ブレス オブ セブンスドラゴン   作:マチカネ

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 人竜ミヅチに活性化させられた『帝竜』スリーピーホロウと『帝竜』ザ・スカヴァーとの戦い。

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第七章 天と地

 人竜ミヅチは東京に残っていた『帝竜』のうち、まず2体を活性化させた。

 そのうちの一体『帝竜』スリーピーホロウは渋谷に出没。

 調査のため13班は渋谷へ向かう。

 

 

 

 渋谷の状況は異様だった。住民同士が殴り合い、争っている。それも笑いながら。

「……」

 無口な力男は、さらに無口に。

「これは一体……」

 異様な雰囲気に刀子が戸惑っていると、後ろから聞き覚えのある笑い声が響いてきた。

「い、いひ……、何だよ、お前ら……?」

 見覚えのあるガラの悪い2人。

「あら、あなたちはSKYのザコちゃんじゃないの~」

 そこにいたのはSKYのメンバー。何度か絡まれたから、忘れようがない。

 2人は口の端から涎を垂らしながら、襲い掛かってきた。ピンクハーレーにザコと言われて、怒ったわけではなさそう。

 

 様子がおかしくても、ザコはザコ。あっさりと、叩きのめす。

 叩きのめされ、倒れていても、まだ、へらへら笑っている。

 

 渋谷の異変の原因は、すぐに解る。元々、その調査のために来たのだから。

 探すまでもなく《原因》が現れた。蝶のような姿をした『帝竜』スリーピーホロウ。

 かなりのスピードで飛び、何かの鱗粉を撒き散らす。

 鱗粉を浴びるなり、ますます住民は暴れ出し、いつ殴り合いが殺し合いになってもおかしくない状態に。

 こんな能力を持っている『帝竜』スリーピーホロウを野放しにしておけない。後を追う13班。

 厄介なのは『帝竜』スリーピーホロウが飛び回っているということ。

 どんどん『帝竜』スリーピーホロウと13班との距離が離される。その合間にも鱗粉を撒き散らし、被害を拡大させていく。

「くそっ、埒が明かない」

 舌打ちする刀子。

 いくら13班でも空は飛べない、飛び回る相手を捕まえるのは困難。「これ、やばいんじゃないの? そのうち、あたしたちにも鱗粉の影響出るんじゃないの~」

 間延びしたピンクハーレーの喋り方で、切羽詰まった感じはしないが《竜を狩る者》である13班は耐性あるものの、ずっと、鱗粉を浴び続ければ悪影響が出る可能性が高い。

「一旦、帰って対策を練るべきだな」

 苦々しく力男は言う。確かにこのままでは『帝竜』スリーピーホロウに追いつくのは不可能。

 都庁に帰って、何らかの対策を立てる必要がある。しかし、それは同時に住民を見捨てることとなる。

 かといって、鱗粉の影響が13班に出てしまったら、取り返しのならないことになる。

 苦渋の判断をせざる得ないと、刀子が思いかけた時、突然、『帝竜』スリーピーホロウの動きが止まった。

 

 『帝竜』スリーピーホロウの前に立ち塞がるのは、輝くような蒼い鱗を持つドラゴン。

「リュウ」

 そのドラゴンの名前を刀子は口にした。カリアッハ・ヴェーラでなく、リュウの名前を。

 

 

 

 『帝竜』スリーピーホロウはリュウに鱗粉を撒き散らすが、全身から放たれる冷気のオーラにより、鱗粉は凍結し、届かない。凍ってしまったら、鱗粉の効果なし。

 咆哮と共にリュウは『帝竜』スリーピーホロウを腕、もしくは前脚で殴りつける。

 アスファルトに叩き付けられる『帝竜』スリーピーホロウ。しかし、大したダメージは無く、すぐに飛び上がり、2回連続で爪で切り付けた。

 硬そうなリュウの鱗でも『帝竜』の爪は防ぎきれず、切り裂かれて血が飛び散る。

 負傷しても臆することなく、冷気のブレスを吐くリュウ。

 大量に撒き散らした鱗粉を幾重にも重ねて盾とし、冷気のブレスを防ぐ。

 ブレスが止まると『帝竜』スリーピーホロウ』は体当たりをかまし、ついでとばかりに爪の攻撃。

 爪には爪と、反撃に爪で斬りつける。

 

 

 

 天空で行われるドラゴン対ドラゴンの戦い、激しいバトル。両者、一歩も引かず。

 戦いの場が空中では手出しは出来ない。刀子もピンクハーレーも力男も見ていることしかできない。それでも最後まで見届ける覚悟。

 

 

 

