†ボンゴレ雲の守護者†雲雀さん(憑依)   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。何だかサブタイトルが邪推を禁じ得ないノリになっていますが、意味深な展開は特に待っておりません。ところで、今回は構成がちょっと変則的です。具体的には、雲雀さん視点→他のキャラ視点→雲雀さん視点となっております。ご注意ください。



風紀23.†夜の語らいで風紀を守ろう†

 

 

 ミイラ男こと包帯グルグル巻きな獄寺くんに後を託された、その日の夜。

 ツナくん一派とヴァリアーとのリング争奪戦4回戦こと雨の守護者戦の幕が下ろされた。

 僕との模擬戦で経験値を積んだ時雨蒼燕流の継承者:山本くんと、少年時代に当時のヴァリアーのボスこと剣帝テュールを殺せるほどに強い特攻隊長:スクアーロとの対決の舞台は『アクアリオン』。外と完全に遮断された、密閉空間な並盛中の校舎B棟にて。天井の至る所をぶち壊した上で、最上階のタンクから階下に水が延々と注ぎ込まれるのだ。結果、戦闘が続けば続くほど水位は上がり、戦いにくくなる。また、一定時間が経過したら、獰猛なサメが投入される手はずとなっている。要するに、面倒な戦闘エリアだ。

 

 ところで。僕は今、校舎A棟の屋上から雨の守護者戦を観戦している。

 雨の守護者戦は校舎B棟の外壁に設置された巨大スクリーンに鮮明に映し出されるため、わざわざツナくんたちの近くで対決を観戦する必要がないのだ。

 というか、了平くんがいい加減、僕を円陣に組み込みたいとメチャクチャうずうずしていたので、了平くんが強制行使に走る前に一旦、ツナくんたちと距離を置きたかったのだ。

 だって、円陣なんて群れる行為筆頭なことを勧められたら、雲雀恭弥としてツナくんたちを咬み殺さざるを得なくなっちゃうし。数日後に大空戦が控えているのに、皆を痛めつけるのはNGだ。

 

 さて。僕が遠目で観戦している雨の守護者戦だが、原作とは違う展開を辿った。

 山本くんはスクアーロ相手に油断せず、最初から全力でぶつかった。

 あまり途中で会話を挟まず、スクアーロが時折混ぜる搦め手にも引っかからず、ひたすらに己の磨いた時雨蒼燕流を信じて、次々と剣技を繰り出す。時には複数の型を繋げた奥義を解き放つ。とてもついこの間までただの天才野球少年だったとは思えない剣さばきだ。

 だが、山本の猛攻は、以前に時雨蒼燕流の使い手を殺した経験を持つスクアーロには通じない。初見殺しの要素の強い三の型・遣らずの雨や五の型・五月雨もスクアーロには届かない。

 スクアーロが大して怪我を負わない一方で、次々と裂傷を重ねる山本くん。

 このまま培った経験の差でスクアーロが圧勝するかと思われた。が、山本くんの八の型・篠突く雨を起点とした奥義にスクアーロが対応できず、山本くんが土壇場で自力で開発した九の型・うつし雨をモロに喰らって、スクアーロは敗北した。

 なぜ時雨蒼燕流の八の型にスクアーロが対応できなかったのか。答えは簡単、時雨蒼燕流は継承者がそれぞれ独自の型を1つ追加してから次世代に引き継がせるからだ。ゆえに、スクアーロが以前戦った時雨蒼燕流の使い手と山本くんの八の型が一致せず、対応できなかった。

 

 だが、スクアーロは死ななかった。山本くんは油断こそしなかったものの甘さは捨てず、峰打ちでスクアーロを倒したからだ。一定時間経過により獰猛なサメが校舎B棟に放たれる中、山本くんは動けないスクアーロを助けようとしたが、剣士の誇りを重視したスクアーロは死を選び、サメに身を投じた。かくして、雨の守護者戦は山本くんの勝利となった。これで2勝3敗だ。

 ツナくんたちはスクアーロの死を受け入れきれず、勝ったのに沈鬱な雰囲気が流れている。

 つい「実はスクアーロ、サメに思いっきり喰われたくせに生きてるんだぜ!」ってネタバレしたくなるけど、そうするとスクアーロが凄まじく死にかけなのに大空戦に出場し、デスヒーターの猛毒で苦しまないといけなくなるから我慢我慢。

 

 にしても、山本くんの怪我が軽傷に終わったのって、僕と模擬戦したからかな?

