ブレス オブ セブンスドラゴン   作:マチカネ

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 リュウくんと初音ミクが『SKY』と13班が出会います。


第二章 13班と『SKY』

 都内某所にある倉庫。ドラゴン襲来前はとある彫刻家がアトリエに使っていた場所。

 その倉庫に、お世辞でも柄のいいとは言えない集団『SKY』が来ていた。

 すらりとした体格の整った顔立ちの青年が『SKY』の前に出る。この青年がリーダー。

「タケハヤ」

 青年の隣にいる青い髪の少女、アイテルが彼の名前を呼ぶ。アイテルの指さす先には、石を彫って作られた仏像のような、わりと大きい石像がある。

 ここをアトリエに使っていた彫刻家が作ったもの。悪い出来ではない。

「これがそうか……」

 少し睨むように、石像に近づく。

「ところで、これ何なの?」

 ネコミミ付きのパーカを来た眼鏡の女性、ネコがペロペロキャンディーを片手に聞く。隣には浅黒い肌の大男、ダイゴ。丸太のような腕には入れ墨がある。

「さぁな、だがあのババアが欲しがっていた」

 タケハヤはポケットから、一枚の写真を取り出す。

 そこには目の前の石像が写っている。

 《あの施設》逃げ出すとき、一緒に持ち出した写真。あのババアに一泡ふかしたくって。

「―内に何かある」

 アイテルが言うと、ここはオレの出番だとダイゴが進み出て、石像を掴む。

 両手に力を込めると、いとも簡単に石像は砕け散った。

 内にあったのは、クリーム色の水晶のような塊。石の殻から、解放されたことを喜ぶように、不思議な輝きを放つ。

「何だろう」

 ネコが近づこうとした時、塊を見たアイテルが、急に怯えだす。

「どうした、アイテル!」

 一体、何があったんだとタケハヤがアイテルをかばう。

「この石のオーラはドラゴンのもの……」

 と呟いた時、倉庫の外を見張っていた『SKY』のメンバーが飛び込んできた。

「ドラゴンが来た! モンスターも大挙して押し寄せてきている」

 瞬時にして『SKY』の顔付きが戦闘モードに変わった。

「みんな、戦いの用意はいいか」

 タケハヤの鼓舞に全員『おおー』と拳を触れあげる。

 『SKY』は『ムラクモ機関』とは別にドラゴンと戦う集団。中には市民にカツアゲするようなチンピラもいる。『ムラクモ機関』との関係は悪い。

「この石がドラゴンを招き寄せた……」

 クリーム色の輝きを放つ石を見つめるアイテル。

 

 金色の大剣を握りしめ、ことごとくモンスターとドラゴンを斬り倒していくタケハヤ。その戦闘力は人間の域を超えたもの。

 大半の『SKY』のメンバー動きは、訓練が積まれていて常人よりも高い戦闘力だが、人間の領域は越えてはいない。

 ただダイゴとネコの戦闘力は、タケハヤほどではないにしろ、人間離れしている。

 わらわらと襲い掛かってくるドラゴンとモンスターを倒していく『SKY』たち。

 その最中、突然、攻撃を受けたわけでもないのにタケハヤが表情を苦痛に歪め、その場に蹲ってしまう。

 タケハヤに、赤い体色の巨大なドラゴンが襲い掛かった。

「タケハヤ!」

 アイテルが助けようとしたが、距離が離れていて間に合いそうにない。

 ネコとダイゴも同じ。他の『SKY』のメンバーも目の前のドラゴンとモンスターを倒すのが精一杯で、助けに行く余裕はなし。

 ここまでか……。タケハヤが覚悟を決めた時、今にも襲い掛かろうとしていたドラゴンが倒れた。その背中に突き刺さるのは一本の剣。

 剣を投げたのは、いつの間にかに現れたリュウ。その横には初音ミク。

 誰にも、お前は誰だと質問をさせる間など与えられないスピードでタケハヤに接近、手をかざす。

「トプリフ」

 一言唱えると、タケハヤの体調が回復。

 もう何ともない、先ほどの苦痛が嘘のように消えている。

「話は後で聞く」

 立ち上がり、金色の大剣を構えなおす。

 無言でリュウはドラゴンの背中に刺さっている剣を抜く。

 

