話する。と、ここで。レヴィアたんは気づいた。雲雀の呼吸が異様に荒く、自分を見つめる視線があまり定まっておらず、そして足元がふらふらとおぼつかないことを。

 

 

(まさか!?)

「貴様、デスヒーターを解除できていないのか? 驚いたな、まさかあの猛毒の影響下にあってなお、そのように動けるとは……」

「この程度で動けない君が軟弱。それだけの話だよ」

「……そうだな。認めよう、貴様は強い。あのゴーラ・モスカを無傷で下したその実力。そして毒を制する体力と精神力。どれをとってもヴァリアークオリティに匹敵する。だが、毒で消耗した今の貴様に敗れるほど、ヴァリアーは甘くないぞ!」

 

 レヴィアたんは自身の背中にひっかけていた8つの電気傘(パラボラ)を上方へ投げ飛ばす。8つの電気傘は円を描くような配置に移動し、空中で静止。その後、バチバチと電気を溜め始める。現状、雲雀は8つの電気傘の中心地点に立っている。このまま動かなければ、雲雀はレヴィアたんのレヴィ・ボルタの餌食となるだろう。ゆえに。雲雀は走り出す。レヴィ・ボルタの効果範囲から逃れつつ、電気傘を手放し手元に武器のないレヴィアたんをフルボッコにするために。だが、雲雀の行動はレヴィアたんの想定の範囲内であった。

 

 

「がッ!?」

 

 一筋の雷撃が、雲雀の脇腹を貫いた。思わぬ衝撃に雲雀は吐血しつつ、その場に倒れる。後ろを見ると、8つの電気傘の内、1つが溜めていた電気を失っている。そう。レヴィアたんの8つの電気傘は同時にしか雷撃を放出できないわけではないのだ。とはいえ、1つの電気傘から放出される雷撃の威力は大したものではない。音もバチバチとうるさく、雷撃の速さも目視で十分対応できる程度であるため、回避はさほど難しくない。それでも雲雀が雷撃をかわせなかったのは、デスヒーターにより視野やとっさの判断力が著しく衰えているからといえよう。

 

 

「これで終わりだ! レヴィ・ボルタ!」

 

 レヴィアたんは己の勝利を確信しつつ、高々と技名を宣言する。すると、電気を充電し続けていた残り7つの電気傘の向きがグルンと、雲雀の倒れている位置へと修正される。そして、次々と電気傘から雷撃が発射され、雷の猛威が、暴力が、その場から動けない雲雀に容赦なく降り注いだ。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 レヴィアたんのレヴィ・ボルタを為す術もなく喰らってしまった雲雀。ランボのような電撃皮膚がないのにレヴィ・ボルタの雷を浴びた雲雀は悲鳴も呻き声もなしにバタッと力なく倒れる。雲雀の学生服はズタボロで。雲雀の体からはプスプスと黒煙が立ち上っている。

 

 

「あああ! ひ、雲雀殿が!?」

 

 雲雀の痛々しい姿に、観戦席付近に備えつけられた大型ディスプレイを通じて戦況を見守っていたバジル――ボンゴレ外部組織こと門外顧問組織CEDEF(チェデフ)所属の少年――がもはや悲鳴に近い狼狽の声を上げる。

 

 

「おいおい、こりゃあヤバいぞ! 死んだっておかしくねぇ!」

 

 バジルに続き、Dr.シャマルも平静を失いつつあるようだった。普段は野郎の安否なんて一々気にかけないDr.シャマルだが、雲雀はツナの雲の守護者だ。もしもここで死んでしまったら、一気にツナ陣営が精神的に瓦解しかねない。そうなれば、後はヴァリアーの独壇場だ。シャマルが焦らないわけがなかった。

 

 

「いや。まだ生きてるぜ、コラ!」

 

 焦るバジルとDr.シャマルをよそに、冷静に雲雀の容態を見定めていたコロネロ――軍服を着込み、青色のおしゃぶりを持つアルコバレーノ――が雲雀の生存を確信する。直後。

 

 

「……ぃ」

「なッ!? バカな、私のレヴィ・ボルタをまともに喰らってまだ生きているだと!?」

 

 ディスプレイの向こう側に映る雲雀が、わずかに唇を震わせた。

 すっかり雲雀を殺したものと思い込み、8つの電気傘を己の背中に収納していたレヴィアたんは戦慄した。デスヒーターに抵抗できたことといい、この男はどこまで規格外なのかと。

 

 

「す……し…、…ん……い…、…みは」

「貴様、さっきから何を言っている? 命乞いか?」

 

 雲雀は死んでいないものの、瀕死には違いない。ボスほどではないにしても、雲雀ほどの規格外が死ぬ間際にどのような言葉を残すのか。ふと興味を抱いたレヴィアたんは不用心にも雲雀に近づき、雲雀の声を聞き取ろうとする。

 

 

「素晴らしく、運がないね、君は」

 

 瞬間、雲雀は不敵な笑みを浮かべ、レヴィアたんを思いっきり見下す発言を繰り出した。

 

 

「な、なに!?」

 