 だとしたら、了平くんや獄寺くんにテキトーに喧嘩売っておくべきだったかな?

 なんて頭の中でツラツラと考えながら。僕は校舎A棟を去ろうとした。その時。

 

 

「クフフ、お久しぶりですね。雲雀恭華さん」

 

 僕の背中から、できればあまり聞きたくなかった口調が響いた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 六道骸は城島犬と柿本千種を引き連れ、体育館の屋上で雨の守護者戦を観戦していた。

 とはいえ、骸自身が今ここにいるわけではない。骸は以前、沢田綱吉の体を乗っ取ろうと画策したが結局失敗に終わった後に、法で裁けない者を裁くマフィアの掟の番人:復讐者(ヴィンディチェ)に捕まり、牢獄に囚われたからだ。その後、犬と千種を逃がす代償に脱走に失敗し、最下層の牢獄に投獄された骸が並盛中に存在できるのは、クローム髑髏を依代にしているからだ。

 また、リング争奪戦の経過を見守っているのは、骸がツナの霧の守護者だからだ。

 沢田家光との交渉により、犬と千種の身柄の保護を条件にマフィア風情の一派に加わった骸は、山本武の勝利を見届け、明日が霧の守護者戦であることを把握すると、犬と千種を帰らせる。

 向かう先は校舎A棟の屋上。その先でたたずむ、実に興味深い女性に骸は気さくに話しかける。

 

 

「クフフ、お久しぶりですね。雲雀恭華さん」

 

 すると、恭華が振り返って、直後。困惑の念を含んだ視線を骸に投げかける。明らかに六道骸の口調なのに、体は中学女子なクローム髑髏。この齟齬に戸惑っているようだ。

 

 

「君は六道骸、だよね? 女装の趣味があったのかな?」

「クフフ、貴女と関わったせいか、僕も新しい自分に目覚めたようです。この庇護欲を駆られるような女の子に変貌した僕の出来栄え、素晴らしいと思いませんか? 貴女には幻術が通じないから、直接変装を施したのですよ?」

「ふぇッ? は、え?」

「クフフフ、冗談ですよ。訳あって、この娘を介してでしか貴女と接触できないんです」

「……君の意識をその子に宿らせていると」

「そんな所です。この娘はクローム髑髏と言います。よろしくしてくださいね?」

「ま、機会があればね」

 

 恭華の問いかけに便乗すると、恭華は目に見えて困惑の様相を顕わにする。

 いつも落ち着いている恭華の新鮮な反応を見て、骸が笑みを深めると、ここで骸に遊ばれていたと気づいた恭華の両眼がジト目へと、まぶたが引き下げられる。

 

 

「それで、僕に何の用かな? また並中生を襲撃するつもりなら今ここで咬み殺すよ?」

「いえ、そんな物騒なことは企んでいませんよ」

「本当に?」

「僕の曇りない誠実な目を見れば、自然と疑いが晴れることでしょう」

「詐欺師のような据わった目をした人を信じる気にはなれないね」

「おや、どうやらクロームには詐欺師の才能もあるようですね。今度、教授してみましょうか」

「……そろそろ本題に入ってくれないかな?」

「それもそうですね」

 

 もう少し恭華の新鮮な反応を引き出してみたかった骸だが、催促された以上、本題を引き延ばしにし続けるのは得策ではない。骸は本題に入った。

 

 

「雲の守護者戦は明後日、貴女の出番は近いですよ」

「……」

「貴女の対戦相手のゴーラ・モスカ。あの兵器には気をつけた方がいい」

 

 骸は恭華に忠告する。骸はザンザスの恐ろしい企てを把握しているものの、ザンザスの企てに関して、骸はボンゴレ側に肩入れするつもりはなかった。だが。気に入っている恭華にヒントを授けるぐらいは、しておきたかった。しかし。ここで恭華は骸の想定を飛び越えた。

 

 

「――知ってるよ。そのために、僕は強くなったんだ」

 

 一言。サラッと恭華が口にした言葉に、骸は思わず目を見開く。

 

 

「ほう? どこまで気づいていますか?」

「モスカが有人兵器だってことと、ザンザスがモスカを僕たちに壊させたい――というか、沢田くんに壊してほしいと思っていることぐらいは、わかってる」

 

