続・君の名は。   作:鶴雪 吹急

2 / 7
第二話「思い出めぐり-レストラン-」

『次は、代々木、代々木です。山手線、都営大江戸線は...』

 

 俺は今、中央総武線に乗って会社へ向かっている。

 俺は自然に隣の山手線のホームを見る。

 向こうにある、ホームドア越しに三葉らしき人を見かけた日を思い出す。

 

(宮水三葉。大丈夫忘れてない)

 

 そんな時、スマホがラインの通知を知らせる。

 画面に示される名前は『三葉』。

 気分が高揚するのを抑えて、内容を確認する。

 

――――――――――

三葉

 今日、お仕事終った後暇ですか?

 

 暇だけど

 

三葉

 なら、会いませんか?

 

(表示の仕方が本物のラインと違うのはお許しください)

――――――――――

 

 ◇ ◆ ◇

 

「送っちゃった...」

 

 私は今、中央快速線に乗って会社を目指している。

 昨日出会った。いや、再開した。瀧くんのラインへ私はメッセージを送っていた。

 

(会ってくれるかな...)

 

 私は不安な気持ちを抑えながら返信を待つ。

 

――――――――――

 いいよ

 

 どこで待ち合わせしようか?

――――――――――

 

 ◇ ◆ ◇

 

「///」

 

 周りからすれば「スマホ見て、何で朝から顔赤くしてんだ」と言った所だろうか。

 三葉からのお誘いに俺はOKを出した。

 

 ◇ ◆ ◇

 

「///」

 

 周りからすれば「朝から顔赤くして、大丈夫かしらあの子」て感じだろう。

 私のお誘いに瀧くんはOKしてくれた。

 

ー時は進み・・・ー

 

「いらっしゃいませ!お一人様ですか?」

「いえ、後でもう一人」

「かしこまりました。では、こちらへ」

 

 ウエイターに誘導され、俺は二人用の机に案内された。

 

「コーヒーを一つ」

「かしこまりました」

 

 俺が今何処に居るかと言うと、前にバイトしていたレストランだ。

 働いている人たちは人が入れ替わったのか、皆知らない人ばかりだ。

 俺はコーヒーを飲みながら彼女を待った。

 

 ◇ ◆ ◇

 

 

「いらっしゃいませ!お一人様ですか?」

「いえ、先に人が」

「あちらの方ですか?」

 

 後で人が来るといったのは一人だけだったのか、ウエイターさんは一人の人を指した。

 その先にはのんきにコーヒーを飲んでいる瀧くんの姿があった。

 

「あ、はい、そうです」

 

 そう言って、瀧くんのもとへ向かった。

 

 ◇ ◆ ◇

 

「たーきくん♪」

「?!」

 

 三葉は身体から♪がほんとに出そうな言い方で瀧の前に現れた。

 一方瀧はというと、その声に驚き、コーヒーを吹き出しそうになっていた。

 

「三葉!その言い方は何だ...///その、やめてくれ」

「いいじゃない」

「破壊力がある」

「は?」

 

 三葉は瀧の正面に座った。

 そうして、メニューと睨めっこし始める。

 数分で二人は注文するものを決め、ウエイターに注文した。

 

「それにしても久しぶりだね」

「そうだな」

 

 二人してあたりを見渡す。

 

「バイト、楽しかったな~」

「それは、三葉だけだろ」

「何でよ」

「そりゃ、入れ替わった日の後には、男先輩達に囲まれるわ、奥寺先輩とのデートは決定してるわで大変だったんだよ」

 

 料理が運ばれてもなお、二人のレストランでの失敗・やらかし談は続いた。

 

 

ー帰り道ー

 

「なあ、瀧くん」

「ん?」

 

 三葉は俺の名前を呼ぶと、俺の正面に立った。

 

「今度、瀧くんの家、行って良い?」

「えぇっ!!」

 

 俺は少し後ろへ下がった。

 え?俺の家!?三葉が!?

「な、何で?」

 

 三葉は微笑みながら言った。

 

「入れ替わってたときの美術んとき、きれいな風景画描いとったろ?」

 

 三葉はいきなり訛りを加えながら言ってきた。

 俺にそれは鉛玉として飛んでくる(よは、すごいやばい///)。

 

「あ、ああ。そんな事もあったな」

「だから、瀧くんの家行けば、もっといろんな風景画見れるんやろかと思って...いいかな?」

「べ、べ、別に俺はいいけど...汚いよ?」

 

 時たま標準語になったり訛ったりと凸凹だが、その破壊力に俺はOKを出してしまった。

 

「別に気にしんよ!そんなに汚いならお掃除してあげる!」

 

 

 あれ?三葉が両手をグーにして、よしっって感じで前に立ってるぞ。

 そんな事するキャラだったか?三葉って?

 

「掃除はいいよ。きれいにしとくから」

「分かった。じゃあ、開いてる日あったら教えてね」

 

 どうやら、さっきのレストランでのお酒で酔っているらしい。

 

「あ!あと、新宿から四谷まで、私と瀧くん中央快速線と中央総武線で一緒だから、今度から一緒に行かない?」

 

 ◇ ◆ ◇

 

 ちょっと!何言っんの私!

 私は知らぬ間に色々言っていた。

 一緒に電車に乗るとか、瀧くんの家に行くとか...。

 

「べ、別にいいよ///」

 

 やめて!瀧くんその顔!やばいです!///

 

 ◇ ◆ ◇

 

 そんな、甘い空気は東京の真ん中で酔って出てきたリーマンの酔いを覚ましながら駅まで流れていったのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。