†ボンゴレ雲の守護者†雲雀さん(憑依)   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。最近、サブタイトルとは裏腹に、本編で全然雲雀さんが風紀を守っていないような気がしますが、まぁタイトル方面での詐欺はふぁもにかの常套手段とでも思って許してくだしあ。きっと雲雀さんは描写外で精力的に風紀を守っている縁の下の力持ちさんなのです! そうに違いありませぬ! Q.E.D.証明終了。



風紀11.†桜舞い散る中で風紀を守ろう†

 

 

 例のごとく、月日に関守なし。烏兎匆匆(うとそうそう)と言わんばかりに時は過ぎ。

 並盛町を温帯とは思えない寒さに突き落とした冬が終わり、その後に待つは――春ですね。

 

 春、それはぽかぽか日和と花粉とのアメとムチとで馴染み深い季節。

 終わりと始まり。出会いと別れを司り、人によって好き嫌いがはっきり分かれる季節。

 そんな日本の春の象徴と言えば、満場一致で桜だろう。異論は決して認めない。

 ま、どうしてもと言うなら異論を唱えてもいいが、その時は雲雀さんの咬み殺し芸の被害に遭うことを覚悟した方がいいかもしれない。雲雀さんってば桜が好きっぽいし。

 

 そんなわけで。雲雀さんに憑依してから割と長いこと経過しつつある僕は早朝から一人、桜のある公園を次々と巡っている。全てはベストポジションでお花見をするためだ。

 部下の風紀委員を派遣して良い立地を調べてもらってもいい。

 が、あまり風紀と関係ないことで強権を振るうのは趣味じゃない。

 どの辺が花見に最適かを自分の目で下見をするのも乙なものだろう。

 

 ちなみに、今の僕は恭華さんモードで偵察をしている。

 理由は簡単、男装で桜が満開な公園に乗り込もうものなら原作の流れになりかねないからだ。

 ツナくんたちと出会い、お花見に適した立地を賭けた戦いになり、目障りなDr.シャマルをトンファーで殴ったらカウンターで桜クラ病を植えつけられる。これが後々の六道骸との戦いで敗北する主な原因となる。以上、原作雲雀さんの歩んだ軌跡だ。

 原作をある程度把握し、ただいま雲雀さんに憑依中の僕が敢えて桜クラ病を患う必要はない。僕は雲雀さんの言動を模倣するスタンスだが、何でもかんでも原作通りが良いとは考えてないからね。ウイルスを植えつけられて喜ぶ被虐体質でもないし、桜クラ病はノーセンキュー。

 

 お、ここいいかも。テキトーに雲雀さんの桜イベントのことを考えていると。

 いい感じに桜が咲き誇っている桜並木一帯を見つけられた。

 スペースも広々としているし、そよ風も心地いい。

 これは早速ベストポジションを探し出せたかな。幸先イイネ。

 

 

「あれ? 君は――恭華さん?」

「雲雀妹!?」

「お、久しぶりだな」

 

 と、ここで。僕の背後から非常に聞き覚えのある声がする。三者三様の反応に振り向くと、ツナくん・獄寺くん・山本くんのいつものメンバーが勢ぞろいしていた。

 これは、雲雀恭弥の姿で花見適切箇所を探らないで本当に良かったみたいだ。

 でないと、原作通りに桜クラ病発症まっしぐらだったろうしね。これぞ、転ばぬ先の杖。

 

 

「えーと。沢田くんに獄寺くん。山本くんで合ってるよね? やっほー。もしかして君たちもお花見の場所取り担当?」

「え。君たち『も』って……まさか恭華さん、雲雀さんに頼まれてお花見の場所を取ってるの?」

「そうだよ。ちなみに、ここがお花見ベストポジションだとも思ってる」

「え、えええええええええええ!?」

 

 僕の返答にツナくんがガビーンとの擬態語を引き連れて驚愕の声を盛大に上げる。

 どうしよう。俺たちもここがお花見に良い場所だと思ってたのに、このままじゃ雲雀さんと衝突しちゃうよ! ツナくんの青ざめた顔から思考は割と容易に読み取れる。

 わかりやすいなぁ、ツナくん。ま、そこもまたツナくんの美徳だと僕は思うけど。

 

 

「あはは、そんなに不安そうな顔しなくても大丈夫。恭弥兄は夜桜を楽しむみたいだから、日中はここを占拠しないって。恭弥兄とかち合いたくないなら、昼間の内にお花見を楽しめばいいよ」

「え? そうなの? はぁぁ、良かったぁ」

「ははは。ケンカしないで済むならそれに越したことはないよな」

「チッ。雲雀の奴、来ねぇのか。あん時のリベンジの機会だと思ったのに」

 

 雲雀恭弥の脅威が降りかからない旨を伝えると、心から安心するツナくん。爽やかボイスで自然体なままの山本くん。あからさまに悪態を吐く獄寺くん。

 ふと彼らに対して、今目の前にいる僕こそが実は本物の雲雀恭弥なんだよ! と思いっきりカミングアウトしたい心境に駆られるが、我慢我慢。

 何のために雲雀さんの真の性別を隠しているのかわからないからね。

 

