あ、あけましておめでとうございます(震え)どうも、ふぁもにかです。2017年はどれほど連載できるかわかりませんが、あくまでマイペースに、のんびりと執筆していくつもりなので、皆さんの暇つぶしに寄与してくれていたら幸いです。
山本くんと激しい模擬戦を行ってから、1日後。
相変わらず雨が降りしきる中。夜の11時。並盛中の校舎の屋上にて。
僕は今、リング争奪戦の2回戦を観戦している。5歳児ランボとレヴィが織りなす雷の守護者戦を静観している。もちろん、「ランボ、ファイオー!」な円陣には参加拒否している。
雷の守護者同士の対決の舞台となる戦闘エリアの名は『エレットゥリコ・サーキット』。
電柱のようにそびえ立つ複数の避雷針と、床に張り巡らされた特殊な導体により、避雷針に落ちた強力な雷の電流が何倍にも増幅されて戦闘エリア中を伝播する仕組みとなっている。
それだけ強烈な電流をまともに浴びようものなら、常人なら焦げ死ぬことは避けられない。
私見だが、どの戦闘エリアよりもぶっちぎりで危険なフィールドだと思っている。雲雀さんボディですら、電流を喰らったら死にかねないし。でも、ランボは雷を受けてもほぼダメージを負わない
ランボ凄ぇ。マジリスペクトです。
さて。この危険度キレッキレな『エレットゥリコ・サーキット』にて。ランボと女体化してしまったレヴィ・ア・タン改めレヴィアたんとの戦闘は原作とほぼ同じ展開を辿っていった。
具体的には、雷の守護者戦は、レヴィアたんにボコられたり雷を体に浴びたりしたランボが10年バズーカを使用して10年後ランボを召喚→10年後ランボでもレヴィアたんに勝てない→10年後ランボがさらに10年バズーカを使用して20年後ランボを召喚→20年後ランボがレヴィアたんを圧倒→レヴィアたんを倒しきる前に10年バズーカの効果時間たる5分が過ぎて5歳児ランボに逆戻り→レヴィアたんに殺されかける→ランボを救うためにツナくんが介入→守護者戦への第三者の介入はルール違反のため、ランボとツナくんの、雷と大空のハーフボンゴレリングがヴァリアーの手に渡る、といったルートを辿ることとなった。結果、リング争奪戦は1勝2敗である。
レヴィアたん化した影響で、母性から少しぐらいは子供への情け容赦が生まれ、さすがに全力で殺しにかかりはしないのではないかとも予想していたが、そんなことはなかった。
まぁ、女体化してようとレヴィアたんはヴァリアーの幹部でボスbotだもんね。そりゃそうか。
そして。僕は結局、執拗に嬲られるランボを助けようとしなかった。
原作知識があるくせに、ランボを助けない。僕は所詮凡人なので、己の行為に思う所はある。
だが、言い訳できないわけではないが、雲雀恭弥が面識のない子供を助けるのは違和感が凄い。
また、原作と似た展開をなぞっているのなら、ツナくんがランボを助ける確率は高かった。
何より、ここでツナくんに動いてもらわなければ、ツナくんの打倒ザンザス精神が弱まる可能性があった。ツナくんにザンザスを倒してもらうために、ここで僕がランボを助けて、ツナくんの『もっと強くなりたい』との覚悟完了を妨害してはならなかったのだ。
◇◇◇
そんなこんなで、さらに1日後。次なるリング争奪戦の3回戦は嵐の守護者戦となった。
自称ツナくんの右腕たる獄寺くんとどっかしらの王族の血を継いでいるらしい、目隠し金髪天才属性のベルフェゴールとの嵐のボンゴレリングを賭けた対決。
舞台は並盛中の校舎の3階全域。戦闘エリアのあらゆる所に設置された、ランダムで超強力な突風を発生させるハリケーンタービンが幅を利かせる中、戦闘開始から15分経っても決着がつかなければ、ハリケーンタービン内の時限爆弾が発動し、3階全域を全壊する仕組みとなっている。
ちなみに。もう触れなくてよさそうだけど、「獄寺、ファイオー!」な円陣には参加していない。もはや予定調和である。
