この素晴らしい世界で蒼い悪魔に力を!   作:(´・ω・`)

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第42話「この新たなパーティーで初クエストを!」

 アクセルの街から徒歩で半日、さほど遠くない場所に位置する、森林豊かな山。駆け出し冒険者が練習として潜るダンジョンもある。

 嫌でも寒さで身体が震える時期となれば、山に住むモンスターのほとんどは、食料を蓄えた土の中や洞窟で引きこもり生活をしているのだが、最近になってこの山に住む『ジャイアントスネーク』が表に顔を出し、大変気の立った様子で徘徊し始めた。

 これを異常と見たギルドは、山の調査と当モンスターの狩猟を兼ねて掲示板にクエストを貼り出した。そして今日――当クエストを受けて山を歩く、4人の冒険者がいた。

 

 

「――で、このスキル一覧から覚えたいスキルを選んで指で少し押し続けたら、スキルポイントを使ってスキルを習得できるんです!」

「なるほど。じゃあこの『パラライズ』ってのにしようかな。これってどんな効果があるの?」

「『パラライズ』は相手を一定時間痺れさせて動けなくさせられる魔法で、いざって時の足止めや総攻撃を仕掛けたい時に使えますよ! スキルレベルが上がれば相手が動けなくなる時間も延びて――!」

「OK、要するに麻痺だね。わかったわかった。ところでゆんゆん、さっきから思ってたんだけど……別に敬語を使わず、気軽に話してくれていいんだよ?」

「えぇっ!? い、いやいやいやでもタナリスさんはクリスさんの先輩で、それに出会ってまだ日も浅い間柄なのにそんな失礼なことをするのは――!」

「気にしない気にしない。見た目年齢は一緒くらいなんだから。僕のことはタナリスちゃんとでも呼んで、タメ口で話そうよ。僕達、もう友達だろう?」

「――ッ! い、いいいい今の台詞! ももももう一回言ってもらってもいいですかっ!?」

 

 楽しくお喋りしながら前を歩くのは、相手がパーティメンバーな上に見た目は同年代な女性故か、舞い上がりながら話すぼっち娘のゆんゆんと、僕っ娘元女神ことタナリス。

 今しがた友達になり、ゆんゆんがまさしく天にも昇る気持ちになって目を輝かせているのを見て、タナリスは陽気に笑う。それからゆんゆんは深呼吸を何度もし、タナリスとタメ口で話せるよう努力していった。

 

「……アタシには敬語を使ってる子が、先輩とタメ口で話しているのを、アタシはどういう顔で見ればいいのかな?」

「知らん。貴様もあのように話して欲しいのなら、そう頼めばいいだろう」

「いや、実は前からゆんゆんちゃんには畏まらなくてもいいって話してるんだけど、いつも断られちゃって……やっぱ見た目の問題かなぁ」

 

 その2人を保護者のように後方から見守りながら歩くのは、クリスとバージル。タナリスがゆんゆんと知り合って間もないのに、既に親しき関係になっているのをクリスは羨ましく思う。

 もっとも、クリスの見た目年齢はダクネスやバージルと同じ18歳から20歳辺り。ゆんゆんはカズマにも敬語で接しているので、きっと年上相手には必ず敬語で接する真面目な子なのだろう。

 

「それよりもバージル。わかってるよね?」

 

 と、クリスは良い子なゆんゆんから視線を外し、悪い子を見るような目を隣のバージルへ向ける。彼女の言葉を聞き、バージルは顔をしかめた。

 

 クエストへ出かける際、折角の機会だからと、パーティーリーダーのクリスはバージルに1つ命令を下していた。

 それは『パーティーメンバーに合わせて行動し、リーダーの指示が出るまでは攻撃しない』こと。要するに『勝手に動くな』である。

 また、今回のクエストは討伐だけでなく捕獲も成功扱いとなる。なので、対象のモンスターは倒さずに弱らせて捕獲するようにと、クリスはメンバー全員にも指示を出した。

 彼1人が先走ったら、あっという間に終わりそうで面白くないと思っていたタナリスはそれに賛成。ゆんゆんも「リーダーの命令なら聞くべき」と口にした。結果、多数決でバージルは命令を受け入れざるを得なかった。

 

「その台詞はもう三度聞いた。まさか貴様は、俺があの三人組のような、話を聞かず勝手に動く奴等と同類だとでも?」

「思ってるから何度も言ってるんだけど」

 

 一緒にするなと暗に伝えるバージルへ、クリスはジト目で睨みながら言葉を返す。

 対するバージルは言い返せなくなったのか、これ以上話しても無駄だと悟ったか。鼻を鳴らしてクリスとの会話を途切れさせた。

 

 

*********************************

 

 