 第三者目線で見れば、戦況はどう考えてもレヴィアたんの勝利で。雲雀恭弥の敗北である。

 それなのに、あくまで自分が勝ったかのように振舞う雲雀にレヴィアたんは思わず狼狽える。

 

 その隙に雲雀は懐から黒いムチを取り出し、残るかすかな力を振り絞ってムチを振るう。

 その方向は――昏睡中のランボのモジャモジャ頭の中。そして、雲雀はムチを引っ張り戻す。

 はたして、雲雀のムチはランボの10年バズーカを絡め取っていた。

 

 

「あ、あれはランボ殿の10年バズーカ!」

「――なるほど。雲雀の奴、考えたな」

「? どういう意味だ、コラ!?」

「ザンザスに吹っ飛ばされた雲のボンゴレリングの行方がわからない以上、雲雀は自力でデスヒーターを解除できない。今は束縛を嫌う意地の力で動けても、後々威力の増すデスヒーターに抵抗できずに動けなくなるのはわかりきっていたはずだ。だからこそ、雲雀は獄寺を助けつつも、一目散に屋上を目指した。10年バズーカを持つランボの元に向かった」

「そうか! あの野郎は最初から10年後の自分に後を託すつもりだったのか。やれやれ。猛毒で苦しいだろうに、よくそこまで頭が回るもんだ」

 

 

 観戦席にて、バジルが雲雀がムチを巧みに活用して手にした10年バズーカに着目する中。リボーンはニッと口角を吊り上げる。意味深な言葉を呟くリボーンにコロネロが素直に疑問を呈すると、リボーンは謎を1つ1つひも解くように雲雀の意図を解説する。それによりようやく雲雀の策を悟ったDr.シャマルは、雲雀の意企に感心した。

 

 

「この戦い、僕の勝ちだよ」

 

 雲雀は10年バズーカの砲口を己に向けて引き金に指を掛ける。

 レヴィアたんは10年バズーカの恐ろしさを知っている。あの雑魚極まりなかった牛ガキですら、10年バズーカによって私を圧倒する強敵に成り果てた。なのに。現時点でモスカに圧勝できる雲雀恭弥が10年後の自分と入れ替わったとしたら。その後の展開なんて想像するまでもない。

 

 

「さ、させるかぁぁああああ!」

 

 レヴィアたんは背中から電気傘を一本取り出し、雲雀の体を突き刺すべく投擲する。が、電気傘が雲雀に刺さるよりも早く、雲雀は10年バズーカの引き金を引き終え、バズーカ内部の弾が雲雀に命中し、雲雀を中心にピンク色の煙が生じ、膨れ上がった。

 

 そして。煙が晴れた時。ただそこに立っているだけで屋上をビリビリと威圧させる人物が現れた。ボサボサの黒髪にムスッとした顔は変わらずに。長身痩躯を黒スーツで着飾った、カリスマに満ち満ちた10年後の雲雀恭弥が満を持して、顕現した。

 

 

「……ここ、どこ?」

 

 10年後の雲雀は誰に問うでもなく、呟いた。

 

 




雲雀恭弥→本作の主人公、かつボンゴレ雲の守護者。本名は雲雀恭華。今は凡人が憑依している。ここの恭華さんに守護者戦を1回戦から観戦させたメタ的な理由は、大空戦で恭華さんに10年バズーカを使って10年後の恭華さんと入れ替わってもらうためだったりする。
リボーン→ツナを立派なボンゴレ10代目にするために、イタリアから派遣された凄腕の殺し屋。かつ、黄色のおしゃぶりを持つ呪われた赤ん坊:アルコバレーノの1人でもある。プロの殺し屋の観点からツナたちの戦いを上手に解説するポジションである。
コロネロ→青色のおしゃぶりを持つ呪われた赤ん坊:アルコバレーノの1人。元々軍人であり、笹川了平の師匠ポジションとして彼を鍛え上げた。語尾に「コラ」をつけることが口癖である。リボーンの解説を促す要員として、一定の役割を果たしている。
バジル→ボンゴレ門外顧問機関CEDEFに所属しているイタリア人の少年。ザンザスと戦うツナのために修行相手となっていた。大空戦におけるリアクション要員その1。
Dr.シャマル→闇医者かつフリーの殺し屋なキス魔おじさん。かつて2世代前のヴァリアーからスカウトされたことがあるほどの実力者。以前、ベルフェゴールと戦う獄寺のために師匠として指南を行った。大空戦におけるリアクション要員その2。
レヴィ・ア・タン→この度、哀れにも黒髪少女なレヴィアたん(23)となってしまったヴァリアーの雷の守護者。おそらく原作レヴィよりも電気傘を巧みに扱えているかもしれない。

 というわけで、28話は終了です。そこに10年バズーカがあったからってノリで雲雀さんには10年バズーカを使用してもらいました。もちろん、10年後の雲雀さんも男装しているだけで、真の性別は女性ですぜ。当たり前じゃないですか!

 ……ふと思ったのですが。レヴィ・ア・タンを女体化させないで雲雀さんに一目惚れさせる展開にしても面白かったかもですね。己がホモなのかどうか困惑しつつも雲雀さんへの恋慕が止められないって感じで。まぁもう今さらですがね。

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