 

 

 戦闘は終わり、負傷者は出たものの、死者は出すことなく、ドラゴンとモンスターを片付けることができた。

 これも、いきなり参戦してくれたリュウと初音ミクのおかげ。リュウの戦闘力は《狩る者》に匹敵するほどのもの。見かけによらず初音ミクの戦闘力も高かい。

 ネコがお礼を言おうとしたら。

 ガラの悪い『SKY』のメンバーがリュウと初音ミクを取り囲む。

「テメーらは何者だ!」

「ムラクモ機関か?」

「何の目的でここへ来た!」

「た、タバコと酒は持ってなさそうだから、食い物は持ってない?」

 お世辞にも友好的とは言えない態度。みんな戦闘の余韻が残って、興奮状態のまま。

 付け加えれば、こんな世界で生き延びてきた弊害。

「この人たち、礼儀知らず」

 ズバッと初音ミクはど真ん中直撃の発言。

 まさしく、正論である、正論中の正論。しかし、この手の連中は正論を言われれば言われるほど、逆上してしまう。

 さらに興奮の度合いを増し、みんな殺伐とした雰囲気。一触即発の状況に。

「やめろ!」

 タケハヤの一括。一気に興奮は収まり、『SKY』のメンバーは冷却化。

 流石にこのメンバーを纏めていることだけはある。

「お前のおかげで助かった。出来れば名前を教えて欲しい。俺はタケハヤ」

 自分から名前を名乗った。リーダーだけに礼儀を知っている。

「リュウ」

「初音ミク」

 それぞれ名乗り、差し出したタケハヤの手を握って握手。

 この握手でリュウも初音ミクも悪党ではないと知れた。

「こいつらのリーダーとして、無礼を謝らしてくれ」

 頭を下げる。ここまでされたら、誰も文句は言えなくなる。

「いきなりで悪いが、2つほど質問させてくれないか」

 断る理由もないので、了承。

「君たちはムラクモ機関なのか?」

 違うので首を横に振るリュウ。

 タケハヤの隣にダイゴが来て、

「何人かのムラクモ機関の《狩る者》は見たが、この2人は見たことは無い」

 リュウと初音ミクの人となりと、ダイゴのこの情報で2人がムラクモ機関ではないと判断。

「では2つ目の質問だ。何の目的でここへ来た。まさか、都合よく、俺たちを助けに来たって、わけではないだろ」

 その質問に対して、リュウは初音ミクを伴い、倉庫の奥へ。

 

 

 

