『まもなく、新宿、新宿ですお出口は...』
車掌のアナウンスの後、車両は新宿のホームに滑り込む。
ドアが開き、人の乗降が始まる。
「たーきくん♪」
その人なかで、俺の名前を呼ぶ奴が居る。
そいつは、知らん女ではない。
「おはよう。三葉」
三葉が人で込み合う車内を避けるように俺の傍に詰めた。
「//」
「なに瀧くん顔真っ赤にしてんの~?」
そう言いながら三葉は俺の脇腹を突く。
「してねぇよ。三葉こそ、顔赤いじゃねぇか」
「えっ」ぼふっ
三葉の状況を口にすると
見る見る顔を真っ赤にし、ぼふっと湯気が立った。
「そ、それは、この車内が暑いだけだし...」
その日のオレンジ帯の通勤電車は甘い匂いがしたとか...
ー瀧の勤める会社・営業終了時刻ー
「お疲れ様でしたー」
「おう、赫一ぃお疲れー。今日も早帰りか?」
「ええ、まあ」
俺は、少し心を落ち着かせるために休憩室で缶コーヒーを飲んでいた。
隣には先輩がいて、俺と同期の同僚に声をかけている。
「赤松、また煽ってるんですか?」
「良いだろ、重治。お前も煽ってあげようか?」
「嫌です。やめてください」
「はっはっはっ。お!瀧、お前はどうなんだよ」
「ふぁい?!」
いきなりこっちに赤松先輩の標的が移って来たので変な返事が出てしまった。
「な、なにがですか?」
「彼女とか、早帰りしてまで、会いたい奴はいねぇのかよ?」
「別、べつにそんな人は...」
そんなときだった、彼女が現れたのは...
◇ ◆ ◇
(えっと...住所だと...)
スマホを片手にポケm...じゃ無かった。
瀧くんの会社を探す事数十分。
滝くんの働く会社の入っているビルを見つけ、そこに入る。
途中、スーツを着たサラリーマンとすれ違い、エレベーターに乗り込む。
「確か、7階だっけ...」
ボタンを押し、エレベーターは上昇を始める。
(しっかし、おしゃれなエレベーターだな)
内部は床が木目調のきれいな床で、真ん中にアクセントのように赤丸が描かれており、壁は床にあわせて茶色系の塗装になっている。
質素のな所を想像していた私にとっては見当違いの場所に来た気分だ。
ピンポン
『7階です』
その音と共に扉が開かれる。
正面は休憩室なのか、数人のスーツ姿の男性がたむろしている。
私はその中に彼を見つけた。
◇ ◆ ◇
「たーきくん、来ちゃったよ♪」
「おま、三葉!その喋り方はこんなとこで...」
少々鼻に付くタバコのにおいは何処へやら、砂糖菓子の匂いが流れ始める。
さっきまで、突いてた先輩達も唖然としている。
「瀧、お前」
「あ、先輩、迎え来たんで、そろそろ失礼します!」ピューン
「あ、まt、瀧くん」ピューン
先輩の反応なんて気にせずに、駅へ急いだ。
◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇
「はぁはぁ。三葉、何だ、あの登場は」
「えー。少し、瀧くんを驚かせようと思って」
中央快速線の車内。
三葉懲りずに、テヘッって感じで舌をチョイ出ししている。
「あの時、傍に居た先輩、豪快であうゆうのをすぐ突きだす先輩だったのに...」
「そうだったの、ごめんね瀧くん」
そう言って、身体を密着させる三葉
「お詫びに、こうするから///」
「!???!///」
また、今朝と同じ空気が漂い始める。
(また、あんたらか!今朝も帰りもこんな甘い空気にしよって...。このままじゃ俺の自慢のオレンジ帯が妹のピンク帯になって路線変更するはめになるやろが、やめてくれー)
っとそんな声は聞こえないが、オレンジ帯の電車は俺のうちの最寄り駅を目指して走っていくのだった。