 高速で突進、『帝竜』スリーピーホロウは鋭いくちばしでリュウの心臓を狙う。

 巨体をずらし、くちばしを肩で受け止める。

 くちばしは深々と肩に突き刺さったが、それを掴んで強引に引き抜くと、無理やりくちばしを抉じ開け、そこを目がけて、冷気のブレスを叩きこむ。

 直接、体内に強烈な冷気のブレスを浴びせかけられては『帝竜』スリーピーホロウもたまらない。内部から凍り付き、カッチンコッチンに凍り付く。

 一発、殴っただけで『帝竜』スリーピーホロウは木っ端微塵に砕け散る。

 

 

 

 肩で息をしているリュウ。戦いには勝ったものの、負傷数も少なくない。

 辺りをリュウは見渡す、鱗粉が途絶えたせいか、ちらほらと、渋谷の住民たちは正気に返り始める。それを確認した後、大きく翼を広げた。

 急いで刀子たちが声を掛けようとした時、地面が揺れた。《竜を狩る者》13班、倒れることは無かったが、体制を立て直している間に、遠い空へとリュウは飛び去って行く。

 地震の原因は、もう一体の『帝竜』。

 

 

 

 天空を飛び回っていた『帝竜』スリーピーホロウは倒された。ドラゴンに転じたリュウによって。

 

「これで残りの『帝竜』は2体だが……」

 大浴場のショック療法の効果があったのか、キリノは幾分か回復していた。

「まず倒すべきは、ミヅチが活性化させた地下にいる『帝竜』だと考える。あいつを野放しにしていたら、東京に大規模な地盤沈下が起きる危険性がある」

 その点に関しては刀子も異存はない。リュウにばかりに戦いを押し付けてはいられない。

「賛成~」

 ピンクハーレーもOK。力男も頷き、同意。

「ようやく、わしらの出番だな」

 そう言ったのは今回の作戦のために呼ばれた、ムラクモ機関で開発を行っている4班を取り仕切っているワジ。

「ハロゲンランプは?」

 キリノに聞かれたワジはニヤリと笑う。

「ああ、上出来の仕上がりだ」

 

 

 

 13班は『帝竜』ザ・スカヴァーとは『国分寺・灼熱砂房』に向かう際、『地下道・東京至台場』を使った時に遭遇した。

 なんでこんな地下にいるのかと思わず、突っ込みたくなるほどの巨大すぎる体。

 寝ているので、そのまま、やり過ごした。寝る子を起こす必要はなかった。あの時は。

 

 今は違う、人竜ミヅチに活性化させられ、目を覚まし『帝竜』ザ・スカヴァーは東京に群発地震を起こし、最悪、大陥没さえ起こしかねない状況にしている。

 あの時に比べ、13班も格段にパワーアップしている。それに今回は4班のサポートもある。

 

 『地下道・東京至台場』では『帝竜』ザ・スカヴァーの巨大な体を隠せる場所はない。そして光を苦手としている。

 そこで4班の開発したハロゲンランプの出番。

 照度32000ルクスもの光を、全身にくまなく、浴びせかけると、光が苦手な『帝竜』ザ・スカヴァーは苦しみだす。

 そこへつかさず、刀子、ピンクハーレー、力男が攻撃を開始。こいつを倒すのは今が最良のチャンス!

 

 地下道には似つかわしくない巨大な『帝竜』ザ・スカヴァーに対し、ピンクハーレーがマイクロバーストを放ち、出血させ、タイミングを合わせて刀子が切りつける。

 とてつもなく大きな口を開き、噛みつこうとする。こんな口なら、戦車さえも噛み砕いてしまう。

 そうはさせるかと、力男は牙折る也でカウンターと攻撃を無効化させる。

 そらっと、刀子が斬り付け、それに怒ったのか『帝竜』ザ・スカヴァーはドラムヘッドを使い、周囲に岩石を降らせてきた。

 これは強烈。全員、負傷を負ったが、すぐさま、ピンクハーレーがキュアで治療。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 居合の構えからの崩し払いを叩きこみ、巨大な体を深々と切り裂く。

 追撃とばかり、ピンクハーレーと力男の連撃。

 ドラゴンと戦い続け、鍛え上げられた13班の攻撃の重ね討ち。巨大な『帝竜』ザ・スカヴァーも耐えれるはずもなく、一度、鎌首をもたげてから、倒れて息絶える。

 大きく息を吐いてから、呼吸を整える刀子。

「これで、残る『帝竜』は、後、1体だな」

 

 

 




 最初は『帝竜』スリーピーホロウと13班。『帝竜』ザ・スカヴァーとリュウが戦う予定でしたが、地下でリュウが戦うのは狭いなと思い、どうせなら、『帝竜』スリーピーホロウと空中戦をやったら、面白いなと考え、こんな展開になりました。

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