ところで。守護者戦を1回戦から観戦する方針にした理由はいくつかある。
1つは単純な興味。雷の守護者戦を観戦することで、10年バズーカというトンデモ極まりない夢の道具が使用されるシーンを一度見てみたかった。ただそれだけだ。
他に、大空戦でのベルへの対処のため、という理由もある。原作だと、雲雀さんはベルのナイフ&ワイヤーを駆使した奇術に対応できず、体を切り刻まれてしまう。それを原作知識を悟られずに防ぐには、嵐の守護者戦の観戦は欠かせないのだ。
しかし、だからといって雷の守護者戦と嵐の守護者戦にだけ顔を出し、他の対決には姿を見せないのはあまりに不審。だから、僕は1回戦からリング争奪戦を観戦しているわけだ。
閑話休題。獄寺くんとベルとの戦闘は原作通り、熾烈を極めた。獄寺くんは校舎という雑然とした舞台を上手く利用して、新兵器のロケットボムを筆頭に、ダイナマイトを駆使して派手に戦った。一方、ベルは大量のナイフとワイヤーを巧みに操って獄寺くんを翻弄し、着実に獄寺くんを傷つけていった。結局、頭脳戦の果てにズタボロとなった両者は物理的なリングの取り合いに発展。ハリケーンタービン内の時限爆弾が両者を襲う直前に、ツナくんが獄寺くんの命を案じた心からの説得を試みた結果、獄寺くんがリングを諦め、ベルがリング争奪戦に勝利した。
これで1勝3敗。リング争奪戦は全7戦なので、ボンゴレ側はもう敗北が許されなくなった。
一見、ツナくんサイドが非常に絶望的だと思われる。
でも、残りのリング争奪戦の出場者をちょっと考えてみよう。
天才剣豪・山本武。六道輪廻を使える六道骸を召喚可能なクローム髑髏。そして、僕。
うん。僕の中身が凡人でなければ、何て頼もしい面々だろうか。
大丈夫だよね? ちゃんとディーノさんと特訓したし、僕、モスカに勝てるよね? 雲雀さんが一撃でモスカを倒せたのなら、例え女体化のせいで弱体化していても、接戦の末の辛勝ぐらいはできるよね? あぁ、何か不安になってきた。後でヒバードに癒してもらわないと。
……ふと思った。もしゴーラ・モスカじゃなくて、ストゥラオ・モスカが「やぁ(´・ω・`)」ってバーボンハウスしてきたら、どうしよう。勝ち目なさすぎてマジ震えてきやがった。
◇◇◇
嵐の守護者戦が終わり、12時間後。並盛町に1名のミイラ男が出没していた。
ロマーリオにより包帯で全身をグルグル巻き、という雑な治療をされた哀れな獄寺隼人である。
嵐の守護者戦により、文字通りズタボロになった獄寺には病室での安静が必須だった。しかし、獄寺にはただ病室で無為に時間を過ごしていられない事情があった。ゆえに、ロマーリオの男の治療(笑)を受けた獄寺は今、並盛町を徘徊している。
獄寺はまだリング争奪戦を行っていない守護者に会い、後を託す旨を伝えるつもりだった。自分の命を優先して、リングを捨てたことに後悔はない。しかし、自分の敗北が、リング争奪戦のヴァリアー勝利の王手となってしまった。ならばせめて、10代目の右腕としてできることをしたかったのだ。例え少々怪我が悪化しようと、止まってはいられなかったのだ。
(どこだ? 雲雀と霧の守護者はどこにいる……?)
山本には既に思いの丈を伝え終えている。
そのため、残るは雲雀恭弥と、正体不明の霧の守護者。
未だ姿を見せない霧の守護者と偶然出会えることにはあまり期待していない。
よって、獄寺の狙いは雲雀恭弥ただ1人だ。
(ぅぐ、体が……)
周囲を歩く人々が獄寺を見てヒソヒソと話していることなどいざ知らず。
キョロキョロとしきりに辺りを見渡し、休みなく並盛町を歩き回っていた獄寺はここでズキリと、まるで体が今にもバラバラに避けてしまいそうな激痛に囚われる。
これ以上動いたら、傷が開きかねない。一旦休まないと。
獄寺は手近な公園にフラフラと立ち寄り、ベンチに座った。
(どこだよ。どこにいやがる、雲雀の奴!)
