†ボンゴレ雲の守護者†雲雀さん(憑依)   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。ふとした衝動から前作『元の体を取り戻すのです! by.電』のMMD紙芝居動画を作ろうとしたけど、あまりに難しいのと手間がかかりまくるのとで挫折した今日この頃。ホント、動画製作者さんたちの技量に改めて感服しましたぜ。



VSヴァリアー編を咬み殺す
風紀18.†家庭教師と対面して風紀を守ろう†


 

 

 黒曜編が終了してから、約1か月の時が流れ。僕は今、応接室で書類整理をしている。

 そんな僕の机の端に、ヒヨコのようにモフモフした黄色い小鳥がちょこんと着地し、クルクルとした眼差しで僕の様子を眺めている。ヤバい、超かわいい。これが人を萌え殺す程度の能力か。

 

 だ、駄目だ。まだ叫ぶな、堪えるんだ。し、しかし――ヒバァァアアアアアアアアド!

 ハッ!? あまりのヒバードの愛くるしさについ内心で愛の咆哮を放ってしまった。

 ヒバードのパッシブスキル:メロメロの恐ろしさの片鱗を味わったね、うむ。

 

 閑話休題。あの後、僕はフゥ太くんからもらい受けた小鳥に原作通り、ヒバードと命名した。

 ちなみに。ヒバードをペットにはしたが、鳥籠に入れて飼育、なんてことはしていない。

 基本は放し飼いだ。束縛を嫌い、孤高を好む雲雀さんがヒバードを狭いスペースに拘束するのはどうかと思うしね。そんなわけで、ヒバードは僕と戯れたい時や、食事時にやってくる。

 例えるなら、餌を求めてあざとさを武器に近寄ってくる野良猫と猫好き人間の関係だろうか。

 

 今は午後2時過ぎだから、食事目的じゃなさそうかな。

 ヒバードの来訪目的を軽く推測していると、ヒバードが机の端の光り物を突き始める。

 

 

「こらこら」

 

 ヒバードの可愛さにすっかり毒されている僕は、雲雀恭弥として男装していることを忘れ、だらしない口調でヒバードを嗜め、光り物を取り上げる。

 この光り物に――雲のハーフボンゴレリング――に変に傷がついて、後々死ぬ気の炎が灯しにくくなった、なんてことになったら洒落にならないからね。

 そこまでボンゴレリングが柔だとは思わないけど。ま、念のため。

 

 そう。今、僕の手元には雲のハーフボンゴレリングがある。今朝、郵便ポストに入っていたのだ。きっとツナくんのお父さんこと沢田家光さんが放り込んだのだろう。

 これが意味することは単純明快、VSヴァリアー編開幕のお知らせだ。

 

 VSヴァリアー編とは、原作6巻分ほどを使用したリボーンの長編である。

 概要としては、ボンゴレ特殊暗殺部隊:ヴァリアーのボス:XANXUS(ザンザス)がボンゴレ10代目になるべく、後継者の証たるボンゴレリングを殺してでも奪おうとしたことを契機として、互いのハーフボンゴレリングを賭けて、ツナくんと愉快な6名の仲間たちとヴァリアーとが計7回の1対1でのリング争奪戦を行い、最終的にツナくんサイドが勝ち越すといった感じだ。

 

 週刊少年ジャンプの3原則『友情・努力・勝利』の要素が存分に詰め込まれたこのVSヴァリアー編の展開の熱さから、リボーンにハマったという人も多いはず。かくいう僕もその1人だ。

 当時はまさかこの僕が雲雀さんに憑依するとは思わなかったけど。

 ちなみに。このVSヴァリアー編を語る際に、『なんでボンゴレ9代目とその守護者はボンゴレリングを持ってないの? 後継者の証なんでしょ?』とかツッコんではいけない。

 恭華お姉さんとの約束だぞ(*`・∀・´*)

 

 さて、このVSヴァリアー編で僕がどう動くかだけど、前の黒曜編みたいに、原作沿いの流れから積極的に逃れるつもりはない。原作と同様、僕はツナくんの雲の守護者として、ヴァリアー側の雲の守護者:ゴーラ・モスカ(ロボット)と対峙する所存だ。

 そもそも僕が雲の守護者として参戦しなかったら、ツナくん側が戦力にできる雲の守護者の候補を見つけられずに雲の守護者戦が不戦敗になりかねないからね。

 リング争奪戦に敗北した側のチームは皆殺しにされてしまう。リング争奪戦で負け越したツナくんたちが無残に殺されるのは嫌だから、僕が参戦しない道はない。

 

 だが、その際に1つ、やりたいことがある。これをしでかすと、大空戦でツナくんがザンザスに敗北する可能性があるけど、それでもやりたいんだよね。ツナくんたちが殺されるのが嫌なくせに、早速矛盾しているのは確かだけど、こればかりは妥協したくない。

 『譲れないものを1つ、たった1つで強くなれる』って、かの偉大なLM.Cさんもそう言ってたし、ここは意地になっておきたい。

 