 山に入って約2時間。4人は木の生い茂っている山頂まで辿り着く。情報によるとここら辺りに対象のモンスターは潜んでいるそうだが、その姿は見当たらない。

 4人で手分けして探すべきか、固まって動くべきか。一応リーダーであるクリスが、これからの作戦で悩んでいた時――。

 

「ッ! 皆! 今『敵感知』に1体反応が出たよ!」

 

 クリスの使用していた『敵感知』に何者かが引っかかり、彼女はすぐさま他の3人へその節を伝えた。ゆんゆんは素早く左手で腰元の短剣を抜き、タナリスも鎌を構える。バージルは指示に従っているからかもしくはいつも通りか、武器を抜かずに前方を見る。

 最後にクリスがダガーを抜いて戦闘態勢に入る中、反応はどんどん近付いてくる。やがて彼女等のすぐそばまで来ると――地中から土を破り、その姿を彼女等の前に曝け出した。

 

「け、結構大きい……!」

 

 現れたのは、討伐対象モンスター『ジャイアントスネーク』――ジャイアントトードと同じく、文字通り巨大な蛇だ。

 黒い鱗を持つ蛇は、縦に長く鋭い瞳孔を人間達に向け、背筋も凍るような威嚇の声を放つ。揺れる長い舌と鋭い牙を見せるが如く、大きく開いたその口は、人間は勿論のこと、ジャイアントトード1匹を軽々と丸呑みできそうだ。

 想定していたよりも巨大だった敵を見て、ゆんゆんは思わず呟く。クリスはダガーを強く握り、バージルは取るに足らない相手なのかつまらなそうにしている。そしてタナリスは――。

 

「おぉっ、名前からして大きな蛇だってことはわかってたけど、まんま大きくしたものだとはねぇ」

「あっ!? ちょっ、先輩!?」

 

 興味津々な目で蛇を見ると、警戒心ゼロで自ら近付いていった。クリスはすかさず呼び止めたが、タナリスは止まらず。

 やがて蛇の真ん前に立つと、彼女は気軽に手を振って「ハロー」と声を掛ける。気さくな挨拶を受けた蛇は、一度口を閉じて眼前にいる幼き少女を睨みつける。

 

 そして――返す挨拶も無しに、タナリスをひと呑みしようと口を開いて襲いかかった。

 

「「『パラライズ』!」」

 

 が、食われる直前にタナリスは武器を持っていない左手をかざして『パラライズ』を放つ。後方にいたゆんゆんもほぼ同時に同じ魔法を放っていた。

 

「こらこら。挨拶されたらちゃんと返す。そんな無愛想にしてちゃ、お仲間から嫌われちゃうよ?」

「タ、タナリスちゃん! 蛇さんと話してないで一回退こう!? ねっ!?」

 

 魔法を受けた蛇は苦しそうにもがき、動けなくなりながらも殺意を持った鋭い眼光を彼女等に向ける。その間、ゆんゆんは慌ててタナリスの腕を引っ張り蛇から離した。

 そして、リーダーであるクリスに指示を仰いで貰おうとしたが――。

 

「眠りから覚めるにはまだ早かったな。ここで貴様の命もろとも、土の中に返してやろう」

 

 ここでバージルが早速言いつけを破り、動けない蛇の前へ歩み寄り始めた。問題児達とは違うと自分から言っておいてこれである。

 

「ちょっと待ったバージル! アタシ達の目的は、そのモンスターの捕獲! ここで倒したら捕獲できる物もできなくなっちゃうよ!?」

「俺の記憶が正しければ、討伐しても成功にはなる筈だ。こっちの方が手っ取り早い」

「アタシの話ちゃんと聞いてた!? 君は、アタシの指示が出るまで攻撃しない! モンスターは捕獲する! 今はアタシがリーダーなんだから、ちゃんと言うこと聞いてよね!?」

「……チッ」

 

 バージルとしては、ここでさっさと幕引きにするつもりだったのだろう。しかし後でグチグチと文句を言われそうだと思ったのか。バージルはクリスの指示に従って歩みを止め、刀の柄に添えていた手を離した。

 

「クリスさん! どうしますか!? 今のうちに『スリープ』かけたほうがいいですか!?」

「いや! その前にこのモンスターを罠にかけるよ! でもここじゃ罠を設置するのは難しい! だから一旦離れて、開けた場に移動しよう!」

「この子いつまでビリビリしてるのかな? 今なら鱗とか触っても大丈夫だよね?」

「先輩はまた近付こうとしない! パックリいかれたいんですか!?」

「タ、タナリスちゃん! 危ないからこっちに来て!」

 

 再び蛇へ近寄ろうとしたタナリスを、ゆんゆんが再度腕を引っ張って止める。それからクリスは、来た道とは違う横方向へ、先導するように木々の間を走っていった。

 リーダーを追いかけようと、ゆんゆんはタナリスの腕を手に取ったまま走る。タナリスは名残惜しそうに蛇を見ながらも連れて行かれ、バージルは面倒臭そうにため息を吐きながらも彼女等の後を追う。