「君、何してるの? ハロウィーンにはまだ早いよね?」
獄寺が苛立ちを胸に抱えつつ、タバコを吸おうとした時。いつの間に距離を詰めてきたのか。雲雀恭弥が目の前に立っていた。当の雲雀の目は、この妙な格好をした不審人物を咬み殺して、風紀を守ろうと如実に語っていた。
「ま、待て雲雀! 俺だ、獄寺隼人だ!」
「で? 例え並盛中の生徒だろうと、いたずらに住民の不安を煽る格好で町を練り歩いていい理由にはならないよね? よって、咬み殺す」
「頼む、話を聞いてくれ! その後なら好きにしていいから!」
「……ふぅん。君にしては随分と下手に出てきたね。草食動物らしい、殊勝な態度だ。いいよ、特別に遺言を聞いてあげる」
獄寺のいつになく弱気な説得に、何を思ったのか雲雀は矛を収める。
どうやら嵐の守護者戦で敗北したことが、思いの外、心に刺さっているらしい。
だけど。そのおかげで雲雀を止められたのなら好都合だ。獄寺は手短に言葉を紡ぐ。
「昨日の試合は、見てただろ?」
「うん、君の負ける様を見ていたよ。勝った、と油断したのが運の尽きだったね」
「ぐッ。ま、まぁ、それはそれだ。もう1勝3敗だ。後がねぇ。残り3試合、誰も負けられなくなっちまった。だから、不本意だが、テメェにも頼らないといけねぇ」
「それで?」
「ボンゴレ10代目に相応しいのは10代目しかいないんだ。頼む、絶対に勝ってくれ!」
(くそ、なんで俺がこの野郎に頭を下げなきゃならないんだ! でも、今はなりふり構ってられる状況じゃねぇ。少しでも勝率を上げるためなら、何だってやらねぇと!)
獄寺は端的に心情を表し、深々と雲雀に頭を下げた。
雲雀なんかに懇願したくない心を押し殺し、真摯に頼み込んだ。
「……」
「おい、雲雀? って、グハッ!?」
一方、雲雀は獄寺の言葉に返答しない。ただ沈黙を紡ぐばかりだ。
雲雀の様子が気になった獄寺は少し顔を上げ、瞬間。顔をトンファーで殴られた。
たまらず、獄寺の体が地面に転がり、包帯が砂まみれになる。
「テメェ、何しやがる!?」
「面白いね、君。僕がヴァリアーに負けるかもしれないと思ってるんだ?」
「あ……」
ここで獄寺は気づいた。ニタァと凄惨な笑みを貼りつける雲雀を見て、地雷を踏んでしまったことを悟った。獄寺はただ後続に想いを託すだけのつもりだったが、雲雀からすれば、自分の実力を舐められていると解釈してもおかしくない。スタスタと歩み寄る雲雀を見て、獄寺の本能はヤバいとしきりに警鐘を鳴らしていた。が、雲雀は獄寺に追撃をしなかった。
「言われるまでもないよ」
「え?」
「僕に立ち塞がる者は誰だろうと、咬み殺す。それだけだ」
「……そうか。ヘヘ、頼んだぜ」
雲雀の心強い言葉を確かに耳にした獄寺は、体力の限界だったのか、気絶した。
結局。獄寺の身柄は、雲雀の連絡によりディーノが回収したのだった。
雲雀恭弥→本作の主人公、かつボンゴレ雲の守護者。本名は雲雀恭華。今は凡人が憑依している。雲雀恭弥ロールゆえに獄寺くんをボコるなど高圧的な態度に走ったが、内心では獄寺くんにハッキリと頼られた影響で雲の守護者戦への不安が消し飛んでいたりする。そもそもディーノさんと修行をせずに並盛町をうろついていたのも胸中の不安の影響である。
獄寺隼人→スモーキン・ボムとか人間爆撃機とかいった異名を持つマフィア関係者、かつボンゴレ嵐の守護者。何だかんだ、嵐の守護者戦の敗北を引きずっているため、今はちょっと大人しめ。
というわけで、22話は終了です。今回でちゃっちゃと霧の守護者戦まで描写を終わらせようかと思いましたが、ふと獄寺くんと恭華さんを絡めてみたいと思い至り、今回のノリになりました。獄寺くんの揺るがなさというか、まっすぐな忠誠心ってばマジ素敵です。