『次は、代々木、代々木です。山手線、都営大江戸線は...』
俺は今、中央総武線に乗って会社へ向かっている。
俺は自然に隣の山手線のホームを見る。
向こうにある、ホームドア越しに三葉らしき人を見かけた日を思い出す。
(宮水三葉。大丈夫忘れてない)
そんな時、スマホがラインの通知を知らせる。
画面に示される名前は『三葉』。
気分が高揚するのを抑えて、内容を確認する。
――――――――――
三葉
今日、お仕事終った後暇ですか?
瀧
暇だけど
三葉
なら、会いませんか?
(表示の仕方が本物のラインと違うのはお許しください)
――――――――――
◇ ◆ ◇
「送っちゃった...」
私は今、中央快速線に乗って会社を目指している。
昨日出会った。いや、再開した。瀧くんのラインへ私はメッセージを送っていた。
(会ってくれるかな...)
私は不安な気持ちを抑えながら返信を待つ。
――――――――――
瀧
いいよ
瀧
どこで待ち合わせしようか?
――――――――――
◇ ◆ ◇
「///」
周りからすれば「スマホ見て、何で朝から顔赤くしてんだ」と言った所だろうか。
三葉からのお誘いに俺はOKを出した。
◇ ◆ ◇
「///」
周りからすれば「朝から顔赤くして、大丈夫かしらあの子」て感じだろう。
私のお誘いに瀧くんはOKしてくれた。
ー時は進み・・・ー
「いらっしゃいませ!お一人様ですか?」
「いえ、後でもう一人」
「かしこまりました。では、こちらへ」
ウエイターに誘導され、俺は二人用の机に案内された。
「コーヒーを一つ」
「かしこまりました」
俺が今何処に居るかと言うと、前にバイトしていたレストランだ。
働いている人たちは人が入れ替わったのか、皆知らない人ばかりだ。
俺はコーヒーを飲みながら彼女を待った。
◇ ◆ ◇
「いらっしゃいませ!お一人様ですか?」
「いえ、先に人が」
「あちらの方ですか?」
後で人が来るといったのは一人だけだったのか、ウエイターさんは一人の人を指した。
その先にはのんきにコーヒーを飲んでいる瀧くんの姿があった。
「あ、はい、そうです」
そう言って、瀧くんのもとへ向かった。
◇ ◆ ◇
「たーきくん♪」
「?!」
三葉は身体から♪がほんとに出そうな言い方で瀧の前に現れた。
一方瀧はというと、その声に驚き、コーヒーを吹き出しそうになっていた。
「三葉!その言い方は何だ...///その、やめてくれ」
「いいじゃない」
「破壊力がある」
「は?」
三葉は瀧の正面に座った。
そうして、メニューと睨めっこし始める。
数分で二人は注文するものを決め、ウエイターに注文した。
「それにしても久しぶりだね」
「そうだな」
二人してあたりを見渡す。
「バイト、楽しかったな~」
「それは、三葉だけだろ」
「何でよ」
「そりゃ、入れ替わった日の後には、男先輩達に囲まれるわ、奥寺先輩とのデートは決定してるわで大変だったんだよ」
料理が運ばれてもなお、二人のレストランでの失敗・やらかし談は続いた。
ー帰り道ー
「なあ、瀧くん」
「ん?」
三葉は俺の名前を呼ぶと、俺の正面に立った。
「今度、瀧くんの家、行って良い?」
「えぇっ!!」
俺は少し後ろへ下がった。
え?俺の家!?三葉が!?
「な、何で?」
三葉は微笑みながら言った。
「入れ替わってたときの美術んとき、きれいな風景画描いとったろ?」
三葉はいきなり訛りを加えながら言ってきた。
俺にそれは鉛玉として飛んでくる(よは、すごいやばい///)。
「あ、ああ。そんな事もあったな」
「だから、瀧くんの家行けば、もっといろんな風景画見れるんやろかと思って...いいかな?」
「べ、べ、別に俺はいいけど...汚いよ?」
時たま標準語になったり訛ったりと凸凹だが、その破壊力に俺はOKを出してしまった。
「別に気にしんよ!そんなに汚いならお掃除してあげる!」
あれ?三葉が両手をグーにして、よしっって感じで前に立ってるぞ。
そんな事するキャラだったか?三葉って?
「掃除はいいよ。きれいにしとくから」
「分かった。じゃあ、開いてる日あったら教えてね」
どうやら、さっきのレストランでのお酒で酔っているらしい。
「あ!あと、新宿から四谷まで、私と瀧くん中央快速線と中央総武線で一緒だから、今度から一緒に行かない?」
◇ ◆ ◇
ちょっと!何言っんの私!
私は知らぬ間に色々言っていた。
一緒に電車に乗るとか、瀧くんの家に行くとか...。
「べ、別にいいよ///」
やめて!瀧くんその顔!やばいです!///
◇ ◆ ◇
そんな、甘い空気は東京の真ん中で酔って出てきたリーマンの酔いを覚ましながら駅まで流れていったのだった。