 

 『敵感知』『千里眼』を使えるクリスが先行して走り、残る三人が後に続く。バージルもさっさと走り抜けたい気持ちを抑え、走っていた。

 と、70メートルほど走ったところで、スキルを常時発動していたクリスが何かに気付き、声を上げた。

 

「皆! コボルトが五体待ち伏せてるよ!」

 

 クリスから発せられたのは、行手を阻む敵の出現。しかし相手は下級モンスターであり、数も少ない。バージルは手早く片付けようと右手で刀の柄を握る。

 

「おっとバージル。ここは僕が行かせてもらうよ」

 

 が、彼を遮るようにタナリスがそう口にしてきた。そこから彼女は走る速度を上げ、クリスより前に出る。

 やがて、前方で待ち構える四体のコボルトが目視できる距離まで迫った。そこでタナリスは強く地面を踏み込むと、高い跳躍を見せて一気にコボルト達の前まで接近した。

 彼女の跳躍にコボルト達は驚いたものの、すぐさま武器を持って身構える。そんな中、タナリスは鎌を持っていない左手を引き──。

 

「グッと力を溜めてー……『デス』!」

 

 正面のコボルトへ左手をかざし、ダークプリーストが得られる最強の即死魔法『デス』を放った。

 しかし彼女はまだレベル1。最初からスキルポイントを幾つか持っていたものの『デス』を習得できるほどまでは溜まっていない。故に、何も起こらない。

 

「なんて、いつかできたらいいよね!」

 

 が、コボルト達は思わず動きを止めた。フェイクに引っ掛かった彼等を見てタナリスはいたずらに笑うと、鎌を両手で持ち正面のコボルトになで斬りを浴びせた。

 続けざまにタナリスは鎌を振り、他の三体も斬る。しかし彼女の武器は、余り物の鉱石で作られたサンプル品。大したダメージを受けていないコボルト達は、反撃とばかりにタナリスへ襲いかかる。

 

「そうらっ!」

 

 迫る彼等を見たタナリスは、鎌を起用に縦回転(フロップ)させて迎撃。彼女の攻撃を受けて、コボルト達は宙に浮かされる。

 四体全員を浮かせたタナリスは、空中にいるコボルト達に追撃を加える──ことはせず、ニッと笑みを浮かべているだけ。

 そんな彼女の背後には──既に、右手に光を宿したゆんゆんがいた。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

 ゆんゆんは剣を振るように、右手を横へ振り抜く。同時に彼女の宿した光は剣となり、宙にいるコボルト四体を一刀両断した。

 赤々とした鮮血を散らし、死体となったコボルト達は地面に落ちる。死体を確認したタナリスはクルッと振り返り、ゆんゆんへ向けて親指を立てた。

 

「ゆんゆん、ナイスフィニッシュ。流石は紅魔族の長を目指す者だね」

「そ、そうかな……えへへ……」

 

 友達に褒められ、ゆんゆんはにへらと顔を緩める。タナリスも戦闘態勢を解いてリラックスしていた。

 この場に倒れているコボルトの数は四体──クリスが報告した数とは、一体足りないことに気付かず。

 

「グルァアッ!」

「ッ!」

 

 次の瞬間、草むらの陰から一体のコボルトが飛び出してきた。独り身を隠し、敵が油断する時を虎視眈々と待っていたのだろう。

 油断していたゆんゆんはコボルトの登場に驚きながらも武器を構え、襲いかかるコボルトを見る。

 

 とその時──コボルトの身体が一瞬で切り刻まれ、ゆんゆんに牙を届かせることも叶わず、その場に血を流して倒れた。

 ゆんゆんは呆気にとられたが、すぐにハッと我に返ると、今の攻撃を放ったであろう人物へ顔を向ける。

 

「敵の気配が消えるまでは油断するな。授業で教えた筈だろう。二度も言わせるな」

 

 見えない斬撃(次元斬)を放ったバージル。既に刀を鞘に納めていた彼は、鋭い視線を向けたままゆんゆんに近寄る。

 彼は同じことを何度も言うのが嫌いだと知っていたゆんゆんは、先程までの表情から一変、叱られる子供のように俯いた。

 

「ご、ごめんなさい……」

「気にしない気にしない。さっきの奴はバージルが倒して解決したんだから、それでいいじゃないか」

「貴様は黙っていろ。指導の邪魔だ」

「友達が怒られてるのを、君は静かに見てろというのかい? 僕にはちょっとできないなぁ」

 

 友達としてゆんゆんが叱られているのを黙って見過ごせないと、タナリスはバージルとゆんゆんの間に入る。バージルが鬱陶しく思う横で、友達になったらして欲しいことベスト10以内に入りそうな行動を取るタナリスを、ゆんゆんは目をキラキラと輝かせて見ていた。