 リュウは倉庫の奥にあったクリーム色の石の前へ。

「俺はこいつを回収しに来た」

 そう言って、リュウが手をかざすと、クリーム色の塊は霧散して、消滅、リュウの体の中に吸い込まれたようにも見える。

「そいつは何なんだ?」

 皆の疑問を代表して、ダイゴが聞く。

「こいつは因子(ジーン)。このまま、ここに置いていたら、ドラゴンを招き寄せてしまう。モンスターのおまけつきで」

 嘘偽りでないのは石像を割った途端、ドラゴンとモンスターが来たことで証明されている。

「これでここに、大挙してドラゴンやモンスターが押し寄せてくる心配は無い」

 完全に安心と言えないが、先ほどのように大挙して押し寄せてくることはない。

 まだ『SKY』のメンバーには聞きたいことがあった。それは質問『お前は何者か』である。

 とても高い戦闘力もさることながら、クリーム色の石、ジーンのこと、それを消滅させたことなど、沢山、聞きたいことがあった。

 1人がそれを口に出すより早く、わんっとメンバーの飼っている犬が鳴いた。

 途端、驚き、飛び上がるリュウ。慌てて周囲を見回し、犬を見つけた。まだ子犬たが、リュウの顔色は良くなし。

 そんなリュウの様子を見たネコ。

「もしかして、犬が苦手?」

 その問いかけには答えていなかったが、泳いでいる目がそうだよと教えていた。本当に目は口ほどにものを言う。

 獅子奮迅の戦いを見せたのに犬が怖いというところが、微笑ましくて可愛くて、ついネコは笑ってしまう。

 恥ずかしそうにしているリュウの様子に、沢山の質問は、どっかへ吹っ飛んでしまう。

 

 つい先ほどの険悪なムードはどこへやら、リュウと初音ミクが去るときには打ち解けていた。

 去り際、タケハヤはリュウを呼び止める。

「恐らくムラクモ機関は、いずれ、お前たちをスカウトに来るだろう。組織自体は良いか悪いかで区切れば、良い方になる。だがあのババァは違う、あのババァを信用するな」

 警告する。

 

 

 

 2日後。

 

 

 

 都内の某有名釣具店。大型の店内には誰もいない。慌ててて逃げ出したので、商品がそのまま放置してあった。

 訪れたリュウと初音ミク。一つ一つリュウは釣り糸を見て、吟味している。

 ルアーや錘などを買い物かごに入れ、店員がいないと言っても、このまま持って帰ったら、泥棒になるのでお金をレジの横に置いていく。

 まー、幼少時、森の小屋で一緒に暮らしていた、レイ、ティーポの3人で、こそ泥していたから、今更なんだけど。

 

 

 

 店から出ると、ただっ拾い駐車場に、刀子、ピンクハーレー、力男、13班が待ち構えていた。

「あら~、可愛い子じゃない」

 初音ミクのことも入っているが、ピンクハーレーの目はリュウを映していた。

「……」

 無言の力男。

「お初にお目にかかります、私たちはドラゴンと戦っております、ムラクモ機関の13班。私はその1人、御堂刀子と申します」

 丁寧な挨拶ののち、

「あなた様の力、試させて頂きます」

 刀子は日本刀を抜く。

「俺の名前はリュウ」

 リュウも剣を抜く。

 話し合いで分かり合えるような相手では苦労はしない、剣と刀で語り合うべし。

 リュウ、刀子ともにコンクリートを蹴り上げ、一気に間合いを詰める。

 打ち合う剣と刀、火花が飛び散る。

 たった一撃の打ち合いだったが、お互いがお互いを手練れと知るには十分。

 リュウも刀子も剣と刀の打ち合いを続ける。

 鍛錬と実戦で鍛え上げられた、剣技と剣技がぶつかり合い、両者、一歩も引くことなし。

 戦っているうちにリュウの顔は楽しそう、刀子の顔も楽しそう。2人とも剣術の達人、達人同士の戦いに武人の血が騒ぎだす。

 

 当初の目的はリュウの実力試しだが、その目的が外れ始めていることを仲間のピンクハーレーと力男が気が付いた。

 初音ミクもリュウが楽しんでいることに気が付く。

 止めないとやばい。そう思った時、周囲を揺るがすほどの衝撃が走った。

 鍛え上げていたからこそ、リュウも初音ミクも13班も、転ばず耐えることができ、倒れずに済む。

 この衝撃は地震ではない、だとすれば原因は一つしかない。

 刀子たち13班の携帯端末から、緊急通信が入る。

『ミロクです。みなさんも、すでにお気づきでしょうが、今の衝撃はドラゴンの攻撃が原因です。今の攻撃で高田馬場が消滅しました。直ちに13班は都庁に戻ってきてください』

 

 

 




 初音ミクの戦闘力は、動画で凶器を持った泥棒を叩きのめしたり、ガン=カタをやったりしていて、かなり高いものと思いました。
 ジーンがクリーム色なのは『セブンスドラゴン』のタケハヤの髪の色から来ています。

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