 さらに骸は踏み込んで尋ねる。そして、恭華の鋭い回答に、骸は愉快そうに笑った。

 

 

「クフ、クハハハハハ! 貴女は本当に面白い。そこまで見抜いていたとは」

「そのぐらい、モスカとザンザスを見ていればわかるよ」

「なるほど。しかし、貴女がやろうとしていることは決して沢田綱吉のためにはなりませんよ? むしろ貴女の行いは彼の成長を妨げることでしょう」

「それも知ってる。でも押し通す。譲れない所だからね。それに雲雀恭弥としても、自分の獲物を他者に横取りされたくないからね。敵は、容赦なく咬み殺すまでだよ」

「そうですか。……やれやれ、僕の働きかけは無意味でしたか」

「君がそう思うんならそうなのかもね」

 

 凛とした言葉で。揺るがぬ態度で。恭華は己の意思を語る。

 心配するだけ杞憂だった。本題を話し終えた骸は校舎A棟を後にする。

 

 

「クフフ、雲の守護者の対決がとても楽しみです」

 

 骸が最後に紡いだ言葉は、風に紛れ。

 恭華の留まる屋上に静謐な余韻を残すのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 はてさて。クロームに憑依した骸くんと接触した出来事の翌日。

 並盛中の体育館にて。リング争奪戦5回戦こと霧の守護者戦が開催された。

 骸くんに内臓を補ってもらっている影響での依存系女子:クローム髑髏と、守銭奴赤ちゃん系アルコバレーノ:マーモンとの術士同士の騙し合い対決だ。

 

 今回、戦闘エリアとなる体育館には特に何も仕掛けを施されていない。

 『無いものを存るものとし、存るものを無いものとすることで敵を惑わし、ファミリーの実態を掴ませない、まやかしの幻影』を使命とする霧の守護者戦に余計な設備は必要ないのだ。

 

 今回は体育館内の一部に観戦エリアが用意されたため、僕もその中に入った。

 結果、当然ながら了平くんが何が何でも円陣を組ませようと迫って来たので、下顎をトンファーで打ち抜き、最小限の被害で了平くんの行動を止めることにした。ついでにツナくんたちをギンと力を込めて睨み、僕を円陣に組み込む流れを消し飛ばした。雲雀恭弥のキャラを守るためとはいえ、せっかくの好意を無下にして正直、すまんかった。(´・ω・`)

 

 そんなわけで。始まった霧の守護者戦は大体原作と同じ展開を辿った。

 強力な幻術使いなマーモンに、大して幻術の経験のないクロームの力は及ばない。抵抗虚しく敗北するかと思われたが、ここでクロームを依代に骸くんが降臨。圧倒的にチートな六道輪廻の猛威を存分に振るってマーモンを追い詰み、いともたやすく勝利をもぎ取った。これで3勝3敗だ。

 

 

「明日はいよいよリング争奪戦、最後のカード――雲の守護者の対決です」

 

 チェルベッロが淡々と明日の予定を告げる。

 よし。それじゃ、譲れないものを抱えて、明日に挑ませてもらおうか。

 リボーンやザンザス辺りが会話しているのをよそに、僕はいち早く体育館を後にした。

 

 




雲雀恭弥→本作の主人公、かつボンゴレ雲の守護者。本名は雲雀恭華。今は凡人が憑依している。骸を苦手に思っているのは、いつ原作知識や憑依のことがバレるか戦々恐々としていたり、本気で体を解剖しにやってきたんじゃないかとの疑いを持っているため。
六道骸→黒曜編のラスボス。今は体が復讐者の牢獄に囚われているため、クローム髑髏の体に憑依する形で外界と接している。しかし、クローム髑髏がいても、一時的にしか憑依状態を続けられない。モスカについてそれとなくヒントを与えるぐらいには恭華のことを気に入っている。
チェルベッロ→原作でも結局設定が明かされなかった謎の9代目直属(自称)の機関。色黒でピンクの髪の女性が何名も所属している。ちょっと私に1人ください。

 というわけで、23話は終了です。次回はついに雲の守護者戦です。当然ながら、原作と全く同じ流れにはなりません。とはいえ、この23話で凡人憑依者が何を企んでいるかはもうバレたと思います。はたして、凡人憑依者の企みは成就するのでしょうか。

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