 

「ハイハイ喧嘩ストップ! 今は口よりも足を動かす! ほら走って!」

 

 バージルとタナリスが今にも口喧嘩をおっ始めそうだと思ったのか、自分だけ取り残されてる感を覚えたのか、そこへクリスが声を大にして入ってきた。

 今は痺れたジャイアントスネークから距離を離し、捕獲しやすい場所へ移動していた最中。バージル等は彼女の指示に素直に従い、止めていた足を進めた。

 

 

*********************************

 

 

 山を登る際、クリスは先人達が残してくれた地図を頼りに移動していた。どこに何があるのか、そして今求めている開けた場も記されている地図だ。

 クリスは3人を引き連れて、目的地に向かってひた走っていたのだが、道中で問題が。

 

「……崖か」

 

 走った先で、彼女等は文字通り断崖絶壁の上に立たされていた。下には森が広がっており、降りて真っ直ぐ走った先には、目的の開けた場があるのを確認できた。

 蛇と会った場から目的地まで移動するために、崖を通らざるを得ないことは、地図に記されていたのでわかっていた。しかしどうやら、この地図は完璧に情報を記していたわけではなかったらしい。

 

「まさか、ここまで高いとはね……!」

 

 その崖は、想定していたよりも高さがあった。普通の人間がこの高さから落ちれば、骨折は勿論、最悪命を落としかねない。

 縄は持ってきているので降りれることは降りれるのだが、今頃蛇は『パラライズ』による束縛から開放され、臭いと熱を頼りに向かってきているだろう。その間に崖を降り、罠を設置できるだろうか。

 しかし、どちらにせよ降りなければ事は進まない。クリスは決心し、早速降りる用の長い縄を取り出そうと動き出す──そんな時だった。

 

「別になんてことないでしょ。飛び降りればいいだけさ」

「えっ? ちょっ!? 先輩!?」

 

 タナリスはいつもの調子で足を進めると、そのまま崖からぴょんと跳んだ。まさかの行動にクリスは目を丸くする。

 跳び降りたタナリスは、重力に従って風切り音と共に真下へ落ちていく。クリスは心配したが、彼女は元女神。冒険者になった際のステータスも高かった。この程度の高さなら落ちても大丈夫なのだろう。

 

「ま、待ってよタナリスちゃん!」

「えぇっ!? ゆんゆんちゃんまで!?」

 

 と思った束の間、なんとゆんゆんまでも当然のように崖から跳び立った。彼女までも行くとは思っていなかったクリスは心底驚く。

 タナリスのように、彼女も足を下に向けて落ちていく。彼女は考え無しに行動するような子ではない。きっと無事に着地できる算段があるから、追いかけるように落ちたのかもしれない。

 2人が落下していったのを目にして、自分も跳び降りるべきかとクリスは思ったが、この肉体の耐久性はあまり高くない。そして何より勇気がいる。

 結局、彼女はてんやわんやしながらも、再び縄を取り出す作業を始める――とその時。

 

「ひゃうっ!?」

 

 突然、彼女の両足が地面から離された。身体も横向きとなったが、地面にはついていない。

 自然と顔は空を見上げる形になる。彼女の目先にあったのは、視線を合わせず前を見ているバージル。そして彼女は、自分の背中と足を彼によって支えられていることに気付く。

 そう――クリスはバージルに、お姫様だっこをされたのだ。

 

「えっ!? あ、ああああのバージルさん!? いいいいきなりどうしたんですか!?」

 

 女性として、こういったことに慣れていないのもあるだろう。抱き上げられたクリスは顔を赤らめ、うっかり素の口調に戻りながらもバージルに問いかける。

 対するバージルはというと、クリスとは対照的に無表情のまま、視線を合わせることなく言葉を返した。

 

「下で奴等と合流したら、目的地で罠の準備をしておけ。そこへ俺がおびき寄せる」

「えっ?」

 

 彼がそう口にした瞬間――クリスは、浮遊感を覚えた。

 自分の背中と膝裏にあった彼の手の感触は、もうない。そして、見る見るうちに彼女とバージルの距離が空いてゆく。

 今置かれている状況を理解するのに、然程時間はかからなかった。

 

「ちょっとぉおおおおおおおおおおおおっ!?」

 

 バージルに崖から落とされたクリスは、涙ながらに悲鳴を上げた。しかしいくら泣き叫ぼうと、落下が止まることは決してない。

 

「いやぁああああああああっ!? 助けてぇええええええええっ!?」

 

 落ちていく最中、クリスは大声で助けを呼ぶ。普段なら、崖に生えている木に縄を引っ掛けるなりして落下を止めていただろう。しかし彼の不意打ちお姫様抱っこが余程効いたのか、彼女は冷静な判断ができず、ただただ助けを求めることしかできなかった。