 

「お、恭弥兄のことを気にしてくれてるんだ。妹として、ホント助かるよ。この調子で恭弥兄と末永い交友関係を築いていってね」

「だから! なんで俺があいつと友達になってんだよ! 雲雀妹! 俺はただ10代目の右腕として、いけ好かねぇあいつをぶちのめしたいだけだ!」

「ふむふむ。これがツンデレ男子って奴か。好き嫌いが分かれそうだけど……うん、僕は嫌いじゃないよ?」

「うがあああああああああああああ!!」

(獄寺くんって一見、弄られキャラとは無縁そうに見えて実は弄られキャラだよね。反応に幅があって楽しいから、僕もついつい弄っちゃうし)

(あ、あの獄寺くんをまた手玉に取ってる! 恭華さんの天然、ホントに凄ぇ!)

 

 カミングアウトを取りやめる代わりに獄寺くんをネタにしてみると、打てば響くように言葉が突きつけられる。いやぁ、隣のツナくんが僕に内心で戦慄してるっぽいのも相まってか、超楽しい。

 

 

「まぁまぁ。落ち着けって獄寺。っと、そうだ。恭華も俺たちと一緒に花見しないか?」

「あ、そうだね。ハルも来るし、恭華さんもどうかな?」

「んー、面白そうだけど、僕は遠慮しとく。さすがに今日一日で2回もお花見に参加するのは体力が持たなそうだし、恭弥兄の夜桜鑑賞の方に付き合うよ」

 

 ツッコミを放棄して荒れる獄寺くんをよそに。山本くんとツナくんが僕を誘ってくる。

 正直参加したかったが、今回は辞退した。今後登場するであろうDr.シャマルが変態的な意味でも桜クラ病的な意味でも怖いからね。ちかたないね。ホント天敵だよ、あの闇医者!

 

 

「そっか」

「2人とも、誘ってくれてありがと。……ところで少し気になったんだけど、僕のことを『さん』付けしなくてもいいよ、沢田くん。別に僕は年上でも偉い人でもないからさ。山本くんみたいに普通に呼んでよ。もしくは愛称も可。もちろん、雲雀妹以外でね」

「え、えーと。恭華さんってたまに大人って雰囲気がするから、『さん』付けしないと違和感があって。でも、そうだね。俺もこれからは恭華って呼ぶよ」

「うむ、そうしてくれたまえ」

 

 僕は敢えて偉そうに鷹揚にうなずく。その場のノリって奴だ。

 閑話休題。ツナくんが僕を『さん』付けする理由を尋ねてみたら、意外な答えが返ってきた件。

 これってツナくんの超直感がニートをやめて、仕事をし始めているのかな。

 僕の変装には違和感を覚えてないようだからまだまだだけど。

 

 それにしても、ツナくんの常人を遥かに凌ぐ直感力――通称:超直感――って本当に凄いよね。

 クトゥルフなら目星(90)って所だからね。僕も欲しいと思うのは欲張りだろうか。

 雲雀さんに超直感……虎にライトウィング、鬼にグレネードランチャーかな。

 

 

「おー! また会えたね! かわいこちゃーん!」

「ッ!?」

 

 と、ここで。僕が最も聞きたくない声が耳をスルリと通り抜けた。

 ビクッと肩を震わせ。ギギギと固まったロボットのように首だけ後ろを見やると。

 一升瓶を抱え、ベロンベロンに酔っているキス魔おじさん:シャマルがいた。

 もしかしたら変態(シャマル)じゃないかもと期待したが、そんなことはなかった。

 

 

「げえッ、変態! じゃ、皆! 僕はこれで! また何かあったら誘ってよ!」

「あぁ! 待ってくれ、恭華ちゅわぁぁああーん! 今日こそ俺とチューしようぜぇ!」

「うぎゃああああああ! 名前知られた!? 最悪だぁぁあああああああああ!」

 

 全力で肉薄せんとするシャマルから逃れるため、僕は簡潔にツナくんたちに別れを告げ、逃走を開始する。やっぱり自力でなく、部下にお花見のベストポジションを探させるべきだったと後悔すれど、所詮は詮無きことであった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ツナが獄寺、山本、リボーン、ビアンキ、京子、ハル、ランボ、イーピン、奈々といった例のハチャメチャメンバーでお花見を楽しんだその夜。

 外灯に照らされる、夜の荘厳な桜の情景は並盛中の風紀委員が独占していた。

 雲雀恭弥が風紀委員長として、日々並盛町の風紀を守る風紀委員たちを労うための花見を企画したからだ(表向きは風紀副委員長の草壁哲矢発案となっている)。

 まだ憑依前の雲雀が積極的に並盛町民から回収していたショバ代をふんだんに使用して開催されたため、風紀委員たちは各々、普段は滅多に食べられない豪勢な料理を堪能し、はしゃいでいる。

 

 

(委員長は一体どこへ?)

