チュンチュン
お昼の公園は遠くに車の走る音など、都会の喧騒が聞こえるものの、周りには小鳥のさえずる声が聞こえるだけだった。
「綺麗やね~」
三葉は公園の木々を見ながら言った。
「まるで糸守みたいだ」
俺は生まれも育ちも東京だが、三葉との入れ替わりを通して、糸守の田舎らしい自然を堪能している。
なので、このような自然を見ると、懐かしく思える。
「はい」
そんな都会の中の希少な自然を堪能していると、目の前に
「?//」
視線を三葉に移すと、三葉は少し頬を赤らめながら、何かを言おうとしていた。
「た、た...」
「た?」
そんな状況が数秒間続いた後、三葉は意を決したのか、赤くなった顔で、
「た、食べりゅ?////」
「?!///」
その台詞は、卵焼きと合わさり、三年前から話題になっている、ブラウザゲーのキャラクターの台詞にしか聞こえなかった。社内で、時たま話題に上がるので、少し内容は知っていたが、まさか、三葉からその言葉を聞くことになるとは思わなかった。
誰が、三葉にこんな事を吹き込んだのだろうか?
とりあえず、三葉の持っている箸がプルプル震え始めたので、卵焼きにパクつく。
「い、いただきます///」パク
「ど、どう?」
卵焼きは甘めで舌触りが良く、自分で作るものや冷凍よりものすごく美味しかった。
「うん、とてもうまいよ」
「そう!良かった~....あ」
かわいらしく喜ぶ三葉は、ふと自分の箸を見てかたまった。
「...どうした?」
卵焼きを飲み込み、事情を聞くと、
「か、間接...///」
「間接?...ハッ///」
何と無く状況を察した。
よくよく考えれば、三葉が食事に使っていた箸を使ったのだ。
つまり、属に言う間接キスというものだ。
「その...」
「あっ!」
俺がとりあえず謝ろうとすると三葉はそれを阻むように声を出した。
「ど、どうせなら・・・人居ないし、間接じゃなくて...直接でも...したいな?」
「?!!??!」
間接キスで思考回路が半分ショートしかけている俺に、三葉は追い討ちを掛けた。
その追い討ちのせいで、思考回路が機能を停止する。
「んっ...///」
復旧させる間も無く、三葉は顔をこちらに近づける。
「///」
真っ白になった頭で俺はその顔に自分の顔を重ねようとする。
その時、
いっちねんせーになったーらっ....
「「?!」」
保育園の園児だろうか、保育士に連れられて次々と公園にやって来た。
現代の保育園にはお昼寝の時間というものが無いのかっ?!
危うく、保育園児にはまだ、数十年くらい早いものを見せるところだった。
俺と三葉は顔を赤くして俯く。
公園でのお昼タイムは体感では早く終ったように感じた。
◇ ◆ ◇
トボトボ
瀧くんの職場周りで地図を利用して見つけたお昼は人気の無い公園。
結構恥ずかしい思いをして、あそこまで、接近したのにまさか、園児が来るとは思わなかった。
「三葉」
思考の渦に飲まれていると瀧くんが声を掛けてきました。
顔には優しい微笑が浮かんでいます。
「今日は誘ってくれてありがとうな。その、いい気分転換になったよ」
「そう、なら良かった♪」
どうやら、結構満足してくれたようです。
しかし、私が瀧くんを誘った本命はそこじゃありません...。
「あのね、瀧くん」
「ん?」
足を止めた瀧くんに
「前は、瀧くんの家行ったから、今夜は私の家に来ない?」
と言いました。
「え、///」
瀧くんはそれを聞いてまた、公園のときと同じ表情をしました。
「ダメ、かな?」
「み、三葉が良ければ、お邪魔させていただきますっ」
よしっ!
今回の本命を達成した私の会社への帰りの足取りはとても軽かったです。