 ポーチからアイテムを探すことも体勢を変えることも忘れ、上に飛んでいく涙を流し続ける。気付かぬ内に、落下先の地面まであと少し。

 

「『グラビティ・フェザー』!」

 

 その瞬間、下の方からゆんゆんの声が。と同時に、彼女の落下運動はピタリと止まり――否、落下はしているが、先程とは比べ物にならないほど緩やかになっていた。

 『グラビティ・フェザー』――対象を、羽のように軽くさせる魔法。落下してきていたクリスを見たゆんゆんが、咄嗟にかけたものだった。きっと彼女も、この魔法を使って着地したのだろう。

 クリスは羽のようにふわりと落ち、地面に仰向けで倒れる形で着地する。当然、骨も折れていない。心臓は大音量で鼓動を響かせていたが。

 

「クリスさん! だ、大丈夫ですか!?」

 

 無事に着地したクリスへ、ゆんゆんが心配そうに駆け寄ってくる。後ろにはタナリスもいた。

 顔を上げたクリスはしばらくゆんゆんを見つめ――その目に再び涙を浮かべると、自らゆんゆんに抱きついた。

 

「ゆんゆんちゃぁああああん! 怖かったよぉおおおおおおおおっ!」

「わわっ!? ク、クリスさん!?」

「えらく取り乱してるね。こんなクリス初めて見たよ」

「わ、私も……上で何があったんだろう? ってあれ? 先生は?」

 

 助かったクリスが涙ながらにお礼を告げる傍ら、あと1人いないことに気付いたゆんゆんは、彼を探すように辺りを見渡す。

 その前で、クリスはゆんゆんから離れて腕で涙を拭うと立ち上がり、ゆんゆん等に彼から預かった伝言を告げた。

 

「グスッ……あのバカなら、まだ崖の上にいると思う。彼がモンスターを引きつけるらしいから、その間にアタシ達は、ここから真っ直ぐ進んだ先にある開けた場所で、捕獲の準備をしておこう」

「は、はいっ! わかりました!」

「(……あのバカ?)」

 

 クリスからの指示を聞いたゆんゆんは、元気に返事をする。その横でタナリスが首を傾げている中、クリスは崖の上に目を向ける。

 このクエストが終わったら反省会を開き、彼にしこたま説教してやろう。崖の上にいるであろうバージルに、怒りの念を送ったクリスは崖に背を向け、仲間と共に走り出した。

 

 

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「……行ったか」

 

 後で怒られるとはいざ知らず、崖下から離れていくクリス達を眺めていたバージルは独り呟く。

 先程クリスを崖から落としたのは、クリス自身か、もしくはゆんゆんかタナリスが上手いことやって着地できるだろうと思ってのことだった。なるようになるスタイルは遺伝なのか元々なのか。

 

「さて……」

 

 彼女等の無事を確認したところで、彼は後ろを振り返る。そこには既に――『パラライズ』の束縛から解放され、追いかけてきたジャイアントスネークがいた。

 『パラライズ』のせいか、蛇は先程よりも怒りのこもった目でバージルを睨む。しかし彼は、ここで動けなくなる蛙とは違って挑発するように笑みを浮かべる。

 

「ここで貴様を始末してやってもいいが……あの女が喧しいからな」

 

 バージルはそう言うと軽く地面を蹴り、崖下を背にする形で跳び降りた。蛇はすかさず地面、そして崖の壁を這って彼を追いかける。

 空中ならば何もできないだろうと踏んでか、蛇は敵を捕食しようと口を開けたまま追いかけてくる。バージルは殺さないようにと考慮してか、刀を抜かず『幻影剣』を飛ばした。

 風を切って飛ぶ幻影剣は蛇の身体や顔面に突き刺さっていくが、怒りの感情が痛みを麻痺させているのだろう。依然としてバージルに向かってくる。

 中々根性のある奴だと感心しながら、バージルは空中で身体を回転させて地面に足を向ける。そのまま重力に従い、大きな音を立てて地面に着地した。強い衝撃故か、地面にはバージルが立つ場を中心としてクレーターが作られた。

 バージルは終始落ち着いた様子で見上げる。視線の先には――蛇が大口を開けて襲いかかる姿が。

 

「Humph」

 

 バージルが息を吐いた次の瞬間、蛇が地面に突撃すると同時に土煙が巻き起こった。

 

 

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 土煙によって辺りは何も見えなくなっていたが、次第にその煙は晴れていく。

 そこにいたのは、崖から降りてきたジャイアントスネークが1匹。蛇よりも先にいた筈の男の姿はない。が、食べられたわけではない。現に蛇の腹は満たされず、怒りは未だ収まっていなかった。