 そのやりたいことを果たすためには、とにかく強くなる必要がある。

 ゆえに今まで僕は自力で特訓を重ねてきた。が、それも今日までだ。

 本日、ここ応接室にリボーンの采配でディーノさんがやってくるはずだ。ツナくんの兄弟子なディーノさんの目的は、僕こと雲雀恭弥を雲の守護者として強くすること。

 タダで優秀な専属家庭教師が来てくれるのだから、存分に頼らせてもらおう。

 

 ま、さすがに原作みたく日夜ぶっ続けでディーノさんと戦うつもりはない。

 いくら雲雀さんボディが疲れなくても、中身の凡人の僕は精神的に疲れるし。

 それに、保険のために、リング争奪戦は全て観戦するつもりだからね。

 原作通りの順番で守護者戦が展開されるとは限らないし、僕が雲雀さんに憑依して変わったように、ヴァリアー側にイレギュラーが発生している可能性は否定できないもの。

 

 おっと。色々と考えていたらいつの間にか結構時間が経っていた件。

 そろそろディーノさんが来そうだし、『お・も・て・な・し』の準備でもしようかな。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ボンゴレファミリーの同盟ファミリーの1つ、キャバッローネファミリーの10代目ボスたる跳ね馬ディーノは今、腹心の部下のロマーリオを引き連れて並盛中の応接室へ向かっていた。

 同じ家庭教師のリボーンにビシバシ育て上げられている弟弟子:沢田綱吉を10代目ボスに据えた次期ボンゴレファミリーの雲の守護者として、雲雀恭弥を鍛えるためだ。

 

 

(さーて、どんな奴が待ち受けているのやら)

 

 リボーンから事前に聞いた雲雀恭弥の人物像は、群れることを嫌い、気に入らないことがあったらすぐさまトンファーでボコ殴りにする狂犬、の皮を被った善人。なので、言い回しをちゃんと考え、きちんと誠意を示して話せば、ツナの守護者になることを応じてくれるはず、とのこと。

 

 

「入るぜ」

 

 ディーノは特にノックせずに応接室の扉を開ける。

 部屋の中を見渡すと、ソファーで悠々と緑茶を嗜む1人の少年がいた。

 

 

(見た目からして、こいつが雲雀恭弥で間違いなさそうだ)

「君たち、誰だい? 並盛中の関係者じゃなさそうだけど」

「俺はディーノ。ツナの兄弟子で、リボーンの知人だ。後ろのは部下のロマーリオだ」

「へぇ、あの赤ん坊の関係者か」

「お前が雲雀恭弥で間違いないな?」

「そうだよ。で、何の用?」

「お前が今持ってる、雲の刻印のついた指輪の話がしたい」

「あぁ。これのこと? ……その話、長い?」

「ま、5分そこらじゃ終わらねぇな」

「ふぅん」

 

 ディーノは雲雀からの自身の第一印象が悪くならないよう、下手に飾らず自然体で話す。

 そして。雲のハーフボンゴレリングの話題を出すと、雲雀が眼前のソファーを指差した。

 

 

「2人とも、そこに座りなよ」

「お、そんじゃ遠慮なく」

「……スーツの君は座らないの?」

「こちらのことはお構いなく」

「そう」

 

 雲雀の対面のソファーにディーノがドカッと座り、ロマーリオがディーノの背後に立つ。

 座らないロマーリオに雲雀が首を傾げるも、ロマーリオの返答に興味をなくす。

 さて、どう切り込んだものか。改めて雲雀への事情説明の段取りを考えていると、ディーノの目の前に緑茶と栗ようかん(※何気に雲雀自作の一品)が差し出された。

 

 

「長話への準備はこんな所かな」

「お、サンキュー。いただきますっと。うん、美味い。……しっかし意外だな」

「何が?」

「いや。見た感じ、細やかな気配りができるタイプには見えなくてな」

「その認識で合ってるよ。余ってた風紀委員の所有物を在庫処分しただけだから」

「え、在庫処分!?」

「賞味期限は過ぎてないから慌てる必要はないよ」

 

 雲雀に感謝を告げ、早速栗ようかんを食べたディーノは正直な感想を零す。

 その後、雲雀の『在庫処分』の言葉に嫌な予感を感じるも、涼しげな雲雀の表情から、栗ようかんが賞味期限をとっくの昔に過ぎているとか、雲雀が栗ようかんに何かを仕込んだとか、その手の可能性はなさそうだった。

 

 

「さて、用件を聞こうか」

「よしきた」

 

 そして。雲雀の一言を機に、ディーノの説明が始まった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 マフィアのこと。ボンゴレのこと。ツナのこと。ハーフボンゴレリングのこと。などなど。

 ディーノは一般人の雲雀にもよくわかるように懇切丁寧に事情を話した。ちなみに。後の雲雀の独り言曰く、原作知識のあいまいな部分を補完できて助かったとのことだ。

 

 

「ふぅ、こんな所だ。要約すると――雲雀恭弥。お前には未来のボンゴレ10代目たるツナの雲の守護者となって、ヴァリアーと戦ってほしい。そんで、ヴァリアーと対等に戦うために、俺にお前を鍛えさせてくれ」