 

 そんな中。風紀委員たちが暴走せずに、ある程度の秩序を保ったまま騒いでいる様を遠巻きに眺めていた草壁哲矢は雲雀の姿が見えないことに気づき、探していた。

 己が幹事として挨拶をした時は近くの桜の幹に背中を預け、目を瞑っていた。

 あれから大して時間は経過していない上、桜を好みわざわざ花見を企画した委員長が早々にいなくなるとは考えにくい。そのように推理を組み立てて付近にまんべんなく目を配っていると。

 草壁はようやく雲雀の姿を発見できた。当の雲雀は、桜の少々太めの枝の上に腰かけ、満月を見上げていた。夜、満月、桜に彩られた雲雀は、草壁視点で非常に絵になっていた。

 

 

「ここにいましたか、委員長」

「僕は群れる人間を見ずに桜を楽しみたいからね」

 

 草壁が声をかけると、雲雀は草壁を一瞥した後、満月を見上げて一言、零す。

 確かに委員長は群れることを嫌う。だが、きっとそれだけじゃないと草壁は考える。

 普段、風紀委員を力で統率する委員長は一般的には畏怖される存在だ。

 秋田勝のようにただ委員長を尊敬する例外もいるが、大概は委員長に恐怖する。

 そんな怖い人物が近くにいては、おちおち花見を楽しめない。

 だから、委員長は風紀委員たちの目に入らない場所に移動したのだろう。

 

 

「……そうだ、草壁哲矢。君に聞きたいことがあったんだ」

「何でしょうか?」

「もしも将来、僕が修羅の道を進むとして、君はどうする?」

「修羅、ですか?」

 

 雲雀からの唐突な問いかけの意図がわからず、草壁は聞き返す。

 一方、雲雀は草壁の質問返しは想定内らしく、そのまま言葉を紡ぐ。

 

 

「そう。暴力が絶えない、血飛沫が舞うのが日常茶飯事、人の命が軽い。そんな危険な世界に、地獄に僕が向かうとして、君はどうしたい?」

「……私は、委員長と同じ道を歩みたいです」

「早死にするかもしれないよ? 僕の道は、大往生できる道じゃない。命の心配をしなくていい、安寧な将来とは対極だ」

「それでも。委員長の行く道が、私の道です」

「……」

「委員長がどんな未来を見ているのかはわかりません。ですが、委員長が迷惑に思わない限り、私はどこまでも付き従いたいと、委員長の力になりたいと思っています」

「……ワォ。何とも盲目的で、短絡的で、面白い答えだね。そう、わかった。なら、君の好きにするといいよ。僕も好きなだけ、君を巻き込ませてもらうから」

「はッ!」

 

 雲雀は草壁の返答にわずかに驚いたように目を見開き、ニィと口角を吊り上げる。

 雲雀の反応と言動から、草壁は少なくとも自分の回答は間違っていないと察し、安堵した。

 後の草壁哲矢は語る。この時こそが、己の波瀾万丈極まりない人生の分岐点だったと。

 

 




雲雀恭弥→本作の主人公。本名は雲雀恭華。今は凡人が憑依している。原作通りに草壁さんをマフィアの道に思いっきり引きずり込むべきかどうか迷っていたが、草壁のハッキリとした答えに吹っ切れた模様。ここの所、獄寺弄りに愉悦要素を見出している。
沢田綱吉→原作の主人公。お花見に適したポジションを確保しないと殺すとビアンキに脅され、獄寺や山本とともに良い場所を探している所で恭華と出会った。彼の脳内では『恭華は獄寺に強いが、シャマルに弱い』との方程式が構築された。
獄寺隼人→スモーキン・ボムとか人間爆撃機とかいった異名を持つマフィア関係者。目下、恭華の格好の弄り対象に据えられている。『嵐』と『雲』は相性いいみたいだし、多少はね。
山本武→並盛中の1-Aに所属する人気者なクラスメイト。中学生が持っていそうな異性と話す時の独特の緊張感は持っていないため、ごく普通に恭華と接している。
Dr.シャマル→闇医者かつフリーの殺し屋なキス魔おじさん。実はこっそりツナくんたちと恭華さんとのやり取りを聞いていたため、恭華の名前を入手できた。
草壁哲矢→風紀委員の副委員長。太いリーゼントに中学生とは思えない老け顔、なぜか草を口にくわえているのが特徴的。今回、改めて雲雀さんへの揺るぎなき忠誠心を顕わにした。

凡人憑依者(よっしゃ! この反応からして、将来雲雀さんが作る、または作らざるを得なくなる風紀財団に草壁さんを巻き込んでも問題なさそうだな! 期待してるよ、中間管理職ポジ!)

 というわけで、11話は終了です。原作を知っていたら、雲雀さんが桜クラ病にかかってやる道理なんてないですよね。これにより六道骸戦でどう改変が入るのかは……これから考えます(無計画)。ヴァリアー編や未来編は大体構想が纏まっているのですが、黒曜編はまだ白紙なんですよね。どうしよう。これは未来の私の発想力に期待と言う名の丸投げをするべき案件でしょうか。


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