 蛇は崖を背にして前方を見る。蛇の優れた体温感知と嗅覚感知により、この先にある場に4人の人間がいることを確認した。1人は誰かわからないが、3人は頂上で出会った者達で間違いない。

 問題は、見失った青い男。蛇はどこかに潜んでいるであろう彼に注意を向けつつ、木々の間を縫って行く。

 

 既に――自身の頭上に乗っていたことにすら気付かぬまま。

 

「間抜けが」

 

 男の声が響く。蛇はそこでようやく男が頭上にいると気付いたが、遅かった。彼は刀を抜くと蛇の頭に刃を突き刺した。

 蛇は悲鳴を上げ、木々をなぎ倒しながら暴れ回る。その最中で男を振り落とそうとしたが、彼は依然刃を突き立てたまま頭上から離れない。

 

「大人しくしろ」

 

 それどころか、蛇の進行方向は彼に操られるように変えられた。蛇は抗い、進行方向を捻じ曲げようとしたが、頭上の男は暴れ馬を調教するように軌道修正する。

 男は突き立てた刃をレバーの如く扱い、蛇は頭から感じる鋭い痛みに耐えながら森を進む。やがて、彼等の先に光が見え――先程感知した4人の人間がいる、開けた場に飛び出した。

 

 

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

 次の瞬間、蛇と男は業火の炎に包まれた。

 

 

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「これにて一件落着、ですね」

「ですね、じゃないわよバカぁああああああああっ!」

 

 仰向けで地面に倒れているビショビショのめぐみんに、同じくビショビショに濡れていたゆんゆんが怒りの声をぶつけた。

 

「私言ったよね!? めぐみんはそこで大人しく見ててって言ったよね!? モンスターは捕獲しなきゃいけないから、絶対爆裂魔法は撃たないでって言ったわよね!?」

「ゆんゆん、我らが誕生した里に隠されていた、古来より伝わりし禁書にはこう記されていました……『絶対するな』とは『やってくれ』の合図だと」

「それ里にふらっと訪れた『芸人』を名乗る勇者候補さんが忘れて置いてったのを、紅魔族が勝手に禁書扱いしたヤツでしょ!? 私も学校の図書館で読んだけど、あんなの真に受けて本当に実践する馬鹿なんてアンタぐらいよ!?」

 

 爆裂魔法を撃てたことで満足しためぐみんは、まるで反省の色が見られない態度で言葉を返す。2人のやり取りをタナリスは胡座をかいて楽しそうに見つめ、その横でクリスは酷く疲れた様子でヘタリと座り込んでいた。因みに彼女等も濡れ濡れである。

 クリス達が目的の開けた場――山の中にあったダンジョンの入り口前に辿り着くと、偶然にもそこにはめぐみんがいた。ゆんゆんは「絶対に手出ししないように」と念押しして彼女を後ろに下げたのだが……結果はご覧の通り。

 また、彼女が放った爆裂魔法によって木々に炎が燃え広がり、あわや山火事となるところだったのだが――。

 

「ウチの2人が本当に申し訳ない。後でキツーく言いつけておくから」

「ヒッグ……カズマしゃんが……私をダンジョンで置き去りにした上に……頭ぶってきたぁ……」

 

 丁度ダンジョンから出てきたアクアが、消火にはオーバー過ぎる量の水を放ち、その場にいた者達を巻き込みつつ山火事を防いだのだった。彼女等がびしょ濡れなのはそのせいである。

 カズマにげんこつされた箇所を抑え、子供のように泣くアクア。とその時――丁度めぐみんが爆裂魔法を放った場から物音が。

 カズマ達は驚きながらも身構え、音が立った場所を見る。そこにはアクアの洪水によって流された木々が、爆裂魔法で出来上がったクレーターの中にたまっていた。その木の間を縫って――爆裂魔法に巻き込まれた筈のバージルが姿を現した。

 

「ゔぉにいちゃぁあああああああへぶっ!?」

 

 彼の姿を見るやいなや、アクアは飛びかかるように泣きついたが、顔面を蹴られて拒絶された。

 ノックアウトしたアクアを無視し、バージルは無言のままカズマ達のもとへ歩み寄る。彼の無事を確認しためぐみんは、感心したように彼へ言葉を掛けた。

 

「ほほう。幾ばくか力を抑えたのもありますが、我が爆裂魔法を受けてもほぼ無傷とは。流石は我がライバルですね。そうでなくては。そもそも、貴方の力を信頼していたからこそ、私はモンスターもろとも撃ち込んだのですが」

 

 めぐみんが自慢気に話し続ける中、バージルは何も言わず近寄る。カズマ達の前を通り過ぎてめぐみんの元まで来た彼は、おもむろにかがみ込んで、刀を地面に置き――。

 