「僕がそのヴァリアーよりも弱いって言いたいの?」

「そうじゃない。けど、俺は噂を鵜呑みにしない性質でな。家庭教師として、直接お前の実力を確認して、ヴァリアーに勝てなさそうなら鍛えて強くしたいんだ」

「……」

「で、どうだ?」

「嫌だ」

「え?」

「断る」

 

 ツナを取り巻く事情を話し込むにつれて、すっかり雲雀が自分の頼みを受け入れてくれるものと思い込んでいたディーノは、首を横に振る雲雀に慌てて言葉を紡ぐ。

 

 

「え、いやちょっと、なんでだよ? 恭弥って並盛の風紀を大事にする主義なんだろ? ヴァリアーが並盛で暴れるのを放置する気なのか?」

「いきなり馴れ馴れしくなったね、君。……ヴァリアーの荒らし行為を看過するつもりはないよ。けど、どうして僕が特定の草食動物の下につかないといけないの?」

「あ、そういうことか。別にツナの部下にならなくていい。ただ恭弥らしく、雲の守護者らしく、ヴァリアーを倒してほしい」

「雲の守護者らしく?」

「あぁ。『何者にも囚われず我が道を行く浮雲』らしく、独自の立場でボンゴレファミリーを守ってほしいんだ」

「……」

「こ、今度こそどうだ?」

 

 ディーノは雲雀の顔色をうかがいながらおずおずと尋ねる。

 一度バッサリ断られただけに、今のディーノの表情からは緊張感が読み取れる。

 

 

「……僕はいつでも、風紀を守るだけだ。ボンゴレだとか、マフィアだとか、関係ないね」

「てことは、今回は協力してくれるってわけか。何たって、並盛町民のツナとその仲間の命を狙って、無法者が並盛に乗り込んでくるんだからな」

「そうなるね」

「そうかそうか。いやぁ、良かったぜ。もし勧誘失敗ってなったらリボーンに何されるかわかったもんじゃなかったからな」

「その時は力づくででも僕を雲の守護者にすればいいんじゃないの?」

「んな禍根を残す真似、最終手段以外で使う気ねぇよ」

「ふぅん。ま、実力行使された時は返り討ちにするだけだけど」

「ハハ、言うじゃねぇか」

 

 雲雀が雲の守護者の件に応じてくれたことで肩の荷が下りたらしいディーノは、雲雀の挑発的な物言いにも朗らかな笑顔で返し、バッと勢いよく立ち上がる。

 

 

「よっしゃ。話は決まったし、早速修行を始めるぜ、恭弥!」

「待った。まだ今日の仕事が終わってないから、修行は後ね」

「――って、何だよ。締まらねぇな。出鼻くじかれちまったじゃねぇか。……その仕事は他の奴に頼めねぇのか? 多分、修行は風紀委員の仕事の片手間じゃこなせないぞ?」

「そうなの? なら、草壁哲矢に業務を引き継ぐから……そうだね。1時間後に出直してよ」

「いや。他に用事ないし、それぐらいならここでテキトーに時間潰しとくぜ」

「そう」

 

 ディーノは再びソファーに座り直し、草壁に連絡するため携帯を取り出す雲雀を眺める。

 どんな修行内容がいいかと思いを巡らせていると、雲雀がジッとディーノを見つめ返してきた。

 

 

「ん? どうした、恭弥?」

「さっきから君は勘違いをしてるようだね。君は僕の家庭教師になるんじゃない、僕が強くなるための少し頑丈なサンドバッグになるだけさ」

「ホント、恭弥は威勢がいいな。それでこそ、鍛え甲斐があるってもんだ」

「……やれやれ」

 

 雲雀からの焚きつけるような発言に、ディーノは気分を悪くせずにニカリと笑う。

 かくして。ディーノと雲雀は原作と比べて、さほど殺伐としていない初邂逅を果たした。

 

 




雲雀恭弥→本作の主人公。本名は雲雀恭華。今は凡人が憑依している。時折ディーノを弱者扱いする発言を繰り出していたが、内心では彼をリスペクトしまくっている。
ディーノ→ボンゴレファミリーの同盟ファミリーの1つ、キャバッローネファミリーの10代目ボス。リボーンに育てられて1人前となった手前、弟弟子のツナに親身になっている。リボーンのキャラの中で最もイタリアと日本間を往復しているらしい。
ロマーリオ→ディーノの部下。38歳のおじさん。ディーノは誰か部下が近くに付き添っていないと途端に重度の運動音痴となるため、なるべくディーノと行動を共にしている。

凡人憑依者(お、ディーノさんが美味しそうに僕の栗ようかんを食べてる。ディーノさんの味覚がよくわからなくてとりあえず甘さ控えめのものを用意したのは正解だったか。良かった良かった)

 というわけで、18話は終了です。雲雀さん視点でVSヴァリアー編を進行するとなったら序盤はディーノさんの出番ラッシュになるのは自明の理ですよね。とはいえ、ここでは良さげな展開を思いついたらディーノさん以外にもスポットライトを当てるつもりなので、よろしくなのです。

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