 左手で彼女の頭を押さえ、右手で眼帯を摘んだ。

 

「……えっ? あの、バージル? なんだか私、既視感を覚えるのですが、これってまさかですか? 私が動けないのをいいことに、アレを思いっきりやるつもりですか? ていうか前より引っ張り過ぎてませんか!?」

「何発か拳を入れてやりたい気分だが、死なれては面倒だからな。これで勘弁してやろう。ありがたく思うがいい」

「確かに拳よかマシだと思いますが、他に無かったんですか!? 今からでも遅くはありません! 他の処罰を! これ以外なら私は何でも――!」

Die(死ね)

「あいぎゃあああああああああっ!?」

 

 バージルの惨殺処刑(眼帯紐パッチン)を受け、めぐみんは悲痛な叫びを上げた。

 

 

*********************************

 

 

 バージルとゆんゆんの怒りが収まり、めぐみんの負ったダメージが少し回復し、アクアがようやく泣き止んだところで、彼等はお互いの事情を話した。

 金銭面が非常に厳しいことになっていたカズマ達は、ギルドでキールダンジョン――この山の中にあった初心者御用達のダンジョンに、まだ未開のエリアがあるとの情報を仕入れ、お宝求めてやってきたという。

 ダクネスが不在なのは、裁判の一件から未だ帰ってこないから。めぐみんだけ入り口前でお留守番をしていたのは、爆裂魔法しか使えない彼女は、ダンジョン探索でお荷物になってしまうからだった。

 暇を持て余していためぐみんは、爆裂魔法の詠唱を練習していたのだが、そこへゆんゆん達が現れ、ジャイアントスネークが向かってきているのを聞いた。そして、いてもたってもいられず現れたモンスターに爆裂魔法を撃ち込んでしまったのだ。

 話を聞き終え、めぐみんを背負っていたゆんゆんはため息を吐く。その横でバージルは、彼女等から目を背けつつ口を開いた。

 

「で……先程から気になっていたが、そこの猫は貴様等の知り合いか?」

「なーお」

 

 間の抜けるような声が耳に入り、ゆんゆん達は声が聞こえた方向へ振り返る。そこには――黒い体毛で黄色い目を持ち、背中にはとても飛べそうにない小さな黒い羽。額に十字架のような赤い紋章が刻まれた、ギザギザ歯の子猫ちゃんがゆんゆんのもとに歩み寄っていた。

 

「あっ! ちょむすけちゃん! 久しぶりー!」

「私達は洪水に巻き込まれてズブ濡れだというのに、この子は全く濡れていませんね。危険を事前に察知して逃れていましたか。流石は私の使い魔ですね」

「使い魔?」

「ちょむ……えっ? なんて?」

 

 めぐみんの言葉を聞き、バージルとクリスは不思議そうに子猫を見つめる。そんな2人を見ためぐみんは、思い出したように子猫について話した。

 

「そういえば、貴方達には紹介していませんでしたね。この子の名はちょむすけ。私と血の盟約を交わした使い魔です」

「という設定の、紅魔の里でめぐみんの妹が拾ってきた猫です。最初はクロちゃんって名前だったんですけど、めぐみんが納得してくれなくって……」

「おい。見たまんまでセンスの欠片もない以前の名前を口にするのはやめてもらおうか」

「そこまで言う!? クロちゃんの方が絶対可愛いと思うのに……」

「ちょむすけの方が断然可愛く、格好良さを兼ね備えています!」

「……可愛いのはわかるけど、格好良い……かなぁ……?」

 

 紅魔族独特のセンスで付けられた子猫の名前を聞き、クリスは首を傾げる。しかし、最初にちょむすけと呼んだゆんゆんの方へ反応を示したのを見るに、嫌がってはいないのだろう。もしくは諦めたか。

 一方、クリスが見つめている子猫ことちょむすけはというと――バージルの方を見上げ、何故か毛を逆立たせて威嚇の声を上げていた。

 自分に敵意、といっても蚊ほどの小さなものだったが、それを向けられたバージルはちょむすけと目を合わせる。ちょむすけは未だ警戒した様子で、フシャーと声を出している。

 対してバージルは、敵意をチラッと見せるようにちょむすけを睨みつける。するとちょむすけは怯えたように身体を震わせ、そそくさとゆんゆんの後ろに隠れるように移動する。そこで再び、威嚇の声をバージルに向けて発し始めた。

 

「どうやら、バージルには懐かないようですね」

「らしいな」

 

 未だ警戒し続けるちょむすけを興味深く思いながらも、バージルはめぐみんに言葉を返した。

 とそこへ、ちょむすけの件が終わったと見てか、カズマが手を上げつつ口を挟んでくる。

 

「んじゃ次はこっちから質問。ずっと気になってたんだが……そこにいる子、誰?」

 

 そう言って、カズマは上げた手を降ろしつつ黒髪の少女、タナリスを指差した。

 彼の質問を聞いて、すっかり紹介するのを忘れていたと思ったクリスは、自ら前に出てタナリスのことを話そうとしたが――。

 

「僕のことなら、アクアに聞けばわかるんじゃないかな?」

 

 それよりも先に、タナリスはアクアに顔を向けつつそう告げた。彼女の言葉を聞き、カズマとめぐみんはアクアに視線を移す。

 対するアクアはというと、最初は首を傾げていたが……やがて何かに気付いたようにタナリスの顔を見ると、目をゴシゴシして二度見し――彼女を指差しつつ大声を上げた。

 

「あーっ! よく見たらアンタ、タナリスじゃない! 元気してたー!?」

 

 嬉しそうな声を上げ、アクアは自らタナリスに歩み寄る。まるで同級生だった子と数年ぶりに街中で出会ったかのようなリアクションを見て、カズマとバージルは何となく彼女等の関係を察した。

 その傍らで、タナリスのことを全く知らないめぐみんと、アクアと知り合いだったとは思っていなかったゆんゆんは、困惑した様子を見せている。とそこで、アクアはカズマ達に振り返りつつもタナリスについて説明した。

 

「彼女はタナリス。私と同期の女神で、カズマが元いたトコとは別の世界を担当してたの」

「今は元女神だけどね」

「えっ?」

 

 タナリスの補足を聞き、アクアは思わずタナリスの方へ顔を戻して聞き返す。

 そこからタナリスは、アクアに自分が天界から追放され、異世界へ飛ばされたことを告げた。

 

「ウッソ!? アンタ堕天されちゃったの!? そりゃ災難ねぇ……ププッ。てことは、今は堕天使ならぬ堕女神ってわけね! プークスクス!」

「堕女神……うん、中々格好良い響きだね。気に入った。ナイスネーミングだよ。アクア」

 

 堕天したことを笑うアクアに、タナリスは怒るどころか堕女神呼ばわりされて喜んでいた。あのアクアと仲良くしているのを見て、カズマはタナリスもまた残念な女神っぽいと思ったそうな。

 その一方バージルは、ここに女神の素性を知らない紅魔族が二名いるのに話しても大丈夫なのかと思い、めぐみん達に目を向ける。

 

「ゆんゆん、何故あの子はアクアの知り合いで、しかも女神設定に話を合わせているのですか?」

「それは私もわかんなくて……クリスさんの先輩ってのは聞いたんですけど、まさかアクアさんとも知り合いだったなんて……」

「ふむ……もしや彼女は、アクアの女神ごっこに昔から付き合っている良き友人なのかもしれませんね。もしくは……彼女もまた、自分を女神だと言い張るタイプなのか……」

「えぇっ!? そ、それは……できれば前者であって欲しいけど……後者だったら……うー……でも久しぶりにできた友達だし……ここは下手に聞かない方がいいのかも……」

 

 アクアの普段の行い故か、タナリスもまた元女神だと信じられていないようだった。杞憂だったかと心の中で呟きながら、バージルはアクア達に視線を戻す。

 

「ま、堕天しちゃったもんはしょーがないわ。これからは、この世界で楽しく暮らしていきなさいな」

「言われずともそのつもりさ。ところでアクア、もしこの後暇なら、僕達の再会を祝して酒場で一杯どうだい? 僕、酒場でもバイトしてるから、割引が効くと思うよ」

「ホント!? 行く行くー! あっ、でも私は様々な事情があってお金が出せないから、タナリスの奢りで!」

「浪費癖は相変わらずなんだね。まぁいいよ」

「違うわよ! ホントに色々あってお金がなくなっちゃったの!」

 

 2人はこの後の予定を決めると、周りの者達を放っておいてこの場から離れ、山を下る方角へ歩いて行った。

 続けて、2人の後を追うようにめぐみんを背負ったゆんゆんが駆け出す。バージルもやれやれとため息を吐きながら、彼女等の後を追った。

 静まり返るダンジョン入り口前。残ったのはカズマとクリスのみ。

 

「……カズマ君……」

 

 不意にクリスから呼ばれ、カズマはそちらに顔を向ける。

 彼女の顔には、いつも見せているような活気がない。体力はまだあるが、精神面でごっそり削られたような表情。

 それは――過去に自分のパーティーメンバーの面倒を見たダストとバージルが見せた顔と、よく似ていた。

 

「……俺達も、帰りに一杯行こう。俺もアクアと同じで、金があんま出せないから奢れないけど、愚痴ならいくらでも聞くから」

「うん……ありがとう……」

 

 分かち合うように優しく誘うカズマに、クリスは心底疲れた様子で言葉を返した。

 




何気にさらりと初登場のちょむすけ。ちょむすけかわいいよちょむすけ。

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